格闘技スーパースター列伝「不動の心!! 近藤有己」第5回
■題名:格闘技スーパースター列伝
■日時:2004年8月17日
■書き手:グリフォン

まだ、カウソン・グレイシーの下でマリオが若き俊英として頭角を現し始めたころ・・・・・・ヒクソン・グレイシーがふらりとカウソンの道場を訪れ、
若手とスパーリングを行ったことがある。

「ヨシッ! かなわぬまでも、全力でぶつかって伝説の戦士の技術を盗んでやるっ」
意気込んで立ち向かったマリオだったが・・・まさに蟷螂の斧のごとく!!
するすると首を絞められ、腕を極められ、ぐうの音も出ないほど押さえ込まれ・・・・・・

「トホホ・・・、まったくもって歯が立たん。こんなことなら、道場をやめて一パイロットとして食っていくべきか・・・」
がっくり肩を落とすマリオに・・・
「悲観してはいかんな、君。私の見るところ、君のセンスと技術は相当のものだ! コツさえ覚えれば、私やホイス、ヘンゾも追い越せるかもしれ
んぞ、ハハハ」
笑顔でさとしたのは、その伝説の英雄ヒクソン。

「君なら分かるかもしれんな・・・。ヨシッ、もう一度かかってきたまえ。ただし、私の呼吸の音、リズムに注意してな」
再開されたスパーで、マリオがヒクソンにタックルする!
そのとき、マリオは聞いた!そして見た!
独特の呼吸音が奏でる、不思議なリズムと、ヒクソンの体を包む、見えないようで達人同士には見えるそのオーラを!!

そのオーラ、いや、「波」が、自分の体の中に伝わると、相手になすすべもなく、全ての力を奪われ、のみこまれていくのをマリオは感じた!!

「今はわからずともよいっ、体で覚えれば・・・この「波紋」、そしてヨーガとも、もとはチベット・インドから伝わった特殊な能力だという。わ
が父の師、開祖コンデ・コマ・・・かれが武者修行中、チベットからいかなるルートを通じてか、この技を一部にもたらされていた国・・・イギリスで修
得したという」

「は・・・波紋。まさに神秘!!ああ、柔術テクニックのみならず、これほどの深みがヒクソン、そして武道の真髄にはあるのか?」

仰向けで天井をじっと眺めつつ、マリオは感動していた・・・その十数年後!


「あの時のパワー、すなわち・・・波紋!!
こ、この若者が、ヒクソンと同じ能力を使いこなすというのか!!
そしてヒクソンは、密着した組み技で包み込んでいったが、近藤はそれをパンチに乗せて打ち込んでくる!
こ、これが彼のパンチのパワーのゆえんか・・・
しかし、からくりさえ分かればこちらのもの!!
、私もあの後、自分で使いこなせるとはいわんが、この攻撃に耐える法はそれなりに身につけた。まだまだ勝負は捨てん!!」

経験、戦略、そして男の誇りが、マリオを突き動かした!!再びの片足タックル!
まさに将に将たる柔術のドンの、名誉をしめすものだった・・・・・・が!!

突然マリオの景色が、重力に異変が起きたかのようにぐにゃり、と歪んだ。
それがかの地獄へのプレリュード、“モモセ“の恐ろしき魔力だったと、観衆とマリオが気づくのはいくぶん後のことになる。

おや。
おかしいな。足はどこだ。
どう歩いている。

そんな疑問が頭をかすめながら、マリオはどうと頭からマットに突っ込んだ。
その機会をのがさず、サイドをとる近藤。

BTTのセコンドが頭を抱える!
「ま、まさに恥辱!!わが柔術界のドンが、日本人にサイドポジションを取られるとは?」

「い、いや、これはピンチというよりチャンス!!
立ち技で攻防をするより、寝業勝負となれば今は不利でも絶対にマリオは盛り返す。サイドからでもいくらでも逆転できるはず。それは俺たちがス
パーで、身をもって体験したろ?」

そう、セコンドの一人は、自分に言い聞かすようにつぶやいたが・・・その一抹の希望を、砕いたのは近藤の膝!!

國奥を、佐藤光芳を、ヒベイロをマットに沈めてきたこの凶器・・・し、しかしそれが、近藤がいまだに一度も経験したことがない、グラウンド状態
で炸裂させるとは、だれが予想しえたであろうか!!

「近藤が、片足を上げた!」
「膝が来るぞお!」
なにしろ天下のBTT、セコンドも一流ぞろい・・・。当然、近藤の微妙な動きを読んでいち早くの警告を発していた。

そしてそれは闘う当人も同じ!
マリオは用意おさおさ怠り無く、近藤の動きを読んで膝の軌道上に手を置く。防御は完璧だった・・・。本来の、膝の動きなら!
しかし!!!!

「なっ!なんと!! 馬鹿な、こンな軌道はあり得ん!!」
まるでカミソリ・シュートのごとく、高角フォークボールのごとく・・・、近藤のジャックナイフは摩訶不思議な弧を描き、死角から正確にマリオの
顔面に飛び込んできた!!

「ホゲ〜〜〜ッ!!!」
「ま、まさか、人体の構造的にあそこから膝をまわすことはできん!」
ブスタマンチが、自分で自分の目を疑った!!

多くの観客は、ただ一瞬のうちに熱狂しただけだったが、人体の動きを知り尽くした格闘家たちには、近藤のグラウンドの膝はあり得ないものだっ た。

だからこそ、マリオ・スペーヒーもその角度からの衝撃を全く予測していなかったし、予測していなかったからこそ、ダメージは2倍、3倍!!
それほどの、インクレディブル(信じられない)な動きであった。

「むう、仙骨移動!」
このとき、その秘密を分かっていたのは、おそらくは・・・
殺人術と整体術を表裏一体のものとして、二千年研究し尽くした一族、日本武道傳・骨法の堀辺正史創始師範、そしてその愛弟子、廣戸パンクラス
レフェリーだけであったろう!

そう、近藤はそのヨーガ、波紋法で、腰の骨を自分の意思で数ミリずらし、そこを基点に膝を走らせたのだ!!だからこその、あり得ない軌道だっ
たのだ!

「ハサミが、根元のほんのわずかの開きで、
最終的に大きな幅に広がるように・・・わずかな
動きの差で、まったく見えなくなる。私の宿敵
スタン・ハンセンが、近眼ゆえの動きのずれで
逆に強烈なラリアットの軌道が相手に読めなく
なっていたのに似ている!!」(アントニオ猪木・談)

二発、たったの二発で、あとはもう・・・リングは血まみれの修羅場のごとし!
「こっ、こりゃいかん、ドクターを!!」
いつもは冷静沈着な豊永レフェリーが、あわてて試合を中断!
もちろんドクターは、マリオのぱっくり割れた額をみて、一瞬でドクター・ストップを決定!!

歓声と驚愕の騒音が、さいたまアリーナで爆発した!!

しかし、当の本人は、あくまでも冷静だった。
彼はマイクをつかむと、静かに
「次は・・・ヴァンダレイ・シウバ選手と、闘いたいです!!」

ふたたびの大歓声!!このとき、彼の行く道は決まっていた。

シウバも近藤を新たな敵と見て、この挑戦を受諾!!
途中シウバの負傷欠場などで、試合延期などもあったものの・・・

8月15日、運命の日は来る!! =一部・完=

(「不動の心! 近藤有己」は完でもあり、未完でもあります。
ヴァンダレイ・シウバ戦の結果によって、変わってくるでしょう)




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