スタイルの確立と新展開---貪欲な妖怪「PRIDE」
■団体:PRIDE14
■日時:2001年5月27日
■会場:横浜アリーナ
■書き手:グリフォン (ex:Gryphon’s MMA HP

PRIDEは、着実に自らのスタイルを確立している。
そしてその上で、新しい要素を導入し続けている。片方なら怖くない、
その両方があるからPRIDEという妖怪は、今格闘技界を跋扈しているのだ。

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横浜アリーナは2度目だけど、見やすいという点では非常に優れているし、規模もまあ格闘技のビッグマッチ用としては大きからず小さからずではないか。

会場は、ほんの少し空席も見られたが、誤差の範囲で「超満員」といっても問題ない入り。今回は桜庭抜きで東京以外の興行とあって不安もあったが、このぶんなら本当に勢いはほんものだろう。

オープニング・セレモニーはいつも通り贅を尽くしたものだった。
皆あんまり褒めてないから俺が褒めるけど(笑)、13からはじまった「鼓」の演奏は非常に素晴らしいと思う。思い起こせばPRIDEは、いまだに腹が立ってくるようなヘタレのコンサートや踊りをセレモニーとしていたが、やはり段々と経験と工夫を積んで、洗練されたものになっている。
また米国・ブラジルでのPPVを考えれば、ベタでもセレモニー自体はオリエンタルを強調したものであってもいいと思う。そういう点では、今回演奏者が洋装で、前回の「漢字」を使った演出がなかったのは残念だった。
また、風船に顔を映す演出も合格点だろう。あのDJ自体はあまり気に入らず、キャラクター化してほしくもないのだが、そこまで好みを言ってもしょうがない。
演出は、UWF・リングスのようなスポットライトの光だけで事足りた時代はもう過ぎたのだろう。これからはモニターも含めた「映像」をいかに使うかだ。もちろんコストの問題もあるが、ここをおろそかにしたら絶対にそのイベントは浮上しまい。

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 【ニーノvsオリベイラ】
ニーノが「エルビス好き」というキャラをここまで前面に押し出すとは思わなかった。DSEの演出か自分のアイデアかはわからないが、掴みとしてはいい。対するオリベイラは例の火傷事故に引っ掛けた「火消し」。これはDSEの演出だろう。やや悪乗りだが、これだってないよりはいい。
試合自体は、ニーノが典型的な柔術強豪の闘いを見せた。タックルも打撃も巧いとは思えないが、不格好ながらも倒してからは、落ちついてパスガ−ドを狙ってくる。オリベイラもきちんと防御しているのだが、それを上回るパスの技術で最後は腕十字。
ニーノは、欠点を克服していくのか、それともこのままの特性で戦っていくのか。もちろ前者ならトップ戦線だが、このままでも手の合う選手とやっていけば人気が出るかもしれない。例えば2-3戦後、抜擢して柔術キラーたる桜庭との技術戦が見てみたいとも思う。
オリベイラは、……火傷のこともあるしこのままお払い箱にもできまい。
前座の「ミドル級番人」として、適当な相手がいない選手にぶつけて行けばいいだろう。そこで相手が勝てばそれなりに浮上するし、オリベイラに負ければ元よりPRIDEで上にはいけない。

 【松井vsペレ】
大番狂わせだった。DSEもペレとシウバをセットで「シュートボクセ軍団」として売りたかったはずだが。しかし松井はあれだけ負け続けたのに、着実に人気は上がっていた。会場も声援は凄かったし、ここでの浮上はいいのかもね。しかしあらためて見ると松井は非常に絞った体だ。根性も守りの力もある。
・・・しかし、松井はやっぱり負けてほしいのだよ。
これは在るべき所にあるべきものがないと落ちつかない、という感覚。新聞の野球欄をみたら、阪神は6位のとこにないと寂しいでしょ?それと同じだよ(暴言)

 【メッツアーvsリデル】
トータルの技術はメッツアーのほうが上だと思うんだけどなー。
でもパンチ一発で与えるダメージ量が違ってたね。1R後半で打ったヒザやフックで、メッツアーはおそらく既に意識が飛んでいた。ひょっとしてメッツアー、意識を失いやすくなっているのかも?

 【グッドリッジvsオーフレイム】
ガードで、下から腕を取ろうとするオーフレイムの、総合格闘家としての戦略・意識はいい。もうキック選手として見る必要はない。しかしやっぱり、並外れた怪力はそれだけで関節技への防御になるんだろう。とくに世界一の豪腕に対しては。
それと同時に、関節技は失敗した時。そこから相手に何発か殴られる覚悟がPRIDEルールでは要る。ペレもそうだったが耐えた。
「あきらめが早い」というのは結構評価を落とすし、事実オーフレイムはだいぶ評価を落とした。ここからまき返すのは大変だなあ。
しかしグッドリッジ、勝利の直後はコールマンと抱き合ってるんだか喧嘩してるんだかわからんかった(笑)

 【ヒーリングvsヴィクトー】
内容は悪くないんだけどね……ヴィトーはもう、ミドルで名のあるやつ(メッツアー、リデル、ランデルマン、ヘンダーソン)とやったら?今のままじゃファンの支持率が落ちていくよね。ヒーリングも知名度以上の実力によってトップどころ(コールマンなど)が試合をしたがらないそうだが、もう一人くらい大物を食って欲しい。

 【小路−ヘンダーソン】
ヘンダーソンは扱いに困る。これからトップ戦線なのに「都合でしばらく休む」だあ?もったいねえなあ。この人ガブるのが巧い。ヘンダーソンはグレコのせいか、自分からタックルはしないが結局倒しっことなると勝っちゃうんだなあ。小路はこれからどうするんだろう。練習不足ってこともないと思うが。


●桜庭復帰アピールは、本人の話以上に映像演出が興味深かった。
リングの回り(もしくは壁)にスクリーンを張り、そこに名場面を映写機で投影して流すというのは、(私はよく知らないけど)、かなり簡単というかコスト安くても可能なんじゃない。例えばパンクラスやリングスのみならず、インディなんかも、こういうところはどんどんマネしたらいいと思う。

●猪木人気は…どうだろう、彼がPRIDEをヤオガチミックスにしてしまう力はもうないんじゃないかな?今はたんなる「微妙に外れた名物オヤジ」として若者に消費されている気がする。この位相の差は、ナンシー関や夏目房之介の領分かもしれない。


 【シウバvs大山】
これはもう、興行論の世界だわな。シウバは桜庭との再戦までム的のヒールであるべきだし、大山は期待の若手でなければならなかった。超大物と”デビュー戦”をやらせて、知名度は上がるし負けてもしゃーないですむという谷津・謙吾、秋山らに使った手法だったんだな、後から見れば(でも結果論ではあるけどね、大山が勝つ事だってそりゃあったろうし)。
しかし技術論でいえば、背中を向けようが何しようが、打撃から距離を取るにはアリなんじゃねーの?ルールで後頭部は殴れないんだし、第一ティトはそれでまんまとシウバのラッシュを切って反撃したぜ。
大山には2回目の、こんどは正統的なデビューをやらせてほしい。例えばオリベイラなんかでも。でもほんとに、投げや寝技もやってね(笑)

 【ボブチャンチンvsアイブル】
だからボブのテーマは「Red Spectacles」じゃいボケェ。試合はともかくアイブルは、テーマ曲含めもうこの路線でよし(笑)。6試合契約だというし、次は、佐竹とかシカティックいるでしょ。グラウンドできないなら、もう相手をその路線で選べばいいよ。
でも、上を取ったTKやヘンダーソンをセオリー無視でフッ飛ばしたあの「アイブル逃げ」は通用しなかったのかな?

 【藤田vs高山】
「プロレスラーvsプロレスラー」による懸念というのは、専門誌ではいろいろオブラートに包んだ形での懸念となっていたが、ようするに「ガチじゃなくなるんじゃないの?」ということに尽きるだろう。
そして、その心配は全く杞憂に終ったといっていいだろう(もちろん私の選択眼のレベルは低いのでダマされてるだけかもしれないが)。
高山は入場のとき、アンドレ以来の巨人レスラー伝統「トップロープ跨ぎ」を観客にアピールしつつやってのけた。
この動きは、故G馬場さんに「あれはいい、お客が喜ぶことはどんどんやれ」と褒められたムーブであるという。高山なりに考えた、「PRIDEの中のプロレス」とは例えばこういうことを積み重ねた上で、ただ勝つだけの格闘家以上の楽しみを与える、ということなのだろう。
試合は序盤、藤田のタックルを巧く切ったところや、組み合いでがっちり相手の動きを止めてヒザを叩きこんだところなどは十分評価できるだろう。対する藤田も、ヒクソン・船木のようなはたきこんで高山を倒すシーンや、アマレス流4の字による固定など、タックルだけではないアマレス技術を存分に発揮していたと思う。グラウンド・ヒザの解禁は今後の藤田エース路線にはかなり有効に働くのではないか。

とはいえ、殴り合いなどはどっちもボクシングがヘタクソだということを証明していた。藤田も、そもそも極めの技術があまりにも粗いがゆえの膝の多用だし、高山も何人かが指摘していたように、本格的首相撲なら左右への揺さぶりや、下げてから顔にぶちこむ膝を放てたはずだ。
そういう点で、どちらもプロレスの水に慣れたゆえの技術の低さは確実にあった。

しかしもうひとつ言えるのは、その一部技術の欠落が「結果的に」白熱の好勝負を生んだということだろう。高山は急所を膝で狙えないからこそ、藤田が耐えることができる腹に、何発もダイナミックな膝蹴りをぶちこんだのだし、藤田は極めができないからこそ、高山にグラウンドであっさり止めを刺せなかったのではないか。

ボクシングも、あそこには打撃シロウトならではの迫力というものがあったのは間違いない。米西部には、いまだに素人参加のタフマン・コンテストが存在すっるという、そこにつくファンは「防御やクリンチしあっているプロの試合より、こっちのほうが迫力があるんだ」ということらしい。
プロレスラー同士でのVTがもし新味があるとしたら、ここにあるのではないか。(純)プロレスラーに染みついた動きは、もしガチであったとしても、相手の急所をピンポイントで狙うというより、手当たり次第ナタをぶつけるように強引な攻撃をしていくことになるのではないか?
「リアルファイトでプロレスをする」という矛盾の答えの、解(のあくまでもひとつ)がここにあったと思う。そしてこの解は、例えばアメプロの「隠れた実力者」をも視界に入れることができるのではないか…思わず、そんなところまで空想を広げてしまった。

それは純粋日本人の癖に、「アパッチタワー」なる通称で無理矢理スケールを世界的に広げた高山のせいだったのかもしれない(笑)。




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