観戦記ドットネットアワード2004 −フリジッドスター−
MVP 川尻達也(総合格闘技TOPS)
最優秀プロレスラー 佐藤光留(パンクラスism)
最優秀シュートファイター セルゲイ・ハリトーノフ(RTT)
最優秀女子選手 辻結花(総合格闘技闇愚羅)
優秀賞1 宇野薫(和術慧舟會)
優秀賞2 石川英司(パンクラスGRABAKA)
優秀賞3 岡見勇信(和術慧舟會)
優秀賞4 B.J.ペン
ベストタッグ(トリオ可)
ベストマッチ(プロレス部門)
ベストマッチ(シュート部門) 川尻達也 vs. 宇野薫(3/22修斗)
ベストマッチ(女子部門) 川畑千秋 vs. 705
ベスト興行 3.22 修斗 後楽園ホール大会
ベスト団体 修斗、あるいは修斗的なるもの
新人賞(男子) 高谷裕之(格闘結社田中塾)
新人賞(女子) 川畑千秋
ベストブッカー/マッチメーカー/プロデューサー
ベストレフェリー
ベストコメント(マイク、試合後コメント、雑誌インタビュー等から) 阪神タイガース井川慶「PRIDEのリングでプロレスをやられたら困ります。PRIDEの価値が 下がっちゃう!」
重大ニュース/アングル DSEが”MMA”を商標登録していた事実発覚
今年目立った人(選手・スタッフ・解説・芸能人等全て含め) ジェレミー・ホーン
KANSENKI.NETベスト観戦記 メモ8さん 黄金筋肉「最強女王決定トーナメント」公開収録 ディファ有明雑感
KANSENKI.NETベストコラム グリフォンさん 格闘技スーパースター列伝「寝技世界一!! 菊田早苗」」完全版
ワーストMVP 美濃輪育久
ワースト試合 ヴァンダレイ・シウバ vs. 美濃輪育久
ワースト興行 2.15 PRIDE武士道其の二 横浜アリーナ大会
ワースト団体 PRIDE、あるいはPRIDE的なるもの
ワーストアングル 小川直也、マッチメイクの妙でGP準決勝進出
コメント
生活環境の激変に伴い、格闘技の観戦形態、格闘技を見る視線も自ずから
変化。その変化が如実に反映された選考になっていると思います。

プロレスに関しては、正直なところ最近は何かを語れるほど、観戦する
機会があるわけでもないので、思いきって除外しました。

■■■MVP■■■
昨年度下半期において破竹の快進撃を続けた近藤有己が、ヴァンダレイ戦
延期と云う不運もあり、やや停滞した今年度上半期でした。

突出した選手が不在だった感は否めませんが、少なくとも自分にとって
MVP候補となり得る選手は二人でした。すなわち、川尻達也と宇野薫です。

どちらを推すべきか迷ったのですが、圧倒的な新鮮さに対する評価と、未来
への可能性に賭けて、川尻達也選手を選出します。

川尻とか岡見とか石川だとか云った選手たちを、自分は自分でも意味が
良く分からないまま、”総合版ゼロの波”とか勝手に呼んでいるわけ
ですが、その元ネタはまあどうでもいいとして、強引にこじつけるの
なら、僕は彼らに対してある種の”自由さ”を感じるわけです。

日本の総合格闘技界を規定してきた、U.W.Fとかグレイシーとか云った
大文字の歴史の呪縛から、相対的に自由であるとでもいいましょうか。彼らの
多くが、パウンドと云うポストU.W.F/グレイシー時代の武器によって台頭
してきたことも、ひょっとしたら偶然ではないのかもしれませんね。

■■■最優秀プロレスラー■■■
いわゆる”プロレス”の試合を一戦もしていないヒカル君をここに選出する
ことに対して、異論を挟む余地は多々あるとは思います。

しかし、自分にとって総合格闘家の中で今もっとも「リアルプロレスラー」
(@美濃輪)の匂いを感じさせる選手は、ヒカル君なのです。

勝ち負けに関係なく、特定のファンの心を惹きつけてやまない点。にも
関わらず、今まさに「格闘家」としての結果を要求されている点。彼のかつての
美濃輪との相似点は、決してファイトスタイルだけではありません。

美濃輪との差異は、ファン層の規模の違いは前提として、美濃輪的な
熱血さや無謀さよりも、どこかナードな空気が前面に出たキャラ立ちにおいて
明確に現れていると思います。

マチズモから遠く離れた格闘家、ヒカル君。僕は彼が大好きです。

■■■最優秀シュートファイター■■■
最も優秀なシュートファイターと云う観点からすると、ハリトーノフはまだ
荒削りな部分や未知数な側面が大きく、推せる要素は多くはありません。

しかし、ここで敢えて生産的な誤読を試みて、「最もシュートな
ファイター」と云う観点から考えてみると、ハリトーノフの冷酷さは、
高く評価されて然るべきでしょう。

シュルト戦における、反則ロープ掴み+変則マウントからの目打ち鉄槌。
かくも暴力的な選手が地上波で姿を見せる事実は、ヴァイオレンスへの規制と、
それに伴う総合のスポーツ化と云う合衆国MMA業界が辿った軌跡を、日本に
おいてもまた踏襲する可能性を逆説的に示唆しているのかもしれません。

■■■最優秀女子選手■■■
今年上半期の辻選手は目立った試合こそなかったものの、羽柴戦直前の
鬼気迫る練習風景は圧巻でした。

最近の辻選手の打撃への固執は、グラウンドでの顔面打撃問題とも相関して、
今後のジョシカクの方向性(の一つ)を示唆していると思います。

■■■優秀賞■■■
本当は川尻と並んでMVPに選出したいのが、宇野選手です。上半期の修斗の
健闘の象徴として、また今後の修斗の風景を作る原動力として期待しています。

去年の桜井戦以降のブレイクの勢いを、今年も見事に継続している石川選手。
マーコート戦は素晴らしい熱戦で、今後のパンクラスのキーマンは彼であると
断言できます。下半期の更なる躍進が期待される選手です。

川尻、石川と並んで、日本人総合格闘家のエース格へと台頭してきた選手が
岡見です。武士道での桜井戦の強さ、アウェーにおけるヴァイタレ戦の健闘など、
まさに未来への底知れぬ可能性を感じさせる選手です。

ペンはヒューズ戦での神域に達した強さが印象的だったのですが、斗いの舞台
をロマネクスに移しても、その光は輝きを増す一方です。

■■■ベストマッチ(シュート部門)■■■
他にも素晴らしい試合はいくつかあったのですが、
突出して良かったのがこの試合です。

総合の最先端と云うよりは、むしろ原点とも思える「打・倒・極」の
全てが、いわゆるU.W.F的なそれよりも遥かに高度な次元で展開された
試合で、これぞ総合格闘技のマイルストーンであったと思います。

しかし、この試合の本当の魅力は、会場の一体感にあったと思います。
アングルに包摂され得ない、両者のこの試合に対する熱く真摯な思いを、
会場の誰もが共有していたのです。奇跡の一言ですね。

■■■ベストマッチ(女子部門)■■■
とにかくブリリアントな試合であったと記憶しております。

■■■ベスト興行■■■
前述のとおりです。観客と選手の思いが交感して、奇跡の一戦を導出した
素晴らしい興行だったと思います。

■■■ベスト団体■■■
修斗が団体ではないことを承知の上で、敢えて。詳しくは後述します。

■■■新人賞(男子)■■■
高谷を新人と呼んで良いのか分かりませんが、このキャリアにして世界の
強豪と互角以上に渡り合うのは、圧巻の一言です。

■■■新人賞(女子)■■■
とにかくブリリアントな選手であると思います。

■■■ベストコメント(マイク・コメント・雑誌等)■■■
みんなが思ってる本音をキッパリと言ってしまう人物が、業界外部の
野球選手であった事実に、格闘技関係の雑誌媒体におけるジャーナリズムの
欠落が、逆説的に反映されているのかもしれませんね。

■■■重大ニュース/アングル■■■
この件に関しては、自分のblogに書いたので省略。

■■■目立った人(選手・スタッフ・解説・芸能人等)■■■
優秀選手の項目が四つまでなので、強引にここに選出。

UGにおけるジェレミーへの評価と期待は、尋常ではありません。とにかく、
合衆国のマニア間の注目が高いと云う印象があります。

合衆国のローカルシーンを盛り上げるのみならず、”極西”の地・日本を
飛び越えて、ついに韓国の地にまで登場したジェレミーの功績は、積極的に
賞賛されてしかるべきだと思います。

■■■KANSENKI.NETベスト観戦記■■■
文脈は後述しますが、「帝国」的なるものに対する痛烈な異議申し立て
と、総合版歴史修正主義への真摯な抵抗として。

■■■KANSENKI.NETベストコラム■■■
氏のコラムを読むと、自分の書き手としての才能のなさを思いしらされます。

■■■ワーストMVP■■■
美濃輪が大好きだからこそ、帝国の傘下に下った彼の姿は見たくなかった。

■■■ワースト試合■■■
美濃輪には、この路線には進んで欲しくなかった。

■■■ワースト興行■■■
冗長かつ散漫で、密度の薄い興行でした。

■■■ワースト団体■■■
PRIDEが面白いことは前提として。これも後述。

■■■ワーストアングル■■■
小川には罪はありませんし、小川本人が自身の置かれている文脈に自覚的な
だけに、なおのことDSEのやり方には不快感を覚えます。

■■■総括■■■
前記の通り生活環境が激変したわけですが、私生活においては浮き沈みの
激しい上半期でした。しかし、楽しい時期においても苦しい時期においても、
つねに自分の近くにあり支えとなってくれた存在が、総合格闘技でした。

とはいえ、俺は自分語りがしたいわけではない。

総合なんて云う、単に裸の男が抱き合って殴り合っているだけの競技に、
なぜ自分はかくも情動を揺り動かされるのか? その格闘技の魔法を解明する
能力は、残念ながら自分にはない。ただ、この総合と云う競技、長く
続いて欲しいよね。この思いは、きっと誰もが共有してくれるよね。

PRIDE武士道はパンクラス、修斗、デモリッションと云った中・小規模興行の
(アウレリオ参戦でZSTもここに加わる)上位概念的な存在と化した。KID参戦に
より、K-1 MMAも同様の存在となった。

この上位興行二つが、相互に対立しながらも下位興行を包摂し、いわゆる一般層と
マニア層を分断統治しているのが、今日の日本の総合の鳥瞰図である。これはまさに、
ネグリ的な「帝国」を想起させる構図であると俺は思う。

一般層であれマニア層であれ、我々は現実に帝国によって統治されている。
PRIDE vs. K-1と云う対立軸はそれはそれとして固有の存在として認めるとしても、
この二大寡占企業が業界のヘゲモニーを掌握していることに変わりはない。

だから重要なのはPRIDE vs. K-1ではなく、PRIDE+K-1 vs. オルタナティブ
なのだ。このオルタナティブは未だ名もなき潜勢力に留まっているが、自分が修斗的
なるものと書くとき、その指示表出はまさにこのオルタナティブな勢力の
ことである。

「PRIDE/K-1が消えても、総合は続く」とは、自分には到底断言できない。おそらく
この地上波テレビ放送をバックにした「帝国」が瓦解すれば、日本の総合は消滅する。
それくらい、総合と云うマイナーな競技の力は弱いものであると思う。

しかし、主観的にも客観的にも、「PRIDE/K-1が消えても、総合は
続かなければならない」。この二律背反を解決するためには、もっとオルタナ
ティブの側の潜勢力を強化する必要がある。そのためには、各プロモーション
間が党派性に基づいた対立を続けるのではなく、「総合を愛する者」たちが
総合への愛を軸に連帯し、「帝国」に抵抗していかなければならない。

今年下半期、恐らく最も注目が集るイシューは、修斗の外部選手への
ライセンス発行と、パンクラスとの和解であろう。これらの修斗の動向が、
オルタナティブな勢力の浮沈の鍵を握ることになるだろうと云う希望的
観測をもって、上半期の総括に代えさせて頂く。

総合の未来に光あれ。


 
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