宝の山・UPWライブ初体験記
■団体:UPW(アルティメット・プロ・レスリング)
■日時:2001年8月22日
■会場:カリフォルニア州サンタアナ ギャラクシーアリーナ
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

どうも。最近こっちのインディー探索をはじめたひねリンです。今回は、ゼロワンに選手を送ったことで日本でも知られているUPWの興行を観てきました。そう、あのほふく前進男トム・ハワードがいるところです。また、最近NOAHでも活躍し、映画Beyond the mat にも取り上げられたマイク・モデストも良く出るそうです。興行のグレードは相当高く、全部で13試合も観ておなかいっぱい状態、書きたいこともいっぱい状態なんですが、それ全て書くとおそるべき長さになってしまう。そこで今回は、はじめてこの団体を紹介するということもあり「UPWはどういう団体で、どういう雰囲気の中、どういう興行を行っているのか」を伝えることを優先し、具体的な試合展開や結果の多くは思い切って省略することにします(それでも十分長くなります)。次観戦記を書くことがあれば、その時はもっと細かく注目選手の紹介をしていきます。日本の団体にもお薦めの選手はごろごろいるので。

このUPWはゼロワンとも友好関係がありますが、そもそもはWWFの公認下位リーグということで知られています。言わばWWF三軍とでも言うべき場所で、見所のある選手は二軍(あるいはWWF一軍選手の調整団体)のOVW(オハイオ・ヴァリー・レスリング)に昇格し、一軍入りのチャンスを掴むことができるシステムになっているそうです。ここの選手がWWFのダークマッチに使われたり、また逆にゲストとしてWWFスーパースターズもやってきて試合をします。トリプルHやカート・アングルが来たこともあるそうです。

で、本日の大会はUPWにとって記念すべき興行でした。9/15より、設立三年目にしてようやく、地元のTV局KDOCによる毎週土曜日の放送が始まることになったのです。そして今回は記念すべき最初のTVテーピングの日。UPWのホームページを見ると、この新番組について興味深いことが書いてあります。彼らはふつうのプロレス中継よりも、もっとドキュメンタリーの要素を増やした番組を作るらしい。試合の模様だけでなく、選手個人を深く紹介したり、このビジネスの行われ方を見せたりする内容の番組にしたいようです。実際、このUPWホームページのコンテンツには、「ディレクター」や「ライター」によるアングル作りの解説エッセイが載ってたり、一興行の作り方を、具体的な試合の台本やチェックリストつきで紹介したりするコーナーがあります。そういう点では思いきりセルフシュート活字な団体です。さらに、この団体がやっているプロレス学校Ultimate University の様子をドキュメントしたTV番組 Inside pro wrestling school が成功を収めてWWFで現在やっているTough Enough の原型となったり、新たなドキュメンタリーが今秋に放映予定だったりという話もあります。ま、この団体のこういう側面については、じきに Inside pro wrestling school が入手できるはずなので、それを扱う時にでも改めて書くことにします。

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本日の興行 Unfinished Business が行われた、UPWの常設会場ギャラクシーシアターは、ロスから南東に車で一時間ちょっとのサンタアナにあります。$15払って入場してみてちょっとびっくり。名前のとおり小劇場なんだけど、暗い場内で、舞台の前にリングが置かれ、それを半円型状にテーブルがざっと100席くらい囲んでいて、観客が席について食事をしたり、ウエイターに注文したりしてます。つまりここは、食事しながらライブや演劇を観るダイニングシアター(実は俺、この言葉今日教えてもらったんですが)なのです。実はUPWはここを常設にする以前からナイトクラブでの興行が多かったらしい。で、テーブル席の後方には広いバーカウンターがあって、そこで立って談笑してる客も多い。また壁際の通路の見安いところで立ち見してもいいらしい。一人で来てテーブルに付くわけにも行かないので、俺は通路で立ち見することにしました。客を観察すると、バーや通路の立ち見にはいかにもプロレス好きそうな兄ちゃんやオヤジが多く、テーブル席には子供連れの家族が多いようです。一テーブルに平均5人と考えると、立ち見を含めて収容人数は7、・800人くらいでしょうか。満員でした。

午後八時より開始したこの日の興行は、こないだ書いたEWFのような「のどかに青空プロレス」みたいな雰囲気は全くなく、音楽と照明を使ってテンポ良く演出されていてどんどん進み、早い話がRAWとナイトロを合わせて空間的にぎゅっと凝縮してライブにしたようなものでした。ここは劇場だけあって、音響もライトもばっちりです。小じんまりしててどこでも観やすい。またリング下にマイクが設置されてて、バンプの音も快適に響きます。

また、リング後方の舞台には一台テレビ(電気屋に置いてあるいちばんでっかいやつくらいの大きさ)が設置されていて、それを事前インタビューやアングルを紹介するのに使います。試合開始前や合間にはUPWガールズ(?)が5、6人出てきて踊るし、リングアナもDJ風のしゃべりを取り入れていて、「今日はテレビ撮りだからすごいぜー!Make some nooooise!!」と盛り上げたり、観客に「UPW!! UPW!!」シャウトを要求して小会場ならではの一体感を煽るなどもして、本当に見事にパッケージ化された興行という感じでした。

レスリングはものすごくRAW風です。寝技の攻防とかはほとんど排除し、めまぐるしい動きのスピード感と、打撃や叩き付け技のインパクトでがんがん進めていくものでした。一試合の時間も短い(これは今回から特に短くなったみたい。TV収録の影響でしょう)。試合レベルもはっきり言って高い。高度な技を使いこなし、スムーズにスポットをこなせる選手が多い(そうでないのもちらほらいるけど)。RAWやSMACKDOWNで必ず一試合組まれる、女子お色気マッチもありました(女子高生とチアリーダーのコスプレ対決で、技をやるたびに二人のミニスカがめくれるのがポイント)。ただし、ストーリーの凝り方とかはRAWのようにはいきません。設置されたテレビが使われる場面も数えるほどしかなかった。これは意図的にそうしてる部分もある気がする。上で書いたように、UPWはノンフィクションぽい番組作りを目指しているようなのでそれほどストーリーはいらないし、なんだかんだで所属選手のプロレス技術を、チェックしに来てるWWF関係者に見せることもこの興行の大きな目的だろうから。

あと、いい選手の多くが、惜しむらくは軽量級なのが目につきました。特に165センチたらずの選手でものすごく動きの鋭い人がいた(P.H.A.Tというチームの肌の黒い方)。TAJIRIの技をパクってたけど。また、ライトヘビー王者のブレイジング・ベニー・チャンは、闘龍門のSUWAを彷彿とさせるような試合展開(飛び技よりバスター中心)ができる巧い選手でした。軽量オカマタッグのG.A.Y.も、乳首を相手の顔に押し付けたり相手の乳首をくりくりしたりの攻撃で笑わせつつ、鋭い動きもできるチーム。また、メインに出たUPWタッグ王座のエヴォリューションは、HBKとハーディーズを足して二で割ったようなルックスのチーム。ダブル雪崩式ブレーンバスターように二人してトップロープに上がって、二人同時にムーンソルトしながら相手を叩き付ける技もやってた。彼らがみな三軍でこのレベルというのは恐ろしいけど、それでもWWFトップのハーディーズとかヴァンダムと比べちゃうと苦しいかもなあ。彼らを見ることで、試合の洗練度と選手レベルが行くところまで行ってしまってる今のWWFの、スーパースターへの道の厳しさを改めて感じました。

パワーファイターにもいい選手はいるんですよ。肥ってるのに各種スープレックスを使える選手とか。でもやっぱ、例えばアルバートとかブラッドショーとか、一軍の正真正銘の化け物に対抗できるかといったらさすがにきついかな。

まあWWFでなくとも、トム・ハワードやサモア・ジョーやケイジ・サコタのように、ゼロワンに呼ばれることもUPWの選手たちには大きな目標のようです。本日トムは試合はなかったんだけど、リングに呼ばれて日本での橋本との激闘が少しだけ会場のテレビで映されました。それに嫉妬した悪役マネのビッグ・シュワッグ(俳優でもあってしゃべりがすごくうまい)がトムに、

「へっ、日本に行っただって?あんなslant eyed(「目のつり上がった」=東洋人への差別語)のバカどもの国に行ったからなんだってんだ!」

みたいなことをがなりたて、味方のサコタが「ちょっと待ってよ・・・」とシュワッグの肩をとんとんするショートギャグもありました。ちなみにその日系人サコタ、今日はネックハンギングされそうになったところをフジワラアームバー(腋固め)で切り返して勝利。

セミではUPW王者のサモア・ジョーが、相手の未熟さにてこずりつつも要所で非凡な動きを見せて勝利。タンク体型なのに小技のうまい器用な選手です。最後はなんとドラゴンスープレックス。このサモア、試合前にマイクで「俺はWWFのトミー・ドリーマーやショーン・オーヘルを倒してるんだ!」とアピールしてた。これは本当で、ドリーマーのような一軍に上がる予定の選手がゲストとしてUPWに来て、チャンピオンのサモアと試合したりするそうです。で、地元王者に花を持たせる。

メインでは、さきほども触れたUPWタッグ王者のエヴォリューションが、ECW最後のタッグチャンピオンのロードキル&ダニー・ドーリング組とタイトル統一戦。ここはWWFに吸収されなかったECWの選手たちが上がる場でもあるんです。結果は別のチームが試合を妨害しに入って来てノーコンテスト。To be continued.

こんな感じかな。試合後にはメインシアターの横のカフェテリアで、レスラー達がサイン会。というかほとんどファンと雑談してる感じで交流を深めてた。

全体的な感想としては、さっきも書いたけど、なによりこれは頂点(RAW)から強く影響された、よくパッケージ化された興行だってこと。のどかに開放された青空プロレスもあれば、対照的に狭い空間に凝縮されて、商品として洗練されてるインディーもあるんですね。まあ興行ノウハウやアングル作成の解説をするホームページのコンテンツを見ても、この団体が自分達の製品に自負を持っていることはうかがわれます。プロレスそのものだって、ちょっとスタイルを修正すれば日本でも通用しそうな選手はいっぱいいます。頑張ってる選手達には成功を掴んで欲しいものです。

あ、一つ書き忘れてた。会場近くに住むティト・オーティズが、途中からVIPのようにして現われたんですよ。でもプロレスファンの反応鈍し。
KOTCではティトって、カーもケンシャムも問題にならないくらいダントツの人気者だったのに。まあこの会場じゃそんなもんかな。ではまた。

(追記:この日の興行は途中から、俺にインディー観戦の手引きをして下さった方と一緒に観戦できました。全く素人の俺には、彼のさまざまな解説は本当にありがたかった。当然、この観戦記中の情報の多くは彼のご教授によっています。)




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