NHBドキュメンタリーヴィデオ、Life in the Cage について
■投稿日時:2001年5月24日
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

最近、格通も報道した Rites of Passage というNHBのドキュメンタリー映画がロスで試写されて、そこでタンク軍団がいつものごとく騒いでヤジを飛ばしまくりとても迷惑だった(でも誰も文句言えなかった)、、、みたいな話題がUG Forum で盛り上がっていたけど、同時に Life in the Cage という、最近ネット上でも発売されたもうひとつのNHBドキュメンタリーヴィデオのことも話題になっています。

実は俺、一カ月くらい前にこのヴィデオを柔術大会の出店で$15で買って、すでに観てるんですよ。はっきり言ってあまり面白いと思わなかったんで何も書かなかったんですが、UGに直々書き込んでる監督のEdward Dotyさんによると、このヴィデオの評判はけっこういいらしい。実際「観たけど本当に面白かったよ、ありがとう」みたいな投稿をしている人もいる。俺の感想はその反対なんだけど、そのことを監督本人がチェックしているUGに書きこむ気にもなれない。だから勇者の俺は彼の目の届かない日本語ページで、紹介を兼ねてこのヴィデオについて好きなことを書くことにします。

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最初にこのヴィデオのことをNHBのドキュメンタリーと言いましたが、これが扱っている大会はKOTCのみです。というか、ほとんど実質KOTCのプロモーションヴィデオです。発売元もKOTCのヴィデオのそれと同じだし。まず、KOTC(NHB)とはどういうものかについてスタッフや出場選手たちのインタビューを交えながら紹介し、その後KOTC5(この大会については、よかったら本ページにある俺の書いたルポを参照してください)に出場するシャークタンクとライオンズデンの選手たちの練習風景を紹介し、最後に彼らの試合をざっと映して終わりです。一時間足らず。ありていに言って、このヴィデオはお金も労力も時間もあまりかけずに作られたことが明らかです。

UGではこれが「ドキュメンタリーフィルム」扱いされてたりもしますが、間違っても長い時間をかけてじっくり撮られたWrestling with Shadows や Beyond the Mat みたいなのを想像してはいけません。そもそもこれフィルムじゃないし。それよりは、ヒクソンのVTJでの試合を追ったChoke(日本では別の題名で売られているんですよね?)に近いけど、やっぱりそれと比べるのも失礼です。Chokeはヒクソン以外にも、ヘイズや木村などをいろんな場所をまたいで取材しているし、ヒクソンの取材はけっこう時間をかけて行われているのが分かるし、彼は誰がみても特異な人。それに対してこのLife in the Cageは、KOTC5大会に加えて、シャークタンクとライオンズデンの練習をそれぞれ一度ずつ取材しただけでつくられているのが丸分かりです。また、取材対象の選手たちが特別面白いキャラクターを持っているわけでもありません。ふつうのNHB選手たちです。

まあ、悪口ばっかり言ってでもしょうがないんで、ちょっと面白かった部分も紹介しましょう。シャークタンクやライオンズデンの練習風景そのものは興味深いです。パンチをかいくぐってタックルに入る練習とか、それを潰して上になる練習など、彼らが本当にNHB競技に特化した練習を積んでいるのが良く分かります(って当り前か)。あと、ちょっとだけ映されるスパーの風景でみられる、膝固めみたいな体勢からグラウンドコブラに持っていく技は、まったく見たことなくてちょっと驚き。あとシャークタンクは、練習生たちが創始エディ・ミリスのひとつひとつの言葉にいちいち"Yes sir!" と答えていてけっこう軍隊入っています。ミリスの指導熱心さ、雄弁さはいけてます。「練習での肉体的な痛みなんて、肉親をなくした時の精神の痛みに比べればたいしたことないだろう」とか「骨を折ったって治る。障害がある人に比べれば全然問題ない」とか面白いことを生徒に言います(例によって英語の聞き取りあやしげ)。

また、このヴィデオのハイライトであるKOTC5の試合風景でもひとつ面白いシーンがあります。ライオンズデンの無名選手がモレイラ柔術の選手と試合するんですが、それをアナウンサーが試合前に「シャムロックvsグレイシーの古典的対立図式」と表現する。で選手たちが金網に上がると、柔術選手の方が、もうなんて表現すりゃいいのか分からないんだけど、試合前から完全に別の世界にイッちゃってるのが分かる。「クスリをやってる兄ちゃんがものすごいハイテンションでホイスの構えの真似をしている」って感じ。でゴングと同時に彼は、そのアゴを突き出したガチガチの構えで突っ込んでいってパンチ一発でKO負け。これは笑える。さらに試合後の勝者のコメントも素敵です。「かよわいbitchとやってるみてえだったよ。たぶん男なんだろうけどな。(仲間から「お前いつ試合すんだよ?」とジョークで聞かれて)わかんねえ。まだ俺はこうやって待ってんだ(仲間で爆)。なんにしても奴に俺を殴ることができるわけがねえ。ケンみたいな相手が殴ってくるんなら俺も考えるけど、(相手のグレイシーポーズの真似をして)こんなのが相手じゃよう。」

まあそんな感じかな。主役扱いで追っていた(というほど熱心に取材してるわけでもないけど)シャークタンクのジェイ・マルチネズの試合が大凡戦に終わったのは、このヴィデオにとって不運でしたね。ちなみにKOTC5の試合を映すと言っても、松井の試合はまったく集録されていません。そのかわり、KOTC4におけるヴァーノンの試合が、あたかもKOTC5のメインであるかのように収録されている。

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先ほど俺は、このヴィデオをすでに発売されている他のプロレス格闘技ドキュメンタリーと比べてはいけないと言いましたが、おそらくこれに一番近いのは、SRSとかが「注目の選手の一日」を取材したやつとか、K-1の舞台裏、控え室風景を編集したやつでしょう。つまり日本では、このくらいの質の格闘技ものは毎月のように作られているはずです。それでも、これがアメリカでは貴重なのはたしかです。こっちには格闘技番組もなければ、格通等のようなきれいな専門誌も存在しないですから。その点で、これを喜ぶ人がいるのは理解できます。それにいろいろ悪口を書いたけど、どこかのAVのように編集や音楽が露骨にチープだったりすることもない。けっこうきれいに仕上がっています。監督が無能だとか、そういうこともないでしょう。単に取材にお金と時間と労力がかけられていないというだけです。俺はドキュメンタリーと聞いて、Beyond the Matみたいなのを想像しちゃったから見てこけたけど、最初からSRSレベルの手間と期間で作られたものとして見たなら、別に失望もしなかったと思う。

このヴィデオはSherdog.com や Ufignthing.com 等で買えるんですが、内容は上記のごとくだし、短いし、英語があまり得意でなければさらに興味半減だと思うので、日本の方がわざわざオーダーして取り寄せる価値があるかどうかは「?」です。もっとも、ヴァーノンやボーランダーやメッツガーの名前を聞いただけで胸がドキドキしちゃうライオンズデンオタクとか、ジョー・ハーレイ、クリス・ブレナン、ビクトー・ハンセイカーといった選手達についつい興味を持ってしまう根っからB級マニアの方々にはいいかもしれません。ちなみに今後、DVDになる予定もあるとか。KOTCの試合と組み合わせて一枚にまとめるんじゃないかな?





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