プロレスリングノア
■団体:NOAH
■日時:2001年4月26日
■会場:有明コロシアム
■書き手:Mr.Liar

俺は覚悟を決めていた。今回のノアの観戦記を書くことを。俺が思うに観戦してから、その大会の観戦記を
書こうかなと思っても、もう遅いのである。
観戦する前に自分の中で「よーし、観戦記を書くぞ」と決めることでいろいろなフレーズなどが自分の頭の
中に浮かんでくるのである。
「○○でなければ観戦記じゃない」「観戦記とはこうあるべきだ」「誰々のは感想記で観戦記じゃない」
なんて巷を賑わしたことがあった。俺に言わせれば「馬鹿野郎」である。俺達はプロの文屋じゃねぇんだ。
何のしがらみもなく自分の見たもの、感じたものを誰に遠慮もせずに書くから面白いんじゃねぇか。
これが素人の特権だしプロに醸し出せない面白さがあるんだよ。生前、DJの松宮一彦はこう言ったさ。
「俺は全ての曲に声をかける。録音なんかされてたまるか」
松宮は自分の選んだ曲に少しでも「自分」というものを反映させたかったのだろう。また、その曲とともに
リスナーに「自分」をアピールしたかったのだろう。俺が観戦記を通してやりたいことってこういうこと
なんだよな。詳細に試合の流れをリポートするのが最も良質な観戦記かもしれないけど、俺にはできないし
俺は今後も俺流を貫き通す。

前振りはさらに続くが俺はノアを今日初めて観戦した。結果から言うと今日みたいな純血興行で良かった。
先日おこなわれたゼロワンの興行みたいな大会では何かと焦点がぼけるからである。

最近、観戦記ネットを読んでて気付いたことがある。それは観戦記には大きく分けて二つの類の観戦記があると。
ひとつは与えるという立場から書かれたもの、もうひとつは自己満足にすぎないもの。もちろん、いろいろ
見方はあろうがそんな区分けもあるんだなということでご理解いただきたい。俺自身にフォーカスを当てる
と先日の全日武道館のは明らかに「自己満足」のレベルのものである。はっきり言ってあの大会は武藤が見
たくて行ったものなので、あとから読み直してみても武藤の試合をみれた喜びにあふれる自分を感じれるだ
けでそれ以外のメッセージは何もなかった。今回、ノアの観戦記を書くに先だって、自分の中で「与える」
という部分にたって書いていくと決意した。
あとになって書いた自分自身がまた読み返してみたいものに仕上げようと思う。

第一試合
川畑 対 浅子
川畑を見て、とても懐かしい風景が蘇った。脱線するが俺は子供の頃、テレビのプロレス中継で普段あまり
テレビに移らない選手を見るのが好きだった。全日で言うと小鹿とか大熊の極道コンビとか。その極道コン
ビのタイツに川畑のタイツはよく似ていた。もっと解りやすく言うと新日の平田に川畑はよく似ている。
川畑のタイプは典型的な一昔前の全日レスラーの体型、つまりあんこ型。試合ぶりもハイテンポな今のノア
のようなものではなく古き良き時代の全日の前座でおこなわれていたようなもの。飛び技もなく、かと言って
スリリングなグランドの攻防もない。あるのはヘッドロックの取り合い、お互いの胸板への張り手の応酬、た
まにロープへ降っては帰ってくる相手に肘をうつ。いい意味でのかったるさ、野暮さがこの試合にはあった。
昭和時代の新日になにかと攻撃の対象にあげられるような類の試合なんだけど、「これも全日なんだよな」と
改めて納得させれた試合。俺がとても好きな類の試合である。最後は浅子が「今風」に決めたけど展開としては
「昔風」のいい試合でした。

第二試合

志賀 対 金丸

もう何年もふたりの戦いは見てきているのだけれど、しばらく見ない間にふたりとも「自分の型」というかスタイル、
もしくは方向性というものがはっきりしてきて、それがいい意味で交錯している試合だった。金丸は明らかに邪道、外道
のスタイルというものに感化されているし、彼の資質を考えればベストな教材だろう。王道スタイルとかいうものの呪縛
から解き放たれ、その恩恵に預かっている中の一人に間違いなく金丸は入るだろう。お上品である必要などないのだ。場外
で手にしたイスを志賀の両腕にかかえさせ、そのイスにめがけて放ったドロップキック、コーナーで志賀の首を縄で絞める
など金丸はかつて許されなかった攻撃を何の迷いもなく続ける。志賀は志賀で意外なほどのサブミッションマスターなのだ。
要所、要所で金丸を苦しめ、最後も関節でしめた。志賀は迷わずこの道を極めることだ。あの藤原だって、気が遠くなるほど
長い時間をかけて、誰しもが驚嘆するレベルにまで高めたのだから。この時期に、この二人のシングルが実現したことはとて
も重要なことだ。後輩達がどんどん力をつけて二人を脅かし続けるが、どうか二人はあせることなく己の力を追求していって
もらいたい。今、現在の志賀と金丸のスタンスは間違いないし、あと数年たてば血となり肉となろう。勢いだけでは絶対手に
できないものを必ずしや何年後かにこの二人は手にするだろう。何度でもこの対決はみたいね。

第三試合
木村、百田 対 菊池、永原

木村の入場の時の歩き方はとてもよたよたしていて危なっかしかった。いつまでこの人は戦い続けるのだろうか。試合も他の三人
がほとんど動きまわって木村の出番はほとんどなかった。例えて言うと晩年の馬場さんみたいに最後の最後でようやくでてくると
いうタイミングでのみしか動いてなかった。というかもう動けないんだろうな。
入場時、永原、百田の順番でリングサイドにTシャツをなげる。当然、場内からは次は木村という期待が渦巻くが木村はその期待
を見透かすように自分のエプロンをきけいにたたんでコーナーに置く。とすかさず永源がそのエプロンを取ってリングサイドになげ
て試合はスタート。一番の見物はやはり永源のジャイアントスイングだろう。その布石として菊池が低速のジャイアントスイングを
披露。あとに続いた永源がおそらく俺の見た中でもっとも回数の多いジャイアントスイングを披露するのだが、後半になるにしたが
って疲れからかジャイアントスイングをやる側の選手というのは、その中心軸というのが絶えず一定なんだけど、その中心軸が疲れと
回されている選手の重力でどんどんずれていき、しまいにバランスを崩して倒れてしまい会場中の爆笑を誘った。
最後は晩年の馬場が自軍のコーナーに構えてて、そのコーナーにいる馬場めがけて木村が永源を降って十六文というお決まりだった
フィニッシュのように百田が永源を自軍のコーナーに控えている木村目がけて振り、そしてラリアートというフィニッシュだった。

{今日のマイク}
菊池にマイクを渡そうとする百田。菊池が受け取ろうとした時、すかさずそのマイクを木村に渡す永源。あっけに
とられる菊池。そして、
「菊池、おまえ、本当はマイクが好きなんだろ。でもしゃへんなくていいよ」そして菊池が近づこうと
すると「だから、お前はしゃべんなくていいよ」
ここで、場外におりて再び「永源・・・・・、さようなら・・・・」あっけにとられる場内、そして「永源・・・・、
グッバイ・・・」そして「みなさん、コ・ン・バ・ン・ワ(解る人は解る)、ゴールデンウィークの予定は
決まってますか。海外に行く人、国内で旅行に行く人、いろいろいるでしょうが文無しにならないように注意
してくださいね」

第四試合

橋 対 佐野

佐野は本当に引き出しの多い選手である。今、ローリングソバットをきれいに決めれる選手はそういない。また
、ロメロスペシャルの使い手もそういないだろう。新日スタイル、U系、ルチャなど佐野は実にそつなく試合の
流れの中で効果的に出していく。俺は佐野の全盛期はSWSの時だと思っていたがもしかしたら今こそが佐野の
全盛期かもしれない。ノアと佐野。まったく違和感なく溶け込んでいる。対する橋も臆することなく佐野と真っ向
勝負する。ヘッドバット、モンゴリアンチョップ、スミスがよく使う技などで追い込むも佐野の牙城は崩せない。
佐野の貫禄勝利であった。

第五試合

森嶋、力皇 対 杉浦、丸藤

21世紀のノアというかプロレス界を支えていく4人、今が旬のこの4人のタッグ戦が面白くないはずはなくわたくし
Mr.Liarにとってもこの日のベストバウトであったことを最初に記しておきます。とにかく、試合前から観客の
ボルテージも高いし、4人のテンションも高かった。何ていうのかな、もちろんお互いがお互いを認めているし、当然
今後もお前ら伸びてもらいたいんだけど、でも俺もやる気だしお前らには負けたくないし、だからお互いベストをつく
そうぜっていう実に清々しい若者にのみ許される特権であり、お互いがお互いの成長の課程、努力の成果を如何なく発揮
させた試合ってことかな。まわりくどくてごめんね。
まずは杉浦なんだけど会場の声援は一番大きかった。実力者のアレクを圧倒した自信が全身にみなぎってた。スピアー、
裏投げ、ジャーマンなど既に完成品と言える技はあるのだけれど、杉浦に足りないのは全体を貫くリズムというか
流れなんだよね。その辺は天才、三沢光晴から学んで欲しいよね。杉浦はまちがいなく大器だよ。リキはとにかく思い切
りが良くていいね。下半身も相撲で鍛えただけあってしっかりしているしぶちかましも強烈だ
ただ、もう少し細かいプロレス流の返し技とかつなぎ技をマスターして欲しいね。丸藤は天才だね。なんか飛び抜けた印象
を受けるよ。あの打点の高い背面式のドロップキックは丸藤ならでは。体重のあるたけし軍団相手にしても少しも体の小ささ
を感じなかった。本当、丸藤には欠点らしい欠点って見当たらないんだけど強いて言えば、少しその持って生まれた才能に
おぼれていることかな。もう少しプロレスというものを考えてもらいたいし、悩んでもらいたい。というか、俺のわがままで
悩み苦しむ丸藤君というのを見てみたいだけなんだけど。最後に森嶋は俺の予想がいい意味ではずれた典型だよね。デビュー
当時の森嶋はなんか恵まれた体型を生かし切れてないというかもて余していた。森嶋が一線に出てくるのはもう少し時間がかか
るかなと思ってたけど以外と早かった。やっぱりリキの存在が大きかったと思う。今の森嶋は巨体の割には動きもいいし、何よ
り気迫がみなぎってていいね。リキとのたけし軍団はノーフィアークラスのタッグ屋になるのも時間の問題だと思うよ。
試合は森嶋が杉浦から取ったけど誰もが納得できるフィニッシュだった。なにかとシニカルな見方ばかりの俺だけどこの試合は
なんか保護者的な気分にさせられた試合だった。4人とも頑張れ!!

第六試合

大森、高山 対 多聞、池田

多聞ちゃんは本気であった。どれくらい多聞ちゃんが本気だったかというとセコンドについてた同じ頭突きを得意とする橋に試合開始早々
、頭突きを喰らわしたのである。誰もが多聞ちゃんの「本気」をこのことで感じた。先日、藤田との対戦が決まった
高山だけど、特に会場からはそれを祝福したり応援したりするようなコールもなかったし、高山の動きにも「藤田戦出陣」の気構えは感じ
なかった。ノアという空間では今日ここでおこなわれる試合が全てなのだろう。思いの外、高山の動きは悪く、大森の健闘がめだつ。また
何より多聞ちゃんがよかった。

メインイベント 

三沢、小川、斉藤 対 田上、秋山、泉田

今日、俺は南側で観戦していたが、メインだけ選手入場は南側からだった。非常に情けない話だが彰俊の入場の時、不覚にも泣いてしまった。
やっと彼が日の当たる場所に戻ってこれたのかと思うとね。いつの時代でも犠牲になるのは弱い者だし、新日を辞めたのだった本当は彼が辞
めたくて辞めたのではないかもしれない。いや、きっとそうだろう。でなければ、またこうして戻ってくるわけない。本当は彰俊は新日を辞
めたくて辞めたんじゃなくて、彼があまりにお人好しだから周りに気を使って自分から適当な理由を作って辞めたに違いない。でなければ戻
ってくるはずない。俺は彰俊の晴れ舞台をみれてとてもうれしかった。
試合でも、彰俊の蹴りは冴え渡った。ただ、相変わらず守りに入ると脆いけど。それはそれでご愛敬である。
秋山と小川はとても手があう。小川の切り返しはいつ見ても芸術的だ。三沢のキックというのは三沢がまだ
タイガーだった頃、士道館で添野館長に教わった蹴りのみが唯一のレパートリーで先日の小川戦もそうだし、今日もそうであった。でも、フラ
イングエルボーはいつ見ても美しい。
だが、何と言っても今日の主役は田上なのだ。今日の田上は昔、三沢と三冠を争った時の田上であった。三沢の顔面をえぐるトゥキック、抜群
のタイミングで放つ喉輪、渾身の力を振り絞って落とすチョップなど田上がもっとも輝いていた頃の田上そのものだった。
圧巻だったのが試合終了後、森嶋と力皇が乱入して秋山、三沢などに攻撃を加えるのだが、田上は次々に先日の大阪ドーム
での馳のように森嶋、力皇と喉輪でしとめるのだが、ふたりだけではあきたらず三沢や、あげくのはてには今日一緒にタッグを組んだ
秋山にまで喉輪を決めた。当然、場内は田上コール全開だ。今日はこんな田上をみれただけで後楽園にまで行ったかいがあった。

総括

とにかく田上である。ゼロワンとの抗争が今後も続くようならばはっきり言って究極の秘密兵器は田上と言って過言ではないと
俺は確信した。
また、今日の興行を見て、団体としてのまとまりというか結束力、また揺るぎない自信みたいなものを感じた。まぁ、今後もノ
アを強烈に応援していこうなんて間違っても思わないけど、この団体には業界のトッププランドとしていつまでも君臨してほしい
なと強く感じた。




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