KOTC 10 いんちき取材記
■団体:King of the Cage 10
■日時:2001年8月4日
■会場:ロスから車で二時間のソボバインディアン居留区 Soboba Casino
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

今回のKOTCも縁あって、某所より日本選手(ジャイアント落合&江宗勲)の取材を頼まれて、プレスパスを取ってカメラマン用スーパーリングサイドで観戦してきました。場所はお馴染み?ソボバカジノの屋外特設金網。天気がよかったせいもあって、5時半の開場前から客が長蛇の列を作って並び(一般席は早いもの勝ちだから)、7時のゴング時には5000人ほど?の超満員でした。ちなみに15試合やって、全試合終了は11時半。さらにその後深夜までカジノで遊んで行く者も多し。

さて、試合前は例によってプレス用リストバンドを貰ったことをいいことに、「私プレスでございます」って顔してルールミーティングに顔を出したり、いろんな人に話を聞いたりしてました。日本選手二人の試合前のコメントについては、彼らの試合レポートの際に触れるとして、それ以外の意外な人々とできた話を以下いくつか紹介します。

一つめ、ピーターアーツが、マルコファス、ペドロヒーゾ、そしてなんとレナートババルと4人セットで試合前のバックステージに現われました。なんでアーツがアメリカにいるんじゃ?と思って話しかけたら、ベガスのK-1 USA に出るから、とのこと。あ、そうか。それよりなによりババルです。なんでリングス・ブラジルのエース(笑)のババルが、プライドの姉妹団体のKOTCにいるんだ?おお、これはもしかして、、、と思って単刀直入に「あなたもKOTCかプライドに出るんですかあ!?」と聞いてみたら(この時の俺は勇者だったと思う。つうかバカなだけだけど)、ババルは笑って「ノー。僕は来週リングスに出るよ。」それは分かってる。その後どうするんだよ、と思って「じゃあどうしてここにいるんですか?」と聞いてみたけど、俺の英語もババルの英語も怪しいのでいまひとつ通じませんでした。ちゃんちゃん。

もう一つ。バスルッテンがいたので、船木との映画撮影について聞いてみました。「おお、とても楽しかったよ。俺と船木が戦うんだ。どっちが勝つかって?それは言えないよ。船木は顔もいいし、体も凄いので俳優としても日本のスーパースターになれると思うよ。俺も俳優の仕事で食べていきたい。お金がなくなりゃ試合もするけどね。」とのこと。

まそんな感じで、試合のレポートにいってみましょう。本日は第一試合から4試合、今回のKOTCの最大の売りであるヘビー級戦士8人のワンデートーナメントの一回戦が行われました。これはルールもちょっと普段のKOTCと違って、7分1R制で行われ(通常は5分2/3R)、しかも「グラウンドで30秒膠着したらブレイク」というルールが付け加わりました。普段からKOTCはけっこう膠着ブレイクを取るんですが、その基準をこのトーナメントでは厳しくしたというところです。ルールミーティングで主催者が「これはショーで客は金を払っているんだから、退屈なものを見せてはいけないんだ。」と強調していました。プライドイズム浸透か?


で、そのヘビー級トーナメント、第一試合でいきなり秒殺劇がありました。それも俺の目の前で超豪快なグラウンドパンチが炸裂(最後は十字だったけど)。血しぶきが本当に飛んできて、俺や周囲数人のシャツが血まみれになる(は大げさだけど)アクシデントがありました。俺は半分戦慄しながら、半分はユニバーサルスタジオのジェラシックパークライドでいきなり恐竜に迫られたような気分で、周りの人達と付いた血を見せ合い盛り上がってました(こらこら)。場内も派手な決着に大喜びです。アメプロ見ててもそうだけど、アメリカにはやっぱ「でっかいやつのぼこぼこ殴り合い」を人一倍好む文化があるような気がする。

ここまで読んで、一応仕事でリングサイドにいるくせに血を浴びて喜んでいるなどけしからん、と思う人も多いでしょう。だけどそういう雰囲気なんですよ、このKOTCの金網へばりつきリングサイド(関係者、カメラマン、記者、セコンド用。リングサイド席最前列よりさらに近い場所)って。

ここにいるカメラマンや記者や記録員達は、ちゃんと仕事もしてるんだけど、同時に客気分で試合を楽しんでたりもする。だいたい、アメリカのNHB系のカメラマンや大会スタッフには自分も格闘技をやってる連中が多いから、自分の知り合いの試合になると中立もくそもなく、興奮して大声で声援を飛ばしたりします。今回俺は、公式記録係のおねいさんの隣に座ってたんだけど、彼女自身もミレニア柔術の練習生で、いちいち俺に「この選手はねえ、、、」とか説明してくれたり、知り合いの選手に声援を飛ばしたりしながら記録を取ってました。またこのスーパーリングサイドには、何の資格でここにいるのかよく分からない人も座っています。試合前、近くに座っていた格闘技とはおよそ縁のなさそうな小柄でおしとやかな女性が、まるで立食パーティーでの自己紹介のように「私の名前は◯◯よ。よろしくね。」と握手してくれたんですが、彼女がいったい何者なのかは結局分かりませんでした。彼女はずっと、天使のように微笑んで試合をみてるだけでした。あと、俺の隣の隣では女性黒帯柔術家のレカがずっと楽しそうに試合を見てました(記念写真とってもらっちゃった)。彼女もカメラマンでも何でもないんだけど。ちなみに、ティトとかカーなどの本物のVIPは、リングサイド席最前列(つまり我々より後ろ)に座っています。変な話でしょ?

第三試合 ジーン・フレジャー(1R判定3ー0)ジャイアント落合

そんなかんなで落合選手の登場です。試合前は、海外初試合のはずなのに緊張している様子など全く見せずに、例のアフロヘア+黄色いTシャツで、一人で胸張って堂々とバックステージを歩きまわっていました。あ、怪しい。しかし話しかけてみると一変して優しく穏やかに話してくれる。
「今日は(相手がボクサーなので)グラウンドで勝負したい。桜庭選手、菊田選手、高阪選手らとグラウンドをみっちり練習してきたので自信はある。しかし他のヘビーの選手達も見てみると化け物ばっかですねえ。グラウンド30秒ルールが不安です。」等々のコメントをくれました。ちなみに、相手のフレジャーにも話を聞いたら「パンチで倒す」と。これに優勝してプライドでカーやコールマンと戦いたいんだそうです(本当にそう言ったんです)。

試合はその両者のコメント通り、落合が果敢に組み付いていくのを、フレジャーが突き放してパンチや膝を狙って行く展開となりました。最初はフレジャーが落合のタックルを完全に切ってました。そして距離を取ってのフレジャーの強烈な右がぼこぼこ入りますが、落合はまったくひるまず突進を続けます。またフレジャーは組み付かれたところで、落合の例のアフロヘアを掴んでの(反則)膝蹴りを何度も出しました。そのたびに落合はエキサイトし、鼻血を流しながら気合いで突っ込んで行きます。、間近で見たけど、前進する落合はものすごい魅力的な表情をしてました。でもフレジャーはなかなか倒れない。時間が立つにつれて、やや逃げ気味フレジャーと、追う落合という図が目立ってきて、アメリカの観客も落合に肩入れし始めました。そして残り1分30秒くらいのところで、とうとう落合がフレジャーを高々と持ち上げてテイクダウン!ハーフを取った落合はグラウンドパンチの雨。本部席の隣で公式タイムを見ることのできた俺が「あと1分です!」と思わず日本語で教えてしまうと、すっかり興奮して落合を応援し出した本部席のタイムキーパーのおにいさんと記録係のおねいさんが俺に「もっと大声で彼に教えなさい!サムライファイト!」と叫びました(どーゆー世界じゃ)。そんなかんなで、結局フレジャーが下で守り切ってゴング。

判定は、前半の打撃のポイントが効いて3ー0で文句無くフレジャー。でも多くの観客は落合を支持してブーイング。髪を掴む反則を連発されて、最後は逃げられて興奮覚めやらない落合は金網によじ登ると「まだやれるぞー!」と絶叫。歓声のあがった観客席からは「ダイジョーブー!」「イチバーン!オチアイ!」との返答がありました。さらになにやら叫びながら花道を引き上げていった落合は、そのまま吠えて観客席に入っていって興奮したファン数人と握手。「殴られても俺はこれが普通なんだよ!」「あいつ全然よえーよ!」と(もちろん日本語で)叫びながらバックステージまで戻ると、スタンバイしていた江選手に「ぜってえ負けんなよ!」と叫んで控え室のトレーラーに消えて行きました。いやあ、試合に負けながらおいしいとこ全部もってっちゃいました。試合後しばらくしてから話をうかがうと、もう完全に静かで優しい落合選手に戻っていて「また負けちゃいましたわー(笑)。(客を盛り上げたのは)これが俺の仕事ですから。」等のコメントをくれました。素晴しすぎる。

第9試合 江宗勲(2R判定2ー1)ショーン・ゲーリー

さて、第9試合に登場するのは、これがKOTC二度目の挑戦となる江選手です。バックステージではじめてみたとき、日焼けした端整な顔で金髪、さらにお洒落な帽子をかぶっていたので魔裟斗かと思いました。話しかけてみるとすごく礼儀正しい若者。「グラウンドで勝負したい。前回の反省を踏まえて、金網に押しこまれないようにしたい」等と語ってくれました。セコンドには、一緒に日本入りした久松選手、そして阿部選手もいたと思う(確信無し)。

試合は江が組み付いて両刺し、金網に押し付ける。でもそこからなかなか倒せない。セコンドから「足掛けろ!」「大内(=大内刈り)だよ!やっただろ!」という声が飛ぶも仕掛けられず。そのうちブレイク。江のグローブの皮がはがれてしまい、新品と交換に。これが小さいので江が抗議するも、聞き入れらず試合再開。再開後も展開は変わらず、立ちでの膠着多し。江はテイクダウンを取っても、ゲーリーのクローズドカードの中で動けず。2Rも似たような展開。逆にゲーリーがテイクダウン取るも、あまり動きなし。ブーイングが増える中、終了寸前に江がハーフガードからのアームロックを極めかける。まずキムラの状態で肩を極めにいき、ゲーリーがいやがったところを肘を伸ばしてストレートアームバーに移行するも、そこでゴング。結局これが決定打になって僅差の判定をゲット。でもブーイングに囲まれた、ちょっとほろ苦いKOTC初勝利だったみたい。

久松先生は弟弟子の海外初勝利に嬉しそうな表情。「いやー、固かった。でもなんにしても勝ってくれてよかったですわ。敵地で判定取ったのは価値があります。でも、本当の江君はこんなもんじゃないですよ。相手もハート強かったですねー。」と饒舌に話してくれる。

江選手のほうは謙虚に反省しきり。「すみませんあんな試合して。自分が下手なんです。テイクダウンしてパスガードするつもりだったけど、全然練習通りできませんでした。判定は向こうが取ったと思った。最後のアームロックは、あと10秒あれば極まったと思うけれど、それも言い訳に過ぎません。本当にいろんな人にお世話になってやってきているので、もっと練習して結果を出したい」などなど。いや、勝ったのに全く嬉しそうじゃない。それだけ彼の目指している所は高いということでしょう。がんばれ!

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疲れた。後の試合は簡単に書きます。

メインイベント第一試合は、クリス・ブレナンがケヴィン・ホーガンから、2R十字で貫禄勝ち。バックに回りかけたブレナンに対し、ホーガンがサクラバアームロック狙い。でも足のからみを解いたブレナンが回って十字。ババルvsミーシャと似たようなパターンです。

第二試合は、一回戦から激闘を勝ち抜いてきたブラウサの「ハワイの殺し屋」クアイア・クピヘイアが、おなじみマイク・ボーグを、四つからボーグをひねり倒して、わき腹を負傷させて勝利。ちなみに落合に勝ったフレジャーはそのまま二回戦を棄権しました。

第三試合は、ミレニア柔術師範のハビー・バスケスが、ライアン・ボウの代役のフィリップ・ペレスに2R、三角で完全失神KO勝ち。俺の隣の記録員のおねいさんはもちろん大熱狂。

ということで、まさにKOTCいんちき取材記でした。でも一応頼まれた仕事はこなした(と思う)し、まわりの人間もほぼ同じノリで騒いでるんです。俺の隣にいたカメラマンも、俺に頼んでティトやカーと記念撮影したり、知り合いの試合でギャーギャー叫んだりしてました。KOTCは今回よりネバダ州コミッションの認可の下で行われるようになったとか、真面目な話もあるんだけど、まあいいでしょ。大会の総括としては、今回のKOTCのカードはいつになくしょぼかったです。UGでは「今回のヘビー級トーナメントなんて、ローカルタフマンコンテストとかわらんじゃないか」という意見が出てたけど、まあそんな感じでした。それでもいつものように満員だし、大部分の観客はそんなこと気にせず満足して帰っていたと思う。ということで、ビバ落合!江君の将来にも乾杯!




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