外資系企業虎の穴
■投稿日時:2001年11月25日
■書き手:生首

「外資による日本企業収奪!」「外資が日本企業を食い放題!」等の見出しが躍る今日この頃。
実は「外資系企業」といってもその中身は千差万別、またそこで働く一人びとりの待遇・ポジション、その他モロモロの諸条件によって印象も感覚も違うものではありますが、そんな中でも自身で体験したこと、仲間・同僚を通じて得た知識、ヘッドハンター等、その世界に深く関わる人たちの情報などをまとめ、レポートしてみます。

「終身雇用・年功序列はなく、外資は実績主義」
一番良くあるイメージですね。「終身雇用」という概念は基本的に存在しないと考えていいと思います。用は会社にしがみつきにくい評価体制が出来ているところが多いから、「結果として」終身雇用のような長期就労が出来ない、ということではないでしょうか。身近な例でも50代で主任の人が営業に回っていますが、営業を受ける方も「このおっさんは50くらいなのに主任なの?」と疑問をもちながら営業トークを聞いても、そうは商売成立しにくいと思いませんか。
その通り、「実績が上がらない→昇進しない→ますます売りにくい→ますます実績が出ない」というデフレスパイラル(←意味違うぞ。英語知らねーのか?)、負の連鎖となり、長く働けない訳です。もちろん手厚い福利厚生(例えば厚生施設や住宅ローン補助等)は普通ありませんから、昇進・昇給がないと、歳を取れば取るほど相対的に労働条件は悪化していくようになっています。
単に入社年次が早いというだけで、ゴクツブシが自動昇進していくのを見るとムカツクという話を財閥系企業勤務の人間から聞いたことがありますが、少なくとも入社期によって昇進があるということはほとんどないでしょう、何しろほとんどの外資は中途入社が普通なので、「同期」という感覚が存在しません。
「できねーやつは出来ないまま放置される。非常に公平なシステム」と感じますか?それとも人格を無視する反革命的存在ですか?実はコトはそう単純ではありません。

「実績・実力」とは?
先ほど「実績が上がる」という表現をさらっと使いましたが、実はこれがクセモノです。「実績」って何でしょう?すごく定義が難しいです。個人的には永遠のテーマじゃないかと思ってます。普通の企業では当然「売上」であり「利益」が実績の代表でしょう。
しかーし!!一般的に言って、歩合セールスや投信のファンドマネージャーでもない限り、一人で総ての売上・利益を実現できますか?ちなみに上記2種は外資の超高額収入の代表職です。会社である以上、営業が物を売り、生産・マーケティングが物を作り、流通させ、アドミが事務処理を行い、経理が商流をつかむという分業になっているはずで、その中の一人がいくらシャカリキになったとしても、全体の業績に与える影響はタカが知れています。むしろ一人が突出すればするほど「負の勢力」がその足を引っ張り始めるのが「普通」だと思います。
こんな話があります。ある日系投資銀行に勤めているA氏(35歳)は昨年夏、新たに東京ブランチを出す米系投資顧問会社にヘッドハントされ、日本法人の役員として転職しました。しかし昨年2000年から今年2001年にかけての景気はご承知の通り、特に金融は壊滅的でした。彼は今年の夏突如解雇されました。35歳にして失業です。彼はMBAももっており、ゼータクいわなきゃどっかに仕事はありそうですが、金融界以外での経験はなく、逆に金融界では彼程度のキャリアは刷いて捨てるほどいるので、次の職場を求めて師走に入ろうという現在もさまよっています。
何が言いたいかというと、誰がやったって、これだけ景気が悪くてどこもかしこも売上が減っているという環境下、A氏が「実力」がないからクビになったのかという点です。私の結論は「その通り」だと思います。
つまり、これだけ環境悪化していること、環境はさらに悪化するであろうことを予期した上で、外資取締役に就任していないなら、その責めはA氏にあると思います。ワーストケースを想定して戦略を進めることは戦争の常識、外資という戦場を選んだ彼は、そうしたケース分析をする「実力」がなかったと言われても仕方ありません。結果として実績もあげられず、クビになってしまったのは彼の責任です。おそらく平均的日本人35歳の3倍くらいの月給をもらっていたであろうA氏は、その「3倍」の意味をもっと深く考え、準備をし、転職を場合によってはしないという判断があっても良かったかもしれません。

「勝ち組実力者B氏」
B氏は30代である外資メーカーの営業本部長代行になりました。外資といっても必ずしも若い人ばかりが活躍できる訳ではありません。年配者もいます。B氏の会社は非常に保守的で、B氏が代行になった時、彼より年上で、なおかつ英語に堪能な人間はいませんでした。マーケティング担当だったことも営業担当より有利に働いたかも知れません。
就任と同時に徐々に、確実に恐怖政治が始まりました。かつて自分のカウンターパートだった営業責任者を次々とつるし上げ、業績不振の責任を問います。対案を要求します。次の戦略目標を立てさせ、それが出来ないときの責任も明確化させました。
就任以来2年たちました。彼が一社員だった時、営業を中心に、彼より上位だった社員のほとんどは退職しています。業績は?これだけ社員が辞めると、その利益的インパクトは相当のものがあるでしょう。もちろん「良い」インパクトです。人件費は会社コストの中でももっとも大きく、職位/年齢が高くなればそれだけ比重を増します。この会社のケースでは、B氏が疎んじた上級職の人がほとんど辞めたおかげで、空前の利益が出ました。B氏は3年目、役員に昇進しました。
売上ですか?横バイから低落基調にあります。しかし外資の経営では利益の方が喜ばれますから、それがクビによるリストラだろうが、来期売上の繰上げ計上だろうが、今、その時の利益状態がよければかなりの場合、経営者特に海外の本社にいる株主からは評価されます。ちなみにこのメーカーの悲劇はB氏以外に嘱望される若手がいないことです。小心なB氏は自分を脅かしかねない若い目を摘むことは絶対に忘れません。今日はいいけど明日は?外資の多くでは明日は明日の風が吹くと言うのが、成功者B氏のように正しいのかもしれません。
いや「外資」と一くくりにするのは適切ではないかもしれません。本当に成功している企業は日系も外資もなく、やはりちゃんとしています。しかし企業といってもその総てが、仮に上場企業だとしてもしっかり出来ている訳ではなく、このメーカーのようにダメな幹部のサバイバルによって、結局身を持ち崩していってしまう企業は外資も日系も多いと思います。





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