UFC 地下室の観戦記 --セラとショーニーの大熱闘--
■団体:UFC
■日時:2001年5月4日
■会場:ニュージャージー州アトランティックシティTrump Taj Mahal
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

新体制になって以来、バーでの放送を制限しはじめたらしいUFC。今回もUGフォーラムは、試合直前まで「おらの住んでる◯◯でUFCを放送してくれるバーはどこだあ?」スレッドが乱立する状況。俺のすんでる南CAでも、前回は「生放送じゃないから違法じゃないもんね、ヴィデオ流すだけだもんね」と放送直後に録画を流してくれた勇者のバーが、脅かされたのかなんだかしらないけど、今回はどうしても放送できないという。しかし、それでも一つ「店全体で表だっては放映できないけど、地下のパーティールームでこっそり流しちゃうよ」という真に高い精神性を持ったバーを見つけました。そこで今回俺は、地下プロレスならぬ、文字通りアングラな禁断の地下UFC観戦をしてきたのでありますよ。

なんつっても、別に秘密めいた雰囲気なんて全然ないんですけどね。受付で「UFC観たいんだけど」と言えば誰でも「じゃあこっちね」と入れてくれるんですよ。地下といっても、陽射しのさしこむ明るいふつうのおっきな部屋。そこに最終的には100人くらいのいかつい男達とおねえちゃん数人がうわさを聞きつけて集まってきましたね。当然、柔術大会やサブミッションレスリング、NHB大会などで良く見かける顔多し。タップアウトのドンキングヘア+ライトぴかぴか名物にいちゃん(これ読んでる方で何人が知ってるか知らないけど)もいました。

ということでUFCテレビ観戦記いきます。番組の演出は前回とだいたい同じ感じで、音楽やレーザーをふんだんに使った選手紹介クリップをふんだんに使ってました。ちとチープなのが多いのも前回と同じ。まあでも、こっちのプライドPPVとかもっとださいですよ。フジの演出と比べるとものすごい差がある。

第一試合 マット・リンドランド(3R 反則勝ち)ヒカルド・アルメイダ

この世界の人材が増えてきたこともあって、今のUFCはこのように第一試合でいきなり、それぞれ軽重量級世界トップレベルのレスラーと柔術家の対決を平然と組んじゃいます。試合は典型的なレスラーvs柔術家(金網おしつけインサイドパンチvsガード関節)の攻防に。最後は足の裏を向けたオープンガードを取っていたアルが、片膝ついたリンの顔に師匠譲りのヘンゾキックをヒットさせ(二度目)、反則負け。あ、2Rにリンのきれいなジャーマンが炸裂してました。このシーンはスバーンvsマシアスの如く、今後何度もプレイバックされることでしょう。アルの「小路を痛めつけた思いっきり右ロー」は数発ヒットしてたけど、この人打撃技はこれ以外ないんだもん。

第二試合の前に、前座試合二試合のハイライトが流される。一つはよく知らない選手同士の試合で、もう一つはなんとBJペンvsジョー・ギルバート戦。ペンが前座かい!ペンはレスリングでもギルバートを圧倒したみたいで、1Rバックからのチョークで勝利。

第二試合 セーム・シュルト(2R KO)ピート・ウイリアムス

いつものように猫背のシュルト、ものすごい気合の表情で入ってきて、入場時に空手式に十字を切る。試合でもシュルトは伝統空手のように上足底(しかも前足)をめりこます左前蹴りを使う。おお、こんなんNHBで使ってる奴はじめてみた(パトスミが使った「吹っ飛ばし前蹴り」と違って、膝のスナップで効かせる蹴り)。1Rはピートがそれを潜り抜けてテイクダウン。でもシュルトのジャイアントガードで両手首をつかまれて何も出来ない。それでも振りほどいて足を超えてマウント。でもやっぱ攻めあぐねてゴング。2R、ピートのタックルをシュルトががぶりはじめる。そしてシュルトのコンパクトな左ジャブ、左前蹴り、右回し蹴り(これもまた上足底蹴り)が入り出す。ちょんちょん入ってるだけなんだけど、足が尋常じゃなくでかいから効いている。ジャイアント馬場の16文が必殺なのと同じ原理だ。最後はボディーに左右の上足底キックがもろに入りピート悶絶のKO負け。伝統空手の打撃の方法論の正しさがこれにて証明された。うむ、やはり空手技は最強なのだよ、シュルト並の大きさがあれば。

このあと、次回のUFCでタイトル戦が決まったティトとエルヴィスがオクタゴンで紹介される。現在のUFCの中でもっともプロっぽいティトは「俺の試合に判定はない。全員パニッシュ(処罰)するだけだよ」とかなんとか。

第三試合 ショーニー・カーター(3R KO)マット・セラ

ショーニー、金のキラキラジャケット&ズボン+シルクハットで登場、花道でポーズ。ズボンを脱げば、世界地図をちりばめた食い込み度の高い海パン。バーの地下室は大笑い。いやま、恰好はともかく、この試合はほんと凄かった。純粋に試合内容だけを取れば、俺が今までみた全NHB試合の中のベストワンかも知れない。

1Rはセラが迅速のテイクダウンからマウントゲット、でも「タコのような柔らかさ」と「物理的な強さ」という普通はあまり両立しないものを合わせ持つショーニーはするする立ち上がる。するとセラはすぐに、教科書のようにきれいに引き込んでガード、すぐさまオモプラータ(両足を使って相手の肩をキムラに極める技。ノゲイラがハン戦の最後に極めかけたやつ)。これがほとんど入ってたんだけど、ショーニーはやっぱりするすると(できるはずのない)ローリング。さらにセラはバックを取るも、やっぱりショーニー抜ける。すごすぎるぜ二人とも。1R終了直前には、ショーニーの「右ハイ→そのまま回転して左バックブロー」で前腕がまともにヒットしてセラがひっくり返る。地下室は大拍手。

さらに2、3R、片足取っても倒れそうで倒れないショーニーをセラが引き込んで、柔術奥義を駆使して下からヒップスロー、潜りスイープ、三角を狙うもショーニーことごとくクリア。セラがだんだん疲れてくる。そして終了直前に、再びショーニーの「右ハイ→そのまま回転してバックブロー」の今度は拳部分がまともに当たって完全KO。もうシビれましたね。セラの最高レベルの柔術技術とショーニーの驚異のエスケープを見せられ続けて、最後にこの結末ですよ。これ、ハイを見切った(と思った)相手がいわゆる後の先でタックルやパンチを打ち込もうと踏み込む出鼻にカウンターで入るんですね。「後の先の先」ですね。まあ本人は、なにも考えずただ横回転してるだけでしょうが。

そういえばショーニーは、前回UFC登場時にも「完璧なキャプチュードで相手を投げる→そのまま三角を極められかける→脅威のするするエスケープ」という素敵な動きをしてくれたもんです。素晴しすぎる。セラも負けたけど、柔術を極めた人間はここまで美しい技を繰り出せるということを魅せてくれましたね。

第4試合 チャック・リデル(1R KO)ケヴィン・ランデルマン

階級を下げて無敵になったと思われるランデルマンの仕切り直し戦。ポイントは「いつランデルマンがタックルを取るか」だけだと思ってましたね。そしたらなんと、前回モンソンのタックルを完全に防いだリデルが、ランデルマンの一発目のちょっと高めのアタックを見事に腰を引いてディフェンス、組み付かれて押しこまれるもやがて突き放すことに成功しました。そして二度目のアタックが来る前にリデルの左(前手)の長いフックがヒット。崩れるランデルマンに右の追い打ち、さらにタコ殴り、、、の前にビッグジョンがこれ以上ないタイミングで割って入ってきてストップ。ランデルマンはストップが早いと怒り狂って出ていったけど、これはビッグジョンの(前回のティトvsタナー戦に続く)超ナイスプレイですね。

ここでセミのタイトル戦を前に、世界のウエルター級(階級制度が今回から正式に変わった。170から185の階級がライト級として新しく設定されるみたい)強豪の勢力図が写される。ミレ、ニュートン、トリッグ、バーネットに並んでサクライの顔写真が!

セミ ウエルター級タイトルマッチ 
カーロス・ニュートン(3R ヘッドロックの体勢でのチョーク)パット・ミレティッチ

この試合から入場の演出がレベルアップ。ニュートン、学ランみたいなジャケット+サングラスで登場。地下室内に「なんだそりゃ」の声多し。対するミレ、レーザーが舞い、場内の照明がハイスピードで点滅する中をオクタゴンガールズがセクシーに踊り狂う演出の中、単なる普段着のトレーニングウエア+いつものもさっとした顔で、おまけにミレ以上にカントリーなホーンを従えて登場。ここまで演出する側とされる側が見事にズレているのは見たことない。

試合は相手の光を消すいつものミレ作戦が途中まで完璧に進行。ニュートンのテイクダウンを相撲状態に持ち込んで防ぎ、離れては堅実なワンツーとローで主導権を取る。タックルを取られてもガードで鉄壁に守る。こりゃだめだ、、、と思ってたら3R、下にいたミレがガードを開いたところにニュートンがパスを仕掛ける。立ち上がろうとしたミレのバックに素早くまわって首に手を回すニュートン、それを振りほどこうとミレが体をずらしひねってエスケープ、、、と思ったらニュートンの腕はすでに完璧に首に入ってて、ヘッドロックの形でチョークが決まってギブアップ。ミレは次の瞬間「くそしくじった」とばかりにマウスピースを叩き付けすたすた歩き、ニュートンは、オクタゴンに土下座するような恰好で歓喜にもだえる。どんどんショーアップしている最近のUFC的には、退屈王+田舎もんの王者を倒してくれたニュートンの功績はでかいでしょう。

メイン ヘビー級タイトルマッチ 
ランディ・クートゥア(5R、疑惑の判定3-0)ペドロ・ヒーゾ

1Rのランディはもうめちゃくちゃ強かった。得意の首抱え込みパンチをヒーゾがいやがっていったん離れたところに、なだれ込むようなタックルでテイクダウン。そのままガードの中から、というより上からのしかかってごつんごつんパンチや前腕や肩アタックを当てる。ヒーゾは大流血してるし脱出は不可能だしで「試合止めるかな、まだかな?」状態が続く中ゴングで救われる。二人にはこんなに差があるのか、、、、、、と思ってたら2R、血を拭いてきれいな顔になったヒーゾが復活、逆にランディは露骨にガス欠でタックルのスピードがいきなりスローモーションに。それをがぶられて何度も桜庭シウバ状態になるも、これはUFCなのでヒーゾ蹴れず。それでもスタンドでヒーゾの長いワンツーや右ローがぼこぼこ入って形勢は完全に逆転。

3R以降はランディがちょっと盛り返し、両者へろへろの消耗戦に。この時点から試合を観はじめたら、両者のあまりのトロさと退屈に耐えられる者はいまい。1Rと2Rでそれだけ両者出し尽くしたということなんだろうけど。とにかく、
(1)ヒーゾ有利のスタンド打撃の攻防 
(2)ランディがへろへろ組み付いて首抱えパンチ 
(3)ランディ執念のスローモーションタックルが決まってガードで膠着状態 
(4)ランディのタックルをヒーゾががぶってランディが無防備にへたりこみ、ルールが許すなら蹴り放題の桜庭シウバ状態 
の4つののろのろとした攻防が繰り返され、5R終了。特に(4)多し。

1Rランディ、2Rヒーゾ、3Rから5Rもつけるならヒーゾだろうなあ、と思ってたら判定は3-0でランディ。地下室ちょっとブー。(4)の状態は15回くらいあったと思うけど、この状態は減点対象にならないのだろうか?まあ無制限なら1Rのゴングはないはずで、ランディの一方的なKO勝ちだった、という見方もできる。

まあ、以上のように自動的に「想像上の完全VT」をどこかで想定して勝ち負けを考える(「もし四つ足キックが許されているなら」「もしラウンド制じゃなかっったら」等々)のは俺だけじゃないと思う。やっぱUFCはまだまだ、それ自体確立したMMA競技というより、数あるスポーツ化したVTの一種として捉えられてるはずだから。

ということで、柔術世界王者の試合が前座で放送されないという、めちゃくちゃ豪華なUFCの感想でした。いっぱいいるであろう「アメリカで柔術をはじめた空手経験者の日本人」の一人としては、シュルトの蹴り&セラvsショーニーの攻防に大感激。ニュートンもアルメイダもヒーゾもすごく好きな選手だし、リデルの大殊勲も特筆ものなんだけど、この日に限ってはショーニーの世界地図食い込み海パンの輝きが最高でした。




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