そして橋本は途方に暮れる 7/13 ZERO-ONE ZeppTokyo大会観戦記
■団体:ZERO-ONE
■日時:2001年7月12日
■会場:ZeppTokyo
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 交通の便が極めて悪い有明でクソ暑い平日に興行を打つという、「ひょっとして橋本は客に来ることを拒否してるのでは?」という無茶な邪推をしてしまうほど悪条件の重なったZERO-ONEの都内第三戦。今回ばかりは手前もさすがにキャンセルしようかと思ったのだが、DayTimeの仕事の都合で急遽観戦することに。

 試合開始三十分前に会場入りすると、客席はガラガラ。最終的にも六割程度の入りか。春先には両国、武道館といった1万人オーバーの会場を立て続けにフルハウスにした団体の興行としては寂しい限り。これは団体トップとしては性格がズボラすぎる橋本が悪いのか、それとも新日本の経済制裁が効いたのか。まぁどっちも正解だと思うが。
 場内の空気も「これから何かが始まる」という、三月の旗揚げ戦、四月の第二戦のときには感じられた期待感が、まったく漂ってない。グッズ売り場の販売員だけが威勢の良い声を張り上げるが、ここまでくるとそれすらもカラ元気に思えてきてしまう。

 十五分ほど押して、場内が暗転。
 お馴染みとなった橋本テーマ曲の前奏部分をアレンジした曲をSEに、リングアナによる対戦カード発表。このとき驚いたのが、全対戦カードを読み上げた直後、バッチリのタイミングで曲がクライマックスの部分にさしかかったこと。これはリハーサルを繰り返し、選手名のコールにかかる秒数と読み上げるタイミングをきっちりと計っているからこそ出来る芸当だろう。こういう細かいところを気を配れる限りはZERO-ONEという興行は支持したいと思うんだが。

▼第一試合
○星川尚浩(13分58秒 ジャーマンスープレックスホールド)日高郁人×
 (ZERO-ONE)                        (バトラーツ)

 一昔前に流行ったスケート/ハードコアブランドのZORLACの、モドキなのか本物なのかは遠目から確認できなかったが、まぁそういうデザインのTシャツとタイツにマスクを着用して入場する日高。マスクの下には昔懐かしいカブキロックスの氏神一番のような隈取メイクが施されていた。「そういえば氏神も筋金入りのプロレスファンだったよなぁ」などと記憶に留める必要のまったく無いことを思い出す。
 日高の試合を見るのは98年10月のバトラーツ両国大会以来だが、なるほど、こういうルックスになっていたとは知らなかった。日高といえば、これまで手前の中では「ダイエットに成功した長与千種」というイメージでしかなかったんだが、その考えは改める必要があると思った。まぁこれを読んでる読者貴兄の大半にとってはどうでもいい話だと思うが。

 で、星川と日高というと、かつてJYB(だっけ?)というリーグ戦だかトーナメントだかで接点があったような気もするんだが、当然ながら記憶には無い。もっとも星川は試合後に「あんなにいい選手になってるとは思わなかった」というコメントを残したようなので、そのリーグ戦だかトーナメントだかで絡んだことはあったようだが。

 実際、試合展開も星川が舌を巻いたのもよくわかるほど、日高のアグレッシブさが目立っていた。低空顔面ドロップキック、延髄斬り、ニールキック、サッカーボールキックといった足技を中心に、お互いにときおり飛び技を交えながらスムーズな流れを作っていく。最後はイナズマ気味に入った顔面ハイキックからのジャーマンで星川がピン。

 まぁ悪くはなかったんだけど、手放しで良かったと言えるほどの試合でもなかったというのが正直なところ。
 星川は格上か、もしくは同格の選手が相手だと光るが、格下の選手を相手にした場合は風格のようなものが足りないように思う。これは蹴りを主な武器とした選手の宿命なのだが、幸いにしていま所属している団体のトップは蹴りに風格を持たせることのできる貴重な選手の一人なので、参考にするといいんじゃないかな。

▼第二試合
×佐藤耕平(3分12秒 レフリーストップ)ショーン・マッコリー○
 (ZERO-ONE)               (LAジム)

 「成功するわけが無い」という下馬評をアッと驚くウルトラCで覆すということもなく、順当に旗揚げ第二戦で事実上消滅してしまったJPWAからZERO-ONEに戦場を移した佐藤。
 先のフリーハンド下北大会で星川のセコンドに着いたときには、星川が目の前で邪道と外道にいたぶられてるにも関わらず、その光景をただジィ〜ッと眺めてるだけという初心者ならではの失態を見せたりもしていたが、この試合では「真剣にプロレスを学んでいきたい」という意気込みは伝わってきた。DDTに上がってる橋本友彦といい、村上はいい選手を育てたもんだねぇ。

▼第三試合
×ザ・コブラ(8分25秒 弾丸エルボー〜片エビ固め)田中将斗○

 実弟の宿敵は同じ北海道を拠点としながらも市議会議員まで上り詰めたというのに、自分はというとプロレス界が誇る二大借金王の一人(もう一人は安田)として名を馳せてしまったジョージ高野ことザ・コブラが名曲「お自動サンバ」に乗って入場(嘘)。対する田中は全日初登場時と同様、コンプレのものではなく自分自身のテーマ曲で入場。

 このカードを耳にしたときはまったくもって意味不明のマッチメイクという感が拭えなかったが、よくよく考えてみれば今回のカードではコブラぐらいしか「空き」が無かったのもまた事実。いまのコブラのコンディションじゃ当たりの強さが持ち味の田中の良さを引き出せる訳が無いと思っていたが、結果はやっぱりその通り。それどころかグラウンドの展開で田中を圧倒してしまったんだから始末に追えない。

 コブラにはもっと懐の広いところを見せて欲しいもんだ。懐が寒いのはもうわかったから。

▼第四試合
×高岩竜一(7分38秒 No.37)トム・ハワード○
 (ZERO-ONE)            (UPW)

 六月の「真撃」にて衝撃のデビューを果たしたハワードが東都初見参。
 高岩の水平チョップ七連発を食らってもビクともせず、逆にパンチ一発でぶっ飛ばす。
 真っ向勝負ではラチがあかないと薄い……じゃねぇや少ない頭で考えた高岩、カニ挟みから裏アキレス腱固めという小技に活路を見出すが、ハワードはそれもほふく前進式エスケープで切りぬけ、おかえしとばかりにコマンドサンボのヴォルク・ハンも裸足で逃げ出すであろう強烈なレッグロックで高岩からエスケープ(ちなみにこのとき高岩もほふく前進)を奪う。恐ろしやグリーンベレー!

 そこからはグラウンドの攻防。野毛道場とグリーンベレーの寝技技術はどちらが上なのかと目を凝らしてみていたが、ここはほぼ互角。
 しかし、スタンドでの底力には差があり過ぎたのか、腰を落としてのブレーンバスター合戦ではあっさりと持ち上げられ、コーナーに追いつめてのバックエルボーや裏拳、トラースキックの前にタジタジとなる高岩。
 最後はニールキックで動きが止まったところを背負い投げ〜横入り式の鎌固め(No.37と命名された技)でタップアウト。

 ハワードは良いねぇ。デカイ、パワフル、アレな経歴の持ち主という三拍子揃った、昨今のマット界に登場しなくなって久しいガイジンらしいガイジン。

▼セミファイナル NWAインターコンチネンタルタッグ選手権
(チャンピオン)                          (挑戦者)
スティーブ・コリノ、×マイク・ラパダ(13分57秒 グランド卍固め)大谷晋二郎、石川雄規○
(NWA)                                (ZERO-ONE) (バトラーツ)

 石川の試合を見るのは98年10月のバトラーツ両国大会以来だから、かれこれ三年ぶりくらいになるだろうか。

 石川といえば、最近は何やら雑誌のインタビュー等……と口を濁す必要も無いか。紙プロの座談会だかなんだかで「ネットに書き込んでるバカ」という具合に我々ネット人種を否定しまくってくれたわけだが、それで石川という存在がようやく手前の視界にも入ってきた。

 が、それ以上に注目してたのが、やっとZERO-ONEで……というか凱旋帰国して以来、「自分の得意な仕事」をさせてもらえることになった大谷。結論から言えば、やっぱり大谷は大谷だった。それは悪い意味じゃなく、やっと手前の好きな大谷晋二郎が帰ってきてくれた、と。

 例えばコーナーに控えてるときには「チャンピオンを獲ろうぜ社長!」と石川に声をかけたり、得意の顔面ウォッシュにいくときには「オラ、クソ外人コラ!」と、もし現内閣の田中外務大臣が耳にしようものなら泡吹いて卒倒しかねないほどの米国凌辱アピール、勝った瞬間に夏の甲子園決勝戦で最後のバッターを三振にきってとったエース投手のように大袈裟に喜んでみせたりと、いちいち大谷らしさが爆発したもんだからたまらない。

 それは勿論、個性豊かな対戦相手の力量によるところが大きいのもまた事実だろう。タイトルマッチ認定宣言(ちなみにコレを読み上げた人はセリフを噛みまくりだった)の後、ベルト返還になかなか応じず、試合がはじまった後もとにかく無闇なオーバーアクション(シンガーで言えばジュリーや矢沢永吉に勝るとも劣らない)で会場全体の音量を上げていく。

 この勝負を一言で表現すれば「インドカレーみたいな名勝負」といったところか。味付けそのものは乱暴に思えるんだけど、実は各種スパイスが絶妙に配合されてて、計算された後味が作られていたというか。
 大谷がグッドワーカーなのは今更言うまでもないことだが、この外人コンビもいいスパイスを持った選手だった。先のハワードといい、こういうガイジンが見れるのなら、仮にNOAHと完全に切れたとしても、ZERO-ONEに足を運ぶ理由は充分にある。

 え、石川?
 そういえばいたなぁ。
 ていうか、せっかく視界に入ってたのに、またまたどっか行っちゃいましたわ。

▼メインイベント
○橋本真也、藤原喜明(11分49秒 レフリーストップ)臼田勝美、アレクサンダー大塚×
 (ZERO-ONE)(藤原組)                 (バトラーツ)

 3月2日の旗揚げ戦におけるメイン「橋本、永田vs三沢、秋山」。
 4月18日の第二戦におけるメイン「小川、村上vs三沢、力皇」。
 7月12日、第三戦におけるメイン「橋本、藤原vs臼田、アレク」……いや、まぁ深くは言うまい。いろいろ事情ってもんもあるわな。

 先発は藤原とアレク。ここで藤原は臼田を指差し「出てこい」とアピール。アレク、渋々引き下がって臼田にタッチ。第二次藤原組の師弟対決となったわけだが、何の感慨も沸かず。それだけ藤原の価値が落ちてるということなのだが。両チームともにタッチ。橋本とアレクの対決となるが、橋本もここで臼田を指差して「出てこい」アピール。
 しかし、さすがはマルコ・フアスを撃破し、イゴール・ボブチャンチンの打撃やヘンゾ・グレイシーの関節技にも心が折れなかったアレク。このイジメとも思える仕打ちにもヘソを曲げることなく、憮然としたふてぶてしい表情で臼田にタッチ。さすがはアレクである。手前だったら絶対イジけると思うけどな。まぁ手前を引き合いにして褒められたところで嬉しくも何とも無いとは思うが。

 一人で頑張る臼田を藤原と二人がかりでグッシャグシャにした橋本、アレクを指差して「オマエ、出てくるんだったら出てこいやーっ!」と挑発。自分で「引っ込め」とやっておいて出てこいやもないもんだが、とにかくアレクがリングイン。

 その後はヒドイもんだった。

 橋本の膝蹴りや重爆ミドルで倒されるアレク、藤原のワキ固めで悲鳴をあげるアレク、場外でいびられて額から流血するアレク、コーナーで控える臼田に露骨に「あちゃ〜」という表情を浮かべられるアレク、それでもまだ「こんなデビューして四ヶ月の新人だの焼肉ばっか食ってるデブだのとっくに隠居したジジイだのを当てるな!」とあまりに説得力の無いマイクアピールを繰り返すアレク……(最後だけ嘘)。

 さんざん橋本に蹴っぱくられた挙句に強烈なハイキックをモロに頭に食らい、ついに(とはいっても唐突な展開ではあったが)レフェリーストップ。
 ゴング後、マイクを掴んだ橋本、
「大塚ぁぁぁっ! オマエそんなもんかぁぁぁ!!」
 と一吠え。
 するとアレクは
「オレはこんなもんじゃないんだよ! わかって!!」
 とばかりに橋本につっかかる。が、既に足元がおぼつかないため、肉親に再会した中国残留孤児のように橋本によりかかってチョコンと頭突きを打つのが精一杯。すると橋本、
「オマエ、なんでそれを最初っからやらんのじゃぁぁぁ!」
 と大仁田語(語尾が「じゃ!」)でアレクを一喝。

 その刹那、一人の男がリングに雪崩れ込み、橋本に襲い掛かる。

 ――村上だ!

 平成のテロリストがZERO-ONEのリングでも狂い咲き。まさしく無差別攻撃。止めに入るセコンド陣の中にかつての教え子、佐藤耕平がいてもおかまいなしだ!
「橋本! つまんねぇカード組むんじゃねぇ!」
 と明日の対戦カード(vsザ・コブラ)への不満をぶつける(まさかコブラそのものよりも会場周辺を取り囲むであろう債権者の集団が怖いのか?……と心の中でつぶやく愚傾)。

 しかし、そこは百戦錬磨の破壊王・橋本真也。悠然とした態度で
「村上クン、のぼせあがるなよぉ! ちゃんと仕事をこなしてからモノを言え!!」
 とやり返す(でも村上って”仕事”ばっかりさせられてるように思うんだが……と心の中でつぶやく愚傾)。

 場内の「明日やってやれー」の声に「オレがやるまでもない」と、あくまで「段階」が存在することを強調(その「段階」というものをNOAHとの交渉でも守っていれば三沢にソッポを向かれることは無かったのに……と心の中でつぶやく愚傾)。

 そうして明日への流れを作りつつ、この日の興行が終了。

▼総括

 発表されたカードを見たときにはどうなることかと思った今大会だったが、終わってみれば”そこそこ”満足できた。が、この”そこそこ”というやつが曲者だったりもする。
 まぁ状況を考えれば致し方ないが、しかし過去二回の興行は”そこそこ”なんてものではなく”めっちゃくちゃ”満足できたものであることを考えると、やはり寂しいものがある。

 で、面白いのが、今回の興行には「猪木」の匂いがまったくしなかったこと。これは小川直也がいなかったからというだけの理由でもあるまい。もっと別の理由があるのだろうが、詳しい裏事情は知らないのでここでは省く。

 けど、それによって「ZERO-ONE」という団体のなかで「橋本真也」という成分の純度は極めて高くなったことは間違いないし、触れないわけにはいかない。三沢や小川といった「異分子」がいないぶん、橋本というプロレスラーそのものの面白さが前面に出るようになったのが今回の興行の最大の特徴ではないだろうか。

 とはいえ、それが橋本のやりたいことなのかといわれれば、答えは「NO」だろう。
 やっぱり橋本は三沢とシングルで戦いたいのだろうし、小川との決着もZERO-ONEでつけたいのだろう。そこに藤田和之や鈴木みのる、また水面下で噂として流れる某大物U系選手がこのムーブメントに加わったところを、敬愛するアントニオ猪木や、古巣・新日本に見せることで「どうだ!」と胸を張りたいというのが橋本の偽らざる本音のはず。

 その夢が遠く離れたいま、途方にくれながら、それでも橋本は走り続ける。その方角が正しいのかどうかもわからずに。

 そこがまた、武藤のような天才でもなく、蝶野のようなスマートでもない橋本の、最大の魅力であったりもするのだ。




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