UFC37見所
■投稿日時:2002年4月30日
■書き手:オリゴン (ex:カキコメ!無酸素ラッシュ

UFC37 High Impact

5月10日: ルイジアナ州ボザーシティ・センチュリーセンター

 ヘビー級チャンピオン、ジョシュ・バーネットのステロイド疑惑や、ライト級チャン ピオン、ジェンズ・パルバーのPRIDE移籍の噂など最近のUFCには不安な情報 が少なからずある。
 しかし今もってミックスト・マーシャルアーツの世界最高水準を誇り、優秀なタレン トを数多く抱えるオーガニゼーションであることに変わりはない。
 今回のイベントでは実に5人のニューカマーが投入されているが、いずれもローカル 大会から実績を積み、チャンスを掴んだ強豪ばかりである。

”UFCに金魚ナシ”

ズッファ体制になってからはその言葉に一層の重みと信頼感が増しているように思える。


対戦カード
<ミドル級チャンピオンシップ>
・ムリーロ・ブスタマンチ(BTT) vs. マット・リンドランド(チーム・クエスト)

 ブラジレイロ・ムンジアルなどのブラジリアン柔術選手権で数々の実績を誇るブスタ マンチ。VTでは96年に行なわれた”MARS”というMMAイベントにおける8人トーナ メントの決勝に進出。40kg以上体重差のあるトム・エリクソンと引き分けた事もあるが、ここ数年間はVTからは遠ざかっていた。2000年に日本で2試合し、UFCに 本格参戦。UFC−33ではチャック・リデルとの壮絶な打ち合いになり、一歩も引 かない姿勢と打撃センスの良さをアピールしたが、惜しくも判定負け。ウェイトをミ ドル級に変更し臨んだUFC−35ではデイブ・メネーをKOし、見事ミドル級王座を 奪取した。今回が彼の初防衛戦となる。

 2000年のシドニーオリンピック・レスリンググレコローマンスタイル76kg級 銀メダルという肩書きに隠れてはいるが、リンドランドのノールールキャリアは97年 からあり、IFCのタイトルを保持していたこともある。その後オリンピックをはさみUFC-Jでの安生戦からノールールファイトに復帰し、UFCのレギュラーとなってからは 4連勝。前回のUFC−36では元ウェルター級チャンピオンのパット・ミレティッ チを終始圧倒し、最後はマウントパンチで勝利。確かなレスリングテクニックで常に 相手の上を取り、勝利の山を築いてきたリンドランドがついにミドル級タイトルに挑 戦する。


<ヘビー級>
・リコ・ロドリゲス(チーム・ケア/マチャド柔術) vs. 高阪剛(チーム・アライアンス)

 いまやUFCヘビー級トップコンテンダーと目されているリコ。柔術ではヒーガン・マ チャドに師事し、アブダビコンバットでは98年に99kg超級で優勝、2000年には準決 勝でアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラからヒザ十字で1本勝ちを奪い準優勝。PRI DEでは3連勝し、短期間ながら高田道場にも所属していた。現在はUFCライトヘ ビー級チャンピオンのティト・オーティズ率いるチーム・パニッシュメントでトレー ニングしている。UFCに参戦してからは3連勝し、王座獲りに着実に歩を進めてい る。

 UFCには99年のペドロ・ヒーゾ戦以来の出場となる我らが”TK"。UFC初登場と なったキモ戦では観客のブーイングを歓声に変えるほどの好ファイトを展開し勝利。 その後はバス・ルッテンとのヘビー級王座決定戦に抜擢されるなど好待遇を受けてい たTKだったが、ヒーゾ戦での敗北後はUFCから離れていた。今回満を持して復帰するTK。リコとの戦いはヘビー級トップ戦線に名乗りを上げる大いなるチャンスとなるだろう。


<ミドル級>
・アンドレイ・シモノフ (レッドデビル)vs. アイヴァン・サラベリー(AMCパンク レーション)

 UFC−35でヒカルド・アウメイダをKOし、鮮烈なUFCデビューを飾ったシモノフ。所属はロシア最大のMMAプロモーション兼ジムであるレッドデビル・スポーツクラブ。彼の戦いのフィールドはロシア国内に留まらず、ブラジルやオランダに出向くこともある。ファイトスタイルは単純明快の一言。殴り蹴り叩きつけ絞め極め捻り潰し破壊する戦いを世界各国で繰り広げている。その端整なルックスとは裏腹に、ブルータル(野獣のような)スピリットを全開にして戦いに挑む彼の姿勢には戦慄と共に感動すら覚える。柔道をベースに軍隊式の徒手格闘術やキックボクシングの技術をプラスし、ラシアン特有の直線的でパワフルなファイトを展開するシモノフのファイトは要注目である。98年にVTデビューして以来、通算戦績28戦26勝2敗の数字は伊達ではない。

 知将マット・ヒューム率いるAMCパンクレーション勢にはジョシュ・バーネットやデ ニス・ホールマン、ランス・ギブソンなどといった確かな技術を持ったタレントが揃っている。その中にあってアイヴァン・サラベリーは比較的目立たない存在だったが、(日本で郷野聡寛に敗れた以外は)順調に勝ち星を伸ばし、ついにはジョン・レンケンを僅か23秒でKO。フックンシュート・ライトヘビー級タイトルを奪取するまでに至った。いまだ完成形のファイターというには程遠いサラベリーだが、それはすなわち伸びる芽をいまもって内包しているという事である。UFC初登場でどれだけのインパクトを残す事が出来るだろうか。


・フィル・バローニ (ラスヴェガス・コンバットクラブ)vs. アマール・スロエフ(レッドデビル)

 UFC−30のカーチス・スタウト戦で勝利しUFCデビューを飾ったバローニ。レス リングとボクシングをベースに持ち、最近ではティト率いるチーム・パニッシュメン トでもトレーニングしている。インタビューでのビッグマウスぶりはUGでも話題にな ることが多く、今回のスロエフとの試合も、彼自身がUGで書き込んだシモノフへの対 戦表明が原因の一端になっているのでは?とも考えられる。前回登場したUFC−3 4におけるマット・リンドランドとの一戦では、オリンピックメダリストのタックル をガブり、首を捻り上げボディをしたたかに殴りつける荒々しいファイトスタイルも 見せた。ケンカの心と確かな技術も併せ持つアンビバレンツな彼の魅力は、”ニュー ヨーク・バッドアス”というニックネームにも現れている。

 UFC−35で共に出場したシモノフの豪快なKO勝利の影に隠れてはいるが、レッド デビル真のエースは彼、アマール・スロエフである。キックボクシングのバックボーンを持ち、デビュー2連敗後は破竹の11連勝。ロシアのM−1・ブラジルのWVC・オランダの2H2Hと、参加したトーナメントは全て制覇している。UFC−35におけるチャック・リデル戦でその連勝記録は止められてしまったが、本来のウェイトではないライトヘビー級でリデルと互角の打ち合いを演じ、体格差を感じさせなかった彼の本来の実力はナチュラルウェイトであるミドル級でこそ発揮されるだろう。


<ライト級>
・BJペン(ノバ・ウニオン) vs. ポール・クレイトン(ヘンゾ・グレイシー・ファイトチーム)

 2000年のムンジアル(ブラジリアン柔術世界選手権)で外国人初の柔術王者と なったペン。グラウンドでの確かな技術を持つテクニシャンとしての顔とは別に、幼 少のころからハワイで暴れ回っていたバッドボーイの面影を今も色濃く残す彼のファ イトスタイルはまさに”プロディジー”(天才・奇才の意)のニックネームに相応し いものがある。ノールールのキャリアは少なかったが、UFC初参戦から3連勝。特にUFC−34における宇野薫戦では僅か11秒の秒殺勝利。文句なくライト級チャンピオンであるジェンズ・パルバーに挑戦する権利を得たが、惜しくも判定負け。今回は再びライト級王座を狙うための仕切り直しの一戦となる。

 クレイトンはヘンゾ・グレイシーのアカデミーに所属する選手。ヘンゾのセミナーに 帯同するほど信頼されているようで、柔術のグレードは紫帯を保持している。アウメ イダやセラに続くヘンゾ軍団のホープといった所か。5才の頃からレスリングを始め、キャリアは14年にも及ぶ。ノールール戦績はこれまでに5戦全勝との事だが、詳しい資料はない。最近ではボクシングやキックボクシングのトレーニングにも余念がないそうだ。
 

・宇野 薫 (和術慧舟會)vs. イーヴス・エドワーズ(サードコラム・ファイトセンター)

 すっかりUFCレギュラーの位置を確保した宇野。修斗ウェルター級王座の突然の返上 から2ヶ月、彼の姿はアメリカはアトランティックシティ、トランプ・タージマハル の地にあった。ジェンズ・パルバーとのバンタム級(現在はライト級)王座決定戦を 戦った彼は、惜しくも敗れたものの関係者並びに本場UFCのファンから賞賛の声をもって迎え入れられた。続くファビアーノ・イハ戦ではインサイドガードからのパンチの連打でKO勝利し、早くもパルバーとのリマッチも囁かれていた。しかしUFC−34におけるBJペン戦で屈辱の11秒KO負けを喫した宇野はトップ戦線から後退する。もう一度頂点に立つ戦いに挑むためにも今回は負けられない一戦となるだろう。

 佐藤ルミナに18秒で負けた印象が強いせいで未だに日本では金魚扱いのイーブス。 しかし現在では素晴らしいヒザ蹴りの技術を持つアメリカ中量級屈指のストライカー と称され、フックンシュート・ミドル級チャンピオン・ISWFミドル級チャンピオ ンに就くなど、着実に実績を積んでいる。通算戦績31戦24勝6敗1分けという数 字が彼の歴戦の実力を物語っている。UFC−34ではマット・セラに敗れたものの、関節による1本は許さなかった。宇野同様、今回の試合はトップ戦線への浮上のキッカケを掴む一戦となる。


<ウェルター級予備戦>
 
・アーロン・ライリー (AMCパンクレーション)vs. ロビー・ローラー(ミレティッチMAC)

 前フックンシュート・ミドル級チャンピオンにして現在は修斗ミドル級6位のラン カーでもあるライリー。インディアナ州のゴールデングローブを獲得したこともある 彼の打撃の技術は一級品で、以前はキックの試合でも3戦3KOの実績を誇っている。マット・ヒューム自らが指導し、現在はAMCのジム内のキャンピングカーで寝泊りするほどトレーニングに没頭しているという。寝技の技術も上達し、”ヒュームの秘蔵っ子”とも称されたライリーがいよいよメジャーのリングに初登場する。

 ロウラーはミレティッチMACのニューカマー。IFCやエクストリームチャレンジ で勝利し、昨年の12月にはハワイで行なわれた”SHOGUN”というイベントで ピュアブレッド大宮の川勝将軍にTKO勝ちしている。格闘技のバックボーンは父親 の影響で幼少の頃に始めたテコンドー、学生時代はレスリングとフットボールを経験。16歳でミレティッチマ−シャルアーツに入り、現在20歳。MMAのトレーニングと並行してボクシングジムに通っている彼のファイトスタイルは打撃に重点を置いたものであり、最近勝利した3試合は全てKOまたTKO勝利である。


・スティーブ・バーガー(ホドリーゴ・バギ柔術) vs. ベンジ・ラダック (ヴィクトリー・アスレチックス)

 バーガーはホドリーゴ・バギ柔術所属の29歳。バックボーンはボクシングと柔道 その後ホドリーゴ・バギの元で柔術を始め、青帯を取得(2000年ごろの話なので 現在のグレードは不明)  ファイトキャリアは豊富でフックンシュート、SFC、 RSF、エクストリームチャレンジ、アイアンハート・クラウン、ユニバーサルチャ レンジ、デンジャーゾーン、KOTCなどの多岐にわたるローカル大会に出場し、S FCミドル級王座を保持している。UFC初登場は昨年5月に行なわれたUFC−3 1で、トニー・デソウザに判定負け。その後修斗に初参戦し、”スピードスター”池 本誠知とのノンストップグラップリングバトルの末に三角絞めで1本勝ち。確かな技 術とポテンシャルの高さを日本のファンにも知らしめた。今回は急遽の抜擢となった が、クオリティの高い試合が期待できるだろう。

 ラダックはヴィクトリ−・アスレチックス所属。デニス・ホールマンのスパーリング パートナーも務め、IFCなどのローカル大会で目下3連勝中。バックボーンは幼少 の頃父親に教わったテコンドー。学生時代はフリースタイルレスリングやアマチュア ボクシングを経験。ハードパンチとホールマン仕込みのグラウンドテクニックを織り 交ぜたファイトスタイルを駆使し、UFC初参戦でKO勝利を狙う。


 今回のマッチメークで目に付くのはミドル級以下の選手層の充実ぶり。特にウェル ター級に投入されたニューカマーの顔ぶれを見ると、これからのタイトル戦線に絡ん できそうな強豪ばかり。ライト級も宇野選手の活躍も含めて日本人が登場するチャン スの極めて大きい階級だけに、今後の展開が非常に楽しみである。

 今大会からは日本でも110度CSによる米本土と同時進行のPPVや、翌日にはWO WOWでも放送される事になったので、「選手の名前も知らないし、UFCなんか興 味ねーよ」なんて言わずに一度視聴する事をお薦めする。会場の雰囲気、選手のモチ ベーション、技術の凌ぎ合い、壮絶なフィニッシュの数々、いずれも最高のものが見 られるだろう。





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