フェリシア・オー インタビュー
■投稿日時:2005年1月7日
■書き手:ひねリン ex:ひねリン's blog

今回、自分の住む西海岸の柔術・グラップリング界でおなじみの選手がまた一人来日します。1月8日に行われる女子プロ柔術大会「Gi-Feminino (http://www.if-pro.com/femigi2005/)」のメインイベントに出場するフェリシア・オー。ジャンジャック・マチャド譲りのオーソドックスな 柔術と、エディ・ブラボー直伝の最新テクの数々を組み合わせ、ギあり・ナシにこだわらず積極的に大会に参戦しては、一本勝ちの山を築いている パワフルなフェリシアは、柔術とグラップリングがごたまぜになって盛り上がっているこの西海岸のシーンを象徴する選手の一人です。そんな彼女 のことをより多くの人に知ってもらおうと思い、2005年の元旦(マジかよ)に、サンタモニカでショッピングを楽しんでいる(日本に出発する 直前の)フェリシアをキャッチし、インタビューを敢行しました。


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まず、出身地を教えて。アメリカで生まれたんだよね?

「そう。シアトルで生まれて、大学まで出た後、大学院に入学するためにカリフォルニアに来たよ。両親はフィリピン生まれの中国人なんだけ ど。」

じゃ、オーって名字は中国名なんだ。

「そう。ベースボールのオー(王)選手と同じくね!」

(王貞治の名字は中国語発音すると「ワン」じゃないのか? と一瞬悩むものの、気を取り直し)柔術と出会ったきっかけは?

「そもそも私は、柔術のことなんか何も知らなかった。5年くらい前、当時の私はロッククライミングをしてて、何人かで山へ出かけたんだけど、 そこで嵐に遭って、テントに閉じ込められちゃった。それはひどい嵐で、本当に私はこのまま死んじゃうと思ったんだけど、その時一緒に行った友 人のひとりが、ジャンジャックのところで柔術をやっている58才の男性だったのね。そこで私にいくつか柔術の動きを教えてくれて、興味を持っ たのよ。で、なんとか生還した後、私は『もうこんなアウトドアスポーツはこりごり』と思ったから、ジャンジャックの道場に行ってみたわけ。」

そこに女子生徒はいたの?

「いなかったけど、最初はその(58才の)彼をパートナーにして技を練習してたから、参加し易かった。その後も、当時まわりにいた仲間達がい い人達ばっかりだったから、やりにくいってことはなかった。当初は週一回の練習だったんだけど、だんだんハマってきちゃって、今ではほぼ毎日 練習してる。生活スタイルも柔術できるように変えたし、家もジャンジャック道場のすぐ側に引っ越しちゃったし。」

今は数か所で練習してるんでしょ?

「ジャンジャックの道場と、エディ・ブラボーの10th Planet Jiu Jitsuをいったりきたり。あと、仲間内でちょっと秘密の練習会もやってるし、 最近週に一回女子柔術クラスをはじめて、教えてもいるよ。」

レカ(元祖女ヒクソン)からは習ってないの?

「レカがジャンジャックのところに来てた時期に、教えてもらったことはあったけど、『レカの下で』って言えるほどにはやってないよ。」

主に男子とスパーリングしてて、なにも抵抗は感じない?

「私の道場にはいい人が集まってて、みんなと仲良くやれてるから。柔術道場ならたいていそうだと思うんだけど、他道場の生徒が練習に来たとき とかも、(もめ事等が起きないように)仲間達がちゃんと見ててくれるし。道場ではみんなが家族みたいなもんだから。もちろん、スパーリングを したくないタイプの男子はいるよ。重くて男性ホルモンをいっぱい分泌してて、自分より数十キロも軽い相手を壊そうとして来るヤツとか。もっと も体格の大きい人でも、軽い相手とスパーするときはテクニックを磨こうとして、お互いいい練習になるように動いてくれたりする人もいる。たい てい上級者だけど。」

先生としてジャンジャックとエディを比べると、どう?

「二人とも素晴らしい先生だけど、教え方は全然違うのよ。ジャンジャックの方がトラディッショナルなスタイルで、ウォームアップからはじめた り、技術解説からはじめたり。エディは全然違う。まず、一時間くらいひたすら技のドリル(反復練習)を、エディのかけ声に合わせてみんなで いっせいにやる。それも柔術の基本的なエビとかじゃなくて、彼のオリジナルのヤツ。で、そのあとさらに複雑な動きをやって、それからスパーす る。集まってる生徒も違うね。ジャンジャックの生徒は概してあまり試合に興味を持たないけど、エディのところに集まってるのは、試合をやりた くてハングリーになってる人達が多い。今まで別の道場にいたけど、そこではギ無しの練習ができなくて物足りなくて移って来た人とか。」

性格的には?

「ジャンジャックはエンジェルで、エディはデビル(笑)。エディはねえ・・・男の悪い部分を全て持ってるね!(爆笑)。二人はまったくの正反 対。ジャンジャックは結婚して家庭があって、清廉潔白で、お酒もまったく飲まず、クスリもやらないし・・・反対にエディは、独身で遊び人で、 以前はストリップクラブでDJの仕事してて、公然と草吸ってて、ストリッパー達とデートして・・・二人ともユーモアセンスは抜群ね、全然違った 意味でだけど。エディは常に他人をからかうから誤解され易いけど、近くにいれば、単にふざけてるだけだって分かる。ジャンジャックも、すごく 面白い人よ。」

エディのとこにいるブライアン・ビースト・オズィンガはどう? 僕らがやったインタビュー(註:ムック『柔術王』や『ガチ! MAGAZINE Vol.1』を参照してくだされ)で、エディは彼のことを『ノゲイラより50倍強くなる』とかカマしてくれたんだけど。

「ビーストはいいヤツ。ジキル博士とハイド氏。ふだんはすごく性格も良くて繊細で、マットの上ではまさにビーストね。柔術に打ち込んでて、短 期間ですごく上達してる。やるべきことをちゃんとやってきてるし。」

話を戻して。フェリシアの一番の得意技はなに?

「うーん、日々変わり続けてるから・・・ある技を得意になって使い続けてると、練習仲間達も対策を練ってきて、こっちも別の技を使わなきゃい けなくなる。それも封じられたら、また最初の技に戻るとか。どんな技にせよ、私はサブミッションで一本狙うのが好き。ジャンジャックやエディ のように。」

ギありとギ無しの試合、どっちも好きなんだよね?

「そう。全然違う競技だけど、両方やれば、二倍試合に出れるし(笑)。ギありの大会で、紫・茶・黒の部になると、試合をやろうとする女子選手 は少ないのよ。ギ無し大会なら、より多くの相手がいる。私は最初の2年間はギありの試合しかやってなかったけど、ギ無しの練習をはじめたらぐ んぐん上達できた。両方やるといろんな動きをするから、相乗効果が上がったんだと思う。」

最近の主な試合成績を教えて。

「2004年なら、US Open(ギあり)のプロ(黒帯&茶帯)部門で優勝した。あと、11月にベガスのグラップラーズクエスト(ギ無し)にも出て、自 分の体重で全部一本勝ちで優勝して、無差別級にも出て、決勝までは全部一本で勝ったけど、最後に(体重差のある相手に)判定で負けちゃっ た。」

今までで一番思い出深い試合は?

「2002年に、フロリダでパンナム大会に出たときね。私にとってはじめての大きな大会だった。青帯の部に出て準決勝でキーラ・グレイシーと戦っ た。スイープをひとつ取られて負けちゃったけど。」

ムンジアルに出たこともあるんだよね?

「私はレカとはそんなに練習してないんだけど、(2002年)当時レカは私に、試合にどんどん出ろって強く薦めてくれたのね。で、パンナムに出て いい成績を残せたもんだから、次に、レカに連れられてブラジルに行くことになった。一回戦勝って、二回戦も腕十字を取りかけたんだけど、場外 だったんで中央に戻されて、スタンドから再開させられたのね。で、(悪いことに)その相手は柔道家だったから・・・(笑)。でも楽しかった よ。」

今度の日本での試合について聞きたいんだけど・・・今まで日本に来たことは?

「ないよ。成田空港に立ち寄ったことならある。おじいしゃんが死んじゃってフィリピンに戻った時。で、空港でウナギを食べて、時計を買った よ。」

今回の相手、二宮選手の試合は見た?

「一試合だけ。」

で、どう思った?

「いいね!(笑)」

彼女の試合スタイルについてとかは?

「私のスタイルに似てるかもね。たぶん。」

日本のファンにどんな試合を見せたい?

「とにかくいい試合をして、ファンに喜んでもらいたい。退屈な試合になっちゃうことが一番ヤだから。自分が楽しめて、その上で勝てたらいいと 思ってる。日本を経験できるし、ワクワクするよ! 勝ったらまた呼んでもらえるかもしれないし。」

ジャンジャックとエディ・ブラボー道場の威信にかけて戦うとか、そういう気持ちは?

「じゃあそう言うよ(笑)。私はジャンジャックとエディを代表して戦い、勝てれば嬉しいよ。二人とも、私が彼ら直伝のテクニックで勝つと信じ てるからね・・・負けるんじゃなくて(笑)」

他に日本でしたいことは?

「ユーキ・ナカイに会いたいね!(笑)」

日本にはスマックガールを初めとして、女子の総合大会もけっこうやってるんだけど、そっちの方に興味は?

「グラップリングルールならやりたいけど、打撃アリは・・・ムエタイも一年くらいやってたんだけど、殴るより柔術の方が全然楽しいし。」

日本の女子柔術家や、柔術に興味のある女性達に、なにかメッセージとかある?

「最初はキツいけど、それを乗り越えれば、こんなに楽しいことはないと思うよ。最初は大変。ひどくやられて、攻撃できないだろうから。それは 男でも同じだろうけど、でも女性は特にそういうのに慣れてないから。男性みたいに、取っ組み合いをしながら育ったりしてないし。でも、そこさ え乗り越えちゃえば。護身術としても最高よね。もし男に襲われても、私は柔術のポジションを使えるから。冷静さを維持して、いかに脱出するか を考えることができる。男に上に乗られることには慣れてるし。柔術をやれば体型も維持できるし、とにかく楽しいのよ。飛んだり転がったり、相 手から一本取るのも最高だし! もっと多くの女性が柔術をやるべき。」

最後に、柔術選手として今後の目標があれば教えて。

「・・・私が柔術をはじめた時は、この先何が起こるかなんてなにも考えてなかった。でも、いろんなことが勝手に私に起こるのよ。レカに薦めら れたんでフロリダのパンナムに行ってみて、そこでうまくやれたら今度はまた別のことが起こって・・・で、今回に至っては日本に行くことになっ ちゃった。まさか自分が日本に試合しにいくなんて、半年前の私は考えもしなかったよ。だから、人生は予測のできないものだと思う。5年前の私 は、柔術の存在すら一切知らなかったんだし。私は『自分は5年後に何やってると思う?』とか聞かれても、答えないようにしてる。そんなこと分 からないし。とにかく、自分の大好きなことをやりに日本まで行くなんてワクワクするよ。不安や緊張も合わせて、これはほとんどシュール (surreal)よね。今日だってここまで運転して来るときに『私マジで明日、日本に戦いに行くの? どーして私の人生はこーなっちゃってる の?』って考えてたのよ(笑)。こんなのクレイジーよ。(私の周りの)誰も、こんなことが起こるなんて予測してなかった。」

今日はありがとう。日本では楽しんできてね!

「そうするよ。日本語もいくつか憶えたしね! イタダキマス。ワタシ、ワ、フェリシア、デス・・・」





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