GAEAの面白さとは(前編)
■投稿日時:2000年10月16日
■書き手:maya(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

女子プロレスは対抗戦というパンドラの函を開けてから、93年4月2日の横浜アリーナ大会、94年11月20日の東京ドーム大会を頂点に、打つ手が無くなり徐々に勢いが衰えてきてしまい、現在冬の時代の真っ只中にいるような感じである。

その要因には、新鮮味のあるカードが作れなくなってしまったこと、リーダー的存在であった全日本女子プロレスが実質上の倒産に追い込まれ、主力選手が相次ぎ離脱し、業界のリーダーシップを取れなくなってしまったこと、それに伴いスター選手があちこちで新団体を設立してしまい、人気のある選手がばらけてしまったことが挙げられるだろう。

皮肉にもそれにより、現在女子プロ団体は7団体になり、男子の団体でももともとあったFMW以外にも女子部門が次々に出来、男子との交流も盛んになった。それでも戦いに場は増えたものの、一向に盛り上がりには欠けている。

ただ、その中でも一人勝ちという感じで、観客数を着実に増加させ話題を提供しているのが、GAEA JAPANである。今年に入り、月1回の後楽園ホール大会を全て満員にし、女子プロ1団体では何年振りかという9000人キャパの有明コロシアムと6300人の横浜文化体育館を満員にしている。

なぜ、GAEAに勢いがあるのか、女子プロの中だけでもいいが、プロレス、格闘技というプロ興行の中でも考えさせられるものがあると思う。

1.フロント

GAEAの特徴を考える場合、フロントの特殊性が考えられる。
GAEAの現在のフロントは、トップに木村統括部長という人がいて、その下に杉山代表(女性、結構キュート)がいる。杉山代表はもともと長与が引退した後の芸能プロダクションの社長であり、つかこうへいの「リング リング リング」で、長与がリングにあがった時に、芸能活動では見られないオーラを感じてGAEA旗揚げを決意したらしい。そこで、知り合いの木村統括と折半でGAEAの会社組織を作ったのだが、木村統括は大阪で3つくらいある建設関係の会社のオーナーで、GAEAは会社組織的にはその関連会社という事になる。しかし、当時でも他の会社が黒字だったため、旗揚げ当時赤字のGAEAに資金を繰り込むことが出来たらしい。

ここで、重要なのは、木村統括も杉山代表もプロレス興行に関しては全くの素人だったことである。そのため、かえって、今までのプロレス興行の因習に乗っ取らなかったところにGAEAの特殊性があると思う。

例えば、初期の頃はやっていたらしいが、売り興行は現在一切やらない。長与に言わせれば、売り興行があったほうが楽らしいのだが、これをやらない事により、地方プロモーターや○クザとの関係を根絶したかったのであろう。例外を除き、招待券、割引券は出さない。また、法人お抱えにより大量販売もしない。これにより、チケットを買って見にくる観客を中心に、客にプライマリーとかもつけないという方針だ。選手の家族もチケットを買わなければいけないらしい。例外というのは、プレスの事である。

また、敢えてスポンサーも付けず、自分たちの資金で運営して来た。
過去に長与が立ち上げた団体という事で、スポンサー依頼とかもあったらしいが、それは、全て断ったらしい。

また、ポスター貼りやパンフレットの新調というのも採算に合わないと判断したらやらない。その代わり、会場でアンケートを書いてもらっている人にDMを送っているそうである。この方が回収率が高いらしい。こういう営業効果もいちいち数字化し、長与を初めとする選手を説得するのである。

また、試合後には必ず、その日試合についてのミーテイングを行なっているらしい。内容は不明だが、杉山代表が言うには、この時は選手が泣き出してしまうような、かなり突っ込んだものになる時もあるらしい。また、プロレスそのもの以外にも、経営学も含めたデイィスカッションや選手同志で自発的に行われていることもあるらしい。

2.選手

GAEAの選手で特徴的なのは、フリー参戦選手の多さである。
デビル雅美、ライオネス飛鳥、北斗晶、尾崎魔弓、アジャ・コング、ダイナマイト関西、そしてjd'のザ・ブラディー。女子プロレスの歴史を築き上げた錚々たるメンバーである。もうほとんど一団体だけで、女子プロレス・オールスターみたいな様相を呈している。

このうち、デビル、北斗、尾崎、関西は現在上がっているのは、GAEAマットだけである。彼女達に、インタビューの時に必ず出てくる質問が、なんで、現在GAEAのマットしか上がらないのかという質問に、個々は違うとしても共通して返って来るのは、GAEAのマットはやりがいがあるからという答えである。
それ以上は、あまり深く語らないのだが、私が予想するに各選手の扱いが違うからでは無いだろうか。

全女に過去にあった「25歳定年制」というのは、現在では廃止されたもののこのイメージは今だに強い。女子プロレスは世代交代を頻繁に行なったことにより、新鮮味を保ち人気を維持してきた面がある。同じ選手がいつまでも活躍するのは、かえって疎まれる風潮があると言ってもいいかもしれない。

今GAEAに参戦しているフリー選手の中には、その団体の性急な世代交代の波に合い、一線を引かされた感のある選手もいる。

それで、GAEAではなぜ、やりがいがあるか。GAEAはもともとの母体が芸能プロダクションである。ソフトである選手を売り出すのが巧妙である。現在、GAEAでは上は、デビル、長与、飛鳥から、下は竹内彩夏まで、選手のキャラクター付けや、その個々の選手の目標は直面している課題を明確にしており、観客は感情移入しやすい。選手あってのプロレス団体であるという姿勢が良く分かる。

個々の選手は、自分次第では自分をオーバーする機会がある。この虎視眈々とした駆け引きが見ている方としては面白いし、やっている方としてはやりがいになるのではないか。

現在38歳のデビルについて、例えば長与や私の友人の愚傾氏が言うには(凄い並列だ)、GAEAに来てからのほうが生き生きとして魅力的だそうである。実際今のGAEAでもデビルは入場して来るだけで、会場の雰囲気を変えてしまう存在感があるし、恐ろしいキャラクターの中にもプロレスを楽しんでいる雰囲気が感じられる。JWP時代の前半は、いざ知らず、後半は若手の育て役として一歩ひいた立場にいたフラストレーションを一気に吐き出しているような感じだ。

各団体は新鮮味を求めるばかりに、重要なソフトをないがしろにしたのではないだろうか。そういう貴重な魅力的なソフトを有効に使っているのが、GAEAだという感じがする。これは、予測だがフロントは各選手と良く話しあっているのであろう。

3.スクリプト

一部には長与劇場と揶揄されることもあるが、GAEAのストーリーは大河ドラマのような流れになっており、次はどうなるのか?という面白さを常に提供して来てくれる。クラッシュ・アングルを中心に、さまざまなサブ・ストーリーを作っていく。

特にクラッシュに関しては、98年の12月に飛鳥がGAEAに参戦して以来、1年半の時間をかけている。じっくり熟成してからの再結成であるから、単なるリバイバルに終わらない新鮮味を生んだと考えられる。

また、その日のメイン終了後に次の試合のカードを匂わす舌戦も手際の良さを感じさせるし、カードの出し惜しみもしない。また、前述したように、選手に明確なキャラクター付けがあるので、見ている方にしても、その試合の意義などが明確になっている(まあ、そんな事知らなくても面白いのだが、知っていれば、余計面白い)。ここに女の業みたいなものを見える時がある。

4.長与のカリスマ性

GAEAはもともと、つかこうへいの「リング、リング、リング」で久し振りにマットに上がった長与の輝きを杉山代表が見て、長与に促されて旗揚げを決心した団体であるから、長与を中心に回っている事は間違いない。なんだかんだ言っても、女子プロレスの本を読んでいると、最終的には長与に行き着いているように思える。

ただ、敢えて言うと、長与個人でも十分魅力的だと思うが、これに飛鳥が加わると化学反応的に変わってしまう感じがする。飛鳥参戦前からGAEAはそれなりに実力をつけていったが、本格的にブレークしたのは飛鳥参戦以降であろう。化学反応は、敵対する立場でも組む立場でも同じだ。飛鳥と長与が同じリングに立ったという事だけで、雰囲気は全然変わるように感じる。個人的には、長与と組んでいる飛鳥より、長与と敵対している飛鳥の方が面白いと思うのだが。

これは飛鳥にしても同じである。今のGAEAの人気を支えているのは、飛鳥の力も大きいが、飛鳥が他団体でメインを取っても、それ程集客出来無いのである。結構、これも不思議な現象である。

5.ムーブ自体の新しさ〜クラッシュ対決の意味

一番の問題はここにあると思う。GAEAの面白さは、問答無用の試合の面白さである。ここにも、飛鳥参戦の効果がある気がする。
飛鳥はGAEAに参戦してから、一年半は長与と組まず、敵対する立場にいた。この戦いはお互いのプロレス観、ポリシーの戦いであったのではないかと思う。

飛鳥と戦うまでの長与のスタイルと目指したものというのは、あくまで基本に忠実なオーソドックスなプロレスであった。そのため、自団体では、浪漫、GAEA改といった無我的スタイルやUWFスタイルを追求し、実際無我興行にも参加した時があった。それは、GAEAの少し前までのTシャツに、机、椅子の使用、場外乱闘禁止という絵とともに、Don't be unfair!!と書かれていたことにも象徴される。

しかし、一昨年の12月に飛鳥がGAEAマットに上がってから、ファイトスタイルががらりと変わった。もともと、アジャとか尾崎もいたので、多少のラフ攻撃も GAEAではあったのだが、飛鳥のGAEAの初戦というのは、いきなり長い場外乱闘から始まり、机、椅子を使うハードコア・スタイルは当たり前、ホールのバルコニーからKAORUを宙づりにするわ、試合後も広田を拉致して、ホールのロビーに広田の額から流れた血が浮き上がるという有り様であった。

あくまでもプロレスの正統を貫こうとうとする究極のベビーフェイス長与と、復帰したものの、あまりパッとせずシャーク土屋やイーグル沢井とかと組み、徐々に体調を戻した頃には、究極のハードコア・ヒールになっていた飛鳥が、4.4の横浜文化体育館で相対したのである。

GAEAで初となったクラッシュ対決は、試合中、飛鳥が使う机や凶器をリング外に放り出し、あくまでもフェアーで勝負を決めようとする長与が印象的であった。しかし、最後は火まで吹いて、結果はありとあらゆる悪行三昧を果たした飛鳥の勝ちとなった。長与はこの試合後のインタビューで、私は飛鳥を改心させて更生させようと思ったが、それは甘ちゃんだった。飛鳥相手に、反則はしませんクリーンに行きますとかで、勝てるはずが無かったと、語っている。

そのリベンジマッチが9.15の文体となったのだが、長与は試合前に、飛鳥にノールールで行こうと宣言した。つまり反則OKということなのだが、最終的に長与は前に自分がやられたのよりも遥かに大きい火柱を立ててリベンジをしたのだが、この試合というのは、試合的には長与の勝ちだが、実際には自分のポリシーを崩されたという点では、長与の完全な敗北の試合だったかもしれない。

試合後に、勝った長与は飛鳥に対して、「お前は俺、俺はお前」とアピールする。飛鳥は無言でリングを去るが、これは、長与の勝利宣言ではなく、オレもやっとお前のフィールドに昇ってきたぞという敗北宣言かもしれない。ただ、この後も再結成までには、8ヵ月かかるのだが。

GAEAのファイトスタイルの転機は飛鳥が参戦した時から始まり、9.15の戦いというのは、最終的にそれを長与が認めたということになる思う。 それでは、実際飛鳥が参戦してからと、参戦前とどうかというと、個人的には参戦前のGAEAというのは、特別に面白いというか、まあ普通の試合だったなという感じだ。

それを現在のスタイルに切り開いたのは飛鳥であろうが、飛鳥にそれほどのプロレス頭があるようには思えない。ただ、それにプロレス頭の優れている長与が敏感に察知したのではないかと考えられる。卓越した運動能力とプロレス頭、この二つが化学反応のキーかもしれない。


しかし、秒単位で展開が変わるスピーディーな実際の戦いは見てもらうしかないだろう。初めて見る人やマニアでも楽しめるところが、GAEAの人気の一因である。

                            (後編へ続く)





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