競技と興行のジレンマ 5/1 修斗後楽園大会観戦記
■団体:修斗
■日時:2001年5月1日
■会場:後楽園ホール
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 一月の後楽園以来の修斗観戦。前回の主催はサステインで今回は「プロレス? あんなもんは八百長なんだから!」でという名台詞でお馴染みの桜田会長率いるガッツマンプロ。

 今回出場が予定された選手は一月の後楽園でちょっと寒いメインを展開してしまった植松と、一月の後楽園で「修斗一本で生活できるようになりたいんです!」と涙ながらに訴えた郷野、そして一月の後楽園でKANSENKI.NETとメモ8HPから激励賞が贈られた戸井田と村濱、さらに一月の後楽園でバレットを破った勝田と、勝田に敗れたバレット……って殆ど一月に出たメンバーじゃないか。主催が違うのに出る選手が一緒というのはどういうことだ。
 結局この中から植松は病気で、バレットは何やらアレな事情で欠場。若手同士の対決は片方の負傷によりキャンセル。都合三試合もキャンセルされることとなったわけだが、その代替カードとして「佐藤ルミナエキシビジョンマッチ」と「中井祐樹柔術マッチ」が組まれることとなり、所謂「ファン感謝デー」的な興行となった。

 それでは例によって技術的なレポートはこちらとこちらを見ていただくとして、手前の観戦記では「興行」そのものにスポットを当てていきたいと思う。


 第一試合 ウェルター級 5分2R
 △村濱天晴  (2R 判定ドロー) トニコ・ジュニオール△
 (WILD PHOENIX)         (ブラジル/ワールド・ファイト・センター)

 一月の後楽園では横浜道場の南部相手に(客を喜ばせることができなかったという意味で)不本意な判定勝ちとなった村濱。確かその試合では自身のテーマ曲(NOAHの小川良成と同じホワイトゾンビの曲)を使って入場したと記憶してるが、今回は一曲で赤青両コーナーから同時に入場するクラスB方式。

 ゴング直後に「ウギャォッ!」という奇声を発しつつ、ジュニオールの足元に飛び掛る村濱。「芸人は狂ってナンボ」とは故・横山やすしの名言だが、この発狂ムーブは自ら「芸人魂」を名乗る村濱の、芸人として一段階上に上がりたいとう欲求の発露であろう。しかし、稽古不足を幕は待たないのと同様に、ブラジルの格闘家も狂人の戯れにはつきあわない。足元を這いずり回る芸人・村濱に強烈なパンチをゴン! 村濱ダウン。
 機先を制された村濱もなんとかしてテイクダウンを奪うが、今ひとつ攻めきれず、ジュニオールの下からの打撃で額から出血してしまう。よもやそんな馬鹿なことを考える人はいないと思うが、為念として言っておくと、この試合のレフェリーはトミー蘭でもタイガー服部でもなく鈴木利治である。妙な誤解などしないように。

 2Rに入り、村濱のインサイドからの打撃が有効に決まり出すも、1Rのダウンが響いたか判定はドロー。
 実力そのものは相手を上回っていただけに、最初に発狂してしまったことがガチンコ的には悔やまれる。
 しかし手前は「勝敗」よりも「客の拍手」に重きを置く選手が好きなので、結果はともかく、村濱は良くやったと言いたい。

 ちなみに、試合後に元デンジャーステーキ三号店こと水道橋のカウボーイステーキで食事をとろうとしたところ、友人もしくは支援者とおぼしき人達に囲まれ、打たれた箇所を氷で冷やしながらステーキをパクつく村濱がいた。しかし会計はきっちりワリカン。たかだか千何百円くらい払ってやれよなぁ。村濱はギャラ安いんだから……。>周りの人達


 エキシビジョン 3分1R
 佐藤ルミナvs勝村周一郎 (共にSHOOTO GYM K'z FACTORY)

 代替カード第一弾。植松とバレットが欠場したぶんをこの後の柔術マッチで埋めるのだとしたら、このカードは当初第一試合に組まれていた「井上vs辻」を埋めるということだろうか。どっちにせよ、層の薄い重量級でなおかつクラスBの試合を見せられるよりは、たとえエキシビジョンとはいえルミナを見せてもらえるほうが客としては有難い。

 事前にリングアナウンサーより「寝技は、ガチンコです(笑)」なる発表があったが、愛嬌程度の打撃はともかく、寝技はおよそガチンコらしからぬ動きの多い展開となった。「エキシビなんだからポジショニングがどーしたとかみみっちいこと言ってないで派手に関節を狙い合おう」ということか。
 そうなると、ルミナの動きはさすがとしか言いようが無い。目にも止まらぬスピードで次々と勝村の手足を極めにかかる。アンクルホールドと腕十字で二度、一本を取って試合終了。

 試合後、両者揃ってリング上でインタビュー。ルミナは8月26日の大阪大会で昨年12月以来の修斗公式戦が組まれることに。対戦相手の希望を聞かれるも「宇野クンにしか興味が無いんで……」とつれない答え。やっぱりあの敗戦はよほど悔しかったんだろうなぁ。
 対する勝村は「ルミナさんはいかがでしたか?」という問いに対し「いや、まぁまぁ強かったです」と強気(というか身の程知らず)な回答。即座に「明日の練習、覚えとけよ」とルミナの恫喝を食らうことに。生意気な口を利く後輩に道場でキッチリ「教え込む」のもプロとして大事な仕事。やったれやったれルミナ! まぁ児童養護施設の職員を恫喝するのはいかがなものかと思わないでもないが。


 ここでインタビュータイムとして三島ド☆根性ノ助とマッハ桜井がリングに登場。
 三島も8月26日、地元大阪での興行に出場が決定。カードは未定だが「チャンピオンシップをやりたいです」と希望。ルミナのモチベーションが下がってることを考えると、実現するとしたら相手は五味かな?
 続いてマッハにマイクが向けられる。「昨年十二月以来、修斗のリングから遠ざかってるが次の相手として希望するのは?」という、時節柄、聞かれたほうとしては答弁に困ることこの上ない質問。案の定、答えにくそうにしてるマッハに対して「とりあえず、名前だけでも出してみてはいかがでしょう?」と追い討ちをかけるリングアナ。
 ここでマッハが「じゃぁミレティッチを呼んでください」と言い出すことを期待したが、出てきた回答は「いや、誰でもいいですよ」という、あくまでマイペースな答え。まぁ、もしここでミレティッチの名前を出すようでは良くも悪くもマッハらしさに欠けるか。


 第二試合 柔術マッチ 3分エキシビジョン
 中井祐樹vs中山巧 (共にパレストラ東京)

 代替カード第二弾。試合前、先のコパパレストラを観戦した帰り(行き?)に暴漢に刺されて亡くなられた女性に黙祷。
 修斗における中井祐樹というのは、WWFにおけるHBKのようなものなのかもしれないと思った。現役時代を知ってるファンには勿論、知らない新しいファンにもリングに上がると暖かく迎えられるところが共通点。

 正道の早川がレフェリーについたこの試合、初めて柔術ルールを「面白い」と思えた。寝技の攻防で下になることが必ずしも不利となるわけではないという、いい見本となる試合だったんじゃないかな。


 休憩。
 売店前で3日のReMixに出場予定のマーロス・クーネンのセコンドとして来日中のジェラルド・ゴルドーを発見。漏れ伝え聞く噂によると第二試合の最中、リング上の中井に向かって”片目をつぶってウィンク”で挨拶をしたら中井が+&%’*@$#≧(自主規制)したとかしなかったとか。


 第三試合 引退記念エキシビションマッチ 3分1R
 大河内衛      vs    朝日昇
(GUTSMAN・修斗道場)     (PUREBRED大宮)

 古くから修斗フェザー・ライト級を支えてきた大河内の引退エキシビジョン。相手は入門当時に「木口の鬼軍曹」として名を馳せた朝日昇。
 この試合を最後に、今後はガッツマンで後進の指導にあたるとか。
 個人的な欲を言えば、やはり最後のテンカウントゴングのときには長年親しんだスパッツもいいが、やはりここは先のコンバットレスリング全日本大会で見せた衝撃的にビッグサイズな蝶ネクタイを着用して、ともすれば湿っぽくなりがちな引退セレモニーの空気をガラリと変えて欲しかった。もっとも空気が変わったからといってどうなるものでもないのだが。

 最後は桜田会長他、草柳、ルミナ、マッハ、巽といった木口門下生による胴上げ。


 ここで三月度の月間MVPと最高試合の発表と表彰。
 MVPには後楽園大会のメインを一本勝ちでキッチリとシメたスラップショットのボーカル……じゃなくてマモル。すまん、髪型と服のセンスがまったく同じだったのよ。
 最高試合はパレストラHOSEI……じゃなくてTOKYOの八隅と素晴らしい攻防を展開した(つっても手前はZERO-ONE旗揚げ戦に行ってたので観てないんだけど)ライアン・ボウが受賞。


 第四試合 ライト級 5分3R
 ○戸井田カツヤ(1R0分37秒 腕ひしぎ逆十字)オズマール・ディアス・フェルナンデス×
 (和術慧舟會)                (シュート・ボクセ)

 KANSENKI.NETイメージファイターであるトイカツは今回も例によって白衣で入場。
 リングインする前に精神統一して間を取ったり、引き締まった表情で客席をキッと見渡しつつ片腕を掲げたりと、いちいちプロフェッショナル意識が炸裂している。トイカツの魅力は奇抜な試合運びだけではなく、こうした「佇まいの作り方」も忘れちゃならない。これだけ「客に見られている」ことを意識できる選手が最近の最近のガチンコ業界にいったい何人いることか。

 試合は奇抜なムーブを披露するまでも無く、あっという間の秒札劇。

 試合後にも、リングサイドのカメラマン”一人ひとり”にカカト落としのポーズをサービス。一箇所に集中したカメラマンにポーズを決めるだけなら誰でもできる。しかし、カメラマン全員が真正面から撮れるように都合七回もポーズを決めるという、芸能人でも「言われないとできないことが多い配慮」を誰に教わるでもなく自然と行うトイカツのプロフェッショナル意識にはただただ脱帽するほか無い。

 今回流れたバレット戦もいずれ実現するだろう。そのときは、よほどのことがない限り手前はトイカツを応援するために会場に足を運ぶつもりだ。


 セミファイナル 85.0kg契約 5分3R
 △郷野聡寛(3R 判定ドロー )ムリーロ・ニンジャ△
 (TEAM GRABAKA)       (シュート・ボクセ)

 先回の後楽園における鮮やかなKO勝ちの印象を帳消しにするかのような膠着戦。その試合後「修斗一本で生活ができるようになりたい」と涙ながらに訴えていたが、今回のような試合が続くようでは修斗がいま以上に儲かるシステムになったとしても郷野の生活は安定しないままだろう。
 試合前、恒例となりつつある「俺だけの郷野ーっ!」という声援が飛んだが、声の主は次の郷野戦でも同じことを言えるのだろうか。


 メインイベント ライト級 5分3R
 ×アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ(3R 判定 )勝田哲夫○
  (ワールド・ファイト・センター)         (SHOOTO GYM K'z FACTORY)

 「昔ハンセンのラリアート、今ノゲイラのギロチンチョーク」と言われるほどに純度が高いフィニッシュホールドで不敗神話を築き上げてきたノゲイラと、「K'zの秘密兵器」として一月の後楽園大会ではバレット相手に大番狂わせを演じた勝田。

 1R中盤にテイクダウンを奪い、そこからインサイドの打撃を繰り出し続けた勝田。2Rの序盤、3Rの中盤にもテイクダウンを奪いつつ、ノゲイラの巧妙すぎるエサに引っかかってギロチンを極められかかるも「汗で滑った(本人談)」ため逃げ切ることに成功。場内も「勝つのか?」というムードが高まり、大・勝田コールが響き渡る。セコンドの指示もボルテージが上がりっぱなしだ。
 結局、終始インサイドからのパンチを打ち続け、最後にテイクダウンを奪われるもそれまでの貯金が利いて勝田の判定勝ち。

 歴史的大勝利に沸きあがる観客とセコンド陣。見るとルミナが涙を流している。それだけノゲイラが強大な存在だったことの裏返しだろうし、またルミナをはじめとしたK’zの選手にとって、勝田は応援せずにはいられないほど可愛い後輩だったのだろう。

 しかし、手前はこの勝利に対して手放しで喜べない。
 理由は簡単。「一本を狙わない選手が難攻不落のノゲイラを倒しても良かったのか?」ということ。

 いや、そりゃぁ確かに快挙だよ。勝田の技術レベルの高さは素人の手前にだってわかった。でも、でもだ。二回も三回も見たいかぁ? こういう試合を。ガチンコなんだから勝ってナンボ、そりゃわかる。しかし「勝ってナンボ」の選手は、所詮その程度でしかないじゃん。手前が見たいのは「勝ち負けを超越した姿」なんだよ。

 さらに言えば「勝ってナンボ」でしかない選手に、あのノゲイラが負けてしまったことがとにかく残念でならない、というのが正直な感想だったりする。やっぱりノゲイラに勝つのは植松じゃなきゃダメだったんだよ。バレットでも戸井田でも朝日でもなく、やっぱり植松だったと思うんだよね。

 「競技」と「興行」のジレンマ、もう何年も前から抱えてきた難題に、修斗が再び直面しつつあるような気がしてならない。
 そんな興行だった。




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