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五月五日端午の節句山口富士夫ライブインクロコダイルトホホ感想
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■投稿日時:2005年5月14日 ■会場:原宿クロコダイル ■書き手:地獄SUN |
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バンド練習の後、山口富士夫のライブに行く。このひとのライブを観たのは初めて。 犬Sのギタリスト、ギター犬(けん)がとても好きなミュージシャンで、スタジオに行く途中、たまたま一緒になった車中でこの日にライブがある と聞いて観てみましょうか、と思ったわけ。 場所は渋谷と原宿の間、最寄り駅かなり微妙で有名なライブハウス「クロコダイル」。ここは飲み物も料理も本当にちゃんとしている都内でも珍し いお店です。 開演20時の15分くらい前に入店。テーブル席が結構あるせいもあるのだが、既に満員。エビスビールを瓶飲みしながら開演を待つ。 客層、かなり嫌な感じ。かなりの中年率。しかも金髪長髪ばかり。刺青率も高い。どいつもこいつもロック喫茶とかロックバーとか経営していそ う。みんなガバガバ酒を飲んでいる。何故か上唇が薄い感じの顔が多かった。 もしかしてご存知無い方もあるかと思うので山口富士夫についてちょっと解説。 かれこれ30年以上前になりますが、「村八分」というバンドが京都にありました。音楽スタイルは...見も蓋も無く言ってしまえばストーンズや ジェームス・ブラウンの丸パクリ。コピーじゃないです。パクリ。ただし、ああいう音楽をきっちりパクれるロックバンドは実は滅多にいない、っ てことを踏まえたうえでパクリと言うわけなのでそこんとこ世露死苦。 異様にガラの悪いというかタチの悪いバンドでライブのすっぽかしや客との喧嘩は日常茶飯事だったらしい。 おれは中学生のときに日曜の午後の若者向け番組で東西の話題バンド対決みたいな感じの紹介のされ方でこの村八分とキャロルをたまたま観てし まって腰抜かしました。 で、山口富士夫はその村八分のギタリストだったひと。その前はダイナマイツというグループサウンズもやっていた。 村八分解散後も音楽活動を続けているが実はバンドやっている時間より刑務所で過ごした時間の方が多いんじゃないかという話もあるパクられ(多 分、薬物関係が主)人生。 音楽活動についてはここに上手くまとまっていますね。→http://www.listen.co.jp/artdetail.xtp?artpg=rc&artistid;=1000870 で、そんなセックスドラッグスロックンロールなロック幻想の実体化みたいなひとだから、ちゃんと予定通り演奏始まるのかちょっと心配していた のだが、ほぼ定刻にギター抱えてフラリとステージに登場。ただし、ベロベロの酩酊状態。マイクに向かって何か喋るが呂律が回っていない。 ギ ター犬(けん)に「酔っ払っているね」と言ったら「いや、今日はむしろ素面」という答え。もっと酷いありさまを散々見ているらしい。 山口富士夫のルックスは、そうですね、アフロのフランケンシュタイン。ただし、邦画「フランケンシュタインVSバラゴン」のフランケンシュタイ ン。初代ウルトラマンの中味だった古谷敏演ずるところのアレだけど。 フラフラしながらジャランとギターを鳴らす。ジャズコーラスとミュージックマンという2台のギターアンプにパラで音を振り分けているようなの だが、何が悪いのか妙に歪んで濁って伸びの無い音。どうやら狙って出した音では内容でちょっとアンプなどいじくっていたがすぐに諦めて弾き語 りでボソボソ歌いだす。なにしろセックスドラッグスロックンロールなロック幻想の実体化みたいなひとだからこういうトラブルでブチ切れて帰っ てしまうんじゃないかとハラハラ。 店のスタッフだかボーヤだかが出てき、て歌っているままギターやアンプやシールドをちょっといじくるとちゃんとした音が出てひと安心。 ここでバンドメンバー登場。ドラムはチコ・ヒゲ。そうですあのフリクションのチコ・ヒゲです。ベースは名前は忘れたけど、まだ比較的若い女 子。 正直なところ、チコ・ヒゲのドラマーとしての世間(つっても凄く狭い)の評価は高すぎると常々思っていた。もっとパワフルだったりグルー ヴィーだったりテクニックがあったりするドラマーはいくらもいるし。ただ、この富士夫バンドを観る限り、接着剤としての役割はかなり上手いと 思った。何を接着するのかと言うと、リーダーの気ままな演奏と観客が無意識に予想する音楽と、をです。それに関係するのだけれど、押し引きも 上手い。 ベーシストは...演奏は水準以上なのは置いておいても、なにしろいい度胸だと思う。あおれには無理。いや、人一倍気弱なおれじゃ無理なのは 当然だけど、相当の手錬つわもでも辛いと思うんだよね。一緒にスタジオ入るとか。怖いもん。 演奏する曲目は、これがなんつーか、わかりにくい。ソロになってからのオリジナルをやっているのかと思えばいつの間にか村八分の曲になってい たりして。 村八分の曲と言っても歌詞はずいぶん違うものではあった。そもそも村八分の歌詞はかなり即興部分も多かったらしいし、この日のライブでの富士 夫の歌ももしかしたら半ば即興のような気がしなくもなかった。 「今日はチャーボー(村八分のボーカル・故人)の誕生日だから」としきりに言っていたから普段とは違うリストだったのかもしれない。 スタンダードでは「ラヴインベイン」と「パイプライン」を演奏した。 山口富士夫自身の演奏はどうだったのかと言うと、これがですね、驚くほどギターが上手い。ダイナミクスのつけ方が抜群。ミストーンが無い。一 見ラフなんだけど実に繊細。リズムのキレが最高。トーンやピックアップセレクターの操作も余裕しゃくしゃく。それと、弾かないことを恐れな い。 いや、ミスが無いとかリズムが良い、なんてのは当然のことだろうと仰る向きもあるかとは思いますがね、そういうことと暴走の予感が同居してい る演奏ってのはそうそうは無いんですよ。 4〜50分演奏して「のんびりやろうぜ」と言い置いていったんステージをはけて休憩時間。いつ再開するのかわからない。ギター犬(けん)が言う には以前、こんな感じで引っ込んだままいつまでも出てこなくて待ち続けて終電がなくなってしまったこともあったらしい。 店内のトイレは混雑でたどり着けそうに無いので入店証かわりに手に押してもらったスタンプ見せて近所の公園のトイレへ。 結局、小一時間経ってバンド再登場。演奏始まる。 前半よりさらに酔っているんだか何か他のものでも服用しているんだかで喋りはヨレヨレのグタグタ。お客に向かってしきりに悪態を吐くのだが、 なんだか子供がどれくらい悪いことを言ったらお母さんに叱られるか試しているみたいな甘えん坊さんな愛嬌がある。ただ、発散している雰囲気が やっぱり怖いので笑って見ているしか無い、という面も20%くらいあったな。 あと、しきりに「飲め飲め」言っていた。これは店への気遣いですな。 演奏は...ちょい失速。前半が120点としたら90点くらい。満点は不明。やや長めの曲が増えた。そして、1〜2拍余計に弾いてしまうという泥酔 者ならではのミスも時々あったのだが、ドラマーもベーシストも馴れているだろう楽曲にも関わらず常に富士夫を凝視している感じで上手く付いて 行って(ホントは上手くカバーして)楽曲として破綻しないという実にワンマンバンドらしい演奏。 また50分くらい演奏していったん引っ込む。 アンコールやるんだろうなと待っていたらすぐに出てきて一人で歌いだした。 何曲目かでベーシストとドラマーも三々五々な風情で登場してきてロックンロール爆発。 で、演奏終了は11時過ぎだったかな。。 どうもこういうセックスドラッグスロックンロールなロック幻想の実体化みたいなひとは苦手なんだが、このひとのライブはどこまでブックでどこ からセメントなのかどうもよくわからなくて面白かった。 ギター犬(けん)に言わせるとこの日の演奏は1/100くらいの確率のラッキーと言えるほどの出来だったらしい。 何かがキマリ過ぎて本当にわけのわからない演奏になることや途中でメンバーぶん殴ったりすることやいきなり演奏中断して帰ってしまうことが しょっちゅうらしい。 そんなバクチみたいなライブにわざわざ出向く客ってのは何なんだ、と思いつつも、パッケージショーみたいなロックのライブばかりじゃ面白くも ないよな、とも常々感じていることではある。ローリングストーンズの堕落ぶりとか言い始めたら止まらないわけだし。 何か特別なことが起きた場に居合わせたい、ってことだろうか。スポーツの生観戦ってのはこういう意味合いがかなり濃いな。 で、先にも書いたけれど山口富士夫の場合、どこまで筋書きを決めているのか決めていないのか見極めがかなり難しそうだ。アンコールでメンバー が途中から出てきたときはかなり適当な雰囲気でおいおいセッティング間に合うのかよって感じだったのに、いざ曲のキメではバッチリ合う、なん てのは練習しているんだろうとも思うが、曲が途中で変わってしまうところとか曲順とか始めるタイミングはリーダーの気紛れにメンバーが合わせ てやっているようにも見えたり。メンバー、かなりの緊張感を強いられそう。 ギター犬(けん)は富士夫が上機嫌で良かった、メンバーがマトモな人たちで良かった、と言っていた。 |
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