映画『ワイルド・フラワーズ』
■コラム
■日時:2004年6月3日
■書き手:凸ユーレイ

 創設者の遺児だったことから、無理やり弱小女子プロレス団体「ガリンペイロ」の社長にされた青年(岡田義徳)と、ひょんなきっかけでその団 体の門を叩いた新人レスラー、桐島(鈴木美妃)と中島(石川美津穂)。3人が次第にプロレスへの愛着に目覚め、傾いた団体の立て直しに身体を 張り、お互いの関係の中で成長し、自己実現していく、という物語。監督小松隆志。


 この映画、暗示的にも明示的にも、アングルやブックの存在を否定していないことで、たんなる子供だましのキレイごとに終っていない。

 それが示される1つ目のシーンは、デビュー戦の中島(石川)がゴング早々カカト落としを決め、先輩をKOしてしまう場面。逃げた中島を怒った セコンドの先輩達が追い掛け回す。何故先輩達が怒っているのか、まったく打ち合わせの無い試合であると前提しては意味がわからないシーンであ るが、特に説明はない。

 2つ目、これは明示的であるが、主人公達の弱小ガリンペイロが団体の存続をかけて老舗のJリングと対抗戦を行なう、その、星の取り決めを双 方の社長が話し合う場面。そして実際の対抗戦のメインでは、頭角を現し始めた新人のタッグがいわゆる“ブック破り”をして、相手のエースコン ビを破ってしまうのである。


 このシーンの、映像が橋本−小川戦をなぞっていたり(桐島(鈴木)がポストに座ったところを敵団体側が詰め寄る)、ガチンコというときの定義 が皮相的だったり、は、やや気になるところでもあるのだが…   もともと監督はプロレス好きとのことで、フォローというわけでもなく、「もっと強くなりたい」という道場の壁の落書きがアイコンとして画面 に何度か出てきたり、経営の苦しさに絡めて「プロレスは難しい。強けりゃいいってもんじゃないし、弱ければ話にならん。格闘技だからな」とい う台詞が登場したりする。


 それらを含みこんだ上で、社長の母親にして団体創設者、女子ストロングスタイルの第一人者だった故人の言葉が紹介される。

 「プロレスは、八百長、スポーツ、ショー、格闘技、サーカス… さまざまな言葉で表現されます。

 私は、プロレスとは、立ち向かっていく心を見せるもの、仮に、弱い小さな者でも諦めずに挑戦していく心を見せるものだと思っています」。共 感。

 ガリンペイロとJリング、2度目の対抗戦の公開調印式の席上の場面では
 「技術でも経験でも、Jリングに敵わないことは分かっています」
 「じゃあ何でウチに勝つつもりなんだ」
 「ハートです」
 「素人みたいなこと言いやがって」
 「素人にわからないような事をしてるから、今の女子プロレスはダメなんじゃないですか!」
というやり取りが胸に響いた。


 上記のように、ストーリーには現実の現在の女子プロレス界の経営難なども織り込まれ、当然私は、弱小団体にJWP(映画のはJDの各選手に よって演じられているわけだが)をダブらせたり、ライバル団体を巧みに飲みこんで潰そうとする大手団体に、モデルは全女のようだがGAEAを ダブらせて見たり。


 そんなわけで、2度目の、次こそは本当に団体の解散をかけた対抗戦。そこに至るまで、リング上でも精神的にも人間関係的にも成長し、団体を 担うまでに大きくなった2人のタッグに私は感情移入して、「勝てるのかな、勝って欲しいな」と祈るようにスクリーンを見つめるのでありまし た。


 「あんたたちの仕掛けたガチンコと、観客に魅せるためのプロレス、その間にある本当のプロレスの恐ろしさを分からせてやる」(この辺がよく わからないのだが、ワザと怪我させて再起不能にするとかいうイメージらしい)と嘯いていた敵側も、最後の試合が進むうち、決まりに則った熱闘 を展開するようになり、勝利は得たものの声援は弱小団体側、新人2人に集まり、「私たちの負けね」と呟く。生き長らえたガリンペイロはさら に、柳の下に3度目のドジョウを掴まえようとする、というラストシーン。後味は良い。


 タッグチーム“天使と悪魔”、可愛い方を演じた鈴木美妃、新人だそうだが、練習の成果か見事に説得力を持ってレスラーを演じる。

 もう1人、不良上がりの兇暴な新人を演じた石川美津穂、しょうじきアストレスとしてのJDでのファイトは私は好きではなかったが、「女優」 の肩書に恥じない演じぶりだったと思う。いま家にTVがないので見てないが、ゴールデンタイムに放映された総格の大会でも勝利したらしいです しますますの活躍を期待してます。

 舞台となるプロレス団体の名称「ガリンペイロ」とは、スペイン語で「金鉱掘り当て人」のことらしく、直接にはこの2人(が演じた役柄)のこ とを指すんだろうな。


 その他、脇を固めたJD勢では、乱丸が生来の関西弁を操って健闘。桜花は、アストレスなのにチトしょっぱかった(笑)。

 しかしこの映画も、先日のヤブサカ興行に続いて、「さよならJd’」の記念譜になってしまったな…

(東京、名古屋は公開が終了、現在大阪で上演中、今後札幌、岡山が予定されている)




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