胸を張ろうぜNOAHファンよ! 4/15 NOAH 有明コロシアム大会観戦記
■団体:NOAH
■日時:2001年4月15日
■会場:有明コロシアム
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 この文章のすぐ上にある「愚傾」という文字をクリックすると、「好きな団体:NOAH」、「好きな選手:三沢光晴」と書かれたプロフィールを目にすることができる……ってまぁ、ようするに手前のことなんだけど。知らなかったという人、すっかり忘れてたという人、っていうか愚傾って誰?という人、まぁいろいろいると思うので改めて説明すると、手前こと愚傾はこれでも一応「NOAHと三沢のファン」なのである。

 自分が好きな団体と選手をわざわざ前口上のなかで説明しなければならないのも我ながら情けない話ではあるが、実際問題として手前には「旗揚げ戦以来NOAHの観戦記を一本も書いてない」という恐ろしい事実があるのであって、かかる情けない事態だって自業自得としか言いようがないのだが、ちょっと未練がましく言い訳をさせてもらうとするなら「NOAHの観戦記は非常に書きにくい」と言いたい。

 だがしかし、今回の興行はNOAHにとって非常に大事な「初代チャンピオン決定戦」があるわけで、昨年末の同会場における興行に続いて、第二のターニングポイントとなる興行である。情けない言い訳などして執筆から逃げている場合ではないのだ。本当にNOAHファンであるのなら。

 というわけで、およそ8ヶ月ぶりの愚傾によるNOAH観戦記である。

 本来ならば試合前に今回の会場となる有明コロシアムからすぐ近くのディファ有明で行われる「プロレスグッズフェスティバル」なるイベントの「レスラー入場テーマイントロ当てクイズ大会」に出場することになっていた知人の応援のため、遅くとも試合開始より二時間早い午後一時くらいには有明入りしようと思っていたのだが、自宅のベッドで目が覚めたのが丁度その時間、午後一時。

 自分の寝坊癖はもはや「病気」か「七代前の先祖のタタリ」といった類の言葉で表されるものであると思う。というか、そうとでも思わない限り説明がつかない。なんせ以前に務めていた職場でも「勤怠不良」を問題にされ、「今度遅刻したら辞表出せ」と上司言われた翌日にいきなり二時間の大寝坊をしてしまうくらいだから相当である。手前にはこの手の「寝坊」と「遅刻」にまつわる愉快なエピソードが豊富にあるのだが、あんまり胸張って自慢することじゃないし手前が遅刻しようが何しようがNOAHの興行にはまったくもって影響は無いしそもそも余談だし、ということでここでは割愛。

 そんなこんなで会場に着いたのは試合開始を少し(じゃないか……)過ぎた午後三時二十分。場内に入ると既に第二試合の途中だった。ちなみに、今回トップページにUPした速報の第一試合に関するくだりは、手前とは違ってちゃんと時間通りに有明コロシアムに到着した親愛なる友人に電話で伝えてもらった内容を記述させてもらった次第である。

 というわけなので、非常に申し訳ないが第二試合から。

第二試合 6人タッグマッチ 30分1本勝負
ラッシャー木村、百田光雄、×橋誠(14分2秒 片エビ固め)泉田純○、永源遥、菊地毅

 場内に入ってリングに視線を移すと永源さんが百田さんをジャイアントスイングに捕らえていた。今日は二十回まわしていた。以上。

 ……で終わらせちゃいかんか。

 なんというか、この定番カードには手前に限らず多くのNOAHファンの間でも「とっくに飽きた」という声が上がってる。
 特にラッシャーさんの足腰の衰弱ぶりは目に余るものがあるほどで、そんな選手の相手をしなければならない伸び盛りの若手選手が可哀想ですらある……のは確かなんだけど、しかしこのカードが無くなる(=年寄り三人が退く)としたら、それはそれで寂しいものがある。
 やはり永源さんと百田さんの「間」の作り方は絶妙だし、ラッシャーさんのマイクだっていまだに存在感はある(なんせ今回のマイクなんて「永源の仲人は退陣間近の森総理だった」という衝撃の事実を告白してたんだから)。

 また、気の持ちようによっては、この定番カードも楽しめないこともない。非常にゆったりした気分にさせてくれる効果、ロックで言えばピンク・フロイドのような「心地よいけだるさ」が、このカードにはある。

 というわけで、このカードを巡る賛否両論には、どっちの言い分にも一理ある、非常に扱いの難しいカードである。


第三試合 シングルマッチ 30分1本勝負
×丸藤正道(17分55秒 スコーピオスプラッシュ)スコーピオ○

 丸藤という選手は見るたびに良くなっている。なんせ”あの”スコーピオ相手に観客を沸かせる、素晴らしい勝負を展開してしまうのだから恐れ入る。
 先のZERO-ONE旗揚げ戦でも、大熱狂の第一試合を作り上げた丸藤(と星川)には感謝してもしきれないといった感想をどこかで漏らしていたらしいが、それはあの日、両国国技館であの試合を観ていた人間なら誰もが納得することだろう。

 丸藤の評価が内外問わず高いのは、発達しすぎた全身のバネと爽やかなルックスによるものであるのは勿論だが、それと同じくらいに綺麗なバンプが取れるということも大事なポイントだと思う。技の組み立ても悪くはない。単なるトラースキックを終盤まで温存し、それでオオッ!と言わせることのできる選手なんて、あのキャリアではなかなかいない。

 少し前まで感じられた「なんでもサラリとこなしてしまうため”生々しい感情”が見えにくい」という、天才肌のレスラーが持つ宿命的な弱点も、最近になって(徐々にではあるが)克服されつつあるように見受ける。

 と、まぁ褒めちぎる内容に終始するのも我ながらいかがなものかと思うが、正直、今日の試合を見た限りでは悪く言うべきポイントが見当たらない。メインを別格とすれば、間違いなくこの日のベストバウトだった。


第四試合 タッグマッチ 30分1本勝負
○本田多聞、井上雅央(14分53秒 タモンズ・シューター)大森隆男、浅子覚×

 不器用さに味がある「ヘタウマ」の大森と、器用貧乏が全身から滲み出てる「ウマヘタ」の雅央による、中途半端に安定した、いかにもメジャー団体の興行における中盤戦といった試合。多聞も終盤に放ったデッド・エンド二連発が目を引いた程度で、18日のZERO-ONEに向けてのアクションは何も無し。橋本・安田組の相手として名前が出たのは単なる当て馬としてか? と思わせるほど、何も無し。別にそれが悪いと言いたいわけじゃぁないが。

 余談だが、ZERO-ONE第二弾興行への選手貸し出しについて、三沢の決断(小川・安田の相手は多聞・雅央)には批判の声が高まっているが、手前は「NO!」とはまったく思わない。むしろ「よくやったぞ、三沢!」とすら思う。

 ようは今回の一件というのは、

「旗揚げ以来初のシングルトーナメント、つまり新日本で言えば『G1クライマックス』に当たるシリーズの、なおかつ今後の興行の軸となる初代チャンピオンを決める試合の話題が霞んでしまうことになるけど、まぁそんな細かいことは気にしないでウチの興行に出てくれ(ついでに三月に譲った星も返してくれ)!」

 という、橋本の【極めて理不尽な要求】に対して、三沢は

「そうは言ってもウチはウチで大事なシリーズなんだから、そう簡単に選手は貸せないよ。オレが出るっていったらトーナメントの話題が霞むしね。けど、そっちとの関係をここで一方的に絶ちきるのもアレだから、一応選手は貸すよ。本田と井上ね。オレとか秋山と比べるとだいぶランクは落ちるけど、ちゃんと星も返してあげるから。でも、下手な真似はしないようにね。ウチの本田は”プロレス”はともかく、(右手でピストルのサインを作りながら)”こっち”は相当イケてるからね。」

 と、橋本にとって【極めて理不尽な回答】を出しただけである。「理不尽」に「理不尽」で対抗することの何が悪いのか、手前にはまったくわからない(勿論、表に出てきたスカパー絡みの問題や表に出てない関西の某放送局との兼ね合い等、いろいろな事情はあるだろうが)。
 これまで団体間の交渉において橋本(というか猪木)の手のひらでいいように操られていた三沢が、ようやく手痛いシッペ返しを食らわしてやったのだ。これを痛快と言わずして何を痛快と言おうか。蛇足ながら、もし手前がNOAHファンではなかったとしても同じような感想を持ったはずである、ということは付け加えておく。

 余談が過ぎた。
 それにしても、いまになってこの試合を振り返ってみても、浅子が誰を相手に何をどうしていたかがまったく思い出せない。
 一応、そこそこのキャリアを誇っているにも関わらず、ここまで存在感が皆無な選手も珍しい。そういう意味では浅子というのはマット界広しといえども希有な存在と言えるかもしれない。


第五試合 シングルマッチ 30分1本勝負
×斎藤彰俊(3分35秒 KO)ベイダー○

 昨夏の出航以来、NOAHにとって一番の「うれしい誤算」はアキトシの復活〜参戦と、その後の奮闘ぶりであろう。
 この日も威風堂々とした入場から、ベイダー相手に臆すこと無くキックを叩き込み、さらにはバックを奪って170キロの巨体を完璧に抱えあげてバックドロップに切ってとる。

 しかし、今日のベイダーはいつにも増して怖かった。

 アキトシの打撃を食らってもまったくひるまず、倒れず、反撃の腕パンチをブンブン振り回し、おかえしとばかりに投げ技を連発。とっくに3カウント奪えそうな状態であるにも関わらず、カウントを途中で解いてベイダーハンマー。

 アキトシ失神KO負け。

 しかし、三分あまりの時間にギッシリと具が詰め込まれた展開に、手前も含めた観客は皆、試合後の両者へ惜しみない拍手を送っていた。


第六試合 6人タッグマッチ 45分1本勝負
小川良成、池田大輔、○佐野巧真
   (23分36秒 タイガースープレックスホールド
      志賀賢太郎、金丸義信×、杉浦貴

 この試合は選手一人ずつ入場。ダイスケは漫画ベルセルクの主人公が持つ、身の丈以上のでっかい刀を久しぶり(?)に持参して入場。手前がこれを見るのは旗揚げ戦以来だ。

 ゴング後、志賀組がいきなり急襲するも、佐野が杉浦を場外に放り投げ、小川とダイスケが開けたロープの間からトペ・スイシーダ一閃。このスポットを見ただけで、佐野がNOAH勢に溶け込めていることが窺い知れた。この時点で「これはいい試合になるぞ!」という予感がプンプン漂ってきたのだが、ここから恒例のSLT(シガケン・ローンバトル・タイム)が始まる。

 生まれつきの貧相な顔立ちと脂肪のつかない肉体のせいでいつまでたっても若手イメージを拭い切れないシガケンも、気がついたらこのメンバーの中では二番目のベテラン、まして全日本でのデビューは一番古い選手。怪我をしないようなバンプは取れても、決して見栄えの良いバンプが取れているわけではないシガケンがいたぶられまくる姿に「がんばれ!」という声援ではなく「しっかりしろよシガケン!」という野次がひっきりなしに飛ぶのはNOAHの会場ではもはやお約束の一つ。

 そのあまりに不甲斐ないシガケンが溜めた鬱憤をHotTagの成立したパートナーがスカッと晴らすというのがNOAHにおけるシガケン絡みのタッグマッチの定石なんだけど、今回その役目を受け持ったのが脅威の新人・杉浦。リングインするやいなや佐野と小川をスピアで吹き飛ばし、返す刀でダイスケに俵返し二連発。
 確かにシガケンの不甲斐なさを浮き彫りにさせた後にこれをやると、杉浦の個性は強烈にアピールできる。しかし、これは計算してやっていることなのか偶然の産物なのかは判断に苦しむところだ。どっちにしろシガケンの置かれている立場は本人にとって満足のいくものではないだろうが。

 このHotTagから試合は動き出し、金丸の各種急所攻撃、小川のサミングやDDT、ダイスケのイナズマ、シガケンのスイングDDT、佐野のロメロといった具合に各々が持ち味を披露しはじめる。それは確かに女子プロやメキシカン、ジャパニーズ・ルチャのそれと比べるとスピードと展開の起伏で劣るものの、最初から最後までアクビの出る試合ばかりやっていたNOAHのジュニアに佐野が一枚加わっただけで展開に幅ができ、ここまで「見れる」ものになったことは特筆すべきこと。やはりジュニアヘビー級でメヒコの空気を吸ったことのある人間とそうじゃない人間の差は大きい。

 細かい注文をつけるとするなら、佐野と小川は分けたほうがいい。金丸はまだ他の二人をコントロールできるほど六人タッグを熟知していない、といった具合にまぁいろいろあるのだけれども、それにしてもこのカードをダイスケの代わりに丸藤、シガケンの代わりに小林健太が入れてやってみたらどうなるか? IWAJapanで丸藤・小林と対戦したアジアン・クーガーを引き抜いて(←ちなみにこれはマジでやって欲しい)、このメンツに組み込んだらどうなるか? など興味は尽きない。

 NOAHのジュニアはこれからどんどん変わっていく、ということを予感させた六人タッグだった。


セミファイナル タッグマッチ 60分1本勝負
秋山準、○田上明(20分26秒 ノド輪落とし二連発〜片エビ固め)力皇猛×、森嶋猛

 これまで半年余りの間ライバルストーリーを紡いできた力皇と森嶋が、ついにタッグ結成!
 ……したのはいいが、個人的には「まだ早ぇよ。最低でもあと半年はライバル関係続けさせるべき」というのが、このニュースを耳にしたときの手前の率直な感想。もっとも三沢だって本当はそうしたかったというのが本音かもしれないが、やむにやまれぬ事情――例えばカードの行き詰まりや、TV放映開始に合わせた新展開、さもなくば今大会のウリが足りなかった――があったものと思いたい。共通点の多い両者を組ませたにも関わらずコスチュームがお揃いでは無い等の準備不足を考えると、このカードは急遽組まれたものである可能性は充分にある。ちなみに秋山は白のロングタイツにコスチュームを変更。個人的には似合ってるとは思えない。一時の気の迷いであることを祈る。

 この試合も一人ずつ入場。順番は力皇→森嶋〜田上→秋山。力皇・森嶋は「先輩である森嶋が後」であるのに対し、田上・秋山は「後輩である秋山が後から」ということ。
 つまり何が言いたいかというと、秋山と田上の序列は全日時代と比して完全に入れ替わってるということである。この点から言っても、昨年から今年にかけての秋山の躍進ぶりがわかる。田上の後退ぶりもわかってしまうのが寂しいところだが。

 ゴング後、明確なチーム分けこそされていなかったものの派閥としては秋山派に属していた森嶋が、かつての上司秋山と対峙。いきなり顔面をバシンと張る。秋山はお返しに強烈な「ガン飛ばし」を森嶋に。しかし森嶋も引かず、胸をつきあわせてキツイ視線を返す。睨み合う両者。
 向かい合ったまま凄い形相で森嶋の首を片手で掴み、突き上げながらコーナーに押し付ける秋山。漫画「北斗の拳」なら「オマエらのボスはどこにいる」「(ビビりながら)ヘヘッ、知っててもテメェになんかにゃ言うもんか」という会話が交わされるであろう構図である。

 ここで、もし秋山がケンシロウなら秒間に百発のパンチを打ち込んで森嶋をなぶり殺しにするか、秘孔を突いて無理矢理口を割らせた挙げ句に脳天を破裂させるかのどちらかだが、秋山は北斗神拳ではなくレスリングを身に付けたプロレスラーなので、森嶋の反撃、すなわち「首を掴む手を振り払って強烈な顔面ビンタ」を森嶋が浴びせるのを待ち望む。何ゆえに? 愛ゆえに。ってこれじゃケンシロウか。いやそうじゃなくて、これも秋山の先輩プロレスラーとしての「愛」である。自分の元を離れて新たな道を歩み出す後輩に自分の頬を張らせることによって、後輩に自己主張のチャンスを与えようとしているのだ。

 さぁ、お膳立ては整った。後は憎々しげな表情の秋山の頬を思いっきり張ればいい。さぁ早くやれ! もう俺はアンタの下っ端じゃないんだという意地を見せ付けてやれ! さぁ!! さぁ!!! まだか? 早くしろ! あれ? 何もしないで力皇の控えるコーナーに下がろうとしてるぞ? あ、タッチしちゃった。森嶋、秋山にビビってやんの……(溜息)。

 その後、力皇と森嶋はそこそこのコンビネーションとそこそこの意地――バックドロップとノド輪落としのコンビネーション(=聖鬼軍スペシャル)を、コピーライトの所持者である田上に放ったのが個人的なハイライト――を見せるも、観客の心を一つにするだけのパワーも、グッとくるモノも見せられず、最後は田上のノド輪に沈む。

 個人レベルで言えば、力皇は「合格」。最初の一発以降、最後まで秋山の顔面を張ることなく、終盤にはスタミナ切れまで起こした森嶋は「もう少し頑張りましょう」といったところだ。試合後に秋山が見せた露骨に不快そうな表情は、恐らく叩いても響いてこなかった森嶋への憤りであろう。しかし、チームとしては「負けた」ことにより、合格点を与えてもいい。もし「勝っていた」のであれば不合格どころか赤点をつけるところだが。

 新生タッグチームの最初の一戦におけるブックは後の展開を明確にあらわす。
 もし力皇・森嶋が「勝った」のなら、このチームは「NOAHの序列崩壊〜地殻変動」というムーブメントを起こすべく組まれた、つまり【NOAHという団体の今後】を担うチームということ。二年前に川田・田上組を撃破したノーフィアーのように。
 逆に力皇・森嶋が「負けた」ということは、このチームは「下から這い上がる」という【一つのアングルだけ】を担ったチームだということ。

 前者と後者を比した場合、後者にかかる負担は明らかに小さい。しかし、力皇・森嶋はその負担に対する責任は果たせたように思う。二人のキャリアを考えれば充分な結果(*)だ。

 *:こう言うと「二年足らずのキャリアでもその団体の中核になっている選手は余所にいくらでもいる」という反論がきそうだが、「上」が豊富な団体でのキャリアとそうじゃない団体でのキャリアは種類がまったく違う。「プロレスやり始めて三年程度の丸藤があれだけ頑張ってるのに、十年くらいプロレスやってる浅子はだらしがない」というの至極真っ当な意見だし、実際に手前もその通りだと思うが、「同じくらいのキャリアなのに闘龍門の斎藤了に比べて新日本のヤングライオン達はだらしがない」と評するのはナンセンス極まりない。


メインイベント 初代ヘビー級王座決定トーナメント決勝戦 時間無制限一本勝負
○三沢光晴(21分12秒 エメラルドフロウジョン〜体固め)高山善廣×

 決勝戦のメインイベント。
 片方の三沢は順当(秋山は今回は無いと思っていた。理由は後述)としても、もう一方はベイダーが上がってくるものと思っていたので高山というのは意外だった。
 しかし、よくよく考えてみれば昨年の全日本チャンピオンカーニバルにはパートナーである大森が決勝に進出しているので、翌年にベイダーを差し置いて高山が上がってくるのは当然といえば当然である。迂闊だった。やはりプロレスのブックを満足に読めるようになるには最低でも一年単位のスパンで過去を振り返り未来を見据える習慣が必要である。手前はまだまだ甘い。

 GHCトーナメントのテーマ曲(らしい。手前は開幕戦のチケットを会場までいって当日券が取れなかったりスケジュールが合わなかったりで今シリーズはここまで生観戦してなかった)が流れ、青コーナーから高山、赤コーナーから三沢が入場。
 仲田龍リングアナによる選手コールの前に、王座決定戦の認定宣言が出された。このとき認定書を読み上げたのはなんとジョー樋口。しかし、あまりに唐突なジョーの登場に、久しぶりの「ジョーコール」は起こらなかった。次回防衛戦の時には「ジョーコール」を起こすきっかけを作って欲しいものだ(全日武道館での「キョーヘーコール」も小っちゃくなっちゃったしね)。

 試合は高山のミドルキックと膝蹴り、三沢のエルボーが終始交錯し続ける展開。こう書くと、なんだ、単調な試合だったんだな、はは、三沢と高山じゃそんな程度のもんだろう、などと思われそうだが、そんなことはなく、高山の充実した攻めと三沢のバンプの上手さが相成ってとにかく緊迫した試合となった。
 NOAHの選手のバンプの上手さを見るには高山の蹴りを食らいっぷりを見ると非常にわかりやすい。三沢、小橋、秋山は勿論として、雅央、丸藤といったところは上手い。逆に田上、多聞はヘタッピだ。またまた余談だが、先のZERO-ONE旗揚げ戦において、個人的評価がプロレスファン全体の評価と比べると著しく低いアレクサンダー大塚が、意外にも高山の蹴りを上手く食らってるのには驚いた。これはバトラーツのリングでダイスケや臼田、田中稔らの蹴りを食らいまくった成果の現われであろう。

 途中、三沢がサンボ流の入り方からの膝十字固めや腕ひしぎといったサブミッションで、息の切れかかった高山を休ませる一幕も。タイミング的にはバッチリだったが、タップを奪いそうな雰囲気も、その箇所を後から責めたわけでもないのだから、ここはフェイスロックに移行したほうが良かったのでは? と思う。というか、三沢のフェイスロックに神通力が戻ってきて欲しい。超世代軍時代を知らないファンに「あの技はジャンボからギブとったことがあるんだぞ」と言っても絶対信用されないだろうし。

 ハイライトは高山のジャーマン二連発。高山はUインター時代からこの技にはこだわりがあるのだろう。決して「投げ捨て」のジャーマンはやらず、必ず巨体に弧を描かせる。決して「投げ捨て」が嫌いなわけではないが、新日本の真壁にしても、やはり3カウントを奪えそうなジャーマン……というか原爆固めを使う選手は無条件に応援したくなる(「投げ捨て」ではあるが、多聞のデッドエンドも大好きな技だ)。
 勿論、三沢の受け身が際立っていたために誰の目にもピンチであると映ったことは言うまでもない。

 高山は秘策タイガースープレックスホールドを繰り出すも、三沢はカウント2で返す。高山は最後の手段としてハイキックを繰り出すも、三沢はこれをエルボーで迎撃。そして顔面に強烈なエルボー。コーナーに追い込んでバックエルボー。左右のワンツーエルボー、ランニングエルボーで追い込むが、これらの各種エルボー総攻撃を高山はすべてカウント2で跳ね返す。
 最後は三沢も奥の手エメラルド・フロウジョンを出してピンフォール。三沢が初代GHC王者に輝いた瞬間だった。

 さて、手前の稚拙なリポートでどこまで伝わったかわからないが、三沢が全日本でのブッカーに就任し、馳やベイダー相手に試行錯誤を繰り返すことによって「脳天逆落としキックアウト合戦」からの脱却を図りだして以来、手前が観てきた三沢の試合のなかでは最高のベストバウトである。というか、久しぶりに三沢の「いい試合」を観たという感覚が強い。高山にとってもUインター時代に初めて川田と戦ったとき、もしくはノーフィアー結成前にチャンピオンカーニバル公式戦で大森と30分フルタイムドロー以来のシングル名勝負といえるのではないだろうか?

 思えば、御大が亡くなって以来、三沢の眉間にはいつも皺が寄り、出てくるコメントも「社長」としてのそれが殆どだった。というより、三沢に「ファイター」としての声を聞こうとするマスコミは皆無だったように思う。当然、我々ファンも三沢を「ファイター」ではなく「社長」として見るようになっていた。

 そこにきて、今回のGHCトーナメントである。
 開幕前、三沢は「今回は社長としての顔をいったん捨てて、レスラーとして勝ちにいく」というコメントを出した。
 はっきり言って、手前は新聞紙上でこのコメントを目にした時点で「三沢優勝」を確信した。嘘のつけない(*)三沢は自分が優勝するというブックを漏らす代わりに、「初代王者に恥じない内容を残す」という覚悟のほどを我々に見せたのだ。

 *:三沢が「嘘のつけない男」であることは今更言うまでもないことだが、最近の例で言えば昨年末に橋本が「NOAH参戦」を打ち出してからの一連の発言を見るとわかりやすい。よせばいいのに出してしまった「本音」のオンパレードである。こういうところが「プロレスラー:三沢光晴」の一番ダメな点だが、手前が「人間:三沢光晴」を愛してやまない一番の理由でもある。この感覚は新日本の藤波社長やRINGS前田CEOのファンの方なら容易に理解してもらえると思う。

 三沢はその覚悟に違わぬ素晴らしい試合を決勝戦で見せた。一度は見限りかけた「スーパープロレスラー三沢」が復活したのだ。諦めつつも寝ずに待ち続けた果報がやっと届いたのだ。こんなに嬉しいことが他にあってたまるか!

 そして今回の興行だ。
 本稿の冒頭で「NOAHの観戦記は非常に書きにくい」と書いたが、それはNOAHのリングには「ハプニング」が少ないというところからきている。

 そりゃぁ、「事件」はある。例えば力皇と森嶋のタッグ結成なんていうのはNOAHファンにとっては「事件」だ。しかしNOAHファン以外にとっては「事件」でもなんでもない。というか、NOAHファン以外は力皇と森嶋がライバル関係だなんて知らなかったことである。
 じゃぁ「ハプニング」とはどういうことかというと、端的に言えば「他団体の選手が乱入」したり、「プロレスの規律を乱しかねない試合」のことを言うわけだが、そういうことはNOAHのリングでは(旗揚げ戦における垣原のファイトを例外として)まず起こらない。

 闘龍門やDDTのように「ハプニング」が無くても「事件」であっ!と言わせる団体や、新日本のように「ハプニング」が「事件」を凌駕する団体が中心の日本マット界において、NOAHは「リング上の試合のみ」で勝負している数少ない団体で、そしてそれらの最高峰に位置する団体である。

 今回だって提携団体の興行が三日後に控えているのだから、ZERO-ONEから橋本真也なり、小川直也なりが乱入してきてもおかしくはない。

 しかし、NOAHという団体にはそれがない。

 それがツマランというのなら、それはそうだろう。その人の気持ちはよくわかるし、反論のしようもない。というか実際に「ハプニング」や「事件」のある団体のファンをうらやましく感じるときだって、他のファンはどうか知らんが、少なくとも手前にはある。

 そういう反論に対してNOAHファンは、こっちはそういうNOAHが好きなんだからしょうがない、としか言いようが無い。あるいはアングルやハプニングがあろうがなかろうがどっちでもよくて、そこにNOAHのリングと選手がいればそれだけでOKなのかもしれない。ミもフタも無いかもしれないが、好きになる理由にミもフタもなくたっていいんじゃん、というのが手前の意見。

 「猪木なら何をやっても許す」のが猪木信者の条件であるならば、手前は「三沢なら何をやっても許す」という三沢信者でありたい。

 だからNOAHファン(に限らず多くのプロレスファン)は自分の好きな団体に誇りを持つべきだ。コンプレックスを拭い去ろう。
 「イノキキチ○イ」という呼称が蔑称ではないのと同様に、我々にとって「ノアヲタ」という呼称は蔑称ではない。

 「オレにとってのNOAHみたいなもん、アンタにはある?」を合言葉に、胸を張ろうぜNOAHファンよ!




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