カメラは踊る
■投稿日時:2002年1月11日
■書き手:浪人街

昨年ある掲示板で気になる発言を読んだ。
それは『日本のプロレス番組はWWFにカメラや編集を学べ』という内容だった。
確かにWWFのカット割(スィッチング)は魔法のようだ。
技が決まる瞬間、最良の位置と角度で見せてくれる。何か「きまり」を探して
みると、例えば相手にパンチなど技が決まる直前にスイッチングしている。
ひとつのアクションを分割して見せてスピード感を高めるドラマ的手法だ。
WWFではスピードは速いがモーションが大きい選手が多いので慣れればスィッ
チングもしやすいのかもしれない。そこで本当に日本のプロレス中継はWWFの
中継より劣っているのか?そんな疑問を解消したいとお正月は毎日プロレス
番組を見ることにした。
私が最も好きなプロレス番組、それはテレ朝「ワールドプロレスリング」だ。
得番での試合内容や番組の構成については毎度ノリリンさんの鋭い指摘がある
ので、私は主にカメラワークからプロレス番組への想いを書いてみたい。

昨年は20回プロレスを生観戦したが、リングサイドは2、3回だけ、顔の表情
なんかよくわからない席がほとんどだった。そんな貧乏な私をリングサイドへ導い
てくれるのが、「ワープロ」なのだ。実際、選手の表情を捉えることにかけて
テレ朝の中継ほど固執しているところは他にない。
ドキュメントの基本は顔にあり!
武藤が永田がマットに顔をうずめている。カメラはゆっくりとズームインしてその
表情を捉える。そこから何を感じ取るか、それは見る者の感性にゆだねられ
ている。時として「まだ目は死んでいませんよ」という山ちゃんなどのお約束の
解説が、その至福の瞬間を台無しにすることもあるがそれもご愛嬌だ。
1・4では花道に沿ってレールを引いた移動カメラが、登場する選手の横顔だけ
をクローズアップで捉えていた。
ささきぃさんの言葉を借りれば「(永田)は入場から非常にいい顔をしていたので
これ、(永田)?とさえ思いました。」
リングで待ちうける小川の顔と花道の健介の顔を深いOL(少しクドイが)でつない
でいくプロセツも期待を盛り上げるに充分だった。奇襲で始まることがわかってる
小川戦というのに今回もファーストコンタクトを撮り損ねたりするけれど、
それはそれでスポーツの臨場感というものだ。しかし、
試合内容と共にチグハグなカット割り(ミスともとれる無意味な短いカットの挿入が
多すぎる)からは明らかにスィッチャーの戸惑いが露呈していた。今回、視聴率が
低かったことはよかったと思う。さらなる戦略を期待するために。


ある程度ディレクターの主観が入り込む作りのテレ朝に対して、まるでニュース
のように作るのが日本テレビの「ノア」の中継だ。カメラ20台をコントロールして
いるという巨人戦とは比較にならないインスタント制作、中継車は出すがおそらく
その場でスイッチングして一丁あがり。画面はほとんどフルサイズの固定カメラが
押さえている。選手のアップはといえば、タッグで交代のためロープをくぐっている
最中などに律儀に挿入されるのだ。つまり顔のアップは選手の認識のため使
われていて感情移入の役割は果たしていない。ただ、選手のプレーだけを見た
い層には日テレ式を好むファンもいるだろう。せめて昔の全日で登場していた
スーパースロー(ただのハイスピードカメラだけどスロー再生してもブレなくキレ
イ)を復活して欲しいところだが。


正月に見たプロレス番組の中で華麗なる変身を遂げていたのが、ガオラで1・2放送
の「闘龍門」。闘龍門の放送といえば、以前はフルサイズの固定カメラがまるで編集
を放棄したかのように延々と廻り続けている印象があったが、この駒沢大会の中継
は見ごたえがあった。
体育館の形態からか、モロに画面に差し込んでくる逆光の照明が空間に陰影
をつけ立体感があったし、なによりもリングサイドのハンディカメラが素晴らしい。
普通、試合中は見るものにカメラを意識させないために速いズームや速いパンは
使われない。過去に、その常識を打ち破ったのが「GAEA」の中継だった。
レンズが曇った家庭用デジカメという貧しい機材でありながら、その機動性をフルに
発揮して、スイッチングできない予算不足をアイデアとテクニックでカバー、いや凌
駕して選手のハツラツとしたプレーを撮っていた。ところが最近その名人芸が見ら
れなくなったと思っていたらナント今度は闘龍門で復活だ。
マグナムやCIMAの登場シーンでは、かれらの躍動感につられたように、
カメラも喜び踊っているかのようだ。ネコのようにリングを動きまわるCIMAの姿
もカメラは失敗を恐れず追っかけまわす。そのいきいきとした映像を後に
編集者がメインカメラの映像に、正確にそして大胆にインサートしている。
年末からお正月と多くの格闘技・プロレス中継が放送されたが、GAORAで
放送された闘竜門の駒沢大会が私には文句なしに最高の放送だった。

金はなくとも知恵と勇気と体力で、WWFの中継に優るとも劣らないプロレス番組
がここに誕生していた。

(ちなみに私の観戦したベスト興行は4月のGAEA・川崎と12月の全女・川崎で
す。)





本稿の著作権はすべてKANSENKI.NET及び「書き手」に帰属します。

戻る
TOPへ