「流血」に続く第二の警世の書、「マッチメイカー」を誉める
■投稿日時:2002年12月28日
■書き手:生首 (ex:週刊WWE だけどWCWフォーエヴァー!

導入からグイグイと読者を引き込み、プロレスファンなら誰でも手にとるようにわかる「架空の話」・あるマッチメイカーと、その会社のオーナー兼スターレスラー、そして自身の団体の存亡の危機に際し、いかに高くセールを売れるかを模索するエースレスラーのやりとりは非常に面白い。こんなリアルな話読んだことがなかったので、一気にこれで終わりまで一気に読んでしまった。

「興行会議」の章では、いかにシリーズを盛り上げるかの企画会議の中身が語られている。ケッフェイを混ぜ込み、いかに客がヒートするかを話し合う図は、立派な企業のセールスプロモーションミーティングである。この本を褒めたい理由はこれだ。
プロレス上の出来事、因縁を、一般のビジネス社会で通用するロジックで説明しているところである。強引に「プロレスだから」「格闘技だから」で説明をしてきたこれまでのマスコミとは説得力が違う。

高田・北尾戦、長州かませ犬発言、みなそれぞれ、これまではすくなくともモゴモゴと口を濁してきたことがやっと明らかにされ、それはやはり見てきたわれわれファンにとっても、なんでこんなことをウソで塗り固めてきたんだろう?という疑問と、結果としてついてしまったアメプロとの絶望的なほどの格差を、今、総格とのカラミでこれからを模索する現経営陣の苦悩がしのばれる。

私はプロレスで何度涙を流したことか知れない。プロレスの持つすばらしいストーリー性を愛すがゆえに、中で繰り返し述べられる「プロレスの基本中の基本」「シュートの欺瞞」「技を最も輝いて、美しく見せる方法」「ベルトのやり取り」「異種格闘技戦」についての話はどれも説得力のあるものばかり。つまりエンタメの基本・水戸黄門式の勧善懲悪ストーリーを形作れなければ、ファンはついてこないと言うことだろう。

ゴッチが好きでなかった私には、アヴァンギャルドはエンタメのメジャーには成り得ない、という高橋氏の芸術論に禿げしく同意するしかない。カート・アングルがWWEコンフィデンシャルでレスリングから「業界」に入ってきたときの戸惑いを語っているのを見る機会があったが、まさにカートは古典的といえるほどのヒールの常道を、今風の調味料で見事なまでに味付けし、成功した「客の呼べるレスラー」だと言えると思う。

前田・アンドレのシュートマッチの真相などは、古いプロレスを見ていた人間ならハラハラと氷が解けるようにすべての?が解け、理屈の糸がつながり、自分の中での納得が進んでいった。
前作ではじめて公式にプロレスのセールやらジャブをカミングアウトした高橋氏の筆は、とてもこれがあのKYワカマツに操られた悪のレフリーとは思えないほど冴え渡っている。(自身はマシン軍団増殖は失敗だったと言っているが)
「一流レスラーとは客の呼べるレスラー」この言葉はこれまで読んだどのプロレス本よりも説得力を持つと感じた。

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