NOAHの未来形 NOAH 5/25 横浜文化体育館大会観戦記
■団体:NOAH
■日時:2001年5月25日
■会場:横浜文化体育館
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 当初発表されたカードのあまりのショボさに「NOAHは横浜に恨みでもあるのか?」という訳の分からない邪推までしてしまった今回の興行だが、伸び悩む前売りを見てさすがにNOAH自身もヤバイと思ったのか、ここにきて急遽カードを大幅に変更。さらには大森に「GHC挑戦テストマッチ」という課題を与えたりと四苦八苦。

 が、直前にジタバタしただけで客席が埋まるほど横浜文体は甘くはない。結局場内は六割程度、多く見積もっても七割程度の入り。NOAHにしては寂しい限りの入りだった。

▼第一試合 20分一本勝負
○橋誠(9分45秒 ダイビングヘッドバッド〜片エビ固め)小林健太×

▼第二試合 30分一本勝負
ラッシャー木村、百田光雄、×川畑輝鎮
    (9分47秒 サムソンクラッチ〜エビ固め)
       永源遥、菊地毅○、金丸義信

 定時退社したにも関わらず、上記二試合には間に合わなかった。やっぱり平日の興行は七時開始がいいなぁ。

▼休憩

 手前が文体に到着したときはちょうどこの時間。グッズ売り場を覗いてみると「女性用チビTシャツ」なる新製品(?)があった。結構かわいいデザインだぞ。NOAHグッズにしては、という註釈もつくけど。

▼第三試合 30分一本勝負
小川良成、×杉浦貴(17分2秒 デスバレーボム〜片エビ固め)池田大輔○、丸藤正道

 入場時、ゲートの前で二人揃ってポージングを決めるヨシナリと杉浦。なかなか絵になってる。

 ゴング後、杉浦と丸藤がグラウンドでじっくりとやりあう。うむ、NOAHのジュニアヘビー級でこういう攻防が見れるようになりましたか。全日本の頃は考えられなかったことだよコレ。いや別に手前は特にグラウンドレスリングが好きなわけじゃないんだけど。ただ、こういうちょっとした変化だって「NOAHが進化した」ことの裏づけにはなると言いたいわけで。が、そこから大きな動きもなく、10分が経過。

 終盤になって、ようやく試合の展開が流れはじめる。
 丸藤とヨシナリの丸め込み合戦や、杉浦とダイスケの「フロントスープレックスホイップ(杉)→すぐ立ち上がって大ちゃんボンバー(ダ)→即座に立ち上がってフロントスープレックスホイップ(杉)」という一連のシークエンスなど、次々に波が襲ってくるようなハイスパートが続き、最後は珍しく終盤までとっておいたイナズマ(このとき丸藤も一緒にポーズをとってた)から、二発めの大ちゃんボンバー、「死になさい!」のデスバレーボムでダイスケが杉浦からピン。

 と、まぁ最後のほうは四人がそれぞれの持ち味を出せた展開だったように思えるんだけど、改めてこの試合を振り返ってみると、頭に浮かんでくるのは丸藤の超低空顔面ドロップキックだったり、杉浦の投げっぱなしジャーマンだったりする。それだけ二人のムーブが見映えの良いものだということなんだけど、ベテラン二人がそれに食われちゃっていいものなんだろうか。

 特にヨシナリは、杉浦への指示も的確だし、丸藤との絡みでも明らかに主導権を握っていただけに勿体無い。この人もそろそろ「めっちゃウマイんだけど地味ぃ」という位置から脱却して欲しいものだ。

▼第四試合 45分一本勝負
田上明、×本田多聞(4分58秒 ベイダーアタック〜体固め)ベイダー○、スコーピオ

 今日のスコーピオはいつもより踊りに気合が入ってるように見えた……というか明らかにいつもよりノッてたぞ。
 やはりゲートを出たらすぐ花道のディファとは違って「ステージ」のある横浜文体だったからだろうか。「ヤッパリフロアガヒロイトオドリヤスイネー」とか思ってたりなんかして。まぁ手前は別にスコーピオが踊ってるときの心情まで探りたくなるほど細かい性格をしてるわけでもスコーピオLOVEな人でもないので意味も無い推測はこの辺りにしておくが。

 ゴング前に外人コンビが急襲。ベイダーは田上に向かって腕パンチをブンブン当てる。田上もジャンピングハイキックでやり返すも、ベイダーはラリアット一発で形勢逆転。どうやらベイダーさん、遠慮っていう言葉をまったく知らないみたいですな。GHC王座の第一コンテンダーだった田上もタジタジだったし。「おいおい俺はチャンピオンと好勝負を演じたばっかだぞ」という田上の心の叫びが聞こえたような気すらした。

 慌しく始まった試合は、そのままのペースで慌しく進む。
 スコーピオの旋回式スプラッシュ、多聞のデッドエンド、田上のノド輪、ベイダーのショートレンジラリアットなど、序盤から大技が炸裂しまくる。多聞が攻め込まれれば田上が反撃、スコーピオが攻撃されるとベイダーが大暴れだ。なかなかに気分が高揚してくる展開だな。おお、ベイダーアタックが多聞にHIT! HIT!(←最近マイブーム倉持アナ調) 第四試合だというのにたいしたハイスパートじゃないか。レフェリーがカウントを数える。さぁ田上よ早くカットに入れ。早く入れって。入れってば。あれ? カウント3つ数えちゃったぞ?? てか、もう終わりっすか???

 ――と、まぁ最後はあっさりしてたんだけど、なんというか四人の豪傑が細かいことを気にせずに、例えば魚のウロコとかも取らずにそのまま、調味料とかも目分量でドバッとブチ込んだような、大味なんだけど食べ応えがあるというか、そういう試合だったかな。最初に予想してたよりも全然面白かった。

▼第五試合 60分一本勝負
三沢光晴、○佐野巧真(12分43秒 投げ捨てパワーボム〜体固め)大森隆男、浅子覚×

 全日本の天才として順風満帆にエリート街道を歩んできた三沢と、新日本の天才だったはずがSにいったUにいったりホイラーにボコられたり本間にアレされたりと、とてもじゃないけど順風満帆とは言えない茨の道を歩んできた佐野が初タッグ(トリオのときは別)。

 さて、この試合のもう一つの見所は本稿の冒頭にも書いた「大森のテストマッチ」ということ。
「勝ち負けは関係ない。25日、意気込みが感じられれば(次期挑戦者の)第1候補になれる」
 という三沢の言葉通り、大森がソレを見せつけることができればGHC挑戦への道も開けてくる。

 が、結論から言うと、この日の大森はダメ。
 気合そのものは入っていたのかもしれないが、それが形になって届いてない。三沢にも。観客にも。気合を入れるだけならバカでもできる。しかし、バカにGHCの挑戦者は務まらない。
 確かに三沢とのエルボーの打ち合いなんかでそこそこに客を沸かせたりはしてたが、そんなことは普段の試合でもやれてること。我々が見たかったのはそこからのプラスアルファだ。

 てか、もしこれで次期シリーズに大森との防衛戦なんて組んだら怒るぞ三沢よ。

 他に思いついた点をいくつか。

 やはり三沢と佐野が組むと安定度は高い。ヨシナリとのコンビが飽きられつつある今、WAVEはそろそろタッグ再編成してもいいんじゃないかな。そのヨシナリだって杉浦とのコンビなんかこれから面白くなりそうだし。

 よくよく考えてみれば、大森と三沢の絡みっていうのはNOAHのなかでも鮮度が高いほうなんじゃないかな。二人のシングルマッチなんて記憶に無いし。少なくともノーフィアーを結成してからは無いはず。全日本時代から大森の目は常に秋山と小橋を捉えていたんだけど、現在はこの二人の姿が視界に入りにくい状態。ならば、ということで視線が三沢に向いたり海外に向いたりするのはわかるんだが、まずは「高山に頼らない自分」を作り上げることが始めるべきだろう。

 この試合の浅子は面白かった。三沢に向かって「オラ社長コラァッ!」と叫びながらストンピングを打つという、サラリーマンなら誰もが一度はやりたい行為を思いっきりやってた(が、あんのじょう怒った三沢にエルボーをバコバコ入れられた)。レスラーとしての技量はこれ以上ないほど伸び悩んでるけど、少なくとも「笑い」はとれてる。笑わてるのか笑わてるのかハッキリしないのが難点だけど。

▼第六試合 30分一本勝負
×志賀賢太郎(13分25秒 デスブランド〜片エビ固め)斎藤彰俊○

 マッチメークミス。二人のやりたいことはよくわかった。が、それがお互いにズレすぎてた。

 アキトシは「倒されても倒されても向かってくるシガケン」というシチュエーションを作りたかったのだろうし、シガケンは「自分の打撃が通用しないパワフルアキトシを一瞬のスキをついた関節技で追い込む」というのがやりたかったはず。

 相手のやりたいことに歩み寄りを見せたのはアキトシのほうだったように思う。しかし、シガケンの膝攻めが中途半端なため試合のピントがあってこない。
 そもそも、低空ドロップキックとか膝十字で攻め込んだ後で対角線コーナーに思いっきり振ってどうする? しかも二回も。あれじゃぁ「自分の膝攻撃は食らった直後にロープへ思いっきり走れるほど効かないんですよー」と言ってるようなもんだろう。

 最後はデスブランドという、ブレンバスターの体勢で頭から前に落とす、スタイナー・スクリュー・ドライバーのような技でアキトシがピン。それにしても、アキトシは「頭から落とす技」を使わない人だと思ってたんだがなぁ。

▼セミファイナル 30分一本勝負
×泉田純(19分21秒 片エビ固め)力皇猛○

 このカードが決まったとき、週プロに掲載された両者のコメント。

力皇「秋山、田上にくっついてる金魚の糞は誰だ? 言っておくけど、アイツの下だとは思ってないから。相撲だって、アイツは幕下だったんだから」
泉田「それなら追い越してやるよ。殺せば文句ないだろう?」

 という具合に、なにやら試合前から随分とアレな精神状態になっていたようだが(特に泉田のほう)、二人ともそのアレな部分を試合に映し出せなかったのが残念でならない。

 いや、序盤の張り手&タックル合戦とかは見応えがあったよ。終盤の技のラリーも凄かった。ラリアットを食らっても食らってもカウント2で返した泉田の意地も良かった。
 でも、この試合が「沸点」を越えたかというと、答えは「NO」だ。いまのリキなら、瞬間的に「熱い」て思わせるんじゃなくて、継続的に「暑い」と感じさせる試合にならなきゃ嘘だと思うわけだ。自分で試合を組み立てられない代わりに、それだけの熱量を持っているのが力皇猛という選手じゃないかと思うわけだ。
 そのリキが相手だったにも関わらず、途中の中だるみも含めて「暑い」と感じさせてくれなかった泉田は責められても仕方が無いんじゃないかな。「先輩」の役目をまっとうできなかったのだから。五千人クラスの会場でセミを務めるのが初めてだったから、という情状酌量の余地は無いでもないが。

 ただ、3カウント取られた後、右肩を押さえながらリキの元へ歩み寄り、悔しいことこの上ないような表情で睨みつけたときの顔つきには何とも言えないせつなさがあって良かった。あの表情セルは泉田の……というかNOAHの歴史の中でも一、二を争う説得力があったように思う。それなんだよ、それ。それを試合中にもっと見せて欲しかったんだよなぁ。

▼メインイベント 30分一本勝負
○秋山準(17分34秒 フロントネックロック)森嶋猛×

 突然の(まぁ予想できてはいたんだけど)「新日本参戦表明」で、その存在が急激にクローズアップされた秋山に、旭川で「オレとメインでやる勇気があるのか」と挑発された若手のホープ、森嶋が挑んだ試合。

 最初に森嶋が入場。ロングコートのフードをはずすと、そこには頭をツルッツルに丸め込んだ姿があった。
 いや、それにしてもこのスキンヘッドは色んな意味で衝撃的だった。何せ、剃り跡が青々としてたんだもん。これはもうバックステージでは永源あたりに「マルコメくん」という非常にカワイイ呼ばれ方をしているのはまず間違いない。まぁ間違ってても別に構わないんだが。

 秋山が入場。もはや、その姿が放つオーラは神々しささえ感じる。いや、オーバーじゃなしに。小川直也と絡んだことで評価と存在感が拡大に上がった三沢と肩を並べるためにブチ上げた「永田さん、天龍さんと戦いたい」というアドバルーンは、確実に秋山を天高くまで持ち上げている。

 試合は完全に秋山の横綱相撲。全日本時代の先輩、川田利明を彷彿とさせる……というか明らかにそれ以上にエグい角度で締め上げるストレッチ技や、チョップや張り手の受け流し方。適度に森嶋を休ませつつ、それでいて間が伸びることも無い。
 森嶋もジャンボ鶴田ばりの拷問コブラや奈落式アメーズインパクト(=逆ノド輪落とし……でも本来なら顔面をマットに打ち付けるこの技を奈落式でやってもなぁ。秋山、あんのじょう膝から落下してたし)といった新技を見せるも、秋山を「焦らせる」までにも至らない。

 一通り技を受け、森嶋のセコンドについたリキのちょっかいにもつきあった後、WアームDDT→ダイビングエルボーパット→リストクラッチ式エクスプロイダー→ナガタロックII→フロントネックロックと畳み掛けてタップアウト。

 さて、「事件」はここで起こった。

 ゴング後、流れ落ちるように場外に出たまま一人で起き上がることのできない森嶋のあだ討ちとばかりに、リキが秋山につっかかる。秋山も応戦しようとするが、それより早くリキを蹴り飛ばす男。

 ――アキトシだ。今シリーズ、リキと森嶋を牽引してきたが、秋山に「アイツらと組むよりもオレと組んだらどうだ?」と言われ続けたアキトシが、ついに秋山の誘いに乗ったわけだ。

 そうなると、収まりが付かないのはリキのほう。相棒が目の前でやられまくり、リーダーとして信頼してきたアキトシに裏切られたんだからそれも無理ない話だが、必至に制止するセコンド陣を振り払って秋山に突っかかるその姿たるや、まるで顔面近くにデッドボールを食らったときのブーマー@元阪急やデービス@元近鉄の暴れっぷりを彷彿とさせたほどだった。例えが古くて申し訳ないが。

 ようやくリング外へ連れ出すことに成功した阪急ナイン……じゃなくてNOAHの若手セコンド陣に、秋山は「とっとと連れて帰れコラ!」と檄を飛ばす。おそらく若手セコンド陣は「ていうかリキが暴れっから悪ぃんじゃんよー」と愚痴の一つもこぼしたくなったことだろうが、そんなことはおかまいなしに新たな同志となるアキトシと握手を交わす秋山。

 また一つ、NOAHに「アングル」が導入された瞬間だった。

▼総括

 当初はどうなることかと思われた今大会。セミまでの試合の殆どが消化不良の内容だったのも確かだが、終わってみれば「二、三年後のNOAHの姿」というものを見せられたという点で、いい興行だったと言えるんじゃないかな。つまり、今回の興行は来るべき「秋山時代」へのテストケースだったように思うわけだ。

 で、それはやはり今現在の、2001年の時点でのNOAHとは違うものになるだろうと考える。今回のように秋山が下の挑戦を受け、そして最後に大きなサプライズを用意する、というものになっているのかもしれないし、あるいはまた違った形かもしれない。
 ただ、確実に言えるのは、いつの日か秋山は三沢から「エース」を禅譲されるのだろうし、そのときまで、秋山の苦悩と葛藤、「プロレス」に対する思考の渦巻きはグルグルと回り続けるのだろう、ということ。そして、手前はそれをドキドキワクワク超ニコニコたまにしかめっ面しながら追っかけていくのだろうということ。

 やっぱり、NOAHファンであるということは、凄く楽しく、そして嬉しいことなのだと確信した。




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