3日間でプロレスラー?
■投稿日時:2004年10月22日
■書き手:ひねリン ex:ひねリン's blog

ディスカバリーチャンネルでプロレスのリアリティ系番組をやると友人が教えてくれたんで、こないだ録画しといたのをやっと見た。これは「No Opportunity Wasted」(意訳すると「どんなチャンスも無駄にするな」くらいか?)という一時間番組で、普段はジミーに生きている素人3000 ドルと72時間を与えて、(彼/彼女が秘かに持っていた)夢を実現するためのチャレンジをさせ、その様子を追うものみたい。「退屈な日常を飛 び出して、本当に生きてみよーぜ!」みたいなキャッチを流してる。ちなみに日曜夜8時から。めちゃいい時間じゃん。


で、今週応募者の中から選ばれたのは、子供の頃からプロレスラーに憧れてて、今も飛行場で(荷物運びとして)働きながら秘かにWWEスーパース ターになりたいと思っている、テキサス在住のマイケル君25才(ヒスパニック系で妻子持ち)。このマイケル君の風貌をひとことで言うと「(ナ インティナインの)岡村を太らせて、髪型をダサーくした感じ」というか。要は小さいし風貌もパッとしないし仕事もアレだし、まさに普通の・・ ・てか普通よりだいぶ冴えない兄ちゃん。俺、柔術の試合に出て、相手がこんな風貌の兄ちゃんだったら「こら楽勝ラッキー!」って思うよ。


こんなマイケル君が3日間、ボストン近郊のレスリングスクール「ケオティックトレーニングセンター」で集中特訓し、最終日に、(スカウト達の 見守る前で)そこのチャンピオンと試合する(させてもらう)までを追ったのがこの番組。で、もしそのスカウト達が「コイツは使える」となれ ば、彼は夢かなってプロレスラーに・・・というわけ。俺は「プロレスラーになりたい」って夢を持つ人にはめちゃ共感するんだけど、さすがにコ レはちょっと・・・。てか、こんな奴(性格は良さそうだけど)が3日しか努力をしないでレスラーになれちゃったら困る。んなこと断じてあって はならないっ! 


ま、それはともかくとして、そーゆー番組なので、レスリングスクールでは具体的にどーゆー教えが行われているかがいろいろ映され、プロレスの 仕組みが垣間見える。一番の基本、ロックアップのやり方を説明する時でもコーチは「力を緩めろ。アタマを上げろ。表情とボディランゲージでリ アルに見せるんだ」と教えるとか。当然バンプの数々が(世間の人々の偏見とは違って)めちゃ痛いことも強調される。


あと面白かったのは、マイケル君がキャラの作り方をみんなから伝授される場面。「リング上で相手がお前のことをバカにしてきた。さあお前はど う反応する?」との質問に、マイケル君はとりあえず「『ぶっ殺してやる!』って感じで怒りを見せます」とエキサイトした仕種をしてみせる。で も、これがまた全然怖くない。なんか小さな子供(てか子犬)がきゃんきゃん言ってるだけみたいで。


で、それを見ていた先輩レスラーがアドヴァイス。

「俺だったらむしろ、驚き、『コイツは今、俺にこんなことを言いやがった!』というショックを(体全体で)表現するね。レスリングでは、すべ ての動きがビッグでなければいけない。自分の身体でストーリーを語るんだ。だから(この場合も)『何だ! 信じらんねえ! てめー、なに言っ てやがんだ!』てな感じでさ。最前列の客を超えて、ずーっと後ろの方の客にも伝えなくちゃいけないんだよ。人々は、レスリングは演技の下手な 筋肉マンのやるもんだ、と評価するよな。でも俺は違うと思う。下手な演技ではなくて、レスリングで必要なのは、マッシヴに大げさな演技なん だ。そうやって観客すべての注目を、自分に引き付けるんだ。過大に誇張しろ。今までにお前が会った中で一番芝居がかった態度の野郎のことを思 い浮かべ、それを倍にして表現しろ。」


うーん、正論だね。

ま、この種の「プロレス教室における種明かし」の面白さは、WWEの「タフイナフ」とか、UPWドキュメンタリー「インサイド・・・」(シナの出世 で価値上がりまくりか?)とかでも、てんこもりに出て来てたよね。また、この番組の主要テーマである「夢を目指して戦う若者たち」というのも 「ビヨンド・・・」とか、「バックヤード」ですでに出てる。そういう点では、このドキュメンタリーにはことさら目新しいモノはないと言えるか もしれない。


でもやっぱ、この種の番組をやってくれるのは嬉しいよ。そもそも「目新しさ」なんてことを持ち出すなら、我々プロレスファンってのは普段、ロ ウやスマックでイヤとゆーほど、毎週同じよーな試合やストーリーを猿のように飽きもせず(いや、半ば飽きながらも執念で)消費し続けてる人種 なわけで(笑)。それに比べりゃやっぱ、この種のドキュメンタリーは、もうドキュメンタリーだというだけで希少価値があるわけだし。


それにこの放送では、登場人物のユニークさから来る独自の面白さもいくつかあったよ。なかでもいちばん(ファン的に)嬉しかったのは、そのマ イケル君の特訓二日目に、キラー・コワルスキー爺(このレスリングスクールの名誉会長的存在?)が登場すること。チャイナの自伝でも「実際の プロレスでは役に立たないシュートの技術ばっかり教える、強欲でケチな、でも愛すべき頑固親父」みたいに描かれて、インパクトを残してるこの ジジイ、ドアを開けて道場に入って来るといきなり両腕を上げて、ド迫力のしゃがれ声(&強烈なアクセント)で


「ワシの名はキラー・コワルスキーじゃ! これからワシのすることをよく見るがよい! お主らが死ぬまで忘れられぬものを見せてくれるわ!」

ぐあー問答無用の存在感。しかも、で、でかい・・・。そのままコワルスキー爺は緊張気味のマイケル君に近付いていき・・・

「お前がマイケルか? よく聞け! Shoot for the moon!(とびきりでかい希望を持て)。人々に、リング上のお前の存在を見せつけろ! そして 常に自分を勝者と思うのじゃ。ならばそれは現実となる。人々はお前を見入り、お前に惹き付けられるのじゃ!」

マイケル君は直立不動でそれを聞いては「イエッサー!」と返事するばかり・・・そら怖いだろ。さらにコワルスキー爺は、そのへんの若手レス ラー達を捕まえては殴りつけ、さらにこの番組のナビゲータ(ってのがいるんだよ)をつかまえて、「お主はプロレスがフェイクだと思っとるのだ ろう? これでもそう思うか?」とか言いながら、足のツボをぎゅーっと親指で押して悶絶させたり、頸動脈を抑えて眠らせたり。で、そんな酷い ことをされてもがき苦しんでる相手を、無表情で見下すジジイ・・・やっぱり昔のプロレスラー最高! だな。ドキュメンタリーだろうがなんだろ うが、カメラが回ってる以上はすべてプロレスなんだろうな。このジジイには。


・・・そんな感じかな。ディスカバリーチャンネル、日本でも視聴可能だそうですが、もしこの番組が放映されるなら、一見の価値アリかと。あ、 一応最後に結果のネタバレを(この番組を見ようと思っている人は注意)・・・


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3日特訓の最後に試合をやったマイケル君、(レスリング能力もさることながら)カリスマ性がいまのとこゼロってことで、当然不合格となりまし た(繰り返すけど、そーじゃなきゃ困る)。でも今後もレスラー目指して地元でトレーニングを続けるとか。





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