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格闘技スーパースター列伝「不動の心!! 近藤有己」第4回
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■題名:格闘技スーパースター列伝 ■日時:2004年8月9日 ■書き手:グリフォン |
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「何をしているマリオ、早く近藤をテ イ ク ダ ウ ン しろ!!」 「俺のときと同じだ・・・近藤さん、ま だ 倒 れ な い か」 ムリーロ・ブスタマンチと菊田早苗という、稀代の寝技師が、既にガード・ポジションの近藤(マリオからみればインサイド・ガード)を見て、同 時につぶやいた謎の言葉・・・。 「菊田さん、いったい何が『倒れていない』んですか?もう大ピンチですよ!このまま、パスガードされたらどうしようもない・・・」 石川英司が尋ねたが、無言でモニターに視点を戻す。「まあ、展開を見ていろ」という合図であった。 「・・・ひょっとして、俺が感じたあの感覚・・・・」 郷野聡覚の言葉は、小さすぎて石川の耳には届かなかった。 しかし、リング上で対峙する男たちには、その言葉の意味は十分すぎるほどお互いが知っていた!! 「このままで自分の重心を・・・コントロール、できている!!」 「ぬっ、このヤングボーイめ、『抑えどころ』がない!!これではポジショニングではない。もっと、深く強く抑え込まねばならん!!」 あの冷静なゼ・マシーンの計算が、このとき刹那の焦燥によって誤差を生じた!! 「ええい面倒な、アキレスを極めてやる!!これでフィニッシュだ!!」 ポジショニングだけではなく、サブミッション・・・極めの強さでも知られたアブダビ王者が、隠されたナイフを抜き出した!! 「キャッチ!」 レフェリーはそう叫んで、ピストルの型を手で作ったが・・・ 「極まらん!!浅いっ!!」「あせっちゃ駄目です!!」あわてたのはむしろ、BTTのセコンドであった!! 近藤は、表情を全く変えず、市役所で住民票取得の手続きをするように、淡々と決まりきった手順でマリオの足関節をさばいていった。 それはカール・ゴッチから「エクセレントな弟子だ!」と評された、鈴木みのるのテクニックであった!! 「パンクラスIsmに足関節が通用するかよ!! ・・・他の関節技ならともかくな!」 と北岡が叫ぶ。 「私と藤原嘉明の試合を見ていた読者も ここにはおられよう。、 藤原が仕掛けたアキレス腱固めに、私が 耐えられたのは巷間いわれているように ルーズ・ジョイントなどではない。 私の挑発やじらしに、職人藤原も焦り が生じたがゆえ!! 逆に私も、不用意にキー・ロックを仕掛け ゴッチさんに返り討ちにあったものだ・・・ 強引な関節技への切り替えは自信や驕りより むしろ不安と恐怖を表わしている!!」 (アントニオ猪木・談)、 「くっ、こわっぱが!! ならばもう一度テイクダウンしてくれよう!!」 不用意に片足タックルを仕掛けたマリオに、あの技が立ちはだかった! 人は、それを「モモセ」と呼ぶ。 すなわちタックルを相手に仕掛けさせ、その状態で打つ、ごく小さなパンチ! 痛め技にも、本来はならないのだが・・・ コツン、コツン。乾いた、小さい音のようであった。少なくとも周囲には、そうとしか聞こえなかった しかし、打たれている当人、マリオ・スペーヒーには分かった!今、自分の体内で、その衝撃が、波のように満ち干きを繰り返し、反響を繰り返し ていることを! な、なんだ、これは、そう、水たまりに石を落としたときの、” 波 紋 ”のような・・・」 そして密着している近藤の、息使いの音とリズムをかすかに聞き取ったマリオは、ある人物の顔を否応なく思い出していた!!! 「この呼吸、この鼓動・・・・・・こ、これは!! ヒクソン・グレイシー!!??」 (続 く) |
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