8・27:プライド10西武ドームPPV観戦記
■団体:PRIDE
■日時:2000年8月27日
■会場:西武ドーム(PPV)
■書き手:タカハシ(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

今回も友人宅でPPVで観戦できる事となった。西武ドームの場所や観戦環境他考える
と本当にありがたい。
さて今回のプライドには直接は関係ないが、数日前に急逝したフグについて書いて
おきたい。そもそもは来日直前のスイスでの診断時に、適切な医療判断がなされていな
かった事が今回の死を招いたらしいが、今となっては何を言ってもただ虚しいだけだ。
また翌朝オーストリアの友人からニュースの真偽をメールで問われた時は、改めて
ニュースの伝わり方の速さを思い知らされた。
残念ながら真実である事やフグへの寸評に加え、恒例(にはいい加減したくないが)
の追悼としてフグの印象に残る試合いくつかを書き添えて返信した。
自分が選んだのはフィリォ戦、ベルナルド戦、パトスミ(今何やってるんだろ?)戦の
初対決にして全てKO負けの試合と98年のKー1GP決勝でのアーツ戦だ。
全てが負け試合となったのは自分でも不思議だが、負けた試合の方が印象的なフグには
独特の「色気」があったという事なのかも知れない。
またこう言う事を書くとまるで死者の名誉を傷つけるかのようで、ちょっと選ぶ言葉に
も慎重になるが、フグの存在はプロシュート興行の仕組みや難しさを、計らずもファン
に露呈させてしまった事が別の意味でも希有な存在であったように思う。
今回のプライドも試合前に黙祷(10カウントゴングは無し)が捧げられ、恐らく日本
で最も有名な外国人プロシュート格闘技選手に敬意が表された。

TVについて触れると試合直前の前振り番組では森下社長とターザン、谷川とアナウン
サー4人で盛んにプライドの未来の明るさについて語りまくっていた。ターザンは
常日ごろ公言している通り、金をもらったからには払った人の意志を尊重しまくる、
という態度を守っていた。ある意味立派だ。それでも森下社長にメッツァーの試合ぶり
については文句を付けていたのが面白かった。
そして「真のジャーナリスト」として一部で評価の高い米格闘技評論家のエディー・
ゴールドマンはアゴアシ付きで今大会リングサイドにご招待。ある意味クラプトンより
待遇がいい。そして試合後は全世界に向けて今大会の全試合をガチ判定。世界中にかか
なくていい恥をかく事になる。これまたある意味立派だ。
また谷川はとにかく事あるごとに「暑い」を連発していたが、ゲストで来ていた畑野
浩子はさすが元モデルだけあって汗を必要以上にかく事なく終えたようだ。
試合前には数十人の男性ダンサーが演出の一環として踊っていたが、客層からしても
ラウンドガールに金掛けた方が話題にもなるし、ベターであるような気がするがいかが
なものだろうか?

第一試合は松井対ビクトー。ビクトーは今回はいきなり第一試合に降格となったが、
前回のアイブル戦で主催者側の意図する試合をしなかった事をその原因とするのは妄想
が過ぎるか?実力的にはGPで優勝してもおかしくないビクトーだが、桜庭にそれこそ
コテンパンにやられて、また1からステータスを築かなくてはならないのが現状だ。
これからステータスを上げていくには、体格差のある相手をハデに倒していくしかない
だけに、本来ミドル級のビクトーには辛い戦いが待っているような気がする。もっとも
「まぁ日本に定期的に来れりゃいいや」くらい考えていそうなので何とも言えないが。
試合は睨み合ったまま数分が経過したため、ルチャの試合での延々とパフォーマンスを
繰り返して、接触ないまま5分経過のアナウンスを聞くお約束を思い出した。
試合は例によって「世界の強豪相手に根性だけを武器に戦う」松井のパターン。本当に
いつも強豪なので気はひけるが、マッチメークの問題点はともかく次のステップを見せ
てもらいたい。
第二試合は直前で決まったシウバ対メッツァー。この試合を追加する事で観客動員に
影響があるとはとても思えないが、2人が実力者でマニア的には注目のカードである事
は間違いない(らしい)。勿論予想としてはシウバの打撃をメッツァーが凌いで、
つまらなく判定勝ちに持ち込めるか?といったトコロ。ところがこの試合で契約が切れ
るためか、メッツァーはかつてなく積極的に攻め込み会場を沸かせる。基本的には
キックボクサー上がりのはずだが、さすがにシウバ相手では分が悪くKO負けとなる。
ラッシュ途中にシウバの狙ったかのような頭突きが入るが、別にこれが入ろうが入るま
いが勝敗に影響はなかったろう。これがただの延命策でなければまたメッツァーにも来
て欲しい。対戦相手にはブラガ希望。
第三試合はジャイアント落合対リコ・ロドリゲス。リコはグッドリッジと対戦していた
そうだが全く記憶になし。多分風俗紙でも読んでたんだろうな。
落合はゴダイゴの「ビューティフル・ネーム」で入場。狙い過ぎでちょっと乗れない。
裸になると背中に何故か砂が付いているのが気になったが、よく見ると背中毛だった。
落合はコメディアンと評するには笑えず、格闘家と呼ぶには強くなくといったところか
?今振り返って見ても全く印象に残っていない。ネックロックだったと思うが袈裟固め
だったかも知れない。勿論リコの勝ち。でもスター候補生ならばもう少し対戦相手を
考慮すべきだろう。
第四試合はアイブル対グッドリッジ。前回はビクトー相手に全くいいところなく敗れた
アイブルだが、今回は勝敗はともかく本領発揮だけは期待できそうだ、と思っている
うちに28秒で一瞬の左ハイでKO。マジでスローでも捉え切れていないスゴイ一発
だった。フグ亡き今、石井館長はアイブルのKー1登場を真剣に検討すべきでは?
さすがにベスト8に入れるとは思えないが、確実に一見さんを満足させる試合振りは
期待できそうだ。
この試合は一部ワーク説が飛び交っているが、いくらなんでも一方的にレギュラーの
グッドリッジがやられ過ぎている事や、このKO負けで次回のUFC大会出場がキャン
セルになる事から考えにくいなぁ、というのが自分の意見。でもワークでもなんでも
こんなインパクトを与えてくれるならオールOKですけどね。
まぁ立ち技の展開をリクエストされて、ついでに前回のアイブルの試合振りからの油断
負け、というのが妥当じゃないスか?とにかく面白かったデス。
第五試合はエンセン対ボブチャンチン。オレ的過大評価大賞独走中のエンセンがどう
いった試合を見せてくれるかに注目していたが、実力的には相手がトップ中のトップ
という事もあり何とも言い難いし、恐らく技術的観点では不満の残る内容だったのかも
知れないが、少なくとも最後まで諦めない気持ちだけはハッキリ感じる事ができた。
顔は腫れ上がり内出血もひどく、まるで極上の霜降り肉のようだったが、さすがに
不謹慎か?でも考えてみるとようやく松井レベルになったとも言えるような・・・。
シュートでもなんでも勝敗を越えたモノを感じさせてくれる事が第一の自分としては、
とりあえず過大評価大賞からのノミネートからはは外したい。

ここで休憩に入り、チャンネルを変えるとWOWOWでリングスが。
大阪大会のベストマッチの呼び声高いアローナ対ホーンが行われていた。余り現実的
ではないが、今回のプライドのカードをKOKルールで、リングスのカードをプライド
ルールで行われていたら・・・まぁコピィロフ対スバーンが3倍かったるくなる事だけ
は間違いないな。それについてはヒマな時にでも考えよう。
さすがにこの2人の攻防は時間を忘れてしまいそうになるが、1R終了時点でプライド
にチャンネルを戻す。画面上では森下社長と猪木がリングで挨拶を始めていた。
思っていたほどには手放しで歓迎されている風にも見えなかったが、最後は当然
「ダー!」で締め。今新日本では猪木向きでも「ダー!」はやっているのだろうか?

そして佐竹対村上。う〜ん・・・この試合についてはちょっと複雑だ。多分マニアを
自称する全ての人がカードを見た瞬間「こりゃワークになるな」と思ったろうし、
自分も実際はどうあれ、佐竹が秒殺されない限りは必ずワーク説がネット上で氾濫する
だろうと予想していた。今回最も負けてはいけない選手は佐竹であり、興行的に最も
プロテクトの対象になり得る存在であったからだ。
さて試合についてだが、試合開始後すぐのクリンチ状態から倒れるとそのまま村上が
マウントポジションを取った状態になってしまう。せめてここで飯塚戦で見せた狂的
とも言える攻撃と表情を見せてくれれば良かったのだが、セコンドの指示を仰ぐだけ
で全く何もしようとしないのだ。
バカ丸出しで超好意的に解釈すれば、勝敗を越えた絵をプライドのキャンパスに描く
つもりでいたのに、余りにも簡単にマウントポジションが取れてしまい、逆に困って
しまったとでも言えばいいのか・・・。とにかく村上にとってマイナスでしかない
試合となってしまった。シュートとしては最低のミスでの敗戦。ワークとしては自分が
築き上げた価値をチャラにする無様さ。どっちにしろ救いがない。
片や佐竹にはNHB初勝利という肩書が付いたものの、正直その名声を汚すだけの事
でしかないと思う。このルールでは村上が圧倒的に有利とは考えていたものの、結果が
コレでは佐竹はとんだ裸の王様だ。さすがにプライドの見識を疑わざるを得ない。
ヤオガチ判定については極力避けてきた自分だが、今回ばかりはちょっと触れざるを
得ない感じだ。この試合を各メディアがどう取り上げていくのかには注目してみたい。
この大会は日本と同時にブラジルでも生PPV放送されていて、ネットで同時実況して
いたブラジルの2人組はハナっからワーク扱い。試合中は専らワイ談に花を咲かせ、
試合後には「神様(終わらせてくれて)ありがとう!」ってな感じだったそうだ。

第八試合はケンシャム対藤田。ケンシャムはWWF時代の曲では入場せず、ちょっと
ガッカリ。試合は藤田のアゴにいいアッパーが何度となく入り、グラつきはしたものの
膝を付くまでには至らず、6:4のシャムロックペースで試合が進む。
ようやくコーナーに藤田が押し込んだと思ったらシャムロックが手を上げてガス欠申告
し、セコンドによるタオル投入で藤田のTKO勝ち。
ケアー、ケンシャムとも相手のガス欠による自滅勝利では、藤田のNHBでの実力は
まだまだ未知数と言わざるを得ないだろう。
どうでもいいがさっきから「何とかざるを得ない」ばっかりだな。
試合後は12月の有明でのコールマンとの対戦をアピールし、リング上で記念撮影。
どうもプロレス的煽りが目立つが、大衆操作の手法はある意味プロレスがやり尽くして
いるので、そこに乗っていこうというトコロか?マニアには見飽きた手法でも、一見
さんには有効だし、結局一番燃える展開でもあるワケだし。
そして次はケンドー・カシンこと石澤常光対ハイアン・グレイシー。そもそも猪木への
プライドプロデューサー要請は、実は猪木からの売り込みであり要請というカタチも
猪木側からの要望、という不確定な噂も聞いていたため、案外石澤自身はマスコミで
言われている程には乗り気ではなく、猪木就任の単なるバーター出場では?と邪推
しつつこの試合に臨んだ。
ハイアンについては「グレイシー姓を持ち、柔術ではたいした実績もなくVT初挑戦」
という「良く思いついたな、こんなおいしそうなヤツ」とまず思ったが、どうもヘンゾ
が弟の就職先を頼んだようなものらしい。おまけに一族どころかブラジリアン柔術一派
きっての問題児で、近年これほど煽り易かった初来日の選手はいなかったろう、という
キャラの立ち具合。カシンのキャラと相まりこれ以上ない対戦相手となってしまった。
当然海外の有識格闘業界の人たちは警鐘を鳴らしまくったのだが、日本のファンは
「北斗の拳」のラオウ的な存在として捉え、警鐘など全く聞こえていなかったようだ。
入場テーマは多分カシンの曲だと思うが自信なし。セコンドにはマスクを付けた
パンクラス・山宮と斎藤彰俊(あとで雑誌で知った)。
新日本勢が一人も付かないのはちょっと寂しいなぁ・・・。
試合は一瞬でタックルを取られた石澤が冷静にコーナーでフロントネックロックに取る
も、立ち上がられる途中にヒザを入れられ後はタコ殴り。ケンカ馴れの差が出たという
感じだ。表情も変えず退場する石澤に果たして未来はあるのか?
部外者が「勝つまでやれや!」とは無責任に言えない事もあるが、再挑戦して欲しいと
は不思議なほど思わない。プロレスラーのカシンに満足してるからだろうか?
そしてメインは桜庭対ヘンゾ。田村相手にリングスKOKルールで負けた事で、ヘンゾ
の価値が下落するのはどうにも腑に落ちないと思っていたので、今回のメイン登場は
嬉しい。桜庭対ニュートンの再現を期待していたが、どちらもお互いに研究していた
ためか今ひとつ噛み合わないまま展開していく。1R目はヘンゾのローがかなり効いて
いたようにも見えたが、桜庭の場合三味線なのかも知れずどうもよく分からない。
2R目も猪木・アリ状態での攻防などもあったが、どうも盛り上がりに欠け終了間際、
「今いち面白くないから、ドロー判定で延長にしてほしいな」と思った矢先、バック
を取ったヘンゾの腕をハンの立ち関節を連想させる動きから、強引にチキンウィング
アームロックへ。この時点で明らかに肘関節がハズれていて、ヘンゾも納得のストップ
裁定。確かに肘はハズれているようなのだが、特に痛がる様子も見せずニップアップで
起き上がる(ように見えた)。試合後桜庭は「つまらない試合でスイマセン」と観客に
謝っていたが、勿論桜庭がグレイシーを倒した事で場内は大満足の様子。
個人的に盛り上がりに欠けたのは、ヘンゾにヒール的要素を見い出せなかったから
だろう。プロレスファン的観点ではこの試合は先のグレイシー越えの試合と比べると
かなりテンションが落ちる。まぁ仕方ないか・・・。
試合後次々と次期挑戦者の名乗りを挙げるブラジル勢。個人的にはシウバ対ビクトーの
勝者とやって欲しいがどうもハイアンが有力のようだ。前記の理由に加え今回新たに
肩書が増えたしね。せっかくのニューカマーなのだから本来大切に転がすべきだろう。
これで多分ヒクソンは「ハイアンのような未熟な選手をグレイシー姓だからといってカ
ードを組み、グレイシーの名誉に傷つけようとするようなプロモーターや、それを受け
る桜庭とは試合をする気になれない」とか言い出すんだろうな。
例によって谷川は一人で「逃げるなヒクソン!ビバ桜庭」キャンペーンを展開していた
が、もう別の価値観や上位概念を見つけるなり、作り上げる努力をしろよと言いたい。
とりあえず桜庭は無理矢理でもテーマをでっちあげなければならないほどの存在になっ
てしまったようだが、それが人気や興行価値他にどういう影響を与えていくのかにも
注目して見守っていきたい。



▽第10試合(10分2R)
○桜庭 和志 (高田道場)
< チキンウイングアームロック:(レフェリーストップ):2R 9分43秒 >
ヘンゾ・グレイシ−× (ヘンゾ・グレイシー柔術アカデミー)

▽第9試合(10分2R)
×石沢 常光(ケンドー・カシン=新日本プロレス )
< TKO(レフェリーストップ):1R 2分16秒 >
ハイアン・グレイシー○ (ヘンゾ・グレイシー柔術アカデミー)

▽第8試合(10分2R)
○藤田 和之 (猪木事務所)
<TKO(タオル投入):1R 1分42秒 >
ケン・シャムロック× (ライオンズ・デン)

▽第7試合(10分2R)
○佐竹 雅昭 (怪獣王国)
< TKO(レフェリーストップ):1R 6分58秒 >
村上 一成× (UFO)

▽第6試合(10分2R)
×エンセン井上(修斗・STG大宮)
< TKO(ドクターストップ):1R終了 >
イゴール・ボブチャンチン○ (ウクライナ)

▽第5試合(10分2R)
×ボリショフ・イゴリ(掣圏道)
< ギブアップ (ネックロック):1R 2分06秒 >
マーク・ケアー○ (ハンマーハウス)

▽第4試合(10分2R)
○ギルバート・アイブル (オランダ)
< KO:1R 0分28秒 >
ゲーリー・グッドリッジ× (トリニダード・トバゴ)

▽第3試合(10分2R)
×ジャイアント落合 (怪獣王国)
< ギブアップ(フロントチョーク):1R 6分04秒 >
リコ・ロドリゲス○ (アメリカ)

▽第2試合(10分2R)
○ヴァンダレイ・シウバ (シュート・ボクセ・アカデミー)
< KO:1R 3分45秒 >
ガイ・メッツアー× (ライオンズ・デン)

▽第1試合(10分2R)
×松井 大二郎(高田道場)
< 判定 0−3 >
ビクトー・ ベウフォート○ (カーウソン・グレーシー柔術アカデミー)




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