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『日本プロレス帝国崩壊〜世界一だった日本が米国に負けた真相』
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■投稿日時:2004年9月22日 ■書き手:田中正志 |
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『日本プロレス帝国崩壊〜世界一だった日本が米国に負けた真相』 かつては外国人レスラーからも羨望の的になっていた日本マット界。ここ数年であっ という間に米国に抜き去られてしまった最大の問題点を新事実をもとにえぐり出す。 日米大逆転の活字にされなかった真実を描き、「真アメリカン・プロレス聖典」とし ても、これまで発売されてきた数々の類似本を寄せ付けない決定打となるだろう。究 極のバイブルを意図して、アメプロ成功の方程式と軌跡を経済学の観点からも考察 し、「失われた十年」の日米プロレス変遷過程に迫っている。キーワードは「情報公 開と市民権」であり、北米エンタテインメント産業の盛衰を分析することで、日本の プロレス団体が株式公開できない理由まで明かして魅せた。 第一章「プロレスには種も仕掛けもあった」では、具体的な格闘芸術の作り方を一挙 公開。「モーニング娘。」まで比較登場してわかりやすく舞台裏が説明されると同時 に、エンタテインメント宣言した上でのプロレスの新しい楽しみ方が提案されてい る。 ディスクロージャーによって巨大化した北米市場を歴史順に検証していくのが二 章「アメプロのオキテ破りへの道」、 三章「これが日米大逆転の真相だ」、 四章「ア メプロ混沌期の苦悩から成功法則を学べ」だ。ルー・テーズの虚実を暴き、ビンス・ マクマホンの生い立ちを紐解くところから、WCWとWWFが正面から激突した「月曜生TV 戦争」絶頂期の全容とその後日談までが現地生活者の視点から詳細されており、これ までの専門誌紙で書かれてきたものとの違いが顕著になる。 五章「日本マット界はなぜ凋落してしまったのか」は、未だカミングアウトできない ままの日本の現状を徹底解剖。戦後のビジネスモデルとしてのプロレス伝説とその崩 壊は金融界にもそっくり当てはまり、八百長隠蔽史を振り返るなど多面的な知的探求 を試みた。プロレスLOVEの真髄を紹介している内容だと自負している。 95年の処女作 『プロレス、格闘技・縦横無尽』(集英社)や97年の『開戦! プロレス・シュート 宣言』(読売新聞社)、そして『誰も知らなかったプロレス&格闘技の真実』(幻冬 舎)は初期2作の集大成となったが、本作品は日米比較に焦点を絞ったこれまでとは 違うアプローチのプロジェクトになる。初めて「シュート活字」に触れる入門者にも 親切で、かといって後半はマニアの皆様も納得の新情報も入れてある贅沢な構成を目 指した。 これから本書を買おうとするプロレスファンに対して、「タイトルがネガティヴなの で批判的印象にならないか?」との心配がありうるが、今の苦しいマット界の冷え込 み状況を思えば、いきなり挑発的な題しか考え付かなかった経緯があった。プロレス ファンは否定しながらも買うという図式を狙う作戦もあり、中身を読まれたら、冷静 な現状分析やプロレス村への警告と同時に、数々の提言にも満ちていて、むしろプロ レス感動の秘密にも言及してある。 講談社1470円 ご購入はこちらをクリック |
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