またもや化けたこの団体、潜伏期間はもう終わり? 11/2DDTclubATOM大会観戦記
■団体:DDT
■日時:2000年11月2日
■会場:渋谷clubATOM
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 勝手に始めた「狂い咲き生観戦ロード」もちょうど折り返し地点の第四弾まで到達しました。それにしても29日のターザン後藤一派、31日のパンクラスと中一日づつ間隔を空けてきて、精神的にはとても裕福だけど肉体的には結構キツくなってきた。しかし、この日から4日までは興行三連戦となるので弱音を吐いてもいられない。このスケジュールを消化することによって「権藤、権藤、雨、権藤」と言われた元中日権藤博投手の心境が少しでも味わえるのだから野球ファンとしても幸せではないか、という無理矢理な結論で会場までの足と観戦記を書く筆を進めることにした。

 というわけで、今日のお題は昨年12月の後楽園大会以来、およそ一年ぶりのDDT。6月か7月くらいから始まったclubATOMでの週イチ定期興行を初めて観戦することにした。

 ON AIR WESTの隣のビルの5Fにある会場についたのは、開始時刻を少し回った19:10頃。イカンなぁ。これで三連続で開始時刻に遅刻だよ。

 2500円払って会場に入ると、「エンタメ路線に染まってDDTを正しい方向に更正する」ために結成された”生徒会”の三人(佐々木貴、西野湧喜、高井憲悟)がリングでアジっているが、知人に挨拶してたため、内容は覚えていない。よって割愛。スマンです。その後、三上恭平がこの日の休憩時間に行われるサイン会の告知を自身のキメ台詞「スク〜〜〜ルボ〜〜イ!」でシメて、第一試合が開始。うん、試合前の暖め方はさすがにツボを心得てる。


第一試合
○菊澤光信(7分54秒 フラッシュエルボー)Mr.Blue×

 しばらくみないうちに髪が若干短くなって、ますますオバサン顔に拍車のかかった菊澤と、「撮りっきりコニカ」片手にファンとのツーショット写真をバシバシ撮りまくる芸風のM.Blueがルチャ風ムーブで試合を作る。

 で、そこそこキャリアのある菊澤は勿論だけど、Mr.Blueのほうもなかなかいい動きをしていたので驚いた。誰がマスクを被ってるのか知らないけど、いい選手じゃないですか。ロープワークでのカウンター合戦でちゃんと菊澤のペースについていってたし。いや、ひょっとしたら菊澤が合わせてたのかもだけど。まぁとにかく展開にムリが無かったということ。

 そこから試合のキーポイントはMr.Blueの持参した「カメラ」を両者がどう使うか、という点に移行する。どうやらこの選手、試合に勝つことよりもカメラでいい写真を撮ることのほうが大事と考えているのか、ことある毎にシャッターチャンスを伺っている。言ってみれば小林邦明がいかにして虎の仮面を剥ぐかが試合のテーマであるように、いかにカメラを遊ばせるかがMr.Blueのテーマだということか。

 最後はピープルズエルボーのムーブからシャッターを下ろし、その後エルボーを落とすフラッシュエルボーを菊澤がスカし、まったく同じ技をやり返してピン勝ち。

 試合後、DDTフロント陣で結成された”プレジデンツ”と菊澤が絡む。「DDT修学旅行」と銘打たれた今月19日に行われる京都遠征に向けて、選手のギャラから50%徴収して集めた積立金制度について菊澤がケチをつける。

 「オレはなぁ、ガス、水道、光熱費、丸井のカードもあるし、さらに家賃の支払も六ヶ月滞納してるんだよ!しかも本当にだぞ!」とマイクを握って激昂。この生活感溢れすぎるアピールに手前は引いてたんだけど(っていうか貧乏ネタは嫌いなんです)、会場は大受け。まぁ好みの問題かな。


第二試合
アイアンマンヘビーメタル級選手権試合
○タノムサク鳥羽、鴨居長太郎
   (4分54秒 片エビ固め)
     西野湧喜、高井憲悟×

 アイアンマンヘビーメタル級なるベルトを手に入れて御満悦の鴨居(以下、長さん)が繁華街で豪遊するところを撮ったビデオが流れる。手前がDDTを一番評価するとしたら、次々に繰り出す奇抜なアングルと、それを試合前にこれまでの流れをビデオで流し、初心者にもわかりやすく伝える手間を惜しまない点に尽きる。当然、適度なジョークを交えたそのビデオは凡百の団体が作るそれよりも全っ然面白い。

 こういう親切さは他の団体ももっと真似するべきだよな。特にNOAHなんかはディファ有明を常打ち会場にしてるんだから。いや、NOAHにギャグを挟んだビデオを作れと言いたいわけじゃなくて(むしろそれは止めたほうがいい。いや、三沢さんが「俺は『ひょうきんみぃちゃん』で通ってるんだぞ!」と言いたくなるのはよくわかるけど・・・)、もっと初心者がとっつきやすくてもいいと思うんですよ。各団体ともに。

 で、試合のほうは面子から言ってもハードヒットな打撃戦となる(が、しかし長さんだけは執拗にイビられる)ことが予想されたが、そのさわりだけ見せたところで、西野と高井がサンドイッチラリアットを誤爆。タノムサクが高井を抑えこんでピン勝ち。タノムサクファンの手前としてはちょっと物足りなかった。

 しかし、驚いた。ここまでの試合を見て、当初予想してた以上に選手のレベルが上がってる。特に西野と高井。客席(といってもオールスタンディングだけど)とリングが近いせいもあるかもだけど、チョップ、ラリアット、パワーボムといった力技の迫力がこれまでとは段違いに成長してる。

 その後、誤爆をめぐって西野と高井が険悪なムードに・・・というか、胸をド突きあった一瞬即発の状態に。が、その瞬間にテーマが流れ、DDT生徒会長、白い学ランに身を包んだ佐々木が入場。「高井くん! にっちゃん! そんなことでいがみあってどうする?」と昂ぶる二人をなだめ、次回大会で「正々堂々」の決着戦を提案。これが了承され、次回のclubATOM興行にてこのカードが実現する運びとなった。

 いやぁ、言っちゃ悪いけどつい一年くらい前までは頭の固そうな若手だったあの三人が、こんな立派なスキットをこなせるようになったんだから凄いもんだ。


 ここで休憩。
 clubATOMは試合中じゃなければ場内でも煙草が吸えます。でも、吸い殻はちゃんと灰皿に捨てるようにね。


セミファイナル
○佐々木貴(8分54秒 ラリアット)藤沢一生×

 藤沢一生という選手は「ニセ佐々木健介」といえば、知ってる人には知られてる存在。昨年12月の後楽園大会ではあのニセ大仁田こと森谷さんのDDT初登場時にも相手を務め、ご丁寧にも森谷さんの火炎攻撃に反則勝ちしてみせたナイスガイ。

 対する佐々木はこれまでも書いた通り、DDTの更正を図る「生徒会長」役。この試合の背景には「暴走を重ねる藤沢を佐々木が更正させる」という狙いがあったそうな。会場入り口でアンケート用紙と一緒に配られたニュースペーパーにそう書かれてました。

 肝心の試合は、これがまた面白かった。藤沢のチョップと佐々木のキックが交錯し、ラリアットでお互いの汗が飛沫となって飛び散る。で、その音がよく響くんだわ。佐々木に関しては、かつては「試合だけなら高木より上」という評価を個人的にくだしていたので、この日もある程度安心してたんだけど、それをいい意味で裏切られた。成長したなぁ。勿論藤沢もね。

 最後は”更正ラリアット”で佐々木が熱戦にピリオド。試合後にマイクで「藤沢くん! やればできるじゃないか!」と生徒会への勧誘を開始。藤沢もこれを了承。「次回の興行から、生まれ変わった藤沢一生をお見せします!」とマイクで一吠え。

 健介のセンスっていうのは性格もそうだけど、あらゆる意味で真似のできない、ある意味蝶野以上に「イッツオンリーワン(by産経新聞)」なものだから、藤沢もニセ健介のままじゃいずれ曲がり角に来ると思ってた。だって、「見たか! これがミレニアムパワーだ!」とか「シングルとジュニアヘビー級は違う!」とかってコメントなんか真似しようと思ってできるもんじゃないでしょ?(普通は真似しようとも思わないんだろうけど)

 これからは”藤沢一生”にこだわった戦いぶりを見せて欲しい。頑張ってね。


メインイベント 2vs3ハンディキャップマッチ
○ポイズン澤田JULIE、スーパー宇宙パワー、蛇影
   (9分59秒 キャトルミューティレーション)
      エキサイティング吉田、高木三四郎×

 本来ならば三四郎組に「昭和」というマスクマンを加えた六人タッグだったのが、「昭和」の怪我による欠場のため、急遽ハンディキャップマッチに。ちなみにその旨は第一試合終了時のプレジデンツとポイズン澤田のやりとりにてリング上で決定。

 入場は三四郎組から。名曲「FIRE」がclubATOMの大音量・高音質のPAから流れ出す。会場が一体となった「ファイアー!!」のポーズは何度見ても(体験しても)圧巻です。この一体感を形容するなら、他団体でいえばマグナム・TOKYOをライバルとして挙げたい。そのくらい、三四郎の入場には”華”がある。

 対するポイズン澤田組は中東っぽい音色を使ったテーマ曲で入場。右腕を高々と掲げ、手を上下に小刻みに揺らすと、観客は前もって持参したマラカスを鳴らしてそれに応えるという図式。これも一体感があって良い。というか、DDTの会場にはこの一体感ってやつが漂いまくってる。だから、一見の客も一度掴まれたら離れられない魅力になってるんじゃないかな。なかなか無いよ、こういう雰囲気の興行って。

 試合のほうも、これぞメインイベント!といったハードヒット、ファストテンポな攻防が続く。圧巻なのは三四郎とポイズンが場外の客席ド真ん中でラリアットを数発に渡って打ち合ったところ。そこに宇宙パワーも絡んでくるもんだから、そりゃぁ客は沸くわ。目の前でこんだけ激しい攻防やられちゃってんだもん。

 途中、宇宙パワーのマスク剥ぎにかかったエキサイティング吉田に、元々「エキ吉嫌い」と言われる宇宙パワーが激昂。バッチーン!という音の響く重い蹴りと関節技で吉田の足首を破壊した。これにより、吉田はいったん控え室に下がり応急手当。リング上には三四郎一人が残ることになった。

 ということは、ここからが三四郎の”受け”の見せ所。宇宙のパワーボム、蛇影の三角飛び延髄やムーンサルトを受けまくる。時折、反撃にでるもカバーに入ればカットされるので勝機を見出せず。最後はポイズンのキャトルミューティレーションでレフェリーストップ。いい試合でしたわ。なによりテンポが小気味良かった。こういう試合って事前によぉく練らないと難しいんじゃないかな。

 それにしても、ポイズン澤田の堂々とした態度はどうだ。心なしか体も大きくなったような気がするし、なにより「蛇魂」というキャラクターを自信満々に演じきってるところが凄い。試合ぶりだって立派なもんだ。つい二年くらい前まではどこで何をやってたのかわからないような選手だったのに、まったく大した成長をしたもんだと思う。

 ダウンする三四郎を引き摺り起こし、ヘビ人間への改造手術を施すためになにやら毒々しい液体(改造人間エキス)をぐったりした三四郎の口に入れようとしたその瞬間、またテーマ曲が鳴った。誰だ? 柔術着に身を包んでリングに雪崩れ込み、ポイズン、宇宙、蛇影の三人を蹴散らしたその選手は、順同会館の若武者、JPWA所属の橋本だった。

 マイクを掴んだ橋本は宇宙に向かって「どうしたんすか木村さん? 何やってんすか? 群馬のおかんが泣きますよ?」と一声(そりゃまぁ息子が宇宙人になったらどんな母親でも泣くわな)。今後、DDT正規軍の頼もしい助っ人としてやっていくことになりそうだ。

 最後は恒例の「三四郎集会」でシメ。翌日からはみちのくに参戦するとのこと。おお、どんどん精力的になっていくねぇ。

 というわけで、総括。
 まず、何より各選手の成長ぶりに目を見張った。昨年末の後楽園でこれまでのストーリーに一区切りがついたことと、やはりリング外の演出に試合が追いついてない部分があったのと、その他まぁ色々あっておよそ一年あまりもご無沙汰してたわけなんだけど、なんというか、やっぱり試合をこなせば選手は上手くなりますな。当たり前のことなんだけど、そういう光景を目の当たりにさせられると嬉しいものがある。だから、いまなら胸を張って言える。「DDTは面白いよ」と。

 それと、三四郎のカリスマ性が突出してるのが心地良い。一人のメインレスラーに対し、周りの選手と観客の集中力がグワーッ!と結集されて、それが興行における一本の柱になってる。複数スター制を敷く団体が多い昨今、ここまで一人のエースを中心にどっしりと構えたアングル・試合・興行を展開できる団体は他にあんまり思い付かない(特にエキサイティング吉田の一歩引いた名脇役っぷりには拍手すら送りたい)。

 ただ、敢えて苦言を呈するなら、スクリプトはよく練れてるのに、なぁんかスケールがミクロでみみっちく感じられてしまうところ。確かに京都に遠征するのに「積立金」を集めたりだとか、そういうのは確かに面白いよ。面白いけど、みみっちいといえばみみっちい。手前なんか前の職場でたかだか伊東の温泉に社員旅行にいくのに半年間も積立金を徴収された過去を思い出しちゃったくらいだし。いや、まぁそんな個人的なアレは置いといても、やっぱりその面白さは「小劇場」の面白さなんだよね。

 勿論、いま現在は「小劇場」クラスのハコで興行打ってるわけだから、それに見合ったアングルを敷いてるのかもしれないけどさ。それだったら手前が言うことは一言「勿体無い」。例えば今後、後楽園やディファ有明といったハコを常打ちにできるようになったとしたら・・・というか、ソフト(試合)はもうそのレベルまで達してると思うよ。まぁ100〜200人の前でやるプロレスと1500人〜2000人の前でやるプロレスは自ずと見せ方が違ってくるということを承知の上で言うけど、それだけのプロレスは出来る団体だよ。団体旗揚げから(確か)四年弱。DDT周辺のタニマチやスポンサー事情詳しくないので一概には言えないけど、もうそろそろ浮上してきてもいいんじゃないか? 現状の100〜200人、多くて300〜400人程度の動員しかできないのはやっぱり勿体無い。勿論、手前の払うチケット代で団体が少しでも進んでくれるなら、今後も喜んで興行に足を運ぶつもりだけどさ。


 そいじゃぁ最後に読者諸兄が気になる点について。
 渋谷のクラブでの興行だけあって、場内にはガン黒まではいかないまでもそれなりにギャルギャルしいおねいちゃんがいっぱいいますが、パンチラはあまり期待しないように。そんなダメな考えは捨てて、もっと健全にプロレスを楽しみましょう。実はそれ(パンチラ)を一番楽しみにしてた手前が言うんだから間違いありません。




本稿の著作権はすべてKANSENKI.NET及び「書き手」に帰属します。

戻る
TOPへ