猪木祭り 2000年12月31日 PPVにて
■団体:猪木祭(主催:毎日放送、大阪ドーム、後援:DSE)
■日時:20世紀から21世紀にかけて
■会場:大阪ドーム(PPV)
■書き手:ノリリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 MC伊津野亨、T山本、赤井、圭修の売れてない方(または誰も覚えてない方)
 
 猪木祭りはP11で発表された。大阪城ホールという噂だったが、正式発表の時には大阪ドームになっていた。ふつうに考えれば大晦日なんて馬鹿げた開催日だ。これが23日だの30日だのだったら儂も駆けつけているが、まともな家族持ちにとってはきわめて困難だ日だ。だいたいPPVをみれるかどうかですら、困難がある。しかし、猪木の中では20世紀の最後の日に20世紀を総括する大イベントを行う必然性がどうしてもあったのだ。それが何かは儂にはわからないが・・・
 
 人は人のために泣かない。その人と過ごした自分の歴史のために泣くのだ。力道山・馬場・猪木・長州・UWFと並べて昭和から平成の12年へ至るフィルムが流れると、それとともに人生の青春が属する側の半分を過ごした者の涙腺はそれだけでゆるむ。おそらく人生の大半を過ごした者達の涙腺もゆるんだことだろう。そして猪木がでてきて『道』を詠むと、もはや一歩も前にでなくなっている自分の足のために泣くのだ。
 
 第一試合:藤原嘉明vsJ・マッコォーリー
 Jマッコォーリーはリングス・新日・Remixなどに精力的に選手を送り続けるLAボクシングジムのSマッコリーの弟だったと思うんだが、確かではない。武藤のNBM(侍の番組)にも出ていたもともとプロレス指向の強い男だったと思うんだがなあ。 ともかく藤原はもう50だし、最近はどちらかといえばタレントの仕事の方が多い。技の切れといっても、もうどうしようもない。かなり苦しそうだ。対するマッコリーもやはり手を抜いているし、かといってスイングしたいい動きを出せるかというと、そんな経験もない。マッコリーの打撃なんかスウェーの練習にしか見えない。
 試合自身はかなり出来が悪い。それでも第一試合は藤原である必然がこの猪木祭りにはあったのだろう。理由は言うまでもない。試合は10分くらいで藤原が足で腕を固める腹固めで、マッコリーをタップアウト。
 
 第2試合:宇野薫・小路vs松井・Gサスケ
 注目のこの試合。宇野は2週間前にルミナに負けていたらこの試合にラインナップされなかっただろうから、あの試合は宇野にいろんな世界へのパスポートを与えた。プロレス的な動きを宇野・小路がどれくらい見せるかが、この試合に集まる浅薄な興味だった。
 最初は明らかなプロレスムーブは控えて、徐々に小出しにしてヒートを誘うのがセオリー・一般的なプロレスの”流れ”だが、最初からほぼ全開であった。出鼻の宇野vs松井のグランドもNHB的ではあったが、くるくる廻る明らかなプロレスムーブだったし、小路vsサスケはそんな留保もなく、いきなりロープにとんでいた。しかし、それはかえっていいことだったかもしれない。そこでプロレスの動きならまだしも、プロレスの”流れ”まで組み込んでしまうと、宇野や小路がプロレスの動きをしたことによって起きた会場の暖かい空気が冷えてしまうかもしれない。
 本来なら宇野の細い体が、学生プロレスの雰囲気を漂わせてしまうところだが、修斗のチャンピオンの肩書きがそれを防いでいた。試合より気になったのはその細い宇野が怪我をしてしまうことだ。だから技も何となく規定演技的に終わっていたが、これは修斗との対比でもってみせるものだと考えればいいのだろう。ルミナvs宇野には存在しなかった類の緊迫感が存在した。いい悪いはべつとして。
 小路はそこそこプロレスができる。松井もできる。しかし、規定演技の枠を越えない。そういうプロレスなら誰でもできる。しかし、これもPrideとの対比で観るものだろう。経験が両者ともほとんどないんだからしょうがない。
 放送席の間抜けがバンプだのプロレスの受け身だのいっていたが、プロレスの受け身って言うのはただ怪我をするのを防ぐためのものではない。技を見栄えよく受けて、ダメージを表現してはじめてバンプだ。まあそこまでできないのは仕方ない。
 試合は宇野小路のダブルドロップキック、コンビプレーでのスタンドレッグロック(なぜ回転してSpinning toe holdにしない?)、小路のケブラータ(失敗)などをアクセントとして展開した。最後はサスケがサンダーボムからラ・マヒストラルでピン。
 ここで、これをもって、サスケ>宇野>ルミナ(修斗)という序列を言い出す馬鹿がいるとお嘆きのもの達がネットにいたが、そんなことはないぞ。そういう意見は正しい。まさにそういう序列があるのだ。そういう一面を理解せずしては目をつぶったまま野をいくようなものだ。
 
 第3試合:ルッテン&アレクvsリコ・ロドリゲス&佐野
 子供のお風呂タイムだったのでほとんど観ていない。ルッテンは放送席ではすごく評価が高かったが果たしてどうであったのか?おそらく見直したりしないであろう。
 
 第4試合: 橋本vsGG
 橋本は闘魂伝承で入場。まあテーマミュージックは同じでもいいんだけど、ガウンとかコスチュームを変えるのにはいい機会だったんだけどなあ。なんといって2年間はババ踏んでたんだから、人身一新のいい機会だったと思うんだが・・・まあいい。GGはローマの剣闘士のコスチュームでいつもの女のマネージャー一人だけ連れて入場。なかなか極まっているが、少し太っているので、デブに厳しい人が見たら笑っちゃうかも。デブに厳しいやつはプロレスをみるな!
 試合はパンチをねらうGGといつものポーズでパンチをさける橋本のさぐり合いでスタート。とQ!GGが急にラッシュして数発のパンチで橋本ダウン。カウント6,7,8と進んでもたてない橋本・・・ここらへんはベリーされ続けてきた歴史やT・ホーム戦の記憶が橋本のダウンに緊迫感を与える。とR!なんと橋本はするするとカウントして場外へ、するとカウントは場外カウント20に一から数え直し!!!なんとすばらしい。『GGは理解してないんじゃないですかねえ』と山本。おお、いい解説だ。リング印した橋本は今度はローを主体に反撃。GG痛がる。GGうまいうまい、セルがうまい・・・というか、本当にいたいようだ。太股に充分肉が付いてないGっが痛くないわけがないわな。次に橋本とGGがパンチと袈裟切りの撃ち合い。橋本優勢か・・・橋本後ろを取る・・・なんとGGが膝十字・・・となるスポットだったがGGが一回目は失敗。こうなると応用の効かない素人のGGが混ざった一戦だから橋本としても同じ動きを繰り返さないと仕方がない。(もっとも橋本もそう臨機応変なタイプではないが)
 ともかく橋本の膝が器用に入ったGGの膝十字にとらえられる。痛い橋本。これも橋本の歴史が強い緊迫感を醸し出す。いつscrewされるか・・・しかし何とかロープ。GGがさらにラッシュ。橋本見事な払い腰一閃。小川と戦ってては出せなかったが橋本の柔道技も重みがあってなかなかの迫力だ。橋本はさらに怒りの頭突きを1ダースたたき込んでGGを半KO。きっちりと最後は片逆エビ固めでタップアウトをとった。
 これを第5試合:小川vs安田戦と比べてみよう。安田が開始直後にラッシュして小川を押しつぶしてストンピングをふらせてヒートを誘ったが、ブレークの後は相撲でも負けてパンチから裸締めであっさり2分弱でレフェリーストップだった。この試合にはスポットは安田のラッシュと(誰も思わないかもしれないが)小川が相撲でも安田に負けなかったの2点しかない。相手は経験豊富な安田なのにだ。対して橋本vsGGは片方は不器用・片方は素人なのに山あり谷ありの複数のスポットを含んだ試合だった。これをもって小川が悪い、橋本がいいと言うつもりはない。ただ、試合だけで面白くしようとしたら橋本の手法になる。小川の方法はベリーの山と最強幻想がないと成り立たない。だから、これを読んだ人のうちに、小川の試合に比べて橋本の試合がぬるかったという短絡的な考えをもった人がいたらその点を考えてほしい。
 小川・安田戦の試合後佐竹・橋本の乱入があってなぜか藤田が止めてなかなかギャラのかかった幕間があった。しかし、ヒクソンのギャラに比べたらかなりやすい。会場には4万5千人。さらに後にはコールマン・カー・桜庭もいる。全部足してもどう考えてもヒクソンのギャラには及ぶまい。この客の入りがヒクソンの足を引っ張るとおもしろい。
 
 第6試合:永田・飯塚vsコールマン・カー
 赤いアマレス着コールマン、青いアマレス着カー。開始早々両者とも新日のというかそもそも日本人の遙かに及ばないパワーで新日の二人をブン投げていく。リフトアップスラムやそり投げとても無理と思える体勢からくり出される。しかも早い。しかし、カーのカラータイマーは早い。これはどうしたことか。最初の数分は初来日スタイナーブラザーズvs馳・健介組といった圧倒的な迫力の差があったのにだんだん埋まって、何回目かスタイナーブラザーズvs武藤・馳組といった感じになってくる。おもにカーのガス欠のためだ。セルだとすると表情は素人のレベルを遙かに超えている。一方、コールマンはカーに比べて顔も悪人面でかなりいい。縦横にリングを走り回る。このコールマンとGGは最近耐用期限切れのノートンに変わって新日の常連外人になって健介をいじめてほしいものだ。ここら辺ならあまり細かい事もいらないし、中西のライバルにいいのではないか?
 試合は永田・飯塚組のおかげでかなりヒートアップした。猪木もOKを出したほど。ほとんどカーを戦闘不能の状態にして、コールマンを孤立させたが、永田がコールマンの袈裟固めでギブアップした。もっと見栄えのいいフィニッシュに・・・とおもったが、これは致し方がない。
 永田・飯塚組は猪木の指名で、全日ベストタッグと引き分けたので罰として・・・負け・・・とか思ったりしてはいけません。
 
 第7試合:ケンドー・カシンvsケンドー・サクラば
 カシンは福岡ドームの白覆面で入場。桜庭は桜庭カシンのマスクで入場・・・と、アナウンスの伊津野はいっていたが、儂はあえて名前に引っかけてケンドー・サクラばと呼びたい。もっとも桜庭自身そんなことを考えてはいなかっただろうが・・・
 試合自身はグランドの素早い展開→握手→カシンの裏切りローキック→サクラばのマウントパンチ→マスク剥ぎで桜庭が素顔にと流れるように展開していく。流れるようにといっても、スポットはたくさんあるんだが流れがない。中央においた針が右に傾いたり左に傾いたり、大きな振幅を作って試合が動いていくと言うことはない。スポットがたくさんくめるというのは桜庭にプロレス経験があるためだが、どちらも幾分遠慮があるのか、技が強烈でない。試合はその後、桜庭のプランチャー、カシンのアームロックと続き、カシンが桜庭をトップロープで雪崩式にとらえようとしたところで、桜庭が逆にカシンをアームロックにとらえて逆転勝ち。(もちろん本当はロープブレークだが・・・)
 
 この試合は前の試合ほど迫力はなかった。かなりの攻撃を永田・飯塚組が受け入れたのに対し、互いに気を遣ったのか技がハードヒットではなかった。しかし面白くないというわけではなく、互いのキャラクターを充分生かした良質なキャラクタープロレスだった。ただ、何回もできるものではないが・・・
 
 それはそうと山本。NHB方面で仕事している立場もわかるが、『プロレスでもリアルファイとでも』とかいうな。馬鹿たれが。
 
 第8試合:武藤・高田vsKシャムロック・Dフライ
 武藤がケーブを深く被って入場する。伊津野は間が悪いから、花道の途中で『お〜!これは』とかいっている。花道で取る分けないだろ。これはコールの時に自分より後にコールされる高田よりも、誰よりも目立つ戦略なんだ。
 試合はみんなそこそこの経験があるプロレスラーだから、全くもって異種格闘技的なところはなかった。場外乱闘で始まり、最初は仲の悪い外人組はシャムロックのローンバトル。この後二人の関係は・・・と思ったら、数分で山場なくタッチ。なぜもっとタッチまでのストーリーをくまない!?まあそれをやったら臭くなるんだが、でもそんなことを気にしたらこの組み合わせの意味がない。
 高田は動きで見せることはできないから、『最強』と言うフレーズが必要だった。それがなくなった今ではさほど小さい中年レスラーにすぎない。対して膝が悪いとはいえやはり武藤は天才だから所々を締めていく。しかしだ。この試合にはテーマがない。あえて上げれば、武藤にとっては新日のあの人たちへの牽制(本当に考えているか?武藤)、高田にとってはDSEでの居場所作り(本当に必要か?高田が)、フライ・シャムロックに至っては意味がわからん。テーマがないんだから、フィニッシュも唐突なのは致し方がない。初対決の新味にも乏しいし・・・
 
 第9試合:猪木vsヘンゾグレーシー
 かなりの体力差があるため、ヘンゾはグランドにとらえられると手も足も出ない。そこで噛みつきから急所蹴りに巧妙を見いだそうとする。しかし、猪木コールが巻き起こるよりも早く、憤怒の形相で立ち上がった猪木はヘンゾの額にナックルパート6連発。流血だ。さらにありキック2発から、延髄切り。崩れ落ちるヘンゾ。猪木はそれを引き起こすと卍に入ろうとする。それを阻止しようと廃案がエプロンに。猪木は後ろにも目がある。振り返りざまエプロンの廃案に延髄一閃。その隙をついてつっこんできたヘンゾをくるりと交わすと、ロープに衝突したヘンゾを後ろから捕まえてジャパニーズレッグロッククラッチホールド。 カウント・1・2・3。三宮から高槻まで響き渡る猪木コール。
 
 除夜の張り手。人はなぜ猪木の張り手をありがたがるのか?なぜ猪木の張り手が風俗として定着したのか?わかりません。
 
 闘魂餅つき:ここら辺はみてない。
 
 総じて言うと、試合の質自身は最高とは言いがたい。ただし、これだけの人材を集めて新鮮な組み合わせをしたことを純粋に評価したい。アメプロのような素材にいろんなアングルをまぶせて料理したフランス料理ではなく、素材の背負ったアングルをそのまま利用した日本料理のようなプロレスだった。素材に頼り切ったマッチメークは顔合わせの妙が切れたら終わりで、先はだんだん細くなるんだが・・・




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