21世紀、最初で最後の川崎伝説 FMW 5/5川崎球場大会観戦記
■団体:FMW
■日時:2001年5月5日
■会場:川崎球場
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 川崎市民にとって川崎球場というのは、いわば大阪市民にとっての通天閣のような「市民の象徴」というようなものではまったくなく、多くの市民にとっては「え? まだあったの?」というようなものでしかない。
 今回、実に久しぶりに川崎球場に足を運んで驚いた。内野席と外野席が全て取り壊されて、本当にグラウンドだけしか残ってないのだ。かつて大洋ホエールズやロッテオリオンズが本拠地としていた球場が、もはや「人工芝のある草野球場」でしかないのである。

 交通の便も決して良好とは言えず、また客席に段差を作れないこの会場は、ハッキリ言ってプロレス興行向きではない。1万人クラスの会場なら、もっと利便性の高いところは他にいくらでもある。
 それでもなお、FMWが春の大一番として「川崎球場」を選んだというのは、言ってみれば一つのケジメというか、過去との決別というか、そういう意図があったのではないか。そう、GWに一万人の観客を集めるのが目的なのではなく、あくまで「あの川崎球場で興行を打つ」ことが大事なのであって。

 どうしてもはずせないヤボ用のため、会場に着いたのは試合開始を30分ほど過ぎた午後六時半。ちょうど場内からゴングの音色と谷本知美の歌声が聞こえてきた。第三試合が終了したということか。PPVがあるから開始時間は遅れないだろうとは思っていたが、極めて正確な時間に第一試合が始まったらしい。ちなみに当日券はほぼ完売。
 聞くところによると、これまでの川崎大会と違い、今回は招待券のバラ蒔きを極端に抑えたという。かつては新聞屋と契約したら洗剤やビール券と一緒にFMW川崎球場大会の招待券が貰えたりもしたのだが、この日に限っては基本的に実券で勝負に出たとのことだ。まぁダフ屋の兄ちゃんから聞いた話だけに、信憑性があるようで無いようで判断に苦しむところだが。

 そういうわけなので、非常に申し訳ないが第一試合から第三試合は結果だけ。
 個人的に、飛田がFMWでも自分のスタイルを貫けたのか非常に興味があっただけに試合を観れなかったのは残念でならない。

 第1試合 タッグマッチ(30分1本勝負)
 ○リッキー・フジ、牧田理(4分59秒 片エビ固め)森田友和×、佐々木義人

 第2試合 グローブマッチ(3分5R)
 ○新宿鮫(2R 1分17秒 片エビ固め)タレック・パスカ×

 第3試合 8人タッグマッチ(30分1本勝負)
 工藤あづさ、×山崎直彦、荒井薫子、おそろしゴリラ
     (5分18秒 片エビ固め)
        大矢剛功、フライングキッド市原、谷本知美○、サバイバル飛田

 第4試合 IWA世界ヘビー級選手権試合(60分1本勝負)
 ○リッキー・バンデラ(7分59秒 片エビ固め)チョコボール向井×

 席を探すのに一苦労で、実はこの試合もあまり観れてないんだけど……。
 正直、トミー蘭のレフェリング以外、まったく記憶に残ってない。チョコボールは見るたびに良くなってきてはいるが、まだまだレスラーとしてどうこう語れるレベルには無い。ただ、本業だけで充分食っていけるクラスであるにも関わらず、それでもなおプロレスに対する向上心が見て取れるのは好感が持てる。

 まぁAVファンとしては本業のほうもおろそかにして欲しくはないが。


 第5試合 女子タッグマッチ(30分1本勝負)
 井上京子、×元川恵美(7分51秒 浜ちゃんカッター〜片エビ固め)浜田文子○、AKINO

 AKINOは随分前に全女の興行で観たことがあり、デビューしたばっかりだがセンスの良さを感じさせてくれたことを覚えてる。その後、いい仕事のできる選手になったということは聞いていたが、実際に見るのはこの日が久しぶり。浜文に関しては生で観るのはこの日が初めてだ。

 試合の主な展開はアルシ勢の飛び技を元川が受け、HotTag成立後にキャリアも体格も頭一つ抜けている京子がパワーで二人をぶっ飛ばすというもの。途中、元川&京子はダブルのロメロスペシャルや、元川のファイヤーバードスプラッシュなどでアルシ勢を追い込むも、タッグ暦の長さでペースを取り戻したアルシ勢が終盤にたたみかけ、浜ちゃんカッターでピン。

 印象に残ったのはアルシ勢のハツラツさかな。AKINOは評判通りいい選手だし、浜文にしても言われてるほど悪くはなかった。レスラーにとって(女子は特に)ルックスの良さも技術のうちだからな。


 ここで休憩。
 マスコットガールが登場して、川田利明ばりの棒読みでグッズインフォーメーションをしてました。


 第6試合 WEWハードコア選手権試合(60分1本勝負)
 (王者)                      (挑戦者)
 ×マンモス佐々木(7分57秒 パワーボム〜エビ固め)金村キンタロー○

 ここのところアイジャに参戦したりW★ING同窓会を開いたりDDTにも登場したりと大忙しな金村が、勝ってベルトを巻くのは当然予想の範疇なんだけど、それにしても内容が良くない。
 佐々木のイス攻撃、金村の机攻撃(自爆含む)という、現時点でその道のトップを行く者にしては、この試合における両者の「武器」の使い方は単調すぎた。ありふれた言い方ではあるが、「点が線にならない」というか。

 この二人なら、もっと凄い試合ができるはず。また、ブッカーもそれを期待していたからこそ、休憩明けにこのカードを持ってきたのだろうし。


 第7試合 WEWタッグ選手権試合(60分1本勝負)
 ○GOEMON、怨霊(11分38秒 トペ・アトミコ〜片エビ固め)スペル・クレイジー、スーパー・ノバ×

 青コーナーから怨霊が入場したとき、手前からみてちょうど一列前に座っていた女性二人組が「きゃー! 怨霊様ーっ! きゃーきゃーカッコイイ!」と随喜の声を上げていた。「怨霊」に「様」をつけるのが果たして正しい日本語なのかどうかはともかく、際立ったキャラと堅実な仕事ぶりが、かかる女性ファンの声援を生み出したのだろう。もともといい選手だしな。

 さて、この試合で手前が注目していたのは初見となるスペル・クレイジーなんだけど、終わって印象に残ってるのはそのパートナー、スーパー・ノバだった。
 なんせこのノバ、技を繰り出すたびに「イエーイ!」「アダダダダーッ!」、得意技に行く前に「カメラ!」と、シャッターチャンスであることをアピール。技を受ければ「オダッオダイダイダイダーッ!」と、いちいち意味不明な雄叫びを連発。試合巧者の他三人を完全に食っていた。
 思えばFMWというのは、こういう意味不明なガイジンレスラーの宝庫だったわけだけど、(大仁田以降の)新生FMWとなってからはその陰を薄めてた。上手く育てれば晩年のザ・シークやリー・ガク・スーのような名物ガイジンとなるかもしれない。この日、二試合目に登場したタレック・パスカも同様。
 ただし、それが今後のFMWが目指す方向性にそぐったものであるのかどうかはわからないが。


 トイレ混雑のため急遽、再び休憩時間が設けられる。
 それにしてもこの日は寒かったなぁ。FMWの川崎大会といえば前日まで雨が続いていても当日になればカラッと晴れるといったりして、「天気の神様が味方している」とまで言われていたのだが、この日に限っては雨こそ降らないまでも、気温のほうまでは天気の神様も憂慮してくれなかったようだ。


 メインイベント シングルマッチ(60分1本勝負)
 ×冬木弘道(13分30秒 ラリアット〜片エビ固め)天龍源一郎○

 休憩が空け、大型ビジョンでこの対戦に至った経緯(先に行われた記者会見の模様等)を流したあと、特別レフェリーの阿修羅原が入場。ちなみにテーマ曲は「♪デレデレデレデレ あぁぁしゅらぁぁ〜(スゥプァスタァ〜)」という、例のアレ。
 まったくの余談だが、以前とある方から頂いたCD−ROMのなかにこのテーマ曲が入っていて、以来、懐かしさを覚えながらしょっちゅうPC上で再生しているのだが、最近ナップスターに登録したところ、自分のPCからダウンロードされる機会が一番多いのがこの曲だったりする。それだけレアな曲なのか、それともあの曲の持つ妙な雰囲気がプロレスファンの心をひきつけるのかどうかは謎のままだ。

 さて、冬木は昨年末のNOAH有明コロシアム大会以降(なのかな?)、大一番で使用する黒のショートタイツを着用。対する天龍はセコンドに北原光騎を従えて入場。「全日本の天龍ではなくWARの天龍として出る」という戦前の言葉が頭をよぎった。
 試合は冬木の奇声つきのストンピングやラリアットで攻め立てるも、それを凌いだ天龍がチョップ一発で形成を逆転するといったパターン。起伏に激しいわけではないが、やはり天龍ならでは「重い」という言葉がしっくりくる試合。

 この試合について「単調だった」という人もいるだろうし、「緊張感」があったという人もいるだろう。まぁ天龍の試合というのはいつもその二つにわかれるんだけど(まぁ「天龍があからさまにやる気無しだった」というパターンもあるが)。
 ただ、ノーザンライトボムは勿論、パワーボムも出さず、しつこいくらいにラリアートを連発したことに、謎かけの好きな天龍なりの、何がしかのメッセージを感じずにはいられない。それがどういう内容であるかは今の時点ではわからないが。

 試合後、マイクを掴んだ天龍。
「冬木、オマエのオレに勝ちたいっていう気持ち、よくわかったよ。でも、オレはまだまだ負けないよ」
 続いて阿修羅がマイクを取り、
「冬木! もういいだろう! 握手しろ!」
 冬木は少しためらいながらも天龍が差し出した右手を握り返す。そしてBGMには天龍のテーマ曲、サンダーストームが。

 この試合が行われたことの意義が、どこまで「FMWのファン」に伝わってるかどうか甚だ疑問だが、一つだけ言えるのは、この試合で冬木が「一選手として遣り残したこと」はもう無くなったんじゃないかな、ということ。
 つまり、FMWは昨年末に「最後のデスマッチ」を後楽園でやったり、目指す方向性にマッチしないコンプリートプレイヤーズをリストラしたりと、大仁田時代からの完全な脱却を目指してきたわけだけど、そうやって新しい路線を推し進めてきたプロデューサー・冬木が、レスラーとして、現役バリバリのうちにやっておきたかったことというのが「天龍とのシングルマッチ」だったのじゃないか、と。

 おそらく、この試合を最後にレスラーとしての欲みたいなものをいったんクローズし、FMWをより高度なエンタテイメントとしていくための道を、本当の意味で歩みはじめるんじゃないだろうか。言うなれば、この試合は冬木の「最後のわがまま」だったと思うわけだ。
 勿論、冬木がまだまだトップレスラーであることには変わりないし、そうじゃないとFMWのストーリーは成り立たないとは思う。
 しかし、ブッカーとしての冬木が今後描くシナリオは、「プロレスラー・冬木」のオーバーよりも「プロレス団体・FMW」がオーバーするという目的を、今まで以上に推し進めたものになるのではないか。

 そして、そのストーリーの中心人物となる者は、この次に行われた試合で決まる。

 スペシャルメインイベント
 15000Vオクタゴン金網放電爆破一面触発式巨大爆弾サンダーボルトタッグデスマッチ(時間無制限1本勝負)
 ○ハヤブサ、ザ・グレート・サスケ(20分7秒 エメラルドフロウジョン〜片エビ固め)黒田哲広、ミスター雁之助×

 メインと同様、試合前に大型ビジョンでこれまでの流れを振り返る。
 昨年十一月のハヤブサ欠場挨拶と黒田突然の裏切り、黒田と雁之助の結託、黒田の運転する自転車にハヤブサが轢かれるといった映像が流れ、その後に選手入場。リングアナは久々に荒井社長が担当した。
 それにしても、相変わらず荒井社長の声はイイ。何がイイって、誰のコールでも語尾が「××ぇぃ〜〜」となるところ。例えば黒田哲広の場合、「くろだぁ〜、てつぅぅひぃろぇぃ〜〜〜」という具合だ。
 大仁田厚(Atsushi)やグレート・サスケ(Sasuke)のように、語尾が「I」だったり「E」だったりするぶんには普通に耳に入ってくるが、ハヤブサ(Hayabusa)や黒田(Tetsuhiro)のように「A」だったり「O」だったりするととにかく妙な響きが頭にこびりついて離れない。いや、それが悪いって言ってるわけでも愉快だと言ってるわけでもなく、聴いた者の耳から頭にへばりつくようなアナウンスというのは一つの「芸」だと言いたいわけだ。そういう「芸」の部分では全女の氏家リングアナと双璧だと思う。

 ゴング後、雁之助はハヤブサに、黒田はサスケにつっかかっていく(このとき、川崎名物「電流の電源を入れてください!」by荒井リングアナ が聞こえる)。この試合は通常のタッグとは違い、全選手に試合の権利があるトルネード方式だったのだが、試合の大半はこの組み合わせで進んでいった。

 まず最初に被爆したのはハヤブサ。雁之助をリング外に落とし、プランチャをしかけるも雁之助はそれを避ける。揉み合いから、エプロンにたったハヤブサがプランチャを敢行。それを雁之助が再び避けたために金網に真正面から飛び込むこととなった。
 次に被爆したのがサスケ。ハヤブサへの哲ちゃんカッターで場外にいった黒田に向かってリング上からスライディングキック。そのままリング外でのつかみ合いとなり、黒田のラリアットで金網に飛ばされて被爆。ベビーフェイスが立て続けに爆破されることとなった。
 三人目の被爆は黒田。ハヤブサに攻められる雁之助の救出に入ったところをサスケにソバットで吹き飛ばされ、そしてトペ・コンヒーロを食らって金網に激突。
 最後に雁之助とハヤブサが「四方の巨大爆弾が爆発する」危険地帯のエプロンで、リング外への落としあいをしかける。ギリギリの攻防の末、二人一緒に金網に激突し、四方から大爆音とともに巨大爆弾が爆破する。とてつもない量の煙と音で聴覚と視覚が一瞬さえぎられ、それが徐々に戻ってくると、リング上ではレフェリーが、リング外では四選手が横たわってるのがわかる。

 いち早くリングに戻ったのは黒田だが、まだグロッキーのまま。そこへサスケがミサイルキック。黒田もやり返すが、そこにハヤブサが蘇生。二人で黒田を攻め立てる。そこから雁之助も蘇生し、試合はデッドヒートの様相を呈す。
 サスケが黒田を抑えるうちにハヤブサが畳み掛け、最後は三沢のエメラルドフロウジョンのような形で雁之助をマットに叩きつけてピン。

 ゴングが鳴り、直後、これまでみたこともないような数のファンがリングの周りを取り囲む。しかしなかなか立ち上がることのできない四選手。
 ようやく立ち上がったハヤブサがマイクを握り、集まったファンに向かってマイクで叫ぶ。

「ありがとう! 見ての通り、最初っからボロボロだったけど、ハヤブサが帰ってきたぞ!
 オレ、今日十周年なんだけどさ(場内おめでとうの声)
 この十年間、色んなこと、まわりからいろいろいわれたけど、
 自分たちが信じた道だから、一生懸命、胸いっぱいやってきた!
 そして、この川崎にかえってこれた!
 これで、これで一区切りだから、これからFMWは21世紀の、
 新しい、みんなが楽しく参加できる”祭り”を
 みんなと一緒につくっていきたいと思う!
 みんなぁ! これからも一緒に騒いでくれよ!
 じゃぁシメるかー! いくぞー! おたのしみはー、これからだー!!!


 総括。
 ここ最近の流れから「虫の息」と言われていたFMWだけど、今回の興行である程度、息を吹き返すことができたんじゃないかと思う。
 前半戦にはちょっといただけない試合もあったものの、それはまぁ今にはじまったことじゃないし。大仁田時代の川崎球場大会だって、メイン以外で観客の印象に残るような試合をしたのも「ブル中野・北斗晶vsコンバット豊田・工藤めぐみ」くらいしかないわけだし(あくまで個人的にはね)、そんなことは今に始まったことではない。
 大事なのは、もはや草野球場となってしまったものの、あの川崎球場に一万人もの客を集めてフルハウスにしてみせたこと。そして、そのメインが多くの観客に受け入れられたこと。

 メインで「最後のわがまま」を言い終えた冬木と、スペシャルメインで「やっぱり主人公はこの人である」と強烈に印象付けたハヤブサ。この二人を中心とした全ての選手が、次回のPPVから「ザッツ・エンタメ・プロレスリングショー」をスタートさせるFMWをどう変えていくか。

 答えはいそがない。ゆっくりと、時間をかけて理想を実現させてほしい。




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