『GAEA GIRLS』
■投稿日時:2002年7月14日
■書き手:凸ユーレイ(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 田中先生の詳細なレビューに及ぶわけもありませんが、私の粗雑な感想を…

 プロレスを知っている人と知らない人とが観た場合、また違った印象を持たれる映画であろうことをまず断っておく。

 私には、映像としての評価、編集その他の技術的評価などはできないので、GAEAという団体についての感想が中心になります。

 まず、GAEAの創設者・リーダー、長与。天性の女優。
 リングの上でも下でも、いつも芝居がかっている、ハッタリくさいと見える彼女。このドキュメンタリーのなかでは、自分の団体の道場という、日常の場なのか非日常の場なのか、そしてカメラが回っていることを意識しているのかいないのか、それすら観るものをして渾然とさせるたち振る舞い。常に「見られる」ことを意識し、自分の言動が他者にどんな情動を呼び起こすのか知り尽くしたものとして振る舞う長与。

 GAEA1期生。長与の直弟子。時間をかけて準備され、団体旗揚げと同時にデビュー。その時点で既に、現在へつながる個性がほぼ形成されている存在たち。
 彼女らが、道場の空気を支配している。長与の演説には口をぜったいはさまない。無言の服従・支持。後輩への気配りのようなものはまず見せない。無視、あるいはただひたすら無情な指導。あくまでこのドキュメンタリーに切り取られた場面に限ってのことだが…。
 この5人のエリート集団が、長与の無言な代弁者として圧力を与えつづける道場のなかは、磁場が歪み、GAEAに彼女たち以降の新人が非常に現れにくくなっている事実を、むべないこととして感じ入らせてくれる。
 もちろん、非日常を演じるプロレスラーを生み出すうえで、このような常軌を逸したようなしごきとも見える鍛錬(精神的にも)が必要である、ことも妥当であることは分かっているのだが、それにしてもGAEAの特殊性、構造がここに見られるように思われる。
 そんななか、広田ひとりが、先輩とも後輩ともうまくやっているようなのが笑えるのだが…

 しかしなんといってもこの映画の主役は竹内である。

 冒頭に印象的な言葉がある。最初のプロテストに臨む直前のスパーリング(このスパーで、竹内はダラダラしたぬるい攻めを里村に激怒され、顔面に凄まじいドロップキックを受け、縫わねばならないほどの傷を口内に負い大流血する)。里村が竹内に言ったセリフ
「腕が痛いのか? そんなやり方じゃお客さんに痛さが伝わらない!」
 プロレスの一面の本質と、竹内のこの時点での致命的な欠陥とを、簡潔に表現したこの一言。
 そう、竹内は致命的に自己表現がヘタな娘なのだ。
 2度目のプロテストを終えて審査を待つ場面では、このままではリングに上げられないと長与に詰め寄られ、「5分以上は試合をします」とピント外れに答えてしまい、あわてて「デビューしたいです。プロレスがやりたいです」と言い直す。その場にいたもの全てが聞きたかった答えは、そちらだったのに…。

 1年間練習生として、基礎体力は十分にあり、試合もある程度こなすことはできる。が、こなすことだけになってしまう。滞りなくやり終えることだけを考えてしまう。それで、自分の弱点を悟られることなく、うまくごまかしたい。
 何を聞かれても「いえ」としか答えられない。
 弱さをさらけ出して闘えない。感情の表現ができない。

 そんな竹内に、かぎりなく感情移入しながら観ました。

 観客に表情がよく見えるようにと、前髪を切られたときに見せたはしゃいだ表情とともに、デビューが決まった後の嬉しくてたまらない様子が記憶に残る竹内。だが、そんな、地獄のような練習に耐えてデビューできた竹内でさえ、1年数ヶ月のプロ生活の末、引退してしまうのである。

 私が限られた時間のなかで見ることの出来た竹内の姿を、過去の観戦記から引用してみます。

00年12月17日
第2試合 加藤園子、×竹内彩夏 vs ○植松寿絵、ザ・ブラディ
 竹内、足にレガースしてるんですね。前に見たときのドロップキック、タイガーSPXに加え、ノアの丸藤の技“不知火”を出しました。加藤との息も合っていって、敵のコーナーからのダブルダイビングを丁度いいタイミングでカットしたり。
 植松、今日はラフ主体の戦い方、走り込んでのヒザを顔面に命中させ、竹内口の中から流血。最後も粘られ切り返されもしたものの、ダブルリストアームサルトを連打して勝利。
 いい試合でした。

01年1月14日
第3試合 ○里村明衣子、植松寿絵、竹内彩夏(片エビ固め11:56)デビル雅美、×ダイナマイト関西、山田敏代
 竹内、シンプル水着を卒業、新コスチュームで登場。
 ゴングが鳴るや否やダッシュで敵陣に突撃したチームクラッシュ軍、その全力疾走ぶりにまず驚く、たんなるお約束の動きではない。出だしの、とくに竹内のイキの良さ、飛びつき式のキーロック(!)などを楽しんでいたが、やがて、しつこく里村が関西の腕を狙い続ける場面ばかりになっていく。
 ここで竹内がまたしつこく、山田の脚にしがみつき、カットを必死に阻止し続ける。関西が反撃に出るかもしれないのにとにかく竹内が一方的に山田を阻止し続けているので、あぁこの試合は里村が関西を超えるための試合なんだな、と、なんとなくわかってしまう。そしてその通りにデスバレー、オーバーヘッドキック×2、再度デスバレーで里村勝利。…場内は大盛り上がりでしたが。…

01年7月15日 
第2試合 ダイナマイト関西、○山田敏代(11:46エルボーカッターから)里村明衣子、×竹内彩夏。
 極端に言うと、竹内がやられる→里村が助ける、だけの試合。切り返す攻防の妙とかそういうものはない。雷々拳(関西・山田)側は動けない。里村も、他の3人を動かして回すことができないので、試合が流れるようではなく、なんだかモタモタする。
 竹内の成長の度合いを見るたびに楽しみにしていたのに、その後…(涙)


 引退の理由は不明なのだが、この、主人公が引退してしまっているということが、たんなるスポ根ものにとどめず、良い意味でも悪い意味でもこの映画に陰影を与えている、といえよう。
 (なんちゃって)





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