支柱を失う娘。たちに未来はあるか? 4/7 モーニング娘。横浜アリーナ大会観戦記
■団体:モーニング娘。
■日時:2001年4月7日
■会場:横浜アリーナ
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 いま拙文を読んでいる貴兄が賢明な人間であるならば「モーニング娘。はプロレスである」という事実など今更説明するまでもないことだが、そう言われても今ひとつピンと来ないという人もいるだろうから、改めてここで宣言する。「モーニング娘。はプロレスである」と。

 例えば娘。のメンバーが出演する「ハロープロジェクト」なるTV番組があるが、そこでメンバーが着ているTシャツは白地に赤のラグラン袖、フロントに猛獣のイラストを配した、つまり新日本プロレスのストロングスタイルTシャツをモロにモチーフしたものとなっている。(参考資料:愚傾が使用しているデスクトップの壁紙
 また、プッチモニがニューシングル「BABY! 恋にKNOCK OUT!」を引っ提げてCountDownTVに出演したときの衣装は三人ともスカジャン。これは言うまでも無く闘龍門のM2Kへのオマージュだし、それどころか娘。の一番新しいシングル曲のタイトルは「恋愛レボリューション21」、これはおそらく天龍源一郎の「Revolution」を意識したものであろう。
 そして極めつけは後藤真希のニューシングル「愛のバカやろう」。なんと、タイトルにアントニオ猪木が最近よく使うフレーズをさっそく取り入れてるではないか。

 これらの状況証拠から考えても、モーニング娘。がプロレスである、という事はもはや疑いようの無い事実である。

 モーニング娘。がプロレスであるということは、プロレスファンである手前の視界に入ってくるのも当然の話。かねてから「一度は娘。の興行を生観戦したい」と思っていたのだが、このたびKANSENKI.NETレギュラーであるタカハシさんの尽力により、同じくレギュラーのノリリンさんと一緒に生観戦させてもらう機会に恵まれた。タカハシさんにはこの場を借りて改めて御礼を言いたい。ありがとうタカハシさん!

 さて、会場である横浜アリーナに到着したのは開演時間ギリギリの午後二時半ちょい前。しかし、入り口付近……というよりは会場前そのものが大混雑! 人、人、人の波で一向に前に進める気配が感じられない。手前が前回横浜アリーナを訪れたのは昨夏のWIRE00というテクノイベント、プロレス興行なら「長州vs大仁田」が組まれた新日本のときで、そのときも随分と混雑していたが、今回の混雑っぷりはそれどころの騒ぎではない。今すぐにでも前の人間の肩を掴んでダイブ(パンクやメタルのライブでよく見られる、混雑する人々の頭上に飛び乗って「泳ぐ」行為のこと)が出来そうな勢いである。もっともダイブという行為が場のシチュエーションにまったく噛みあわないので実際にやったりはしなかったが。

 やっとのことで入場口に辿り着き、モギリのお姉ちゃんにチケットを見せる。このときウケ狙いでたまたま財布の中に入ってたZERO-ONE旗揚げ戦のチケット半券を差し出してみたのだが、「あの、すみませんがそのチケットでは……」という具合で、まったくウケなかった。プロレス興行だというのに洒落が通用しないモギリを雇うというのもいかがなものか? と思ったが、そこで文句を言い出そうものなら後ろに控えるギルバート・アイブルそっくりな黒人のローディーに首根っこを捕まえられることも可能性としては極めて高かったので、つけようとしたイチャモンをグッと喉の奥に押し込んだ。
 それにしても、何故だか知らんが今回の興行には黒人のローディーが多かった。しかも、みんな異様にガタイが良いので威圧感があることこの上ない。案外、海外のローカルなVT大会とかに出てる猛者を集めたのかも。そこから「あそこにいる唯一の白人ローディーは実はライオンズ・デンの練習生で、ピート・ウイリアムスのスパーリングパートナーも務めるというその腕っぷしを見込んだブッカーのつんくが娘。のポリスマンとして雇った」とか、まぁいろいろな妄想を働かせたのだけれども長くなるので割愛。

 ロビーに飾られた花輪に目をやると、各放送局の歌番組や芸能人から届いた花輪のなかに「新日本プロレス 天山広吉 小島聡」からの花輪もあった。新日本の選手が「提携していない他団体の興行」に花輪を送るなど異例のことである。聞くところによると、先だってのTV番組で「加護あいvs天山」というマニア垂涎のカードが組まれ、しかも天山が敗れたらしい。
 手前もそのニュースを聞いて「プロレス最強幻想またもや崩壊か?」と思ったが、よくよく考えたら天山に勝利した加護だってプロレスラーなんだから、その理屈はまったく成り立たない。新日本の選手が他団体の若手(若すぎるにも程があるが)に負けただけのこと。珍しいことではあるが、前例の無いことでもない。

 アリーナに入り、座席を探すためホテホテ歩く。すると、週刊プロレスを小脇に抱えて居眠りするノリリンさんを発見。聞くと、前の晩から朝九時すぎまで麻雀をやっていたんだそうな。つくづくタフな人である。それにしても、プロレス興行だというのに週刊プロレスを片手に持った客が手前が見た限りで一人しかいなかったのは、やはり時代の流れなのだろうか。危うし活字プロレス! という思いを禁じえなかった。

 三十分ほど遅れて客電が落ちる。通常のプロレス興行ならここでリングアナ――今回で言えばステージアナか――が客席に一礼し、その日の対戦カードを発表するのだが、今回はそれは無し。というかそもそも誰かと誰かが対戦するという趣旨のイベントでも無いんだけど。もっとも、この種の興行でもステージアナが対戦カードならぬセットリストを事前に発表しだしたら、それはそれで実験的な試みとして意義は買えるのではないか? まぁ賢明なプロモーターならそんな馬鹿なことはさせないであろうが。

 ステージアナの代わりに登場したのはミニモニの面々。ステージ中央の、階段状になっている箇所の踊場に設置された風船のなかからメンバーが姿を見せるいなや、リーダーの矢口真里が「ミニモニだぁぁぁぁっ!」とマイクで絶叫。闘いのゴング……じゃなくて1stシングル「ジャンケンぴょん」のイントロが鳴り出した。

第1セット ミニモニ「ジャンケンぴょん」

 長時間見続けると絶対に視力低下に繋がるであろう派手なコスチュームと、「白上げて 上げません ジャンケンぴょんのジャンケンぴょん!」という能天気極まりない歌詞とメロディーでお馴染みのミニモニ1stシングル。興行の「ツカミ」としてはこれ以上ないほどの選曲と人選である。前座は地味な選手と地味な展開でチマチマと……という考え方は娘。にはこれっぽっちも無いようだ。

 それにしても、ミニモニは「二曲目のシングル」をどういったものにするつもりなのであろうか? これだけインパクトを残した曲が最初にドーンと出てしまった以上、当面はそれを踏襲した形のものを作らざるを得ないだろうし、またそれ以外のスタイル、例えばシリアスな曲など彼女たちのキャラクターから考えてもこなせるとは思えない。
 そもそもミニモニじたいが長期的な展開を見込んだプロジェクトではないのだろうが、商売になる限りは使わざるをえないという部分もあるはず。そのときにはブッカーつんくの手腕が最大限に問われることになると思うが、どうだろう?

第2セット プッチモニ「BABY! 恋にKNOCK OUT!」〜「ちょこっとLOVE」

 ミニモニが一曲歌って退場後、ステージの下からプッチモニが出現。先ごろ発売した3rdシングルを披露する。
 光っていたのは保田の歌唱力と吉澤の笑顔で、意外なことに後藤の存在感はそれほど突出していなかった。
 雑誌の写真やTV画面の中で動いている姿を見る限り、後藤の存在感というのは娘。においても他のメンバーを圧倒しているように感じていたし、また実際にそうだからこそいつのまにか安倍をさしおいて「ド真ん中」に居座るようになったことは間違いないはずなのだが、今日は体調が優れなかったのだろうか。

第3セット 中澤裕子「悔し涙ぽろり」

 今回のシリーズ……というかツアーはナカザーさん(年上なので「さん」付け」)の「卒業記念」という趣旨らしい。
 それにしても、年を追うごとに相川七瀬との区別がつかなくなってきているように感じたのは手前だけでは無いはず。

第4セット タンポポ「乙女パスタに感動」〜「恋をしちゃいました!」

 娘。のサブユニットの中で、手前が一番気に入ってるのがこのタンポポである。理由は簡単。矢口真里と石川梨華がいるからだ。ちなみに、この二人は神奈川出身、しかも矢口に至ってはは横浜生まれだとのこと。もっとも、そんな理由で彼女らに一目置いたわけではないが。

 ここで目を引いたのは石川の表情セルが極めて達者なこと。古い言葉でいえば「ブリッコ」と呼ばれる仕草だが、アイドルを廃業しても声優としてやっていけるんじゃないかと思えるほどのハイトーンボイスも相成って、臭さをそれほど感じさせない。

 娘。に加入したばかりの頃、ブッカーつんくがわざわざ東スポを使ってまで「ストーカーに盗聴される」というアングルを打った理由がよくわかった。

第5セット 後藤真希「愛のバカやろう」

 プッチモニのときに感じた「存在感の希薄さ」はここでも同じだった。まだ歌い慣れて無いカンジ。
 やはり体調が悪いのだろうか? それだったら口パクでもすればいいのに。もっとも実際にそうしてたのかもしれんが。

第6セット 全メンバー挨拶

 中澤亡き後のリーダーと目される安倍なつみがここにきてようやく登場。他のメンバーはすべからく「副業」をこなしてるというのに彼女だけは頑なにそれを拒否……してるのかどうかは知らんが、特例的な「黄色5」というユニット以外にはまったく「副業」に手を出していない。そのくせちゃっかり「ソロ写真集」の発売はしてるあたり、結成時からエースとして「ド真ん中」に居座り続けた安倍なりの、「後藤への禅譲」を拒否する意地みたいなものを感じずにはいられない。おそらくブッカーつんく的にはWCWが元気だった頃のハルク・ホーガン並みに使いにくい存在であろう。

 安倍のマイクから始まって、以下メンバー全員が挨拶。
 度肝を抜かれたのは辻と加護の十三歳コンビと保田圭の第一声。

 辻 「ガッチョーン!」
 加護「アイーン!」
 保田「ウィース!」

 谷啓、志村けん、いかりや長介といった偉大なる先人達を、若くしてリスペクトしていることが伺えた、非常に微笑ましい一幕だった。何もオマージュするのは先輩レスラーだけじゃなくたっていいんだしな。芸人とレスラーは地続きだ。

 ちなみに、他のメンバーは総じて「元気」というキーワードを多用していたが、誰も「元気があれば何でもできる!」とは言わなかったのは、これも別の意味で先人に対するリスペクトであろう。

第7セット カントリー娘。と石川梨華「初めてのハッピーバースデイ!」

 「モーニング娘。の妹分」だけならまだしも「世界初の酪農アイドル」という絶対に当たりっこ無いコンセプトまでつけられた挙句、デビュー曲リリース前にメンバーの一人が交通事故で非業の死を遂げたり、その直後に別のメンバーが「過去のヘアヌード疑惑」が取り沙汰されて脱退したり、残されたメンバーは北海道内の犬ぞり大会にゲストとして駆り出されたりとつくづく「生まれてこなければ良かった」という森田童子の曲の歌詞の1フレーズが浮かんできてしょうがないカントリー娘。に、娘。本隊から石川梨華が出向。近々発売されるニューシングルを披露した。

 99年4月のオーディション(歌と乗馬の訓練など牧場体験)をクリアして以来、茨の道を歩み続ける「りんね」と、昨年5月に新加入した「地元では”天才犬ぞり少女”(どうやらカントリー娘。と犬ぞりには切っても切れない縁があるらしい)として知られていた」という「あさみ」を差し置いて石川が「ド真ん中」に居座っていたが、ステージを見てそれも納得。言っちゃ悪いが「華」が違いすぎる。
 新日本隊から平成維震軍――例えが古くて申し訳ないが、新日本隊とZERO−ONEと例えるには両者の力関係に差がありすぎるので――に、当時売り出し中の金本浩二が出向していたら恐らくこういうカンジになっていたのであろう。

 余談だが、今回の「出向」に際して、手前は「こんなスポットがあったら良かったのに」と考えていたものがあるので、ここで披露させていただきたい。

 とある会場でのコンサートのラスト、会場に集まった観客に「ありがとー!」とメンバーが手を振る最中、突如としてステージが暗転。PAから「オマエらの時代はここまでだ!」と(津軽弁で)吠える声が。照明が戻り、ステージの上に目をやると、そこに立っていたのはカントリー娘。の二人と、そのプロデューサー田中義剛だった。
 娘。のメンバー、スタッフや観客が戸惑いの表情を見せるなか、マイクを握った田中はこう続ける。
「オマエらの中に一人”ユダ”がいる! これから面白いことが起きるぞ……、背後に気をつけるんだな!」
 色めきたつ娘。たち。次の瞬間、一つの”陰”が動き、その”陰”は中心に立っていた後藤真希をバックドロップで投げ捨てた! ”陰”はマイクを握り、普段のハイトーンボイスからは信じられないようなドスの聞いた声で「オマエらみたいな甘チャンどもとは、もうやってられねぇんだよ!」
 ”陰”の正体は石川梨華だった!

 ――というアイデアを興行終了後にノリリンさんに話したところ「そんなんせんでも客は入っとるやろ」とあっさり却下された。面白いと思うんだけどなぁ。

第8セット 松浦亜弥「ドッキドキ! LOVEメール」

 4月11日にデビューシングルが発売される新人のステージ。悪く言えば抱き合わせなわけだが、ルックスは可愛いし、歌う仕草も悪くない。横浜アリーナという大きなハコにも関わらず、緊張でガッチガチになっていたようにも見受けなかった。
 しかし、つんくがプロデュースした娘。以外のアイドル・アーティストすべて(当然「キッスの世界」も含む)に言えることだが、素材としては悪くないにも関わらず、娘。から出される強烈な光に潰されて「陰」になっているという現状がある。「太陽とシスコムーン」も明るいのは名前だけで、結局は娘。の「陰」でしかなかった。
 この部分が、ブッカーつんくが抱える問題点の一つであろう。

 この松浦のような新人を上手く軌道に乗せることができるようになったとき、娘。を中心としたつんくプロデュースのプロジェクトは一歩も二歩も先に進むことになるのではないか?

第9セット 平家みちよ 「(曲名知らず――しかも調べる気が起きず――)」

 Hello!Projectの抱き合わせ販売第三弾。
 チケットに印字されていた「ゲスト」の最後の一人なので、次からようやく娘。の歌が始まるのであろうと推測。
 まぁ、ブッカーに逆らったわけでもないのにこうやってジョブ街道を歩まされる平家に一抹の同情心も芽生えないでもないが、手前の目的はあくまで娘。本隊なので、ここは気合を入れるためにもゆっくりと休ませて貰った。

 さぁ、次は待ちに待った娘。本隊の出番だ。

第10セット 「ハッピーサマーウェディング」〜「Say Yeah!−もっとミラクルナイト−」〜「インスピレーション!」

 ようやく娘。本隊の登場。

 本稿の冒頭で「娘。のコンサートに前座は無かった」という言い方をしたが、それはある一面で間違いとも言える。
 というのも、「抱き合わせ」の三組は勿論、メンバーのサブユニットやソロ活動にしても、結局は「娘。本隊」の上に成り立っているものであることは確かなのだから、そういった存在に対して「前座」「オープニングアクト」という括り方をするのは間違いではない(極めてキツイ言い方をすれば、「抱き合わせ」の三組は決して前座としての役割を果たしているとは思えない。メンバー及び、一見客の休憩時間にはなっているだろうが。もっとも安倍はこれまでメンバー総出で挨拶したとき以外、まったく仕事をしていないので彼女に関しては休憩もクソも無いのだが)。

 つまり何が言いたいかというと、娘。は「前座」もしくは「オープニングアクト」を自前メンバーで用意できるほどの力を持った団体である、ということなのだ。当たり前のことのように見えて、実はこれが出来ているプロレス団体は意外と少ない。まして一万人規模の団体となると、他団体では新日本だけである。

 さて、さんざん待たされただけあって会場は大爆発。特に二曲目の「Say Yeah〜」はファンの間でもコアな人気を誇る曲で、場内のノリがとにかく良かった。

第11セット 「サマーナイトタウン」〜「memory 青春の光」〜「真夏の光線」

 サルティンバンコのテーマ曲である「インスピレーション!」を歌い終わった後、地元出身である矢口を中心としたスキット。この間、メンバーの半数は衣装の着替えのため舞台袖に下がる。三分ほどして、着替えの終わったメンバーがステージに上がり、今度は逆にこれまで喋っていたメンバーが着替えのため逆側の舞台袖へ。このときのスキットを仕切っていたのはリーダーのナカザーさん。他のメンバーの喋りがいかにも台本離れしていないのと比べると一枚も二枚も余裕があるように感じられた。しかし、これだけステージを仕切れる人材を放出しちゃっていいものなのだろうか?

 ちなみに、このスキットのなかで発表された有料観客者数は一万五千人超満員札止め。なんでも横浜アリーナでの興行における新記録だとのこと。水増しは……してないと思う。たぶん。

 全員着替え終わった後、初期のナンバーを三曲。
 このとき後藤以下の新規加入組のメンバーをステージ後方に下がらせ、古くからのメンバーがリードしていた。まだ新規組はまだ旧曲を覚えきれてないんだろうな。

第12セット ミニミュージカル

 石川梨華扮する女子高生を中心に展開する五分程度のコメディー。

 ごく簡単にストーリーを説明すると、片想いのファーストフード店員(後藤)に自分の胸のうちを告げられずに悩む女子高生リカ(石川)が生活指導の先生(中澤)から教わった「想いを届ける秘密の呪文」を唱えると、目の前に「願いを叶えるラブラブエンジェル」(加護・辻)が現れるが、エンジェルの勘違いのせいで恋の矢は片想いの店員ではなく、全然関係ないファーストフード店長(矢口)に刺さってしまう……という、とてもじゃないが心にゆとりが無いときにはお奨めできないストーリーライン。

 とはいえ、ここで場内の空気がいっぺんに冷めたのかというとそんなことはなく、おおいに盛り上がった。たとえ矢口が台詞を噛もうとも石川が間を外そうとうも後藤がつっけんどんな演技をしようとも誰も文句を言わない。この団体には極めて優しいファンが揃っているようだ。もしこれが新日本の選手だったら会場内から大ブーイングが飛ぶはずである。
 「プロレスファンは『優しい』とよく言われるけど、そんなことはない。むしろ、あんなに厳しい連中はいない」とはノリリンさんの弁だが、手前もまったくもって同感だ。この日、横浜アリーナに集まったファンの姿勢を他団体のファンもぜひとも見習ってほしい。

 ところで手前の感想はというと、ストーリーやメンバーの演技はともかく、ほとんどシルバーに近い金髪に濃紺のマニキュアでなおかつ厚化粧のナカザーさんが「生活指導担当」というのはいかがなものかと思った。しかし、それ以上に石川の可愛さが光っていたのでまったくもってノー問題! つんくの石川にかける期待は相当に大きいと見たが、どうなんだろうか。

第13セット 「DANCEするのだ!」「モーニングコーヒー」

 ミュージカルの流れを引き継いで、これまたファンの間で根強い人気を誇る名曲「DANCE〜」がスタート。
 続けてデビュー曲。ナカザーさんが脱退したらこの曲をリアルタイムで歌っていたのは安倍と飯田の二人だけになるんだよなぁ、などと思っていたら、やはりその二人がボーカルの殆どをとっていた。

第14セット カラオケ「愛車ローンで」

 矢口の「次はみんなで歌ってね!」というアピールの後、場内のビジョンにイメージ映像と歌無しのオケが流れ、メンバー達は衣装替えのために舞台袖に引っ込んでしまった。

 ハッキリ言って、こっちは曲を聴きにきたのであって歌いに来たわけではない、貴様らのやってることは一歩間違えたら職場放棄だぞ、何考えてんだまったく、とツッコミを入れたくなったが、好きな曲だったのでつい大声で歌ってしまった。

 ちなみに、この曲のイントロ部におけるギターのリフは映画「リアリティバイツ」の主題歌(曲名失念)の、もはや「パクリ」を越えて「物真似」の域に達している。エアロスミスの「SweetEmotion」にを真似た布袋寅康の「BeatEmotion」も裸足で逃げ出すほどだ。
 ブッカーつんくの洋楽(特に80年代)への傾倒ぶりは有名な話だが、ここまでくると「モノマネも魂を込めればオリジナルとなる」というバトラーツ石川雄規のような開き直りを感じずにはいられない。別にそれが悪いと言いたいわけではないが。

第15セット 「抱いてHold on Me」〜「恋のダンスサイト」〜「LOVEマシーン」

 娘。が大ブレイクするきっかけとなったのは間違いなく「LOVEマシーン」のミリオンヒットだが、その伏線となったのが初めてチャート1位をかっさらった初期の名曲「抱いて〜」であろう。今回の興行でもラストへ向かって空気を盛り上げるためのきっかけとして使われていた。

 ここまで、福田や石黒、市井といった脱退組が担当していたソロパートの穴の大部分を埋めていたのは保田だったように見えた。手前はかねてから娘。のメンバーの中でステージングと声のパフォーマンスが一番安定してるのが保田だと思っていたが、それは外れていなかったようだ。
 プロレス団体は仕事の出来る中堅どころの力量が団体そのものの地力に繋がる。
 娘。の不人気No1を独走する保田だが、「脱退」の噂が一向に立たないのはこういう理由からだろう。

 安倍の「終わりだぁっ!」というフィニッシュの合図……じゃなくて「最後の曲だよーっ!」というアピールの後、大ヒット曲の「LOVEマシーン」に繋ぐ。曲のエンディングに繋げる最後のサビに移行するとき、シルバーの紙テープがステージから飛び交う。
 よくよく考えてみれば、今回の興行で舞台に施された演出装置というのは最初にミニモニが入っていた風船と、この紙テープだけである。これはアイドルのコンサートとしては極めて地味な仕掛けだと思うが、それでもこれだけ客席を沸かせてみせたのはたいしたものだ。殴る、蹴るで試合を組み立てる、いわばストーンコールドやロックの試合運びに近いスタイルと言えばわかりやすいか。

 ここからアンコールに移行。
 場内は「アンコールッ! アンコールッ!」の声一色だったが、ここはプロレス会場なのでその声援はふさわしくない。手前が送る声は当然「延長コール」である。そう思って「えーんちょっ! えーんちょっ!」と延長コールを促してみたのだが、何故か誰も呼応してくれなかった。やはりこの手の掛け声は「昭和の遺物」なのだろうか。

第16セット 「恋愛レボリューション21」〜「I WISH」

 アンコール一曲目は最新シングル。これは予想通りだが、興行のトリに「I WISH」を持ってくるのも、まぁ予想通り。
 実は手前はあんまりこの曲は好きじゃない。曲そのものもあまりいいとは思えないし、これは実際にやってみるとわかると思うが、ステージと客席のコール&レスポンスが成立しにくい……というか、やりにくいのだ。ただ、「人生って素晴らしい」という歌詞は、陳腐だが余韻も残りやすく、イベントのシメとしては悪くない。火照った体を「クールダウン」させる役割も果たしているわけだから。
 かつて中山美穂が、コンサートのラストには必ず「You My Only Shining Star」を歌っていたと聞くが、これも「クールダウン」を考えた上でのことだろう。

 最後にノリのいい曲で盛り上がりながら終了、というのも悪くは無いが、しかしそれだと手前のようにいつまでたっても「現実」に戻れないオーディエンスのことを考えれば、やはりここは「クールダウン」の方式を支持したい。
 個人的なアレを言わせてもらえれば、「I WISH」よりは「モーニングコーヒー」のほうがシメの曲にはふさわしいと思うのだが。

 最後に、このシリーズで娘。を脱退し、新団体を旗揚げ……するかどうかはともかく、まぁ独立することになるナカザーさんがマイクを掴んで挨拶。「また会おうぜ! 横浜!」

 総括。
 なにもかもが初体験となった娘。興行だが、素晴らしい興行だった。
 この日は昼の部と夜の部でダブルヘッダー興行だったため、一日二試合を強いられる彼女たちも少しは手を抜くのではないかと思われたが、実際にそんな様子はなく、実にエネルギッシュかつエモーショナルなステージングを披露してくれた。
 ノリリンさんは後で「生きる意欲が湧いた」と言っていたが、手前も同感。「明日から、また、生きるぞ!」という言葉が自然と口に出てしまった……というのは流石に嘘なんだけれども、その台詞を吐いた船木誠勝の当時の気持ちが少しわかったというかなんというか。

 もっとも、気になる点も無いでもない。それは言うまでもなく「中澤以降」の娘。たちだ。
 心配だ。
 大丈夫なのか?
 まとめられんのか??
 次のリーダーは誰なのよ???

 そんな不安を感じつつも、とりあえずはクオリティの高いステージングに満足し、「この幸福感が冷めないうちに、早くこの感情を文章としてまとめよう、それにしても娘。のみんなはこれからもう一ステージあるんだよなぁ、大変だよなぁ」などと考えつつ、帰路につくべく新横浜の地下鉄入り口階段を降りようとした手前の足を止める、一つのきっかけ。

 「チケット無い人あるよー。割り引くよー。あぁ、前売りが完売したもんだからダフ屋の値段まで高くなってると思ってやがるんだなぁ。誰も買いにきやしねー……、ったく、商売あがったりだぁ」

 十分後、「余るよりマシだよね?」という殺し文句で正規の値段より半額以下の値段でゲットしたチケットを手にしつつ、再び横浜アリーナの入り口へ向かう手前がいた。

 ほんの少し前まで味わっていた感動を、いまいちど味わうために。





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