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高田本は暴露本にあらず。
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■投稿日時:2004年1月20日 ■書き手:M-E |
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高田延彦の本「泣き虫」(金子達仁著・幻冬社)がえらく反響を呼んでいるそうだ。 業界内部を暴露した内容なのだそうで、業界では「高田本」と呼ばれている。さっそく購入して読んでみたが、これのどこが暴露本なのか。 がっかりした。 新日本からUWFまでの内容は前田日明や佐山サトル、山崎一夫、宮戸優光、安生洋二、 そして今年出版された鈴木健のインタビューや書物で、ある程度、踏み込んだファンなら誰でも知っている内容だ。 田村潔司との確執についても同様である。 しかし、収穫もある。Uインター時代の急な引退騒動や「さわやか新党」での出馬のゴタゴタ話などは、今まであまり公に出ていない話だったのでかなり面白かった。 向井亜紀との深い愛の絆については、気持ち悪いの一言で十分だ。確かに美談かもしれないが、中年夫婦の恋愛話にはあまり興味が湧いてこない。 個人的にはキングダムの小川直也参戦問題を書いて欲しかった。いや、厳密には小川直也のキングダム参戦についてではない。 当時、小川直也の側にいた佐山サトルについてである。この時期の高田ー佐山の微妙なライン、ここには興味があった。 あと、山本喧一のUFC発言についても次の世代のために少しは書いて欲しかった。 私はUインターがプロレス論を論じる上で、かなり大きなキーワードのなると思っている。 第二次UWFが分裂し、藤原組(パンクラス)、リングスが格闘技路線をひた走る中、Uインターは実に「微妙なこと」をやった。 北尾光覇やビックバンベイダーをリングに上げた。 挙句は生き残りを掛けて新日本プロレスと対抗戦までやった。Uスタイルとはそもそも当時のプロレスに対する反動である。 それは大仁田厚(FMW)と同様に、新しいプロレスのモデルであった。 UWFとFMWが共通しているのは、会社が潰れそうで、ヤケクソになって出来上がった偶然的スタイルということである。 両団体とも断じて初めからそのスタイルを計算していたのではない。 第一次UWFはグラン浜田や剛竜馬、マッハ隼人などの凡そ格闘技傾向ではない選手達がいたし、 FMWも初めからデスマッチをしていたのではなく、空手家の青柳政司などと異種格闘技のトーナメント戦をしていた小さな団体である。 しかし、興行戦争は厳しい。 新日本プロレスや全日本プロレスと同じことをしていたのでは、テレビ中継もスポンサーもない団体が生き残れるはずがない。 従って両団体とも現状のプロレスを工夫して見せたのだ。 UWFは格闘技の原点に立ち返って、道場の練習をそのままリングに上げた。 FMWはプエルトリコのデスマッチ・プロレスを取り入れた。そしてそれは見事に時代に当たった。 センセーショナルであった。その工夫したスタイルに、現状のプロレスに鬱屈していたファンは信じた。 これがイデオロギーなのか、単なる経営難の於ける妥協なのかはわからない。 そのプロレス史に於ける高田氏の位置づけは極めて中心にあったといえるだろう。 だからこそ、引退後の著書に対する期待が大きい。高田氏はプロレスを愛している。 悪意に満ちた、ミスター高橋氏の著書とは訳が違う。 とにもかくにも、高田氏が本当に真実を語るならば、先ずは堂々とPRIDEでのマークコールマン戦を真正面から語っていただきたい。 |
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