格闘スーパースター列伝「不動の心!! 近藤有己」(0〜1回)
■題名:格闘技スーパースター列伝
■日時:2004年5月23日
■書き手:グリフォン

【読むに当たっての注意】
*原田久仁信の絵を脳内に思い浮かべよう。
*ホンモノの「列伝」のエピソードやせりふをご存知だとよりたのしめます。
*「これ、事実と違うだろ」というセリフは禁止です。
*ただし「事実」は禁止ですが「真相」をご存知の方の告白は歓迎(つまり話がより大きくなるのならいいんだ(笑))。
*第1シリーズ「仮面の皇太子!! ドスカラスJr.」は
http://www18.tok2.com/home/gryphon/JAPANESE/BBS-SELECTION/okuradashi.htm


「不動の心!! 近藤有己」第0回
イラク戦争で世界が揺れ、格闘技の世界ではPRIDEミドル級トーナメントやボブ・サップブームで盛り上がった一年も暮れ、年の瀬のあわただ
しさが漂っていた・・・2003年の末!!日本は有史以来初の、三格闘技組織の対決興行という緊急事態を迎えていた!!

どこのジムも、どの団体も、オファーのカードをが二転三転を重ねた末・・・・。地球の裏側のこの最強団体にも、決定カードとともにビデオテープが
送られ・・・

「マリオ、僕の弟の試合と、それから・・・あなたの試合が決まったんだって?」

「オー、ミノタウロか!! 喜べ、ホジェリオは大一番だぞ!!サクラバとの試合だ!!」

そう、ここは、総合格闘技界において不動の帝国を築く太陽の国ブラジル!!!
そして、そこにあってシュートボクセ・アカデミーと勢力を二分する、柔術エリート集団・ブラジリアントップチームである!!

ブスタマンチ、アローナ、リボーリオ・・・この梁山泊に集う、錚々たる猛者どもが、知らずと集まっていた。

「フム・・・・われらが優秀な代理人、ウチダが決めた私のカードはパンクラスのチャンプ、ユーキ・コンドーとの戦いだ」

「ハテ・・・どこかで?」

「そうだ、パウロと3年ほど前にやったやつじゃないか?たしか、パウロが判定で勝ったんだよな」
この当時、パウロ・フィリョは一時期BTTを離れている。
「じゃあ、大丈夫なんじゃないか?」

マリオは、微笑を浮かべつつかぶりを振る。
「いやいや、彼は若いし、たしか3ラウンドはパウロも結構攻め込まれていた・・・。油断は、どんな相手でも大敵だよ。とりあえず、ウチダが送っ
てきたテープがあるから、それを見てみようじゃないか。アローナ、ちょっと封を開けてデッキに差し込んでくれ」

「ホイキタ!・・・なんだ、手紙も入っているぞ。『親愛なるマリオと、トップチームの皆さん。今、わたしは3団体との緊張感あふれる交渉ごとで
手が回らず、半年前のコンドーの試合しか入手できず申し訳ありません。今後、どうにかして彼のその後の試合を手に入れようとしているところで
す』・・・チェッ、仕事の鬼の女史らしく、色気のねえ手紙だこと」

BTTの他の連中が、騒ぎ始める。

「そんなことより早くビデオを見せろよ・・・・フーン、どっちが近藤なんだ?」
「なんでも、ベリー・ハンサム・ヤングマンらしい」
「すると青いスパッツのほうだな」

ブスタマンチが、あることに気づき叫ぶ!

「おおっ、ハンサムじゃないほう・・・コンドーとやらの相手は、サナエ・キクタじゃないか、私やミノタウロが闘った!!
ううむ、マスト判定だからよかったものの、やつとの試合は正直ドローといってもいい内容だったな・・・まさか、この試合はキクタが勝ったんだ
ろ?」

「見ればわかるさ」

最初のうちは、喧々囂々、侃々諤々の道場内だったが、一進一退のビデオの映像を見るにつけ、だんだんと静まっていった。
その映像は、1-1のドローで、レフェリーが両者の腕を上げたところで終わった。

「ベリー・グッド・ファイトだったな」
「ああ、だいぶエキサイトしたぜ!」
「俺が日本で闘ったカネハラとは、また違うタイプのようだな」
「キクタやイノウエ、タムラとも、いささか違うようだ」アローナとミノタウロが感想を述べる。

元銀行員でインテリのリボーリオは、パソコンをいじり始め、ネットで情報を検索した。

「その試合は、今年5月のヨコハマでの試合らしいな。・・・・ん?11月末に??
 おい、つい最近、二人は再戦して、コンドーが勝っているらしいぞ!!」

「ム、ムッ・・・さっきのビデオを見れば、まさか、とは言わんが・・・しかし、あの寝技師が今度はやられたというのか」
ブスタマンチが複雑そうな表情を見せる。

・・・当のマリオ・スーペヒーはしばし目を閉じ、瞑想すると・・・・・・

「ヨシッ、ゲームプランはできたっ!!彼はたしかにエクセレントなファイターのようだが、私なりの方程式は、もはや計算済みだよ、フフフッ。
・・・ウチダには、忙しいようだからもうビデオは送るに及ばず、と伝えておいてくれ」

「さすが、われらのボスだ!!」
アローナは、あらためて尊敬のまなざしをマリオに向けるが・・・キクタと実際に肌を合わせたブスタマンチとミノタウロは、少し不安そうだ。

ミノタウロが、あるアイデアを思いついた。

「マリオ、今うちにムシャシュギョウに来ているミノワは、元パンクラスじゃなかったか?あいつならコンドーについて、ビデオ以上のことを知っ
ているに違いない!!彼をここに呼んで、作戦会議を開こう」
この少し後に、同じ「男祭り」で美濃輪とランペイジ・ジャクソンの対戦が決まるのだが・・

「ノー!!それはいかん」
マリオは、かつてないほど厳しい声でたしなめた。

「われわれだって、(離脱した)パウロやヴィクトーの対策を教えてくれ、と彼らの敵から言われても、答えられるわけがなかろう。ミノワに、同
じ苦しみを味わわせるつもりかね?」

「い・・・言われてみれば!!」
ノゲイラ兄は、軽慮を反省すると同時に、あらためて自分らが盟主として仰ぐ「ゼ・マリオ」の人間としての器に感じ入っていた。

「心配は無用だよ・・・まさか人間が、半年程度で強さがそう変わるわけはあるまい。あの試合は大熱戦だったが、、だからこそコンドーのポテン
シャルは、ほぼすべてが白日の下にさらされてるのさ。・・・さて、次はホジェリオのために、サクラバの試合をもう一度チェックしてみようか」

かつてボブ・サップとホドリゴのスーパータフマッチで、セコンド、コーチとしてミノタウロの逆転勝利を導いた、BTTのスーパー・コンピュー
ターは、油断ではなくあらゆる悪影響を考慮したうえでの、静かな自信をたたえていた。



「マリオ・スペーヒーは私を大変慕ってくれており、
その人となりはよく知っている。
まさに将に将たり得る、風格と器量を持った男だ。
敵のかつての仲間であった、美濃輪選手や、海千山千の
プロモーターを相手にした代理人を配慮したその気遣い
は、まさにリーダ−のあるべき姿だが・・・
結果としてこの措置は、戦士としてのマリオにとっては
千慮の一失であった!!」(アントニオ猪木・談)

(続  く)

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「不動の心!! 近藤有己」第1回

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殺す理由も、死ぬ理由もない
宗教なんてものも存在しない
想像してごらん すべての人々が
平和のうちに暮らしていると・・・
( ジョン・レノン「IMAGINE」 )

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その歌の力で愛と平和を訴え続け、最後は非業の銃弾に倒れたアーティスト・・・ジョン・レノンを讃える記念館のすぐ隣にあるのが・・・!!
さいたまスーパーアリーナ!!!!!!

この建物が鮮血が幾重にも塗り重ねられた、近代のコロッセオとして名を知られるようになったのは、まさに皮肉であろうか・・・。
2003年12月31日。同じ日に、

ナゴヤドームも!
神戸ウイングスタジアムも!
渋谷NHKホールも!!

それぞれ、戦士たちの宴は盛りを迎えていたが、やはり20回を超える実績を培っていたPRIDEの試合のクオリティが群を抜いていることは明 白であった。

「すげえっ! ヒーリングが大巨人退治だあ!!」
「なんとっ! ゲーリーがドン・フライをハイキックでKOとは!!」
「高田ののけぞり具合が、さ、さらに大きくなった!!」

この栄えある場に選ばれた男たちも、それぞれ大ハッスル!!まことに名勝負のフルコースであったが、あまりにもドン欲な胃袋を持った大食漢
・・・そう、「観客」という名の餓鬼は、満たされないものがあったのも事実だった。

「フーーム、どれもいい試合だったけど・・・日本人がなあ・・・。」

「ああ、吉田はホイス・グレイシーと記録上は引き分けとはいえ、だれがどう見ても完敗の内容・・・おまけに期待の星・坂田亘も、体重差のある相
手に健闘したとはいえ、恋人の前で腕十字葬・・・」
「やはり武道の本家・わが国の選手が勝たねば、面目がたたーん!」

「へっ、日本人はもう体力的にトップになるのは無理なんだよ。ビッグガイの外人同士のど迫力試合をすなおに楽しもうぜ」

「なんだとう!日本人なら日本の選手を応援すべきだ!!」

客席も、がやがやと騒がしくなった。しかし・・・・なんにせよ、残るは後3試合!!


そして、さいたまの巨大モニターに・・・・・黒と赤の、巨大な「X」と、そこに刻まれた文字・・・「HYBRIDWRESTLING    PANCRASE」が映し出された!!

いまだプロレスと格闘技の分化が完了していなかった1990年代に産声をあげ、そのテクニックと肉体を試行錯誤しながら築き上げた殺リクの前衛軍 団!!
遠く海外にまで「ビッグ・エックス」と恐れられた恐怖と畏敬の紋章が、彩の国さいたまに輝いた!!


その映像にかぶさった近藤の紹介は、必要最小限にして、十分なものであった。

「ミスター・ハイブリッド、登場。」

近藤のミニ・インタビューがそれに続く。

「・・・チャンピオンとしての看板を背負って、きっちりと実力をアピールしたい」

読者よ----このセリフ、近藤にまったく気負いがないからこそ聞き逃した人も多かろう。
だが、異種格闘技の、他流試合の歴史を見続けたものなら、意外の念を抱いたに違いない。


想起せよ、高橋義生がオクタゴンで狂犬・イズマイウと対峙したとき、山本宣久が400戦無敗・ヒクソンに挑んだとき、エンセン井上がR・アル ジャーとにらみ合ったとき・・・みな、「団体は関係ない、個人として闘う」といっていたではないか。


団体が、試合の勝敗というリスクによって揺らぎかねないという事実が否定できないかぎり、それは自然のながれであったろう。
それが、いかにキャリアは抱負とはいえまだ三十にもならない若武者が、パンクラスの「看板を背負う」・・・と、4万人の前で宣言した!!


しかし、彼が看板を懸ける相手は、既に第0回で紹介した、ブラジルの将に将たる漢、1990年代の総合に君臨したのがパンクラスなら、まさに21 世紀に全世界を制覇せんとする、BTTの総帥・・・・・・マリオ“ゼ・マシーン”スペーヒーである!!

入場曲“Faint”の怜悧で、やや金属的な音が響き渡る。マリオはゲートを出るとすぐにフードを頭から外し、シャドーボクシングをしながら花道 に歩を進めた。


「時は来た! それだけだ」
(橋本真也・談)





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