◇女子総合格闘技ReMix〜GOLDEN GATE 2001〜◇ 試合後二十分でお届け 世界一速い観戦記
■団体:ReMix
■日時:2001年5月3日
■会場:代々木第二体育館
■書き手:タカハシ(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

「金はどうでもいいからとにかく潜り込みたい」と言う人はエンターテイメント業界の
周辺には多いものだ。プロレス界ならインディー団体で働く人の多くがそうだと断言
できるだろう。実のところ「Re-Mix」のプロデューサーである篠社長もその一人だと
思っていた。
ところが昨年の某イベント席上でのスマートな発言の数々は、それまでのイメージを
一新するもので今後の動向を注目すべき人である事を知らされた。あの時の驚きは今
でも忘れられない。ここでいくつかその時の発言を取り上げてみよう。

・・・今(昨年4月現在)内部で問題なのは八木の待遇への嫉妬の声が旧ネオの選手
からある事と、エンターテイメント路線への不満だそうだがそれについては
「それでは君は何を見せてくれるの?という事を考えて欲しい。」
「実際にコンビニ強盗(篠社長自演)登場の後楽園はネオの興行としては最もチケット
が売れた。」と明確。
(当時ネオで提唱していた)エンターテイメント路線については
「アメリカでの成功例があるのに(勿論日本風の味付けは必要でも)放っておいても
しかたない。そろそろ格闘技とプロレスを分けてもいいでしょ?
世界のプロレス界年間最大のイベントであるレッスルマニアに視察等に行く日本人関係
者が自分と高木三四郎しかいない事は不思議。小川社長(アルシオン)、山本代表
(当時JWP)の他団体首脳と話をしてもやはり世代の違いを感じる。
山本代表に『何故やらないの?』と聞くと『正直感覚が理解できない(どうする事が
新しい世代のファンに受けるのか)』と言われた。」等々。
やはりプロレス業界のみで育った人間だけで回していくのには限界を感じている様で、
芸能界畑出身のガイアの杉山社長と木村統括については評価していた。
篠社長がDDTに興味を持ったのは会場にプロレスファンの匂いがしない事で、他団体
の人が今一つ踏み切れないのは今までのファンからNO!と言われる事への恐れから
だろう」とこれまた明確。別に今までのファンへの未練はないとも発言していた。
司会者に「じゃあもう(プロレスの仕組みについて)カムアウトしちゃえば?」と
問われると、全くてらいなく「小さなスペースでそんな事言っても仕方ない。TVの
プライムタイムとかでならキッチリ自分のビジョンを説明する。」とキッパリ。

この時の言葉通り昨年はベスト興行とも讃えられた全試合シュートの「Re-Mixワールド
カップ」が開催され、そして今はその対極にある「渋谷系女子プロレス」がスタンバイ
している。どちらもメディアを巧く利用し、従来のプロレス村的発想から脱却した展開
を見せようとしている。正直に言えば自分もどちらかと言うと旧世代に属するファンだ
と思うので、こちらの方もお手並み拝見と密かに楽しみにしているのだが・・・。

さて開始間際に入場したが「SMACK GIRL」の選手を使ってのルール説明中であった。
解説役としてリングアナも勤める元JWP代表にして蛇界から抜けられたヤマモ氏。
PPVの開始時間前で少し押していたためかちょっと慌ただしかったが、試合開始を
5時半とするなら本放送を6時として、ダークマッチを入れるなりといった工夫で乗り
切れる問題だと思う。
またマーチャンダイズもいかにプロレス的発想から逃れられているかに注目していたが
こちらは残念ながら期待ハズレ。要は着られるTシャツを作ってくれって事なんです
けどね。こちらも「SMACK GIRL」自身の意見等を取り入れて世間に通じるものをお願い
したい。

会場は2階の入場ゲートの裏側になるところをシートで覆い、ビジョン設置は今回は
なくしての会場設定となったがそれでもざっと6割くらいの入り。真面目な話、「Re-
Mix」に一番注目し、プッシュしようとしているメディアはこのkansenki.netだと思う。
マスコミも邪、外道の区別もつかない格闘技系のライターが多かったようだが、もっと
注目されるべきイベントであるという認識がまだまだ低いのは色々な意味で残念で
あった。


<第一試合>
張替美佳(日本/総合)vsジャミラ・メストーン(オランダ/キックボクシング)

ジャミラと言う名前からどうしてもウルトラマンに出てきた怪獣を連想してしまうが、
案の定入場テーマは「科学特捜隊」のテーマだった。
ジャミラは相手のガード技術の低さに、ただ闇雲に左右の大振りのフックとヒザを織り
混ぜた攻撃を見せ、張替はそれを根性で耐え、時折出す小外刈りでとにかく心の強さ
だけは見せつけた。ジャミラのセコンドはマルタインとゴルドーで張替はタノムサクと
ナナチャンチン。これでは勝てません。
判定は5ー5のドローでサスガに会場からはブーイングが。これにはすぐに「試合途中
のイエローカードが・・・」と補足が入ったが、そのイエロー自体が不明瞭のため
(恐らくグラウンド中の顔面パンチ)会場はザワついていた。これは頑張りを見せた
張替にも気の毒だった。


<第二試合>
星野育蒔(日本/総合)vsコボチノバ・タチアナ(ロシア/柔道)

前回のタチアナの肩書は「シドニー五輪銀メダル」だが、今大会のチラシでは「桜庭
あつこと戦った・・・」となる。総合の場において桜庭を倒すという事が男女を問わず
偉業である事が図らずも証明されたワケだ(ウソ)。
対する星野は先のRe-Mix前夜祭「SHINOKI祭り」で"ナナチャンチン泣かし"の異名を
取ったRe-Mixの秘密兵器。
タチアナは前回は柔道着での入場だったと思うが、今回はジャージで入場。そこにこれ
から柔道を捨て、プロとして喰っていく決意を感じた。対する星野は全女の高橋を1回
り可愛く、2回り痩せさせたような感じ。その可愛さからどうなるものかと思っていた
が、スタンドでは鋭いキックを見せ、グラウンドでは亀とポジションによってはメダリ
スト相手に攻め込むシーンもあり驚きの連続だった。2R終了のゴング後にはそれまで
入っていた十字にタチアナがタップしていたが、これは認められなかった。
気持ちが完全に折れていたタチアナは1分早々に左クロスでダウンし、そのままKO。
これは大変な事だと思うが観客には十分にこの偉業が伝わっていない様子だったのが
残念だった。


<第三試合>
小山亜矢(日本/プロレス)vsアンナ・コピリーナ(ロシア/空手)

昨年12・17は修斗NK大会開催日だが、同日後楽園でも「SMACK GIRL」と題されて
Re-Mixルールでの興行がひっそり行われていた(観客数もひっそり)。
試合後篠社長にお話を聞く機会をいただいたのだが、その時「高橋(洋子)にはもっと
プロレスラーらしい技で勝って欲しかった」と言われてちょっと驚いた記憶がある。
高橋はその日初参戦でありながらルールを理解していて、チーム・クエスト勢がよく
見せる頭を抱えてのパンチを多用し、見応えのある勝ち方を収めていたからだ。
多分篠社長はプロレスラーが総合の場でプロレス技で勝つ姿(もしくは全く通用しない
姿)をひとつの目玉としたいのだろう。
小山は試合前のアオリではボクシングを習得中と言っていたが、試合では全くと言って
ほどその成果を見せる事はできなかった。
試合はアンナの見よう見まねとも思える十字に小山が大声を上げてしまい、見込み1本
的TKO。小山は不服そうだったがこれは仕方ない。
対するアンナも打撃は鋭く、決して適当に連れてきたのではないところを見せてくれた
が、とにかく華がないので使い方が難しい。とりあえずは体格を合わせて八木あたりと
の対戦が見てみたい。


<第四試合>
久保田有希(日本/総合)vsユタ・ダム(オランダ/総合)

久保田は昨年のL−1でクーネンに敗れ、当初はそのリヴェンジマッチが予定されて
いたようだが、パリンヤー欠場(「連絡がうまくつかずビザが発給されなかったため。
怪我で出られないなんてウソつかないところが私の良さだと思ってください(篠社長)
。」)の余波を受けクーネンと同門?の選手との対戦となった。
2人ともセコンドの指示や経歴等からグラウンドに持ち込みたいのだと思うが、
気の強さからかお互いにスタンドでの攻防が主となった。
試合は2R目にユタが立ち上がれずに、TKOによる久保田の勝利。
プレゼンテーターは石立鉄男で、意外な人の登場に会場は試合以上に沸いてしまった。


<第五試合>
中山香里(日本/プロレス)vsリー・ヨンファ(韓国/キックボクシング)

先日「極悪板」にて篠社長自らスレッドを立て、小山、中山が出場する事を知った自分
は「中山たちはちゃんと理解して出場するの?残酷ショーなら見たくない(ワケでもな
いが)」と書いたところ篠社長自ら2人にはキッチリ説明している事と、ルールは残酷
ショーにはなり得ない旨の回答をいただいた。
ちょっと本題からズレそうだったので敢えてその事については返信しなかったが、自分
が残酷ショーと言ったのは試合の凄惨さだけではなく、真剣勝負の場で何もできない事
を露呈し、レスラーとしての商品価値そのものを貶めてしまう事への残酷さも含んでの
ものだった。
最近はコンプリート・プレイヤーズの一員としてマネージャー業を中心として活動して
いる中山。FMW離脱間際での男女混合8人タッグでは感動的なフィニッシュでの勝利
を飾っていた事と、格闘技をバックボーンとした選手ではないところから果たしてこの
Re-Mix出場は正しい選択だったのかと疑問に思っていた。
リーは「燃えよドラゴン」のテーマで入場と判りやすさを心がけた選曲で入場。ところ
が着てきたTシャツには「KOREA PRO-WRESTLING」の文字が。せっかく長々と考えた上記
も無駄になるのかと思いきや、試合が始まると鋭いパンチと頭を抱えてのヒザで猛烈に
攻め込む。
中山は攻められっぱなしではあったが途中キャプチュードを見せ、3Rマウントからの
十字ではタップも奪ったが3回叩く前に離してしまったという事で、試合は結局圧倒的
な判定負けとなった。そもそも「強さ」を売りとしたレスラーではなかったが、それ
でも心の強さは見せてくれ、自分の心配も杞憂に終わった事になる。
試合前のアオリでの今回の試合用に用意した「真空飛びヒザ蹴り」と「スネーク・スク
リュー」なる技はプロレスの時の楽しみとして、今日のところはその心意気に拍手を
送りたい。
なお、本格帰国後1回目の試合観戦となる田中正志氏は、試合自体は文句なくガチ判定
だが、中山の巨乳にはワーク判定であった。


<第六試合>
高橋洋子(日本/総合)vsマルロス・クーネン(オランダ/総合)

投稿フォームは設けられていないが実はオブザーバーβも常時応募を受け付けている。
時期を完全に逸してしまったため投稿できなかったネタがあるのでここで披露したい。
「修斗下北大会を観戦したマルロス・クーネン、修斗クラスBのレベルの高さにビック
リ。出場選手のファイトマネーの金額を聞いてもっとビックリ」・・・ダメっスか?
マルロスは前回見せた通称「ペンギン押忍」をリング登場時に披露。インタビューでは
恥ずかしそうにそれについて答えていたが、今回も見せたのはプロ意識の現れだろう。
高橋はクラウチングスタイルから突っ込み、お互いに打撃で気の強いところを見せたが
試合早々にアンダーポジションからの十字でタップ。正直クーネンは技術バランスと
総合の戦い方のノウハウで優勝したものと思っていたが、そういうレベルではなかった
ようだ。これからは対戦相手を探すのに苦労しそうだ。ルックスも良くスター性がある
ので大切にして欲しい。


<セミファイナル>
八木淳子(日本/総合)vsグンダレンコ・スベトラーナ(ロシア/柔道)

篠社長自らこの大会の告知と見たいカードの提案募集を行っていたが、高橋対クーネン
が一番人気で八木絡みのカードを提案した人は1人もいなかった。自分も唯一のRe-Mix
専属とも言える八木の強さを発揮できるようなカードを期待していたのだが、ある意味
相手の光を消すような存在とも言える(尤も藪下が光ったのは彼女との試合でだが)
グンダレンコとの対戦。金魚を・・・とまでは言わないが体格的に差がないキック系の
選手と(例えば今日出場したアンナ・コピリーナとか)戦った方がベターでは?と思っ
ていたが、試合は残念ながら心配通りの内容となってしまった。今回のレポートでは
出る選手にのきなみ「気の強い」と形容してきたが、こと八木に関しては「大切に
育てられてきたんだろうなぁ」という生きざまを見せられた感じだ。
試合はポイント上は6ー0だが内容は一方的。あと勝利者賞がベンツというのにはこの
日最大の歓声が起こった。


<メインイベント>
薮下めぐみ(日本/プロレス)vsエリン・トーヒル(アメリカ/総合)

前回の大会で一躍その名を知らしめた藪下。その偉業が本業であるプロレスでの地位
向上に全く反映されてないのは意外だ。とりあえず神取相手に格闘技ルールと称して
ジョブする様な愚行がなかっただけでも良かったと言うべきか。
対する相手は先のトーナメントでは藪下が判定勝ちしたグンダレンコにタップで敗北
したトーヒル。そう言うと金魚を連れてきたかのようだが、彼女は97から99年の
柔術トーナメント優勝者(昨年は不明)。決してなめてかかっていい相手ではない。
総合の戦い方という点では劣るものの打撃の技術はクーネンよりも上だったと思うし、
今回の寝技30秒ルールは元全日本クラスの柔道よりも柔術経験に有利に働くかも
知れない。試合は常に笑顔を絶やさず戦う藪下につられるように、トーヒルも笑いつつ
鋭いパンチを繰り出す。藪下はセコンドの指示からもわかるようにパンチに合わせての
胴タックルからの寝技が唯一の作戦だったようだが、2R中盤ともなるとサスガに読ま
れてしまったようで、アンダーからの十字でタップ(レフェリーストップかも)。
藪下の勝利に期待していたお客さんはかなりガッカリしていた様子で、好試合の連続
にも関わらずちょっと寂しい雰囲気になってしまったのが残念だった。



<総括>
Kー1やリングスのように従来のルールからある意味最も有効と言える攻撃手段を削除
する事により「お客さんが楽しめる事」を第一とした世界を創り上げようとしているの
はファンの立場からすると非常に素晴らしい事だ。
Kー1は圧倒的な資金力によりKー1というジャンルの構築に成功し、「ヒジがない」
などと言った雑音を全く無意味なものにした世界を創り上げている。
リングスの場合はプライドというこれまた圧倒的な資金力を持つ団体?の存在により、
(例えつまらない試合が多くとも)最強を決めるのはVTルール(により近いもの)で
行われ、最高の人材を集められる団体であるプライドのマイナーリーグ的なイメージ
から脱却できずにいるのが観客動員力の差として現れているのでは?と思われる。
その点Re-Mixは対抗馬と言えるのはL−1というプロレス団体の単なる1イベントのみ
で、Kー1のようなカタチでのジャンルの独占も可能な立場にあると言えるだろう。
またスポンサードする立場からすれば女子の格闘技では本当にギリギリのラインである
事は断言してもいいと思う。
そう言った意味でもRe-Mix参加の日本人選手で最大のスターが他団体の選手である藪下
でと言うのは篠社長にとっては苦しい部分もあるかと思われる。そのためにも八木の
一層の奮起とオーバーさせるための工夫をして欲しい。観客の立場からするとこの
ルールでの日本人対決はちょっとキツい。外国人選手の発掘も期待したいところだ。
クーネンとトーヒルが抜けているという現状は、彼女らを倒す事の意義がまだまだ観客
に浸透していない現時点では痛しかゆしだろう。
特筆すべきはその進行の良さで、PPVがあったとは言えお客さんにも試合以外の部分
で不快感を与えなかった事は今後のイメージに好影響となるように思う。
大会自体は観客動員が??だったものの、内容は昨年の感動にケチを付けるものでは
ない、非常に素晴らしいものだったので次回にも期待して良さそうだ。
ルールも月例の「SMACK GIRL」を実験の場としても巧く利用して、より良いものを模索
して欲しい。




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