ちくしょ騙された:レッスルマニア2000生観戦記
■団体:WWF WrestleMania 2000
■日時:2001年4月2日
■会場:カルフォルニア州アナハイム、アロウヘッドポンド
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

俺はレッスルマニアをなめていた。

レッスルマニアとはどういうものか、俺は完璧に分かってる。これは年間総決算の大会。他のPPVとは根本的に違うんだよ。メインは絶対みんなが喜ぶハッピーエンディングで終わるはず。派手なヒールとベビーの変身劇もないはずだ。特に今回のレッスルマニアでは、メインだけが重要なんだ。ミックも「レッスルマニアのメインを張ることが俺の最後の夢」と言って参戦してきたじゃないか。WWFは今日のメインに向けて、全てを順調にセットアップしてきた。最高のメインイベントを演出するため、現在の6大スター(+リンダ&ビッグショウ)を全てメインに集中させた。トリプルHをずっと負けない悪役王者で持たせてきたのは、今日People's champを真の王者にするため。ステファニーを不良娘で売ってきたのは、今日ビンスが伝統的古き良きアメリカ家族における、家父長としての威厳を高らかに取り戻すためなのだ。いろんな層のアメリカ人が家族で楽しむレッスルマニアのメインの、最高のストーリーが既に用意されている。全部見えちゃってるけど、それでいいんだよレッスルマニアは。さあ今日は単純なカタルシスを楽しみにいくぞ。

・・・はい。そんなことを考えていた俺は愚かでした。きれいに騙されました。つうかこんな終わり方分かるわけねーじゃんか、って気持ちもある。ま、観戦記いきます。長い文章を気にせず書けるこのページはありがたい。前半の試合順は少し違ってるかも。

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友人が突然ドタキャンしたので、一番安い$30のチケット二枚を持って一人車でアナハイムへ。駐車代$8は凶悪。試合開始約一時間前、会場前にはファンがいっぱい。その80パーセントがWWF関係のTシャツを着ている。俺が心から安らげる数少ない場所の一つだ。しかし、どうやってこの余りチケットを売ろうか? ほとんどが仲間連れ。チケットもってない一人者はどこだ? 俺はダフ屋じゃないから定価で売るよ。

とりあえず適当なところに陣取って、売りたいチケットを手に持ってぴらぴらさせて周りを見まわした。そのうちチケットのない人達が声を掛けてくる。でもみんな、二、三枚続きじゃないとだめみたい。子供連れとか仲間連れとか。しょうがないんで、いかにもダフ屋っぽい兄ちゃんの近くに行ってみる。お、向こうから声を掛けてきたぞ。「お前のチケットいくら?」「30$。定価だよ。」兄ちゃん首を振る。そんなやりとりを三人のダフ屋と繰り返した。ダフ屋も連番じゃないと売れないからか、買ってくれない。困っていたら、またダフ屋っぽい兄ちゃんが話しかけてきて、買ってくれると言う。ラッキー。「ちょっと向こうに歩きながらにしよう。ポリスがいるかも。」しかしこいついくらでこのチケット売るつもりなのかな? まいいや。チケットは俺の隣の席だから、そこに座った人に聞いてみよ。

席は最上階の、選手入場ゲートの裏。ゲートにしつらえられた巨大ヴィジョンが見えないぞ。ま、会場備え付けのオーロラヴィジョンがリングの真上にあるからいいか。さっき売ったとなりの席はまだ空席。そのうちオープニングセレモニーが始まる。ものすごい花火が上がって、おねえちゃんがアメリカ国家を歌う。会場の9割が起立。え、俺はやだよ。

・ゴッドファーザー、ディーロ組 vs ボスマンとその新しい子分。
いきなりホートレイン登場。掴みにはうってつけか。試合はとくに言うことなし。ボスマンがディーロをピン。ディーロはここにいる意味がなにもない。サタンやベノワと絡ませてあげたいな。ボスマンの子分はでかいのに跳躍力がある。

・ハードコアタイトル争奪バトルロイヤル
この試合は15分間限定で、王者をフォールした者が新王者になり、その新王者をフォールした者がまた新王者に・・・を繰り返して、15分経過地点で王者だった選手が勝ちというもの。なんかリングサイドにプレートやらいろんな凶器が置いてあって、みんなひたすら凶器で互いを殴りまくって盛り上げる。最後の数分以外は、まともな技は使わず殴るだけで試合しろと指令がでていたんでしょう。そんな中、なぜかタズだけ一人サブミッションやスープレックスを使っていた。変な奴。試合は最後の一秒でクラッシュからピンをとったハードコアの勝利。海援隊も3分ほど王者になった。

この試合の途中に俺の売った隣の席に人が来た。あれ? 俺が券売った兄ちゃんじゃねえか。この人ダフ屋じゃなかったんだ。 彼はECWファンらしく、タズタズECWECWとひとりで騒いでいる。そういや、いかにもサンドマンとかを好きそうな風体だ。

・アル、ブラックマン組 vs テスト、プリンスアルバート&新しく来たおねいちゃん
テストとアルバート(T&A)の大型新コンビは、身体能力だけならアコライツ並だと思う。今日も豪快な連携技を披露してた。しかし、いかんせんまだなにも個性がない。入場曲時にビジョンに移るプロモビデオだって、画面の7割がねえちゃんで、選手二人はほとんどおまけ同然。この試合は消化試合。トイレやスナックを買いに席を離れる人多し。試合はテストがエルボーでピン。ねいちゃん脱がず。

・ダットリーボーイズ vs ハーディーズ vs エッジ&クリスチャン
(タッグタイトル争奪梯子&テーブルマッチ)
このメンバーでこの試合形式なら、ファンならだいたいどんな展開になるか想像つくはず。そう。行われたのは、梯子とテーブルを複雑に組みあわせて使いまくりつつ、高所から危険なバンプを繰り返し、全員が(相手のでなく)自らの肉体を限界まで破壊しあう極限マッチ。ジェフが場外で梯子の最上段から、テーブルの上に寝るババレイにセントーンボムを撃ち二人共爆死した後、リング中央でダッドリー二人が作った不安定なオブジェ(梯子二台のうえにテーブルをのっけたもの)の上にマットとエッジとクリスチャンが三人で登り、マットが、下にあるもう一つのテーブルのうえに大回転ダイブして終了。つまり勝ったのはエッジ&クリスチャン。でも、試合中延々と自爆を繰り返したのはみな同じ。勝った負けたがここまでまったく意味を成さない試合も珍しい。

・キャット vs テリ
レフェリーのヴァルの唇を奪いあうキャットとテリ。それを見て欲情したキャットのセコンドの淫乱老女メイが、ヴァルに長時間ディープキス攻撃をしかけ、キャットの反則負け。おこったキャットがテリの服を脱がして、超Tバックのけつは見れた。やっぱPPV購買するファミリーの多いレッスルマニアじゃ、放送禁止は無理か。

・チャイナ、Too cool 組 vs エディ、サタン、マレンコ組
先週のエディのエロ親父まるだしセクハラ発言で、いくらかテーマが出来たこの試合。超女性チャイナはいつものように、どんな男のよりもでかいバズーカ砲を連発発射して超男性性をアピールして入場。サタンとマレンコは不快感をもたらす以外なんの役目も果たしていない。好色チカノのエディが試合をうまく引っぱって、チャイナに男性自身を攻撃されたりしてフォール負け。

・アングル vs ベノワ vs ジェリコ
(インタコンチ&ヨーロピアン 2フォールダブルタイトルマッチ)
この試合は事前の話題作りに失敗したため、盛り上がりがなく終わる。ベノワがからむ意味がまるでないし。まずベノワがジェリコをピンしてインタコンチを取って、次にジェリコがベノワをピンしてヨーロッパ王者に。アングルは負けてないのにタイトルを二つ失い、陰謀説をわめきたてる。バックランドは試合前にアングルと仲間割れして懲らしめられて、出てこず。

・ラキーシ、ケイン組 vs Xパック、ロードドッグ組(&トーリー)
このセミも、ほとんど意味のない消化試合だな。まあ、メインに全てをぶちこんであるんでいいでしょ。抜きどころはラキーシが巨尻でトーリーを折檻するシーンにつきます。ケインがDXのどっちかからピンを取る。

・史上最大のメインイベント、のはずだった試合(選手名は書くまでもなし)
いや、ほんとすげえメンバーだ。こんな試合でロック様の戴冠式が見れるなんて感動だ。ビッグショウとミックがまず落ちた後、トリプルHとの大混戦の末ロックが勝つはずだ。ストーンコールドはどこで絡むだろう・・・いや、俺はほんとにこの自分の推論が正しいと信じてたんですよ。事実、試合終了寸前まではそれでぴたりだったのに。

試合開始してしばらくはビッグショウが目立つ。豪快な技で三人を次々に斬って捨てたり、逆に三人から集中攻撃を食らって、それでも粘った末、とうとう倒れたり。こういう多人数試合では、ビックショウみたいなキャラは映えるなあ、と思っていたら5分くらいでロックボトムを食らって退場。おいおい、まだシェーンの動きをなにも見てないぞ。まいいか。後で戻ってくるだろ。

そのあとはロックとミックがトリプルHを集中攻撃。ミックのマンディブルクローでグロッキーのトリプルHに対し、ロックが仕上げのエルボーの態勢に。一気に盛り上がる館内。しかしそこでミックがロックを攻撃。場内は一転してため息とブーイング。いいんだよそれで。ロックが勝つんだからミックは悪役になんなきゃ。その後はミックとトリプルHが協力してロックにおそいかかる。ハイライトはトリプルHが放送席にロックを寝かせたところで、ミックのエプロンからのダイブ! しかしなんということか、ミックは足が滑ったんだか、机とエプロンの距離が遠すぎたせいか、この生涯最後のクレイジーバンプになるはずだった?ムーブでロックの体に乗れず、両手でなんとかスレッジハンマーを当てるにとどまってしまう。当然机も壊れず。トリプルHがすかさず別の技をロックに見舞って、なんとか机を破壊。やがてリングにもどったトリプルHが、ミックにペディグリー。一発目は返したミック、二発目をイスの上に受けて万事休す。負けた後、拳を振りあげて帰って行くミックにファンから暖かい声援が。こんどこそほんとうにさようならミック・・・・と思ったらいきなりミックはリングに戻って、トリプルHに有刺鉄線バットで一撃。改めて帰っていった。ここまでで20分くらい。

ほうらやっぱり思ったとおり、ロックとトリプルHの一騎打ちだ。二人はやってやられて、客席に二度なだれ込んでやりあうサービス。そのうち予想通りシェーンが戻ってきて、ロックとビンスに攻撃。怒れる父親の最高の表情でビンスも反撃。やっぱこの親父はすげえ役者だぜ!と思いきやシェーンが急所攻撃からイス攻撃で親父をグロッキーに。ビンス、ジェリーとパットに抱えられて退場。あれ?父権復活のドラマはどうなるんだ? まあじきに戻ってくるだろ。ロックとトリプルHはさらにニアフォールの攻防を繰り返す。ダブルノックダウン。盛り上がってきたぞ、最高のエンディングに向かって。お、やっぱりビンスが戻ってきたぞ。シェーンをイスで吹っ飛ばす。さらにリングに上がって、トリプルHにも・・・

??!!

ビンスがブン殴ったのはロックでした。トリプルHがカバー。カウント2。なんだそれ聞いてないぞ。混乱した頭で俺は考えた。げ、ビンスが悪役転向? 父親復活のストーリーはなしだ。でもまさかロックは負けないだろ。そうか!このあとストーンコールドが乱入してきてロックを助けるんだな。それもまた最高のエンディングかも・・・そんなことを思っているうちに、ふらふら立ち上がったロックにビンスが渾身の二発目のイス攻撃。ビンスはトリプルHの体をロックに多いかぶせる。ストーンコールド現われず、カウント3。

まじ。まじで入っちゃったよ。またトリプルHが勝っちゃったよ。場内ブーイング。物投げる奴もいくらか。なんだそれ。レッスルマニアはハッピーエンディングじゃないのか?俺の、この世界に対して持っていたある一つの自信が崩れた。「これはこうであるべきである」という、信じて疑わなかった一つの確信が、ものの見事に裏切られた。なんだかよくわからんが、俺は衝撃を受けた。

リング上ではビンスとステファニーが抱きあっている。こんな形で親娘関係が恢復されるなんてありか?教育上良くないじゃないか。そんなことを思っていたら退場しかけていたロックが復活。さすがにこの後の展開はすぐに分かった。シェーン、ビンスをロックボトム葬したあと、いままで「処女」を守り通してきた(技を食らわなかった)ステファニーにロックボトムからピープルズエルボー。これで奪われたカタルシスの、2割ほどは回復して家路につく観客たち。(大喜びしてたアンチロックな人もいました。もちろん)

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衝撃を引きずったまま会場を出て、駐車場に向かって歩きながら考えた。こりゃどういうことだ。要するにこの一年(レッスルマニアを「年末」総決算と考えて)最大の功労者にWWFが勝利を与えたということか?こういうアンチクライマックスを見せることによって、来年以降のレッスルマニアを事前予測不可能にしようとしているともとれるかな? しかしトリプルHは今後もまた働きづめじゃないか。他に悪役がいないからしょうがないのか? なんにしてもWWF鉛筆は大多数の観客がロック勝利を予想すると見て、あたかもその大団円に全てが向かっているようにに見せかけて、わざと裏切ったんだろう。 しかしこれは俺みたいなただの客でなく、いわゆるスマートと呼ばれるディープな人達をも騙したのか? そもそもこりゃ成功なのか失敗なのか? 成功する事はものすごく簡単だったところで、あえて失敗してみせたのか? なんかよく分からないややっぱ。




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