レックスvsブローディー
■投稿日時:2001年12月13日
■書き手:タカハシ(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

「ここでレフェリーなりが注意してくれないと客にこの試合がどういうのか、伝わらないんだよなぁ」

これはハヤブサとのランバージャック・デスマッチを解説する冬木が、試合早々に場外にエスケープする自分の映像を見ながらのコメント。何気ないアクションで、初めてその形式の試合を見る人にもそのギミック他の意味が伝わるようにするのもプロ意識のひとつなのだろう。
昔邪道、外道がそれぞれのアメリカンプロレスへの思いを語るインタビューで「いつもおちゃらけてる(ダスティー)ローデスが金網デスマッチの時には硬わばった表情で、金網の固さとかをチェックするのを見ると、(見てるだけの)こっちまで緊張してくる」と言っていたものだ。
さてここで金網デスマッチとかランバージャック・デスマッチと言われても「何じゃそりゃ?」と思う人も多いかと思うので解説しておこう。金網と言ってもオクタゴンの事ではなくリングの4方を金網のフェンスで囲い、その中で行う試合形式の事だ。
これは金網をいかに独創的に使いこなすかで、試合を盛り上げセンスを競い合う部分がポイントだろう。
ここ最近では定番の全女の遺恨決着戦と闘龍門大田区体育館大会のメインの金網5WAYがビッグマッチとして目立ったところだろうか?
全女の金網戦は実は未だ会場では見た事がないのだが、闘龍門は凄惨になりがちな金網での決着戦というシチュエーションにコミカルな味付けをも加えた、なかなかに独創的な試合を見せてくれた。
この試合は先ごろ発売されたビデオに伝説の3WAY9人タッグと一緒にノーカットで収録されているので是非見てもらいたいところだ(私も買いました)。

余談はこの辺で。ルールは金網の中で相手をフォール(KO,ギブアップ)する形式と場外へエスケープする形式の2パターンあるが、今はエスケープが日本でも主流で、フォールでの決着とするのはWWFで天井も囲った「ヘル・イン・ア・セル」と呼ばれるのが最近では印象に残るくらいだ。日本で名勝負として最も名高いのはブル中野とアジャ・コングの試合で、ブルが(エスケープルールなのに)ダウンしている相手への金網のてっぺんからのギロチンドロップをフィニッシュとした試合であると思う。
またランバージャック・デスマッチはリング下にお互いのセコンドがリングを取り囲み、場外にエスケープする選手をリングに押し上げ、リング上での戦いだけを強制する試合形式で、これは相手側のセコンドに落ちた時や、セコンド同士のいざこざが試合のスパイスとなる。この試合で名勝負と言われている試合はちょっと記憶にないなぁ。
ところで今書いてきて思うのは総合格闘技を近年から見始めた人には、なぜそれがわざわざ「デスマッチ」と呼称されるのか理解不能だろうな、という事だ。

話を戻そう。実際に金網デスマッチの際、金網めがけて投げられた(以降金網ホイップ)としてどれくらいのダメージがあるかはわからない。例えばDDTで、高木三四郎が持ちこんだペラペラのスリッパをイスと同じように殴ったり、マットに敷いてボディースラムをやったりした試合を見た事があるが、受けた選手がそのダメージを観客にアピールするような仕草(以降セル)をすれば、少なくともお客さんに意図するものは伝わるワケだ。ただDDTの場合はちょっと悪ノリが過ぎるとは思うが・・・。

さて今回紹介するのは金網デスマッチで行われた「レックス・ルーガー対ブルーザー・ブローディ」。
結果から言うと10分くらいの反則裁定による決着なのだが、何故そんな試合を観戦記ネットでわざわざ紹介するかと言うと、途中明らかに様子がおかしくなり恐らくは予定を大幅に変更してのこの試合結果になったと思われるからだ。
では試合を可能な限り文章で再現してみよう。


撮影方法はホームビデオでの生録りで、関係者が撮ったためなのか最前列から映しているため、人の頭が邪魔する事もない代わりに、どの団体で行われたものかが全くわからない。
レックスは殆ど下積みを経験していないので、WCWか旧NWAではないかと思われるが、その割には使われている金網の高さは推定2.5メートルと随分ちゃちい。2人とも簡単に金網のてっぺんに手が届いてしまう。

この試合のビデオは試合開始直後のロックアップから録画されている。まずコーナーにレックスが押し込み、ブレイクするとブローディは例のシャウトを聞かせてくれる。・・・が途中でシャウトを辞めて金網の張り具合を2度に渡ってチェック。当然レックスは何の気負いも見せるような仕草はしない。
次に組み合った瞬間、左腕を取りつつロープに詰めてから水平チョップ、キックを食らわせるブローディ。レックスも2発殴り返して右腕を取る。ブローディはやられながらもコーナーまで追い込み、攻めているはずのレックスが自らブレイクして2人向き合う。
お互い回りながら見つめ合うもブローディが数発のキックの後ボディスラム。その後しばらく攻め込んだところで、ロープに振ってのショルダースルーを蹴らせてあげて攻守交代。ここからしばらくはレックスが攻め込み、ブローディも1発目の金網へのホイップに大きくリアクションを取る。続けざまの2発目のホイップの後には弱々しくコーナーにもたれかかるブローディ。
そこをレックスがすかさず対角のコーナーに投げ、突っ込んでいくとそこに待っていたのはブローディのカウンターキック。(約3分経過)
ブローディは攻守交代と考えたようで、2発のキックの後金網に叩きつけようとするがここでレックスがぶつけられる前に足で金網に踏ん張り、逆にブローディを叩きつける事に成功する。
ところがこれがブローディのプライドをいたく傷つけたようで、流血を確認するかのようなポーズ(実際にはしていないと思う)を見せる。お世辞にもキレいな画像とは言えないが、表情が変わったのはよくわかる。
ゆっくりと立ち上がり、3発目のホイップを受けるが全くリアクションなし。その後初めてレックスをホイップし、ストンピングの連発。レックスも反撃に転じようとパンチやホイップを繰り出すが、ブローディは全くセルしようとはしない。(5分経過)

レックスは明らかに困ったという表情を見せ、今度はボディースラムに行こうとするが全く受けようとはせず、強引にブレーンバスターに切り返す。レックスは弱々しく立ちあがろうとするもブローディはちょっと記憶にないほど連続してのストンピング攻撃。続いての金網ホイップをレックスは頭から突っ込んでみせるが、その瞬間を狙って後頭部への強烈なキック!
その後も攻めまくるブローディはパンチもホイップにも全くセルしようとはせずに、とにかくレックスとの力の差を見せつける事のみに腐心している様子。(7分経過)

攻めあぐねるレックスとそんなレックスをただ見つめるだけのブローディにサスガにブーイングも飛び始め、レフェリーもブローディに声をかける。ふいに片足タックルもどきでテイクダウンを奪い、上からしばらく見下ろすと今度は立ち上がって2度に渡るフロントヘッドロック。これも締めつけるというよりは何もできないレックスを見せつけるのが主目的と思われる。
ここでレックスがやられながらレフェリーを腕で払いのけ、ちょっと大げさ過ぎるレフバンプを取っての反則裁定でゴングが鳴り、レックスはさっさと場外にエスケープ。レフェリーがブローディの手を挙げながら一言声をかけたところでこのビデオは終了。


フミ・サイトーのエッセイがソースだと記憶しているが、レックス・ルーガーの有名なエピソードとして昔(10年くらい前かな)WCW在籍時に他のレスラーたちが試合前「テーズが来てる!」と大騒ぎしていたのに、レックスだけがテーズが見に来るという事が重大であるという事がわからず(もっとも新日本のドームに集まる内の3万人以上の人も同様かと思うが)「なぁ、テーズって誰なんだ?」と聞いて周囲のレスラーの目を白黒させたという事があったそうだ。
レックスの場合はトータル・パッケージというあだ名が象徴するように、ルックスとパワーは申し分ないがプロレスそのものはよくわかっていないという、まぁ中西学(中西のルックスについては不問のこと)のようなタイプと言えばわかり易いか?
ブローディ自身が試合巧者かはさて置き、フレアーやレイスといった古いタイプのレスラーとの60分フルタイムを経験している事などから自分なりに「プロレスの試合とはかくあるべし」との考えもあっただろうし、その試合のブックがブローディ自身納得の行くものではなかったのかも知れないというさまざまな要因が、このような試合結果を生んでしまったのだろう。
アメリカには伝説として名高いケージマッチが幾つもあるが、2人のプロレスに対する考え方の違いがくっきり出たという意味でも記憶しておいて欲しい試合のひとつであるように思う。

それでは今回はここまで。またコラムが流れるほどの大雨が降った時にお会いしましょう。





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