順風満帆な荒波出港 8/5ディファ有明 NOAH旗揚げ興行観戦記
■団体:NOAH
■日時:2000年8月5日
■会場:ディファ有明
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 プロレス/格闘技のファンを長いことやっていると、数年に一度の割合で「歴史の証人」となるチャンスが訪れる。「神話の目撃者」でもいい。逆に言えば、数年に一度しかないその「歴史」や「神話」を見るためにプロレス/格闘技のファンをやっているといっても過言ではないかもしれない。絶対に交わることが無いと言われた長州力との対戦を数年に渡って待ちわびた大仁田信者や、憎き「黒船」ことグレイシー征伐を田村、桜庭、船木に託したUWF信者なんていうのはその典型じゃないだろうか。

 と、まぁしょっぱなから随分と大げさなこと書いちゃいましたが、行ってきましたプロレスリング・ノアの旗揚げ戦。歴史の証人となるべくして。手前の人生にもっとも多くの影響を与えたプロレスラー、三沢光晴の新たな船出を見守るために。

 ご存知の通り、今回のチケットは発売後20分で用意されたぶんがすべて完売してしまったので、歴史の証人となるために唯一残された手段は、100枚だけ用意されるという立見当日券を入手するしかない。しかし、1500枚ものチケットを20分たらずで売り切ってしまったNOAHである。たった100枚の立見席なんざ遅くとも前日の夜から徹夜で並ばない限り手に入るわけがない。というわけで、手前も前日の夜からディファ有明駐車場の徹夜行列に加わることにした。一人じゃ寂しいのでMくんという高校時代の同級生を誘い、あとはその日を待つのみとなった。

 4日の夜はだいたい午後8時か9時くらいに並び始めればなんとかなるだろう、とタカを括っていた。が、その読みは甘かった。不二家のペコちゃん並みに大甘である。というのも、Mくんから4日の昼下がり午後3時過ぎにかかってきた電話によると、彼の知人が既にディファ有明駐車場の列に加わっており、その時点で列を作る人数は既に40人近くにのぼっているという情報が入ったそうだ。こりゃマズイ。手前とMくんは予定を急遽変更し、すぐに現場に急行(気分は「太陽に吠えろ!」)することとなった。

 手前たちがディファ有明駐車場についたのは4日の午後6時過ぎ。駐車場に作られた列を見てみると、並んでいるのはおよそ50人くらいか。しかし、ビニールシートや新聞紙などで場所だけ確保し、その場を離れて食事なり買い出しなりしてる人たちもいるらしく、歴史の証人となれる「100番以内」に手前たちがいるかどうかは微妙なところである。なんでも列の先頭に並んでいた人は「3日の朝8時から並んでる」んだそうな。歴史の証人となるのも楽ではないなとつくづく思った。まぁじたばたしてもしょうがないので最後尾にシートをひき、場所を確保した。

 30分後、NOAHスタッフとおぼしき人たちが「蚊が飛んでますので」と蚊取り線香を配ってくれた。このささやかな配慮に手前とMくんはいたく感動した。これから歴史の証人になろうかという人間がこんな些細なことで感動してどうする?とは思うが、実際嬉しかったんだからしょうがない。数分後、会場設備のチェックを終えた三沢社長が駐車場に降りてきて、並んでいるファン一同に「ご苦労さん」と声をかける。歴史の証人候補生たち、皆が感動である。これから歴史の証人になろうかという人間がこんな些細なことで感動してどうする? 世の中「どうする?」ばかりだ(Copyright by 高野拳磁)。

 一時間後、行列を作っていたファン一同に「整理券」が配布される。なんでも「並んでるファンの数が予定枚数ぶんに達したため」なんだそうな。手前に渡された整理券には「整理番号:70」と書かれてる。2000年8月4日午後7時半、愚傾、歴史の証人となる権利を得る。

 「午後2時45分までに集合して、整理券と引き替えにチケットを購入してください」とのことで、行列組もいったん解散。やった! 徹夜しないで済む! とりあえずその日は帰宅して、翌日に再度ディファ有明に行くことに。

 で、当日。会場前は既に人、人、人の波。発売日にチケットを入手したにも関わらず「いてもたってもいられなくて」朝から入り口の前で並んでる人が列を作っていた。グッズ売り場も長蛇の列。この日、チケットを入手できなかった人にも旗揚げ興行の模様を見てもらうため、駐車場に特別に設営された大型ビジョンの前も既に多くの人がつめかけている。が、大盛況に反してダフ屋の面々は総じて元気が無い。手前の観戦記では御馴染みの知人ダッフィーは「しゃぁないわ。チケットが手に入らんもん。『割引きしまっせー』ってやってるほうがまだ楽やわ。」と投げやりな姿勢。それにしても、殆ど実券で会場をフルハウスにした興行を、一週間のうちに二回も観れるなんて手前は幸せ者だ。愚霊斗幸者、略して愚幸と改名しようか。いや、やっぱやめといがほうがいいわな。

 午後5時に開場。入り口やロビーに飾られた花輪に目をやると冬木軍プロモーション(まだあったのか....)代表冬木弘道、吉本女子プロレスJ’d、パンクラス国奥麒樹真(小橋建太宛てに。しかしいったいどこで知り合いに?)、FMW荒井社長、ニッカンスポーツ、週刊宝石他、各界の著名人として徳光和夫、三遊亭楽太郎師匠、ロンドンブーツ1号2号、ザ・イエローモンキーから届けられていた。グッズ売り場ではパンフ(1500円)とTシャツが売られている。パンフは緑地に「PROWRESTLING NOAH」と白ヌキ文字というデザインで、それ自体はあまりプロレスっぽくないが、カッコイイかどうかは別。コンビニで売られる大学ノートみたいで手前はあんまり好きじゃない。Tシャツのデザインも可も無く不可も無く。全日本時代からノーフィアーやアンタッチャブルを手がけたデザイナー氏(当時からジャイアントサービスとは無関係らしい)が引き続き担当しているのだろうか?

 会場内に目をやると、思いのほか綺麗な作りになってるので驚いた。カクテルライトが光るなか、BGMにオペラが流れる幻想的な雰囲気。北側のヒナ壇中央をブチ抜いて花道が常時設置されている点からも、後楽園ホール以上に「プロレス/格闘技用」の会場であることがわかる。ロビーが広く、喫煙場所の空気が煙で濁りにくい点もポイント。が、「リングが見難い」と悪評高い北側ヒナ壇席は依然として改善が必要。出来た当初より若干の改修を施したらしいが、その時に空いていた最後尾の座席にちょっと腰掛けて見るとやっぱりリングは見難い。修斗、パンクラスの興行をここで行うのはまだ見合わせたほうがいいと思った。ちなみにこの日は紙テープの投げ入れは禁止。この会場ではいつもそうなのかな?

 そして午後6時を5分ほど回ったとき、ついにNOAH旗揚げセレモニーが始まる。スモークが焚かれ、レーザー光線が飛び交うという、およそ2000人クラスの会場とは思えぬ演出に場内から大歓声があがり、団体テーマ曲と思われる音楽(出来の悪いプログレみたいで個人的にはイマイチ。やっぱ手拍子が打てないテーマ曲はダメね)が流れ、三沢を先頭に全選手が入場。最後尾には髪を金に染め、NOAH公式ジャージをラフに着崩すノーフィアーの面々。

 全選手がリングインし、「三沢!待ってたぞ!」という声援がかかるなか、三沢がマイクを握った。

 「今日、この場から、新しい闘いが出発します(原文ママ)。ご心配をおかけしましたが、選手、スタッフ一同、力を合わせて頑張りますので、ご声援よろしくお願いします!」という旨の挨拶。一部週刊誌に掲載された、「明るく楽しく激しいプロレス」に代わる、新たな団体モットー「凄いね、プロレス」については触れず。手前以外にも「おいおいそれはどうかと思うぞ三沢さん」と思っていたファンはホッと胸をなでおろす。三沢が挨拶を終えた瞬間、北西と南東のコーナーポストからパーンッ!と紙テープが舞う。客席、大歓声。ちなみにこのコーナーポストからはブォーッ!というガスバーナーのような火も出る。第二試合か第三試合のコール時にそれが見られたんだけど、それにしても金かけてるなぁ、という印象を持った。

 全選手退場後、仲田龍リングアナから団体公式ルール(特に通常のプロレスから逸脱したものは無し)と、この日の対戦カードが発表される。午後6時13分(愚傾のカシオ製腕時計認定記録)、ついにNOAHの第一試合が始まらんとする。


第一試合(シングル)
○森島猛(14分5秒 片エビ固め)橋誠×

 まずは金ピカに豹柄のツーショルダーという世にも恐ろしいデザインにコスチュームをリニューアルした橋が入場。今回の旗揚げ戦から所属選手の多くはコスチュームの大幅、もしくはマイナーな変更を施すことになっているとのことなので、とりあえずそれに注目していたんだけど、いきなり気勢をそがれた(まぁ以前の背中に「突撃」と書かれてた衣装もアレといえばアレだが)。三沢社長よ、選手の自主性を尊重するのもいいが少しくらいは文句を言ったほうがいいと思うぞ。かつて豹柄パンツを得意気に履いていた大森だって御大に止めろ、と言われて履くのを止めたそうだけど、あれで溜飲を下げたファンも多かったんだし。でも、もしこの衣装が三沢の発案だとしたら、、、ブルルッ、そんな怖いこと考えるのはやめとこう。

 対する森嶋は黒地にゴールドのラインが入った膝までのタイツ。以前の黒タイツ一丁の時には気になってしょうがなかった腹のたるみ(基本的にレスラーの腹にはケチをつけない主義なんだけど、でも若手なんだから....)が心しか目立たなくなっていたような。これは練習の成果なのか、コスチューム変更による錯覚なのか、どっちかはハッキリしないけど、まぁ悪くは無い。貫禄も出てきたし。ただし入場テーマに長淵剛の曲を用いるのは止めましょう。いや、そうしたほうが良いと思うから。

 が、リニューアルされたのは衣装や入場テーマだけじゃなくて、選手のアピールの仕方も変わっていたのは良かった。この日のように、花道で中西学ばりに両手を広げて「ウォーッ!」とやるのも「全日本」では考えられなかったこと。橋に代表されるように、NOAHの若手は総じて「個性」を前面に押し出すようになっていた、というのがこの興行で目に付いたポイントの一つ。この試合でも、二人はゴング前にオデコをぴったりくっつけて睨み合うなど、およそ「全日本らしくない」ことを堂々とやっていたし。

 試合は小技の橋と大技の森嶋が互いの持ち味を出し合った好勝負。技を繰り出すときにいちいち大声を出す点も元気があって良い。橋に関して言えば、序盤に森嶋を花道に出し、トップロープに腕をくくりつけてのモンゴリアンチョップや、花道を逆走しての急所攻撃というのもまた、これまでの「全日本」では考えられない攻撃だったので面白かった。中盤、場外に森嶋を寝かせてエプロンからのダイビングヘッドバッドなんかも結構客は沸いた。左腕を集中的に責めるときも、コーナーに縛り付けてヘッドバッド連打(30発くらい)したりと変化をつけたりして見てて飽きない。この辺は流石にメジャー出身の選手だな。

 森嶋にしても、キチンシンクやコブラツイストに迫力が見られ、その巨体の生かし方をわかってきたな、と思わせた。最後は「肩車からそのまま前に落とす」→「ラリアット」→「逆喉輪落とし」と畳み掛けて勝利。フィニッシュの直前には「決めるぞ」というポーズも見せる堂々っぷり。これはヘタすれば二年後くらいには「NOAHの大型メインイベンター」を田上の代わりに務めてるんじゃないか? NOAH船、出港に際してかかりつけのロープを外す作業は上手くいったと言ってよかろう。そういえばこの時、流れていた勝利者テーマ曲の題名は「Captain of the ship」だった。長渕が曲の終盤で延々と「オマエがぁっ、船を、出せぇぇいっ!」とがなり続けるアレである。うーん、まさしくヨーソロー。


第二試合(6人タッグ)
○泉田純、永源遙、菊地毅(13分8秒 片エビ固め)ラッシャー木村、百田光雄、力皇猛×

 ほぼ、いつも通りのファミリー軍団vs悪役商会。永源と百田から始まるロープワーク、選手がチョップを打つタイミングに合わせて観客も手を叩くバチンチョップ、ラッシャーのフットワーク、トペに行こうとして躊躇する永源、バルコニーから試合を作る「百田男」の皆さん、そしてラッシャーのマイク。ファンの皆様ご安心を。これまでと変わらぬ風景がそこにありました。

 が、気になることが一つ。それは永源が客席にツバを飛ばさなかったこと。単に忘れてただけなのかな?

 ここで10分程度の休憩。


第三試合(タッグマッチ)
○志賀賢太郎、丸藤正道(19分30秒 腕ひしぎ逆十字固め)井上雅央、金丸義信×

 第二試合で書き忘れたけど、この日はタッグでも選手が一人ずつ、自分のテーマ曲にのって入場してきた。これは「旗揚げ戦」ということでの特別なアレなのかな。

 最初に入場したのは丸藤。新コスチュームはパッと見がグレート・ムタみたいなパンタロン。コーナーに上り、両手を広げてアピール。客席に集まった丸藤目当てのギャルから黄色い声援が飛ぶ(うらやましい)。続いて銀の半ズボン型ショートスパッツで志賀が入場。

 対する金丸、マサオのWEWタッグ王者コンビのコスチュームはあんまり変化無し。もっともマサオの尻についたでっかい★の模様はどうかと思うが。まぁ個人の好き嫌いの問題だけどさ。

 オープニングコンタクトは金丸と丸藤。腕をとっての巻き投げやヘッドシザースをトップロープから繰り出す丸藤。ドロップキックの相打ちから距離を取って見合うといったジュニアヘビー・ムーブにソツが無くなってた。直前のAAA興行で勉強してきたか? 対する金丸もコーナーポストにくくりつけておいて顔面へドロップキックを打ったり、場外鉄柵を利用したギロチンや丸藤の顔面わしづかみキャメルクラッチなど、エグさが増してる。しかもそれぞれの技を出すたびに憎憎しい表情を作るもんだから会場の丸藤ギャルは騒然。全日本では「あそこはジュニアがなぁ....」と言われてきたけど、この二人は勿論、そういえばジュニア王者だった小川良成にしても決して他団体に比べても技量は見劣りしない、と胸を張って言っておきたい。

 試合の殆どは丸藤がやられ、ときたま志賀がカットに入るといった展開。しかし、肝心のカット役である志賀がどうにも頼りない。だからうまく締まらない。会場からも「しっかりしろ!」という声が飛びまくる。やっとこさタッチが成立し(HotTagっていうらしい。5号店からリンクされてる禁断の「真・格闘技用語集」を参照のこと)、さぁこれから!ってときにもちょっとだけ攻撃して、すぐ丸藤にタッグしてしまう始末。なぁんかオドオドしてるんだよなぁ。たぶん、こういうところが志賀が太れない要因なんだろうな、と推察。あの締まった体を見る限り、練習はちゃんとしてると思うんだけど。

 それに比べて、マサオと金丸のふてぶてしさはどうだ? 特にこの日は金丸がよく動いてた。マサオも相変わらずの安定ぶり。いつのまにか相手を自分のペースに巻き込むドッシリぶりは健在。でも、マサオの場合それだけなんだよなぁ。どうにも「華」が無い。いい選手ではあるんだけど、やっぱり「通好み」の域を逸脱してない。もっと上位に食い込みたいのならなんとかしないと。もうそこそこのキャリアがあるんだから。

 最後は畳み掛ける金丸を一瞬の腕ひしぎにとらえた志賀がタップを奪う。が、会場は沸かず。そりゃそうだ。この日の客にとって、この試合の勝者は金丸。これはオールシュートです。

 試合後、志賀と丸藤は「オレたちがチャンピオンだ!」といなないたとか。ってことは当分はこの組み合わせで引張って行くのかな。邪道・外道も早いとこ絡んで欲しいものである。


セミファイナル(6人タッグ)
○垣原賢人、小川良成、池田大輔(23分46秒 腕ひしぎ逆十字固め)大森隆男、高山善広、浅子覚×

 入場はダイスケ、カッキー、ヨシナリの順。ダイスケは「るろうに剣心」の左之助が出てきた時に持ってた斬馬刀(といってもココの人達の殆どはなんのことかわからんと思うが)みたいなでっかい刀を持って入場。リングインするやいなや斬馬刀に水をブフォーッと吹きかける。カッキーは普通に入場し、軽いシャドウを見せる。レガースには相変わらず「UWF」の三文字。ヨシナリは(いい曲だけど彼のキャラには似合ってない、と誰もが思っていた)以前のテーマを一新し、口元に薄い微笑を浮かべながら入場。ときおり客の差し出した手にタッチを返す。「無口で渋い」から「ニヒル」になった、というかそんな感じ。ちなみに三人ともコスチュームはまったく変化無し。いや、カッキーがオープンフィンガーグローブをつけるようになったか。

 ノーフィアーは三人揃って入場。コスチュームは白のトランクス。入場式の時点で金髪となっていたのはわかったが、まさかそれに白パンを合わせるとは思わなかった。手前の周りにいた客は「なんかブリーフっぽくねぇ?」と言ってた。それくらいにフェロモン出まくりなルックスだったのだ。日焼けもバリバリにしてたし。

 この試合で光ったのはカッキー。パンチのコンビネーションとキックの連打しか無いんだけど、しかしとにかく強い。大森をコーナーに追い詰めてパンチをボコボコ入れまくってダウンさせ、そこに蹴りをバシバシとブチ込む姿たるやまさしく修羅の如し。まぁカッキーが光ったというか、他がまったく目立たなかったという言い方もまた正解なんだけど。とりわけ浅子の体たらくっぷりはみてられない。試合の大半は浅子がやられるという展開だったんだけど、やられっぷりがサマになってないし、ときたま見せる空中殺法も金丸や丸藤のそれに比べてキレに欠ける。

 やられ役の浅子が作ったうっぷんを大森と高山のコンビネーション殺法で晴らす、というのが今後のノーフィアーの闘いぶりになるんだろうけど、それにしてみ中途半端。三人での連携にしたって浅子との息がまだ合ってない。まだ結論を出すのは早すぎる気もするが、手前なら浅子の代わりに金丸を入れる。あのふてぶてしいキャラとルックスはノーフィアー向き。金丸がチョコマカ動いて掻き回し、高山がパワフルに暴れ、大森がアックスボンバーで締める、というようにしたほうがそれぞれのコンストラクトが取れて良い。連携もスムーズにいきそうだし。っていうかルックス的に浅子は金髪&白パンが似合わない。まぁそれを言っちゃぁ身も蓋も無いが。

 とはいえ、アンタッチャブル側にも問題が無かったわけじゃなくて、三人での連携プレーがまったく無く(もっとも、これは試合後に理由が判明するが)、一人一人が順番に戦ってるだけでしかない。キャリアから言ってもヨシナリがリーダーシップを取るべきなんだろうけど、池田はまだイマイチ6人タッグのやり方をわかってないみたいだし、カッキーは言う事を聞かない(これも試合後に理由が判明する)。これじゃぁヨシナリならずともやりにくいことこの上ないだろうとは思うけど、三沢とのコンビはともかくとして、やっぱりヨシナリはシングルプレイヤーなんじゃないかな。

 「他がまったく目立たなかった」と先に書いたけど、中でも唯一、高山はそれなりに見せ場を作ってた。ヨシナリとダイスケをラリアットの連発で蹴散らしたり、ジャンピングニーパットで暴れまくるとこなんかは「ロッキー3」に出演したときのハルク・ホーガン(役名:サンダー・リップ)を彷彿とさせた。まぁ見た目がよく似てたというだけという説もあるが。

 一番沸いたのは、UWF式にアップライトで構えるカッキーと対峙したとき、高山も同じようにアップライトに構え、掌底や膝蹴りでカッキー圧倒したシーン。そういえば高山も「UWFの血を引く者」だったんだよな。今ではサンダー・リップだけど。

 最後はカッキーが浅子を腕ひしぎでタップアウト。直前の試合と同じ技をフィニッシュにするのはどうかと思うが、とりあえず「垣原強し!」を印象付けるには充分だった。試合後、ヨシナリとダイスケが怒りの収まらない大森とサンダーリップ高山にフクロ叩きにされるが、ヨシナリと(実際はどうか知らんがリング上では)仲の悪かったカッキーは二人を見殺し。一人で去って行く。カッキー、シングルプレイヤーとしてやっていくことになるのか? 全日時代はパッとしなかったが、案外NOAHの秘密兵器はこの男なのかもしれない。


メインイベント(タッグマッチ 組み合わせはリングアナによるコール時まで未発表 この試合の勝利者チームが翌日のメインイベントでシングル対決)

 というわけで、注目のメインイベント。入場は田上、秋山、小橋、三沢の順。テーマ曲は何故か「仁義無き戦い」の曲に一新した田上を除き、これまでのものに前奏をつけた程度のリニューアル(小橋は前と変わりなしかな?)。入場時の声援が一番大きかったのはやっぱり三沢。手前自身もこの時に声を枯らした。この時点で観客が選んだ「エース」はやはり三沢である。

 リングインしてから、それぞれのコーナーに陣取る四選手。この時点で組み合わせはまだわからない。仲田龍リングアナによる選手コールが始まる。赤コーナー、田上。青コーナー、秋山。青コーナー、小橋。この時点でカード決定。元バーニングvs三沢、田上組となった。最後に三沢がコールを受ける。ちなみに小橋がコールを受けた南東のコーナーポストからは緑の、三沢がコールを受けた北西のコーナーポストからはオレンジの紙テープがそれぞれ飛び出した。小橋、リングインしてから陣取るべきコーナーを間違えたな・・・。

 ちなみにコスチュームは秋山がパールホワイトで股間に蛇柄をあしらったタイツとシューズを履き、小橋がオレンジタイツに黒のファイヤーパターンを導入。三沢はこれまでタイツの白だった部分をシルバーにした程度のマイナーチェンジ。田上、まったく変化無し。どこまでいこうが何をやろうが田上は田上である。「田上明」という存在に時間軸など関係無いのだということを強烈に印象付けた(と思ったのは手前だけかもしれんが)。

一本目
○秋山準、小橋建太(2分 フロントネックロック)田上明、三沢光晴×

 ファーストコンタクトは三沢と秋山の顔合わせ。いきなりグラウンドの展開に持ちこみ、アマレステクニックで三沢を翻弄する・・・と冷静に書いたが、その時の印象は「うぉー秋山強ぇっ!」というもの。バックを取られ、秋山の両足で右足を挟んで固定され、秋山の右手で首をロックされるなど、三沢はいいとこまるで出せず。これからの秋山はちょっと違うぞ、というのを印象付けさせたところで、急激に試合は動き出す。

 まず小橋が田上をラリアットで場外に吹っ飛ばし、続けて三沢をコブラクラッチスープレックス(ジョニー・エースに対するメッセージというのは考えすぎ?)で投げて動きを止め、そして秋山が串刺しのDDT。そのまま三沢の首を離さずに、まるでヘンゾ・グレイシーかと見まごうようなフロントチョーク(に見えたのよ。立見席からは)。ここでゴング!三沢失神!!

 しかし、公式発表「フロントネックロック」は無いだろうよ。だってネックロックで「失神」するかぁ? いや、たとえ失神するとしても、ここはやっぱり「フロントスリーパー」とするべきだと思う。そのほうが「三沢失神」という絵面にピッタリ合うはず。とはいえ、会場は騒然としてたので「フロントネックロック」というアナウンスは殆どの客が聞き逃しただろうからこの時点ではノー問題。リング上では西永レフェリーが蘇生に務める、ほどなくして三沢が意識を取り戻し、フラフラしつつも二本目が開始。

二本目
○秋山(17分45秒 片エビ固め)田上×

 早い決着を求めてラッシュをかける秋山。しかし三沢もエルボーで凌ぐ。そして田上にタッチ。一本目と打って変って、今度は三沢組が秋山をじっくりいたぶる展開となる。

 中盤、田上がエプロンから奈落式ノド輪落とし(ゴング派の貴兄は「断崖式」に置き換えても可)を敢行しようとするも、小橋のカットに入られて失敗。しかし、その後の花道でのノド輪落としは成功。でもどうせなら「花道から客席にノド輪落とし」くらいやってもいいよな。いいよな、って言っても技を喰らうのは手前じゃなくてレスラーだけど。田上が客席に向かって「ぅおんもぁえら、どけぇ(オマエら、どけ!)」と、あの口調で言って、客がどいたところで椅子に向かってドーンッ!とノド輪落としをやる、と。どーですか田上さん? 早くしないと大日本あたりの選手がやっちゃいますよ(誰がやるのかはともかく、喰らうのはたぶん本間)。

 そいで試合は終盤。まずは小橋が三沢にラリアット。返す刀で田上に投げ捨てジャーマン。しかし直後に三沢のエメラルド・フロウジョンを食らう。そこから秋山が三沢にエクスプロイダー。すぐさま立ちあがった三沢にもう一発。続けて田上にもエクスプロイダーを放ち、カウント3つ。秋山、目の上のタンコブ二人から一人で勝ちをスコアする。これにて、翌日のメインのカードは小橋vs秋山の「バーニング清算対決」と決定する。

 両者、翌日の健闘を誓い合って握手。手を取り合って二人で勝ち名乗りを受けるその瞬間、スパッ!という音とともに秋山のバックドロップが小橋に炸裂!! 秋山、してやったりの表情で花道を引き返し、客席を指差して「新時代」をアピール。その表情たるや、橋本をブチのめしたときの小川直也もビックリの堂々っぷりである。

 しばし、リングで大の字となった小橋、起きあがってから客席に一礼。これまでの「全日本」には無かったTo Be Continuedが作られた瞬間だった。

 それにしても、手前にとっては以外なブックだった。旗揚げ戦でエースと見られていた選手が敗れるというのは天龍SWS、船木パンクラス(これは例外か?)、長与GAEAなどの例を見るまでも無く、手前が充分に予想しうる範疇のことだったけど、それにしても「2分」とは・・・。また、今回のメインが「三本勝負」になると発表された時点で、手前の読みはキックアウト合戦になると思ってたが、甘かった。それこそ不二家のペコちゃんばりに。だいたい三本勝負がストレート決着だなんて手前の記憶には無い。全女のWWWAタッグ選手権で一回あったような気もするけど、カードが何であったかは思い出せない。やっぱり「全日時代からの試合展開の見直し」というのは最重要課題だったんじゃないかな。正直、キックアウト合戦もたまにでいいから見たい気もするが。これはリングスファンが「たまには田村のクルクルやハンのマジックを見たい」と思うのと似てるんじゃないだろうか。

 さて、前回の「アツシvs長州」の反省がまったく生かされていない激長観戦記でしたが、ここらで今回の興行の総括と、NOAHの今後を占うことで締めたいと思います。

 まず、目に付いたのは若手選手がノビノビとしてるな、という印象。一部、旗揚げ戦ということで固くなってるなという部分もあったけど、上を気にせずに弾けてやるゾ!という意気込みが感じられたというのが大きなポイント。また「弾けた」ということに関して言えば、リング外の演出や、メイン終了後の秋山のバックドロップに代表される「アングルの導入」など、これまでの「全日本」の殻を打ち破ろうとする気概が見えた。

 御大が存命の頃は、全日本といえば「つつましく、しとやかに、それでいて質実剛健」であることがアイデンティティとされていたし、三沢以下、選手は余計なことを考えずに「試合のみ」に集中することができた。それが川田を含んだ旧四天王に代表されるクオリティの高い試合に繋がったんだとも思う。しかし、御大はもうこの世にはいないし、彼らは「全日本」というブランドを捨てた。ジャイアント馬場という偉大すぎるレスラーの「威光」が無い代わりに「呪縛」も無くなったのだ。ならば、好きにやらなきゃ。派手にやらなきゃ。暴れまくってくんなくちゃ! 

 とりあえず戦力も充分に揃い、旗揚げ興行で新たな方向性を示せたことでNOAHの船出は順風満帆に見える。しかし、三沢が選んだ海路の方向には、既に「新日本プロレス」という巨大な先駆者がいる。そう、有明駅までの帰り道、誰かが「プチ新日本みたいだったね」と言った。これは言い得て妙だと思う。極端に右に寄ったり左に寄ったりするでもなく、演出や選手のアピールやアングルの導入を派手にしただけでは、敢えて厳しい言い方をすれば「王道」が「King of Sports」もしくは「ストロングスタイル」に擦り寄っただけにしか見えない。そうすると必ずや「新日本」という壁にブチ当る。そうなる前に、もしくはそうなった時に、NOAHはどうやってその壁を乗り越えるか。その鍵は秋山準が握っていると思う。秋山がナオヤや桜庭のように「突きぬけた存在」になれるかどうか。三沢が選んだ方向性は、決して楽なものではない。順風満帆に見えるが、出港した先に待ち構えるのは荒波だ。方向性を示せたという点で、いい旗揚げ興行だったけど、第四試合でダレたせいか最後まで「爆発」はしなかった。点数をつけるならご祝儀も込みで75点。ま、こんなもんでしょ(Copyright by ケンドー・ナガサキ)な興行だった。

 でも手前はついていく。手前が誰よりも好きなレスラーである三沢と一緒に荒波を渡ろう。三沢がいなかったら手前はプロレスファンを続けていたかわからない。今こそ三沢に恩返しをするときだ。NOAHという船の添乗員は選手、スタッフだけじゃなく、我々ファンもそのうちに入ってるのだ。一緒にNOAHを漕いでいこう。ヨーソロー。




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